不安定なサーフェス上でのト レーニングは時間に見合う

©NSCA JAPAN
Volume 15, Number 1, pages 48-49
f r o m W e b S i t e / NSCA’s Performance Training Journal
Fitness Frontlines
● 米国のフィットネス最新情報、研究報告
連載 9
G. Gregory Haff, PhD, CSCS
エクササイズボールは体幹伸
筋のトレーニングに効果的な
ツールか
判明した。興味深いことに、エクササ
Are Exercise Balls Effective Tools
for Training Trunk Extensors?
筋の同時活性化に差は認められなかっ
た。これに対し、マット上でコントラ
Training on an Instable Surface, Is
it Worth the Time?
University of Waterloo が実施した
ラテラルおよびシングル・レッグエク
先頃、Canadian Memorial Chiroprac-
最近の調査によると、健康な若い成人
ステンションを行った場合、体幹伸筋
tic College の研究者が、上半身のエク
がエクササイズボールを用いてエクサ
が大きく活性化した。また、マット上
ササイズを不安定なサーフェス(エクサ
サイズを行っても、エクササイズボー
では腹直筋と外腹斜筋における筋電図
サイズボール)で行った場合と安定した
ルなしで体幹のトレーニングを実施し
の活動パターンが大きくなることが判
環境(エクササイズ用ベンチ)で行った
た場合に比べてトレーニング効果は向
明した。研究者は以上の結果から、ア
場合における、筋の活動パターンにみ
上しないという結果が示されている。被
スリートをはじめとする健康な成人の
られる効果の違いを比較した。大学生
験者8名を対象に、エクササイズボー
トレーニングにエクササイズボールを
年代の被験者13 名が、3種類のエクサ
ルまたはマット上で様々な体幹伸筋の
使用しても、その効果は保証されない
サイズ(ボールまたはベンチに両手を乗
トレーニングを行う間、全身7カ所(腹
と結論付けている。一方、エクササイ
せたプッシュアップ、ボールまたはベ
直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、広背筋、
ズボールを使ったエクササイズは、腰
ンチに両足を乗せたプッシュアップ、ボ
胸部脊柱起立筋、腰部脊柱起立筋、多
部全体に掛かる負荷を軽減するため、
ールまたはベンチに両手を乗せたプッ
裂筋)の筋電図を記録した。計3種類の
リハビリテーションに効果的と考えら
シュアップ・プラス:プッシュアップ
エクササイズ(バックエクステンション、
れる。結論として、アスリートがエク
の姿勢からさらに両肩甲骨を外転させ
コントララテラルアーム/レッグエク
ササイズボールを使用しても、トレー
る。その後、身体を下ろす)を行った。
ステンション、シングル・レッグエク
ニング効果の向上は期待できないと考
筋電図で4つの筋群(上腕三頭筋、大胸
ステンション)を実施した。さらに10kg
えられる。◆
Drake DM, Fischer SL, Brown SHH,
Callaghen JP.(2006)
.
筋、腹直筋、外腹斜筋)
の筋活動を測定
の重量物を持ちながら、体幹を60 °
屈曲
させた状態を保つ参考課題を実施した。
調査の結果、エクササイズボール上で
エクササイズを行った場合、体幹屈筋
イズボールまたはマット上でバックエ
クステンションを行った場合、体幹伸
Do exercise balls provide a training advantage for
trunk extension exercises? A biomechanical evaluation. Journal of Manipulative Physiological
Therapeutics, 29(5): 354-362.
と伸筋の収縮が約30 %減少することが
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不安定なサーフェス上でのト
レーニングは時間に見合う効
果をもたらすか
した。調査の結果、ボールに両足を乗
せたプッシュアップでは、エクササイ
ズボールとベンチの活動パターンに差
は認められなかった。また、外腹斜筋、
腹直筋、および大胸筋の活動パターン
January/February 2008•Strength & Conditioning
にも、安定した環境と不安定な環境に
に影響を及ぼすか判定するための調査
よる差は認められなかった。これに対
を実施した。短期的(急性)効果の調査
し、ボールまたはベンチに両手を置い
では、被験者5名に30Hz のバイブレー
たプッシュアップ・プラスでは、エク
ションを施しながら4種類のストレッ
ササイズボールを使用した場合、上腕
チを各10 秒間行わせ、別の5名にはバ
三頭筋、腹直筋、および外腹斜筋の活
イブレーションを使わずに同じ内容の
動が有意に増加した。補足として、研
ストレッチを行わせた。さらに被験者
究者は全般的な活動パターンを観察し、
には、短期的効果の調査と同じプロト
安定した環境または不安定な環境に関
コルに従い、週5日、4週間にわたっ
係なく、いずれのエクササイズも微弱
てストレッチを行うように指示した。調
な筋活動しか生じていないことを確認
査の結果、ストレッチのプログラムに
している。これは、今回選択したエク
バイブレーションを加えると、柔軟性
ササイズがアスリートにはほとんど効
に及ぼす短期的効果が有意に向上する
果がない可能性を示唆する。その一方、
ことが判明した。また、4週間のトレ
彼らは、これらのエクササイズがリハ
ーニングにバイブレーションを取り入
ビリテーションで何らかの効果をもた
れた場合、ストレッチだけを行った場
らす可能性を示唆している。◆
Lehman GJ, MacMillan B, MacIntyre
.
I, Chivers M, Fluter M.(2006)
合よりも柔軟性が向上することが確認
Shoulder muscle EMG activation during push up
variations on and off a Swiss ball. Dynamic Medicine,
5(7):1-7.
された。研究者は、ストレッチのプロ
トコルに30Hz のバイブレーションを加
えると、関節可動域を有意に増大でき
ると結論付けているが、このテーマに
関するデータは非常に少なく、この実
践の有効性を裏付けるためにはさらに
研究を行う必要があることも付け加え
バイブレーションと柔軟性ト
レーニングの組み合わせは柔
軟性に短期的、長期的効果の
両方をもたらすか
ている。◆
Sands WA, McNeal JR, Stone MH,
Russell EM, Jemni M.(2006)
.
Flexibility Enhancement with Vibration: Acute and
Long-Term. Medicine & Science in Sports &
Exercise, 38(4):720-725.
Coupling Vibration with Flexibility
Training Can Improve Both Acute
and Long-Term Flexibility
著者紹介
G. Gregory Haff :ウェストバージニア州モーガン
タウンにある、West Virginia Universit の運動生理
学部准教授。NSCA の Research Committee、およ
び USA Weightlifting Sports Medicine Committee の
メンバー。米国 NSCA の 2001 年度 Young Investigator Award 受賞。
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の研究者が、男性体操選手10 名を対象
NSCA ジャパン 事務局
近年の調査で、バイブレーションは
可動域を増加させる上で、従来の柔軟
From NSCA’s Performance Training Journal
Volume 5, Number 5, pages 4-5
性トレーニング以上に効果を期待でき
る有効な方法であるというデータが示
http://www.nsca-japan.com
に、バイブレーションが柔軟性の向上
January/February 2008•Strength & Conditioning
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