コーポレートガバナンス 社外取締役割合の決定要因とパフォーマンス 内 田 交 謹 目 次 2.実証分析 終わりに はじめに 1.先行研究 最近のデータを含めた全上場企業を対象とした分析の結果、経済理論の予測と異なり、情報の非対称性の深刻 な企業が社外取締役割合を高くしていることが示された。また、外国人持株比率が低く、持ち合い比率の高い日 本型コーポレートガバナンス構造の企業は取締役会独立性を高めることでパフォーマンスを改善できるにもかか わらず、社外取締役割合を低くしていることが明らかになった。 よう義務付けた。Linck et al.[2008]によれば、 はじめに 米国企業の取締役会は1990年代にはその規模(取 取締役会構造(規模・独立性)の問題は、近年 締 役 数 ) が 縮 小 す る 傾 向 に あ っ た の に 対 し、 のコーポレートガバナンス研究において最も注目 2000年代に入ると、独立性・規模が増大する傾 されたテーマの1つである。一般に取締役会は、 向にある。04年の米国大企業の平均取締役数は 経営者に対するアドバイス機能とモニタリング機 10人を少し超える水準で、取締役に占める内部 能を果たすことが期待される。2000年代に入り、 者の割合は約25%となっている。 エンロン等の不正会計事件が明らかになったこと 一方、1990年代半ばまでの日本企業は、大規 か ら、 米 国 議 会 はSurbanlay-Oxlay Act(SOX法 ) 模で独立性の低い取締役会を採用していたことが を制定し、取締役会の独立性を高めるよう規制を 知られている。しかしながら97年6月の株主総 行った。またニューヨーク証券取引所とNASDAQ 会でソニーが執行役員制を導入し、取締役数を も上場企業に対して独立的な取締役会を採用する 38名から10名に削減して社外取締役を導入して 内田 交謹(うちだ こうなり) 九州大学大学院経済学研究院准教授。1998年3月九州大学大学院経済学研究科博士課程 単位取得退学。同年4月、北九州大学(現・北九州市立大学)講師。北九州市立大学准教 授を経て、2008年4月より現職。博士(経済学) 。主な著書に『コーポレート・ファイナ ンス 改訂版』(創成社、2009年)がある。 8 証券アナリストジャーナル 2012. 5
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