D・ワインシュタイン

ワインシュタイン・コロンビア大学教授に聞く
米コロンビア大学教授
D・ワインシュタイン
2%の物価目標は適切
女性活用やTPP推進を
生活の利便性を高めている。
ンスストアのような業態が発達し、
できていない。他方で、コンビニエ
銀行部門は貸出先を見いだすことが
だし、多くの構造的な問題がある。
率を上げることに成功している。た
選んだことが奏功し、期待インフレ
拡張的な金融政策を行う日銀総裁を
黒田︵東彦︶総裁の下で日本経済
は回復に向かっている。安倍首相が
││ 安倍政権の経済政策と日銀の
金融緩和策をどう評価しますか。
知日派経済学者に聞く
││ 1990年代からの日本経済
の停滞の原因と金融政策をどうご覧
当相が登場し、銀行に資本注入を行
い不良債権を処理した。政府は適切
に対応した。2000年代に入ると
日本の生産年齢人口
︵ ∼ 歳︶
が減
64
フレを終わらせることができなかっ
下していない。国の経済力を見る場
口当たりでは、それほど成長率は低
は難しくなった。ただし生産年齢人
考え方だ。 年の財政再建路線︵財
から、手を打たなくてもよいという
況は深刻になることはなかった。だ
年代は楽観論のマヒともいうべ
き問題があった。それまで日本の不
ことは効率を低下させることを意味
増え所得が増える。女性を差別する
女性が働けば、それだけ労働人口が
より簡単なのは女性を雇うことだ。
何もできないというわけではない。
不足して十分な労働需要がなかった
減少の問題であるとともに、需要が
つまり日本の停滞は生産年齢人口の
の問題であることを示唆している。
で、日本の停滞が労働投入量の減少
あまり低下していないということ
率よりも高い。これは労働生産性が
たりのGDPは、通常のGDP成長
ることは確かだ。また、労働時間当
もちろん 年代の停滞はそれだけ
で説明できないが、大きな要素であ
が、日本の不況はそうした人口要因
││ 確かに生産年齢人口は総人口
よりも速いペースで減少しています
は成功しないと指摘されています。
ます。しかし、政府による産業誘導
││ 日本の成長戦略には、規制緩
和と産業政策的なものが含まれてい
とであると思い起こすべきだ。
2%の目標は、1∼3%を目指すこ
き締めるべきとの議論がある。だが
て、2%を少しでも超えたらすぐ引
し、物価上昇率の2%目標につい
止めようとする圧力がすでにある
じ問題がある。拡張的な財政政策を
とする考え方だ。現在の日本にも同
だから大胆な改革をしなくてもよい
ある。これまでうまくやってきたの
同じような考え方はヨーロッパにも
待を終わらせようとはしなかった。
簡単にできるよう補助金を使うべき
助金を使うのではなく、労働移動が
また政府は今の雇用を守るために補
がれば、日本人の実質消費水準は
産物が自由化され食品価格が3割下
所得の %を食品に使っている。農
TPP︵環太平洋経済連携協定︶
を進めることも大事だ。日本は家計
り全体の生産性は引き上げられる。
仕事に就くということだ。これによ
されていた人が、より高い生産性の
は、不当に生産性の低い仕事に就か
働力が実際に用いられるということ
%に低下している。広い範囲で労
9割は白人男性だった。現在では
が大きな理由ですか。
ということを意味している。
90
だ。女性という新しい労働者が活躍
97
需要不足の原因にはデフレがあ
る。日銀は 年代末から始まったデ
%×0・3で、約6%上昇する。
するためにも必要なことだ。
80
2014.4.12 週刊東洋経済
た。 年からの金融危機でも最低限
の緩和しかしなかった。
政府の産業誘導は
うまくいかない
合には、GDPの伸び率や1人当た
政緊縮︶はその表れだ。日銀はデフ
する。 年ごろ、米国では弁護士の
││ なぜ日本は適切な政策を打て
なかったのでしょうか。
りGDPでなく、生産年齢人口当た
レの中でインフレを恐れ、デフレ期
David Weinstein ●米コロンビア大学
ビジネススクール日本経済経営研究所
所長。経営学部長も兼務。
りのGDPも重視している。
り、高いGDP成長率を維持するの
15
08
になりますか。
90
た。小泉政権で竹中︵平蔵︶金融担
年代の金融政策は緩和するのが
遅すぎて不良債権処理も進まなかっ
聞き手:原田 泰・早稲田大学政治経済学学術院教授
産業誘導はうまくいかないだろう
が、経済効率を上げるために政府が
60
19
50
19
90
90
スペシャリスト インタビュー