第一回 - インターアルペンスキースクール

 スキーは、つねに変化するゲレンデ
スポーツです
スキーは“先取り感覚〟の
スキーで
ネ
エ
省
、
じ
外力を感 しく!
疲れず楽
エンジョイするのもスキーです。今回から始まるシニア応援連載は、
外力を効率良く利用し、何歳になっても疲れ知らずで
スキーを楽しみたい方にお贈りします。そのためにもう一度、
プールを楽しく描くこと
基本に帰り、ゼロからスタート!
めざせスーパーシニア!
ことで、
この抵抗力の調節幅は広がり、
ができるようになりま
す。
さらなる上達につながりますす。
ケンカするのではなく
中高年の
いくことがスキー操作です。
“自然”の
ように、すべてをマネージメントして
運動はさらにスムーズになり、疲れず
極的に“移動”し、外力を感じることで
推進力に対して、スキーヤー自ら積
は何でしょう? スキー
とって、楽しいスキーと
中高年のスキーヤーに
楽しいスキーとは?
力に合わせ、スキー板の性能をいかに
に長距離を自在に滑ることができるよ
自然の力を借りましょう
効率的に引き出して使うかが、上達、
は、身体に大きな負荷を
肉の緊張弛緩を生み出
加えることなく程よい筋
く、この“自然”の力を借りて、雪とス
し、自然に身体が鍛えら
しゃらに対抗し、ケンカするのではな
ピードをコーディネイトすることが大
スキーは“スピード”を
で、身体のリズム感を引
圧感覚を磨いていくこと
繰り返すターンによって
れるスポーツです。
また、
うになります。自分の力や筋力でがむ
す。
“斜度”と“落差”を感じて
コントロールするのがおもしろい
スキーは自然のスポーツです。山を
コントロールするスポーツです
ます。弧は雪面への圧をコントロール
ターン弧をどのように描くかで決まり
そしてゲレンデのイメージを先取り
き出すことができ、これ
していくということです。左右へ繰り
し、雪質を感じてフィードバックしな
その山の斜面の斜度が重力による“推
返しターンするなかで、つねに変化す
することで描きます。雪質、斜度など
がらスキーをするということは、脳の
も体力アップにつながり
る“斜度”と“落差”を感じながらコン
の斜面の状況条件に合わせ、ゲレンデ
活性化にもつながると思います。
ジションを調整していくことで、普段
また、スキーという運動のなかでポ
ます。
トロールすることが、スキーのおもし
をマネージメントしていきます。
コントロールとコースマネージメント
の姿勢も良くなり、若々しい姿勢を体
することで、スキー板の推進力に対し
スキー板をまわしたり、エッジング
よく緊張することで、雪を感じ、ター
です。頭で先を読み、身体で感じ、程
ントロールとコースマネージメント
スキーの上達の鍵は、スキー板のコ
で、あなたを“スーパーシニア”に変貌
ことができれば、スキーはすべての面
レンデをマネージメントする。楽しむ
スキーを楽しくコントロールし、ゲ
が うまさにつながります
て抵抗が生まれます。
この
“抵抗力”
を、
させてくれるでしょう。
得できるのです。
いかにうまく使うかが上達の鍵となり
ンをスムーズにし、そして華麗なシュ
上達の鍵
抵抗力をいかにうまく使うかが
ろさであり、
挑戦だと私は思うのです。
進力”を引き出し、加速度的に“落下” スピードをコントロールできるかは
スキー板を履いて滑るということは、
切なのです。
またはうまさのポイントとなってきま
滑っていきます。その状況に適応する
の状況を予知し、イメージしながら
筋力を鍛えて極限の滑りを追求するのもスキー。筋力負担を減らし
ー
パ
ー
ス
・
ア
シニ
!
ジ
ン
レ
チャ
ます。
“スキー板の性能”を引き出す
▲
松ノ木敏雄 先生
指導&実技
71歳
1949年1月5日岩手県生まれ。イ
ンターアルペン雫石スキースクー
ル校長。(財)全日本スキー連 盟
研修委員会副委員長。元全日本
スキー連盟デモンストレーター強
化コーチ。著書に『松ノ木敏雄の
出直しスキーレッスンーどんな斜
面も自由自在!』ほか
スーパーシニア・モデル
Toshiaki MURASATO
1951年1月11日岩手県生まれ。駒
場高校からインスブルック大学。オ
ーストリア国家検定スキー教師、同
アルペンコーチの資格取得後、(株
)スポーツユニティ設立。(財)日本オ
リンピック委員会国際専門副委員
長、(財)全日本スキー連 盟常務理
事・総務本部長。プライベートでは
趣味のジョギングで自己記録を更
新中のスーパーシニア
70歳
55歳
▲
森田 泉さん
スキー歴30年。
不整地を安全に降りるのが目標
水上 済さん
スキー歴30年。
安全に楽しくが目標
笹淵真理子さん
松ノ木敏雄
Inter Alpen Ski School Produce
村里敏彰
インターアルペンスキースクール代表
スキー歴8年。
楽しくスキー!
