川崎市の教職員の資質向上を目指して

川崎市の教職員の資質向上を目指して
川崎市の教職員の資質向上を目指して
川崎市総合教育センターカリキュラムセンター
倉賀野 滋
1. はじめに 川崎市では、平成17年度からの10年間を対象として
策定した「かわさき教育プラン」のもとで、これまでに様々
な教育施策を推進してきた。
ここでは、現在の教育プランで取り組んできた内容の中
から「教職員の資質向上」について、カリキュラムセンター
が実施している事業を紹介するとともに、カリキュラムセン
ターの役割について述べたい。
授業後の教科別協議会
2. 拡大要請訪問(平成19年度~)
拡大要請訪問は、川崎市総合教育センターの各教科等を
3. ライフステージ研修(平成25年度~)
教員が教職生活の各段階を通じて専門性と社会性、実
担当する指導主事をチームで学校に派遣することにより、各
践的な指導力を高め「子どもたちとともに学び続ける教員」
学校の授業改善や教育課程編成に向けた取組等を支援する
を目指したライフステージ研修を実践している。具体的に
事業である。実施の条件として下記の内容を提示し、各学校
は、ライフステージを3つにわけ、それぞれの年次研修と
が希望日を選択し要請する。
ライフステージごとのつながりを受講者に意識してもらう研
(1)拡大要請訪問は、学校が主体的に要請する。
修内容としている。
(2)学校は、各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、
Stage1
特別活動等の授業を各1時間以上実施する。
(3)学校は、指導主事の指導や助言を受けるための時間を
適切に設定する。
(4)学校は、各教科等の指導助言に加え、学校の実情等に
(初任者、2年目教員、3年目教員)
○教員としての土台となる資質能力を身に付ける。
Stage 2
(2校目異動者、10年経験者、15年経験者)
応じて、人権尊重教育や国際理解教育、健康教育、特
○みんなをつなぎ自ら専門性を高める。
別支援教育、情報教育、教育相談等の教育課題に係る
Stage 3
指導や助言を受ける機会を設定することができる。
(5)その他、学校の要請に応じて、実効性のある訪問機会
となるように努める。
(新任総括教諭、新任教頭、教頭、新任校長、校長)
○組織と人を育てる力を高める。
土台の構築、みんなをつなぐ、組織を考えるという頭文
本年度は、小学校13校、中学校13校を計画し実施してき
字を並べ、ドミソの研修体系と位置付けた。それぞれの研
た。希望日が重なった学校については、次年度以降に優先的
修の中で、そのステージに応じた資質能力を身に付けた教
に実施できるよう配慮している。
員が、最も安定感のある調和のとれたドミソのハーモニー
実施した学校の教職員は、事前の指導案作成から教材の
準備まで非常に熱心に取り組み、自身の授業力を向上させた
いといった意欲に満ちている。本事業を通して、教員同士の
学び合いを促進し、日常の授業研究の充実や校内研修の活
性化を図り、教員の授業力向上につながる支援を行っている。
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のように、学校組織の中で機能することをイメージしている。
ここでは、Stage 2の10年経験者研修の特色ある内容に
ついて、紹介する。
10年経験者研修では、中堅教員として自分の力量を高
めるだけでなく、学校全体の教育力向上をめざして、若手
教員の資質向上にどうかかわっていくか、学校という組織
実施している。
の要として、人と人をつなぐ「ミドルリーダー」としての資質
すべての児童生徒に「わかる授業」を実践することを目指
能力を養っていくことが求められている。研修は、校内研
して、習熟の程度に応じたきめ細やかな指導の充実を図り、
修20日以上、校外研修13回を実施している。
的確な学力の把握、学校指導体制の見直し等を通じて、推
○勤務校内における研修
進校全体の学校支援を進めている。
【授業研究】
、
【課題研究】の2つを基本とし、研修教員
や学校の実態等に合わせて計画的に進めていく。
具体的には、中堅教員に求められる「人と人とをつなぎ
学校組織の活性化を図る役割」や「若手教員の力を引き上
具体的な学校支援の方法として、カリキュラムセンターの指
導主事を学校別のグループに編成し、グループごとに推進校
の授業を参観し、指導助言を行っている。
また、カリキュラムセンター内の指導主事間で推進校の授
げる役割」も視野に入れ、若手教員に対して授業公開し、
業を見る視点や研究状況を報告し、情報を共有することで各
研修の成果を発信することを課題としている。また、研修
推進校の状況に合わせた適切な指導に努めている。
教員がこれまでの教員人生を振り返り、学校全体の課題を
踏まえて、自分自身の指導と重ね合せてテーマを設定し、
研修者自身が主体的かつ計画的に研修を進めていく。この
ように、
【授業研究】と【課題研究】に関するテーマの両面か
ら1年間の研修と実践を進めていく。
指導主事による各校の報告
5. カリキュラムセンターの役割
カリキュラムセンターの役割は、教科教育研究と教職員
研修等の学校支援である。
教科教育研究では、各教科等の研究推進校による特色
課題研究のグループ協議
○勤務校外における研修
校外研修では、研修者の課題解決に向けた取組を支援し、
実践力のさらなる向上を図るための研修を、夏季休業中と冬
ある学校づくり、授業実践例等を紹介する学習指導要領
実践事例集の作成、校内授業研究および研修への講師派
遣の横浜国大との連携などがあげられる。
特に、確かな学力の定着と総合的な学力向上の取組は、
季休業中に実施している。演習、グループ協議等を通し、研
市内でただ一人の各教科等担当のカリキュラムセンター指
修者同士で課題を共有しながら、その成果をまた校内に生か
導主事の最重要の役割であろう。
していくというように、校内、校外での関連性をもたせた研
修の構成となっている。
また、研修対象者一人一人の特性や課題に応じた研修として、
センター希望研修・共催研修の受講1回を義務付けている。
教職員研修では、ライフステージに応じた悉皆研修の
充実、喫緊の課題へ対応する特設研修など希望研修の充
実、学校のニーズに応えるリクエスト研修の充実などがあ
げられる。これからの学校支援は、カリキュラムセンター
さらに、全市的な連携教育の推進に伴い、1日の異校種交流
の指導主事がチームを組織して、教職員個人への支援に
研修を実施している。校種を変えて、児童生徒の学習活動や学
とどまらず、学校組織全体を支援する体制にシフトしてき
校生活全般を通して、教育そのものを幅広い視点から見つめたり、
ている。チームとして、適切な指導を行うためには、これ
自らの置かれている状況をとらえたりする機会としている。教員
まで以上に、指導主事の個々の能力を高めるだけでなく、
としての視野を広げ、指導力の向上を図ることを目的としている。
指導主事間の連携・協働を図る必要がある。このような
学校支援が、学校が自主的、自律的に学校運営を行い、
4.きめ細やかな指導・学び研究推進校 ( 平成26年度~)
本年度は、研究推進校として小学校2校、中学校2校で
自ら課題を解決する力を高められるような学校全体の教育
力の強化へとつながると考える。
教育デザイン研究 第6号(2015年1月) 9