高温超伝導体 (Bi2Sr2CaCu2Oy)の 熱処理効果 矢萩・橋本研究室 工E11017 柴崎弘隆 http://www.aomori-u.ac.jp/staff/yahagi/lab/elec.html これまでの研究経過 空気中で熱処理を行うと電気抵抗率は低くな り、臨界温度Tcは高くなる。 真空中で熱処理を行うと電気抵抗率は高くな り、臨界温度Tcは低くなる。 Bi系高温超電導体における酸素の放出、吸 入はCuO2面内で起きているものと考えられる。 研究目的 銅酸化物系化合物のBi2Sr2CaCu2Oy の結 晶を育成し、それをX線回折により結晶性を 調べた後、熱処理を行うことにより結晶内の 酸素量を変え、臨界温度Tcの変化を調べた。 実験の流れ 結晶を作成する 結晶評価 X線回折 電気抵抗率の測定 結晶作成 Bi2O3 三酸化ビスマス SrCO3 炭酸ストロンチウム CaCO3 炭酸カルシウム CuO 酸化銅 結晶を作成するために各試料の割合が Bi2O3:SrCO3:CaCO3:CuO=1:2:1:2 となるように分量をする。 Bi2O3, SrCO3, CaCO3, CuOを上記の割合で混 合したものを電気炉に入れ加熱する。 熱電対 タンマン管(坩堝) ホルダー 温度制御ユニットE Typeプログラム温 度調節器5ステップ 8パターン(株式会 社いすゞ製作所) 温度記録計 YOKOGAWA LR 4120 RECORDER 電気炉の温度プログラム 3時間かけて990℃まで上 昇させ、6時間温度を保持 し、その後、3時間かけて7 67℃まで温度を下げ、5分 間温度を保ち、1時間かけ て565℃まで下げ、その後 は自然冷却する。 結晶作成終了後、400℃で 6時間の熱処理を6回くり 返し、合計36時間行った。 温度プログラム 1200 1000 温度(℃) 800 600 400 200 0 0 5 10 時間(h) 15 育成した結晶 結晶評価 Ⅹ線回折 Ⅹ線回折は結晶の固体と粉末で解析した。 電気抵抗率の測定 作成した結晶にInを4ヶ所付け、電極とした。 測定は、Van der Pauw 法を用いて行った。 X線回折結果 回折角から求めた面間隔dと標準試料の面間隔d (ASTMカード)を比較した結果、数本の回折線に関し ては、一致しなかったがその他の回折線は一致した。 また、粉末試料から得られた回折線との比較でも同 様な結果が得られた。ただしBi2Sr2CaCu2Oy相に属しな い相も若干含まれている。更に、これらの回折線から 得られた面間隔dを用いて格子定数aとcを計算した。 その結果、a =5.3296Å c = 30.663Åとなった。 電気抵抗率の測定原理 B C 電流I 電圧V A D 厚さt 各々の電圧、電流値から R1 = VCD/IAB R2 = VDA/IBC とすると電気抵抗率ρは t R 1 R 2 f 2 ln 2 より求められる。 ここではtは試料の厚さFはf値のことでR1/R2より求められ る係数である。4つの電極が完全に対称な場合は1になる。 F値は次のような式で求められる。 ln 2 R1 R2 1 cosh f R R ln 2 1 2 2 exp f 電気抵抗率の測定結果 熱処理後の臨界温度Tc Tc off-set〔K〕 Tc on-set〔K〕 育成結晶 72.4 82.2 空気中 1 73.8 79.0 空気中 2 73.8 80.6 真空中 67.6 83.1 考察 X線回折の結果、一部の回折線にBi2Sr2CaCu2Oy相に属しない 相も若干含まれていた。これは結晶作成終了後に熱処理を 400℃で、36時間行ったことに関係していると考えられる。 熱処理実験では、育成結晶と真空中で熱処理した結晶の電気 抵抗率の結果はこれまでの結果と同じものとなった。しかし、真 空中で熱処理した結晶を空気中で繰り返し熱処理すると、Tcは 変化しないが電気抵抗率が大きくなることがわかった。この原因 は、Tcが変化しないことから結晶中の酸素量には変化が無いも のと推測されるので、酸素以外の構成原子の欠陥生成によるも のと考えられる。
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