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第14回 林業経済学会賞
林業経営体の木材供給に関する研究 藤掛一郎
わが国では、百万を超える森林所有者が林業経営を行い、スギやヒノキなどを育て、木材を供給しています。これ
を数千の製材工場や合板工場などが購入して加工することで、様々な木材製品が社会に供給されています。
この一連の研究は、わが国の森林所有者がいかに山を伐採して木材を市場に供給するかに関わり、以下のような、
近年見られるいくつかの問題を取り上げ、理論的、実証的な解明を行ったものです。
長伐期化
戦後の高度経済成長期には30∼40年で伐採される人工林が少なくありませんでしたが、現在ほとんどの人工
林はその年代を過ぎても伐採されません。この様子をある森林所有者の戦前からの長期の経営データで明らかに
するとともに、それを木材価格や賃金との関係で説明できることを明らかにしました。
伐採の活発化と木材加工業の成長
ところが、2000年代に入ると、少しずつ伐採が活発化しはじめました。戦後に植林された膨大な人工林が成
熟期を迎えたことで、伐採が活発化しはじめた様子を明らかにするとともに、国内でも地域によって、伐採の活
発化と木材加工業の成長とが互いを刺激しあって起こっている地域とそうでない地域があることを示しました。
伐採後の再造林放棄
森林所有者の中には、伐採した後、再び造林をして人工林の経営を継続する者と、将来の経営をあきらめ、再
造林をせず林地を放置する者とがあり、近年伐採が活発化する中で、後者の再造林放棄が増えて問題となってい
ます。この再造林放棄をモデル化し、木材の需給関係によっては、再造林放棄が増えるとともに、木材価格が再
造林ができないような非常に低い価格になってしまう問題が生じることを明らかにしました。