暦も残り少なくなり、寒さが身にしみ ます。去年は冬休みを前に、百人一首に親 しんでみませんかという話をしましたが、 お正月の伝統行事の中には「書き初め」も ありますね。今回は文字を書くことにつ いて少し書こうと思います。書道に限ら ず文字を書くのは奥が深く、難しいものです。国語の先生は字が上手と思われがちなの に、そもそも私自身文字を書くことにコンプレックスがあり、形が整わない上、字間が 広い間の抜けた文字に自信が持てないでいました。自分ではまじめだと思っていた?学 生時代、授業で先生の言葉を残らず書き留めようと、なぐり書きのように書いたことが そういう結果を招いたのかなと思います。おまけに高校時代それが高じてとうとう速記 なるものまで習得し、速く書くことを極めようとしたくらいです。(今でも私は速記を 使うと口述筆記が素早くできますが、それを普通の文章に直すのに時間がかかりすぎて、 結局役に立たないのでした。上の暗号のようなのは、実は冒頭の一文を速記で書いたも のです。) 転勤して皆さんの文字を見たときに、小さい!薄い!特に男子がどうしてこんなに印 象の薄い字を書くの?!と思って、「もっと濃く、大きく書きなさい」と何度答案に書 いたことでしょう、昔の自分の字は棚に上げて。しかし私はいつからか文字を気にする ことが少なくなっていました。そこで皆さんに私の上達した「こつ」をそっとお教えし ましょう。以前数学の内田先生が大村はま先生を紹介してくださいました。私はその大 村先生が「字が上手になりたい」という生徒におっしゃった方法を大学時代から実践し ているのです。それは「昨日より少し上手に書こうと思って書く」・・・言葉は違うか も知れませんが、そんな内容でした。以来私も教科書の文字をみて少しずつ意識をして 書いています。(国語教師を目指す人には『教えることの復権』ちくま新書共著 が図 書館にあります。) そして大学時代もう一つの体験をします。4年の時、平安時代の変体仮名を読む授業 がありました。古人が書いた、とても文字とは思えないほど崩した文字を読むのですが、 ある日「ああ、こんな風に書けたら素晴らしい、こんな風に書きたい」と思う文字が現 れたのです。古今和歌集「高野切」でした。(本校図書館の『書道全集13巻』に掲載。 多分解読は難しいのですが、美しさは感じてもらえるかと)教科書の文字と、そして遙 か高みには高野切の文字とが、私の行き着くべき目標となったのです。 新任教師として黒板に文字を書き始めた頃、まっすぐに書けない行と下手な文字があ まりに恥ずかしくて、消してしまいたいと思ったことが何度もありました。それがいつ のまにか、消したいと思わなくて済むようになり、だんだん褒めてくださる人も出てき ました。以前3年A組のAさんに、先日は小論をみていたB組のK君に褒められて嬉し かったな。 文字に自信のない桐南生!教科書の字を見ながら「昨日より少し上手に、少し大きく、 少し濃く」と意識しながら書いてみて。これは文字だけではなく何にでも通じることか も知れません。目標に向かって少しずつ意識して行うと、できるようになることがある のです。「あんな人になりたい」もあるかも知れません。恥ずかしがり屋で引っ込み思 案の私も少しずつ変わったかなぁ? 自由の身になったら、したいことは沢山あるのですが、書の練習もできたらいいと思 っています。まだまだ修行途上の身としては、拙いと思われないだけでなく、今度は高 野切の高みをめざして。 芸術科(音楽) 設樂 恭子 先生 冬と言ったら・・・雪・・・通行止めになった道・・・孤立した山荘・・・色々な素 性と事情を抱えた宿泊客・・・ときたら、起きるのは殺人事件!!そして雪の中をとび こんでくるのは難事件を颯爽と解決する名探偵!!!なんてすぐに連想する私は、ミス テリーをこよなく愛しています。(好きなドラマは「相棒」) 憧れの人はシャーロック・ホームズと明智小五郎だった小学校時代から始まり、お小 遣いは『三毛猫ホームズ』に費やした中学校時代。アガサ・クリスティのエルキュール・ ポワロにはまり、灰色の脳細胞を何とか自分も働かせようとホットチョコレートを飲み まくった高校時代。そして、島田荘司の生み出した天才・御手洗潔にどっぷり浸かった 大学時代(「占星術殺人事件」と「眩暈」の衝撃といったら!) 社会人になっても、綾辻行人の『館』シリーズや、ドラマでも取り上げられている森 博嗣の犀川先生・西之園萌絵シリーズ、はまったら抜け出せない京極夏彦、そして海外 物ではコーンウェルの『検視官』(ちょっと最近マンネリ気味)や『フロスト警部』シ リーズなど、書き出したら止まらないのでこの辺で。 ミステリーの連作は、非日常に浸かれるのはもちろん、周りの人間も成長したり結 婚したり、と自分と一緒に生きている感じが魅力です。