MH 2-3-2 司法精神医学における作業療法評価としての箱づくり法の有用性 Usefulness of the make-a-box test battery for occupational therapy evaluation in forensic psychiatry ○杉村めぐみ (OT) 1),冨岡詔子 (OT) 2),荒井留美子 (OT) 1),花岡敏彦 (OT) 1),松崎大和 (Dr.) 1) 1) 長野県立こころの医療センター駒ヶ根, 2)信州大学 名誉教授 Key words: Assessment and evaluation,Make-a-Box Test Battery, Occupational therapy in forensic psychiatry 【背景】 日本の司法精神医学における作業療法は,新たな法制度下(2005)で開始された.作業療法独自の評価 と情報提供が要求されること,言語交流困難な事例への対応を求められること,などが過去の実践で 明らかとなった.今回は,これらの課題への対応として導入した箱づくり法の有用性を,外国人の一 事例の経験をもとに検討した.症例と医療情報管理者からは発表の同意を得ている. 【症例】 外国籍の50代女性.妄想的思考による傷害行為で鑑定入院となり,1回目の箱づくり法を実施した. 通院処遇決定後は薬物療法,心理療法,デイケア,訪問看護を継続し,18ヶ月後に2回目を実施し た. 【結果】 簡単な日本語は理解でき,口頭説明で実施可能だった.有用な情報共有は以下の通り:1回目は拙速 的な取り組みが目立ち,対処回避感,不快気分,疲労感,緊張感が極端に低く,達成感,安堵感,自 己表現感が高く,自己内省機能の未熟さと,誇大的な有能感が推測された.2回目は慎重な取り組み となり所要時間は延長したが,段取り意識,援助希求感,困難感,不全感,自己決定不安などが現実 的に自覚され,治療の進展と適応面の改善が確認された. 【考察】 箱づくり法は,リスク評価に偏りがちな司法精神医学の専門家集団の中で,治療関係の確立,他職種 への情報提供の点で有用であった.特に対人交流や思考特徴を含む作業遂行能力など,当該行為と切 り離した健康的側面の理解が独自の有用性につながった.
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