こしじ往来恐るべし(?)イタリアのPEG 今里 真

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恐るべし(?)
イタリアの PEG
国立病院機構新潟病院 今
里
真
今回、会員随想の原稿を書く様、柏崎市刈羽郡
時は円がリラより強かったにも関わらず)結構な
医師会の会報担当者様より仰せつかりました。私
ものでしたが、つい購入してしまいました。通常
のネクタイをとめるタイバーについて、よくご指
のディスカウントが効かないプライドの高いお店
摘頂く事がございますので、その件につきまして
でもありました。私が PEG の必要な患者さんの
写真をご紹介の上で述べさせて頂きます。
家族に説明する際も、このタイバーをみせて解説
このタイバーは1993年に私がイタリアで入手し
すると「大変わかり易い」と家族の方々も納得さ
ました。当時親交のあったイタリアの外科医・P
れます。一歩間違えると被験者をモチーフにする
教授と歓談後の事です。私が「日本は PEG(内
など悪趣味になりますが、
「神聖さ」を描出でき
視鏡的胃瘻造設術)の技術で栄養を提供できる様
るのはイタリアならではの技術でしょう。
になった」旨、チョッピリ誇らしげにお伝えしま
毎年、PEG に関連した学会や研究会の度にこ
した。すると P 教授は「イタリアは古代ギリシ
のタイバーをネクタイにつけていたのですが、多
アの有能な彫刻家や芸術家そして医師を招き繁栄
くの先生方から驚きと共感を頂いています。検索
した。PEG の歴史も古いのだ」
と言われるのです。
した限り、イタリアが日米より早く PEG を始め
米国と日本が古いのではと思い首をかしげる私を
たという文献はみつかりませんでした。しかし日
みて、彼はそこ(ローマ)の行きつけの宝飾店に
本にはこの様なタイバーは恐らくございません。
私を連れて行きました。そして、
「痩せた人(左・
古代ローマ帝国時代から PEG が行われていたか
造設)の胃に内視鏡をいれて胃瘻を造るとカテー
の様なイタリアの品格あるユーモアに感服といっ
テルを付けた栄養に満ちた人(右・交換)になる」
た所でしょうか。
と指で示したのが写真のタイバーだったのです。
(柏崎市刈羽郡医師会報 平成26年10月号より)
土産物屋ではなく宝飾店でしたので価格も(当
写真 両者とも内視鏡を挿入されているが、左(造設)の人に比べ、右(交換)
の人は確かに栄養状態が良く、腹部にはカテーテル(ボタン型?)が
見られる。
新潟県医師会報 H26.12 № 777