今読みなおしたいものもたく さんありますが、読み始めたら確実に寝食も忘れ、全作制覇してしまいたくなるの で、あえて手を出さないようにしています。 そんな私が唯一苦手なミステリー・・・それは時刻トリックを駆使する鉄道物。ごめ んなさい十津川警部。 というわけで、みなさんも冬の夜、ホットチョコレートを用意して上質なミステリー にドキドキしてみませんか。 保健体育科 髙山 豊 先生 小学校から大学まで春も陸上、夏も陸上、秋も陸上、冬も陸上、、、、という陸上競技 中心の生活を送っていた私が読んでいた本といえば月刊陸上競技マガジン…どこまで 陸上が好きなんだよと自分でも思います。そんな私ですが唯一読んでよかったなと思う 本があります。それは為末大さんの『諦める力』 。サブタイトルがとても印象的 で「勝てないのは努力が足りないからじゃない」。読み進めていくうちに自分の価 値観、競技に対する考え方など多くのことを考えさせられました。 本のタイトルはネガティブな印象を受けますが、そもそも「諦め」の語源は「明らめ」 のようです。ですから諦めるとは「終わり」や「逃げる」といった意味ではなく「明ら かにして見極める」ということ。いつからかネガティブなイメージのついてしまった「諦 め」という言葉を見直すと同時に自分を見つめ直してみませんか。少し考え方を変える だけで生き方が変わるかもしれません。この本を読み終わったときはとてもすっきりし た気分でした。 今でもこの本は読み返しています。ぜひ一度読んでみてください。 本に影響を受けない人間がいるだろうか。ファッション雑誌であれ、小説であれ、漫 画であれ、本は身の回りに溢れている。 黄色いチョッキに青の燕尾服という格好にピンと来る人はいるだろうか。 『若きウェ ルテルの悩み』 (ゲーテ著)を読んだ若者のあいだで流行し た服装だ。この作品は青年ウェルテルが婚約者のいる身であ る女性シャルロッテに恋をし、叶わぬ思いに絶望して自殺す るまでの様子を描いている。黄色いチョッキと青の燕尾服を 着た人間は、ともにシャルロッテに恋をしてウェルテルの悩 みを追体験したのだろう。 私は、本を読むこととは「手っ取り早く人生経験を積む」 ことだと思っている。他人と話すことはあっても、経験や考 えを詳細に説明してもらえる機会なんて、そうそうない。ま して、異なる時代を生きていた人なんて話すこともできない。しかし、本を読めば、著 者が伝えたいことを、言葉を選んで詳説してくれる。本を読んで、いろんな経験をする ことをおすすめしたい。 「読む、書く、考える」この3つは僕が小学校の時から苦手にしていることです。 小学校の時は読書の時間といったら『ウォーリーをさがせ』。中学、高校では漫画や陸 上の雑誌、食事や栄養などの本。共通して文字を読まなくても絵や写真で理解できるも のばかりです。(文章が多いとちょっと…笑) そんな僕のオススメの本は、ひすいこたろうさんの『あした死ぬかもよ?』です。 まだまだ人生これからの高校生に対してこんなタイトルの本を…と思うかもしれませ ん。自分もタイトルのインパクトで何の考えもなく読み始めました。この本は「死」を 考えるものでなく、自分のこれからの人生を考えさせられます。 例えば今日が最後の日だと思ったら15分待つ踏切にすら、喜びが出てきます。毎日 何気なく過ごしている日はもう二度と来ないのです。高校生活も1度きり。人間は行動 した後悔よりも行動しなかった後悔の方が強く残ります。 人生を全力で楽しみましょう!! 今一番、南高生に読んでほしい本を紹介します。それは『わ たしはマララ』です。言うまでもなくマララさんは、史上最 年少でノーベル平和賞を受賞した今や時の人です。 マララさんが生まれ育った現在のパキスタンは、子どもや女性にとってきわめて過酷 な環境にあります。登校途中のバスの中で、彼女がイスラム過激派に銃撃されたのは、 2012 年10月。たった15才の時です。その襲撃で意識不明になりましたが、奇跡的 に一命を取りとめ、現在イギリスで子どもの人権擁護活動に積極的に取り組んでいま す。さて、なぜ彼女は襲われたのでしょうか?それは女子教育の必要性を強く訴えてい たからです。「え~、そんな理由で?」と誰もが思うでしょう。詳しいことはこの本を 読んでください。彼女の強い意志を感じることによって、きっと自分を成長させること ができますよ。そして、自分に何ができるのかも考えてほしいと思います。マララさん は、12月10日に行われたノーベル平和賞授賞式での記念講演で、「すべての子ども に教育を」と全世界に向けて強く訴えました。『わたしはマララ』と併せてぜひ一読を。 ちなみにこの本の訳者は金原瑞人さんです。金原瑞人さんと言われても多くの皆さん が気づかないかも知れませんが、皆さんが小学4年生の時に国語で学習した『三つのお 願い』の訳者です。