輸出入申告官署の自由化について 資料5-1 - 財務省

資料5-1
輸出入申告官署の自由化について
平成26年11月27日
関税・外国為替等審議会
関
税
分
科
会
財 務 省 関 税 局
1.現行制度の概要
(1)貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、当該貨物の品名等、必要な
事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けな
ければならないこととされている(関税法(以下「法」という。)第 67 条)。
当該申告は、輸出又は輸入の許可を受けるためにその申告に係る貨物を入
れる保税地域等の所在地を所轄する税関長(以下「蔵置官署」という。)に
対して行うことを原則としている(法第 67 条の 2)。
(2)輸出申告又は輸入申告の約 98%超は、通関業者が輸出者又は輸入者を代
理して行っているが、通関業者は、原則として、通関業の許可に係る税関
の管轄区域内においてのみ通関業務を営むことができることとされている
(通関業法第9条)。
2.背景及び検討の必要性
(1)我が国においては、年々増加する輸出入申告を適正かつ迅速に処理する
ため、NACCS(Nippon Automated Cargo and port Consolidated System:
輸出入・港湾関連情報処理システム)を導入し、現在、輸出入申告の約 98%
を電子的に処理している。併せて、輸出入申告に際して税関に提出を要す
る通関関係書類の簡素化及びPDF等による電子的提出を可能とする等、
通関関係書類の電子化・ペーパーレス化を推進しているところである。な
お、NACCSは、平成 29 年度に全面的な更改を予定している。
(2)こうした通関手続の電子化を前提として、民間団体から、
「輸出入申告は、
原則として貨物の保税地域等の所在地を所轄する税関官署に申告すること
になっているが、これを廃し、どこからでも、どこへでも申告を可能とす
ることにより手続の効率化をさらに進めて頂きたい。
」
との要望がなされた。
(3)これを踏まえ、
「規制改革実施計画」(平成 25 年 6 月 14 日閣議決定)に
おいて「輸出通関申告官署の自由化」が盛り込まれたことから、その対応
について検討する必要がある。
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(4)なお、閣議決定事項としては輸出通関に限定されているものの、民間団
体の要望を踏まえると、輸出通関に限定することなく輸入通関も含めて申
告官署の自由化について検討する必要がある。
(5)また、財務省関税局においては、学識経験者・民間事業者を交えた検討
会、
(一社)日本通関業連合会においては、各地区を代表した通関業者によ
る研究会を設置し、輸出入申告官署の自由化や通関業のあり方等について
議論を行った。
3.これまでの検討状況
(1)現行関税法において、輸出入申告が行われる場合、外国貨物を置くこと
等ができる場所として税関長が許可をした場所である保税地域等で検査を
行い、その後輸出入の許可を行うことで、貨物のすり替え等が行われるリ
スクを低く抑え、通関の適正性を確保している。
また、輸出入申告の受理から許可にいたる一連の手続として、書類の審査
及び貨物の検査を同一官署の職員が一貫して行うことにより、不正輸出入の
疑義がある貨物に対する迅速な対応が可能となり、効果的、効率的な検査を
行うことが可能であることから、蔵置官署に対する申告を原則としているも
のである。
(2)上記に鑑みれば、この原則を廃し、すべての輸出入申告を蔵置官署以外
の税関官署(以下「非蔵置官署」という。)に対して行うことを認めること
は、通関の適正性及び業務処理の効率性を確保する観点からは適当ではな
いと考えられる。
一方で、貿易円滑化を図ることも税関の重要な使命の一つであり、通関関
係書類の電子化・ペーパーレス化を進めている現状において、通関の適正性
及び業務処理の効率性を確保できるのであれば、特例として非蔵置官署への
申告を認めてもよいのではないかと考えられる。
(3)AEO(Authorized Economic Operator)事業者(AEO輸出者、AE
O輸入者及びAEO通関業者)は、貨物の現況の的確な把握など輸出入に
関する業務を適正かつ確実に遂行する能力を有することや、法令遵守の体
制が整備されていること等を要件として、税関長の承認・認定を受けた者
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である。この点を踏まえれば、AEO事業者においては不正輸出入のリス
クが低く、適正な申告を行うことが期待でき、非蔵置官署への申告を認め
たとしても通関の適正性及び業務処理の効率性に与える影響は小さいもの
と考えられる。したがって、AEO輸出入申告(AEO輸出者に係る輸出
申告及びAEO輸入者に係る輸入申告並びにAEO通関業者が取り扱う輸
出入申告)については、特例的に非蔵置官署への申告を認めることは可能
と考えられる。
(4)AEO事業者に対して非蔵置官署への申告の特例を認めることとすれば、
通関業の営業区域制限がその制約となりうるが、現在、輸出入者自らがN
ACCSを使用して輸出入申告を行う場合には、全国どこからでも蔵置官
署に対して申告を行うことが可能であることからすれば、通関業者に委託
することによって申告官署が一定の地域に限定されることは必ずしも合理
的とは言えないと考えられる。
また、通関業の営業区域制限は、通関業の許可要件の一つである需給調整
条項と密接に関連しているものであるが、需給調整条項については「規制緩
和推進3か年計画」(平成 10 年 3 月 31 日閣議決定)において、次期法改正
時に廃止することとされている。
(5)したがって、AEO事業者に対して非蔵置官署への申告の特例を認める
ことに併せて、通関業の営業区域制限を廃止することが適当と考えられる。
4.今後の対応
(1)輸出入申告官署の自由化については、これまでの検討を踏まえ、
① 輸出入申告を蔵置官署に対して行うという原則は維持する、
② AEO輸出入申告について、特例的に非蔵置官署に対して行うことを
可能とする、
③ 通関業の営業区域制限を廃止する
ことを基本的方向性として、輸出入者及び通関業者の利便性並びに税関業
務に与える影響を考慮しつつ、平成 29 年度のNACCS更改時までの実施
に向けて、具体的な検討を進めることとしたい。
その際、貨物の検査に係る権限、輸出入申告に対する許可の主体、貨物の
種類の違い、自由化の対象とする手続の範囲、貿易統計の計上方法、等につ
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いての検討が必要と考えられる。
(2)また、輸出入申告官署の自由化の一環として通関業の営業区域制限を廃
止することとなれば、通関業法の改正を行うこととなるが、通関業法につ
いては、輸出入申告官署の自由化に伴う改正を機に、昨今の通関手続をと
りまく環境の変化等に対応する観点から、通関業・通関士制度全般にわた
り論点を整理したうえで必要な見直しについて検討することとしたい。
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