銅酸化物におけるチェッカーボード型電子変調の研究 数理物理学講座 41415006 奥永 裕明 銅酸化物高温超伝導体は、どの化合物も共通に銅と酸素で構成された2次元伝導面を持つ。こ れら母物質は反強磁性の絶縁体を示す。しかし、ホールや電子をドープすることで絶縁体から高 温超伝導体へと姿を変える。この銅酸化物高温超伝導体での低ドープ領域での特異な電子状態の 特徴を明らかにするため、多くの研究が行われてきた。その過程において擬ギャップ相の存在が 鍵となる。この相は絶縁相と高温超伝導相の間に位置する。つまり、擬ギャップ相での電子状態 を探ることが高温超伝導体の解明の鍵になる。 今回、注目している物質は Ca 2- x Na x CuO 2 Cl 2 である。母物質 Ca 2 CuO 2 Cl 2 は通常 Mott 絶 縁体を示すが Ca を Na で置換しホールをドープして高温超伝導体( Tc = 28K )示す。走査ト ンネル顕微鏡・走査トンネル電子分光(STM/STS)を用い、この物質の局所状態密度(LDOS) を測定し、それがチェッカーボード状の電子変調となることが擬ギャップ領域、高温超伝導領域 で確認された。擬ギャップ領域、高温超伝導領域での電荷・スピン密度または、超伝導ギャップ がチェッカーボード状の変調とどのように関係し影響を受けているかを調べることが本研究の 目標である。 本研究では、電荷密度、スピン密度をチェッカーボード状の電子変調状態と仮定し、二次元拡 張ハバードモデルを出発点とし、そこから Bogoliubov 方程式を導出し、セルフコンシステント な条件を得るまで計算を行う。そして、電荷密度、スピン密度、staggered magnetization、 d 波超伝導オーダーパラメータ、そして局所状態密度を求め、実験と類似したチェッカーボード 型変調の再現を行う。 図−1 図−2 図−1:STS による tunneling conductance−バイアス電圧のグラフ。矢印のような特徴的なス ペクトル構造が存在する。T. Hanaguri, et al: Nature 430, 1001 (2004). 図−2:計算結果による LDOS−E のグラフ
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