お嬢さんの金原ひとみさんは、『蛇にピアス』で芥川賞を受賞しま した。 * ノーベル平和賞受賞演説(要旨)は、図書室前の掲示板に掲載してあります。 妹尾河童 著 『河童が覗いたインド』 新潮文庫 インドには他の地域・国にはない世界があるように思う。この国独自の民族宗教であ るヒンドゥー教もそのひとつを物語っている。地球の長い歴史に目を向ければ、もとは 南半球に位置していたインド。私自身は行ったことがないが、興味のある国のひとつだ ったので、その昔、インド旅行記を何冊か読んでいた時期がある。その中で最も面白か ったのがこの本である。 この本は普通の旅行記とは違う。まず写真はひとつもない。その変わりに著者が描い た絵がふんだんに掲載されている。その絵がなんとも秀逸で細かい。そして、著者本人 の手書きの文字ですべての文章が成り立っている。するどい観察眼と感性を持った著者 の絵と文字で、ガイドブックなどでは知りえないインドが生き生きと浮かび上がってく る。インドに興味がない人も、これを読むと興味がわいてくること間違いなしの一冊で す。 三芝 功一 教頭先生 『三国志』 吉川英治 著 就職して何年か経ったある日、何かで「三国志」のこと が気になり、読んでみようとなった。しかし、過去に長編を読んだことはなく不安であっ たが、意地でも読んでやると決意しトライした。図書館から借りるのも良かったが、チャ レンジした結果を残そうと本屋で一冊ずつ購入したのを覚えている。家の本棚から久しぶ りに手に取ってみたが、埃をかぶり貫禄がついたのか茶色く灼けていた。 原本には、「通俗三国志」「三国志演義」など数種類あり、直訳したものではなく、吉川 英治が少年の頃、親しみ熟読していた久保天随氏の「演義三国志」の影響が大きかったよ うだ。登場人物の人間味ある言動など読む者をファンにしてしまう本である。この「三国 志」を読んでいると、劉備玄徳・関羽・張飛・諸葛亮孔明の人間味溢れる人柄、頭の良 さ、固い絆を感じ取ることができ、中国4千年の歴史を痛感させられ大好きな国になっ た。しかし、今、日本と中国の間はあまり良くない関係にあり、なぜ、中国の人はこの様 な言動を取るのか不思議な部分がある。歴史上において、溝ができてしまったことは分か っているが、大変残念に思う。 時代は、約2千年前、中国は後漢の代の話。政治の腐敗、跳梁する黄巾賊、役人の専横 に民衆は苦しめられていた。漢室のながれを汲んだ景帝の裔孫の劉備玄徳は、関羽・張飛 と議盟を結び、世を救うために起ち上がる。そして、「三顧の礼」において軍師諸葛亮孔 明が加わった。三国とは、蜀、魏、呉である。劉備がどの様にして蜀を起ち上げ、どうな っていくか。孔明は、幾つもの危うい戦いに勝機をもたらす。特に「赤壁の合戦」は、印 象深く残っている。敵との心理戦や忠義における義理と人情及び正義感に心が熱くなった 事を覚えている。 歴史物は、はまると面白い。もうすぐ最終回になってしまう大河ドラマの「軍師勘兵 衛」だが、最初それほどでもないと思っていたが、今は日曜日を楽しみにしている。他 に、韓流ドラマの歴史物に最近はまっている。家族は、何が面白いのかと不思議がってい るが私は面白いのである。 皆さんも、冬休み中に歴史物を 1 冊チャレンジしてみては如 何だろうか。私は、貫禄がついた「三国志」を埃を払いながら読み返してみようと思う。 10 月 31 日(金)、桐生・み どり地区高校図書委員会合同読 書会が、桐生市立商業高校で開 催され、本校も総務 5 名が参加 しました。 今年の課題図書は、『グラス ホッパー』 (伊坂幸太郎 著) でした。 「殺し屋」の話で、殺人 場面が多々あり、読み進めるの が難しい小説でした。 「いったい、 どのように話し合いを進めたら よいのか?」と、心配でした。 しかし、夏休み中に「読書会準備会」がもたれ、 「司会」 「記録」 「サポーター」の役割を 学び、模擬練習ができたことが、自信になりました。 ひとつの作品をみんなで読み、感 じたことを話し合えたことはとても 有意義なことでした。いろいろな考 え方があるのだと分かったことも、 大きな収穫です。はじめは、ハードル が高いと思っていた読書会も、参加 してみると、おもしろいものだなぁ と思いました。 2A 周藤 彩加 1D 野村 優太 2D 高沢 香織 1D 佐瀬 直希 3A 峯岸里紗子 メモ (編集後記) ご多忙の折、たくさんの先生方に寄稿していただきました。推薦していただいた珠玉 の数々。手にしてみれば、先生をもっと身近に感じることができるかもしれません。是 非この機会にひとつ、読んで見ませんか?(U)
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