協力…雫石スキー場、
雫石プリンスホテル
撮影…真嶋和隆
Super-Senior-Challenge
解説…
(雫石インターアルペンスキー
スクール校長)
身体と脳を刺激するスキーは
シニアの強力な味方!
“スーパーシニア”
をめざそう
132
133
はじめに—— 理想のシニアスキーとは
[新連載]
シニアスキーヤー
応援企画
スーパー
シニア・ ジ!
ン キーで
チャレ
ス
省
じ、 エネ
外力を感 く!
し
疲れず楽
Check 2 目標を持って滑る
2
直滑降 ―― 基本の滑り
外力を最大限に感じるための直滑降の
トレーニング・バリエーション
スキー板を滑らせ、落下移動することで受ける外力(雪面抵抗や除雪抵抗など)を、
スキー板の性能を最大限に引き出しながら活用し、自分の筋力(内力)を最小限に使った
効果的な滑りをマスターすることが目的です。整地された斜面だけではなく、
コブ斜面などの不整地やオフピステを自由自在に楽しめるスーパーシニアをめざしましょう。
Training 1
直滑降 ―― 基本姿勢のチェック
まずは滑走感覚を身につけるために、直滑降の基本姿勢から見直します。
非常に大切な確認作業です。
Challenge
スキー関 節と言われる足首、
膝、股関節を軽く曲げ、
リラック
スした高めのポジション。これ
が動けるポジション。ここから
目標を決め、滑り出します
キー板を滑らせるた
基本、直滑降で、ス
滑りになることがあります。また、下
板のトップがバタついたり、不安定な
ず、
下段左のように後傾になり、
スキー
してみると、進行方向への移動ができ
ように感じるポジションでも、滑り出
めの基本ポジション
ま ず、 基 本 中 の
をチェックしましょ
段右は、その場に重心が残り、女性に
脚になったもの。両脚
X
う。滑り出す前は、リラックスした高
多く見られる
悪い例
両脚に均等に乗っていないケース。写真は、
女性に多く見られるX脚
めのポジションを取ります。進行方向
悪い例
その場で、膝、足首をしっかりと曲げ、どっしり
と荷重したポジションは、滑り出すと動けない
に均等に乗ることができなかったり、
×
につねに動けるポジションかどうかを
スキー板と一緒につねに移動していけるポジションであることが大切です。
リラックスした高めのポジションからスタート!
不安定な滑りになってしまいます。
トレーニング2は、緩斜面
での直滑降の基本の滑りです。
滑るスキー板と一緒に落下移
動することを覚えます。滑り
出しはリラックスした高めの
ポジション(1)
。このように体軸を
しっかりと保ち、スキー板と身体の一
体感のあるポジションでないと、雪面
抵抗をよく感じ取ることができませ
ん。このポジションが理解できて初め
て3のように進行方向へ重心の移動が
でき、その結果、外力を感じ、活用す
135
る脚部の曲げが出てきます。
3.
Check 1 滑り出す前の基本ポジション
確認してみましょう。その場では良い
2.
滑り出すスキー板と一緒に重心
を移動させ、スキー板と身体の
一体感のあるポジションを意識
し、足裏でしっかり滑走感覚を
感じましょう
滑走感覚を感じたら、さらに意
識して進行方向へ重心移動す
ることで、荷重感、圧感覚を感
じ取れ、写真のようにスキー関
節の曲げが出てきます。その結
果、重心が下がっているように
見えるのです
外力を感じ取れる
ポジションを確認しよう
滑ることで生まれる外力
(雪面抵抗)
を効果的に
感じ取れるポジションを、直滑降で滑り込んで、
確認します。これは進行方向への働きかけ
(移動量)
、
荷重感、圧感覚をしっかり感じ取る
トレーニングにもなります。
1.
1
Challenge
滑るスキー板と一緒に
身体の落下移動を 覚えよう
Training 2
めざせ! スーパーシニア
ベーシックな技術編
[その1]
アルペンスキーは、斜面を下に向かって
滑り降りるための道具です。
スキーのもっとも大切な基本
“滑る”
という感覚を
時間をかけて身につけることが第一です。
スキー板と一緒に重心の落下移動をしていく感覚をつか
む簡単な方法のひとつに、パイロンなどで目標を示して滑る
方法があります。目標に向かって滑っていくことで、先へ先
へと重心を運ぶ意識が生まれます。進行方向への働きかけ
(重心の平行移動)をすることで、荷重感のある安定した滑
りになってきます。
外力を利用した滑りをめざすときに重要になるのは、進行
方向への重心移動(斜面と平行に移動するイメージ)、すな
わち滑ることで進行方向からくる抵抗を、足裏で感じ取るこ
とです。そしてその荷重感、圧感覚と、つねに進行方向へ動
き続けるスキー板と重心の位置関係は、脚部(足首、膝、股
関節)の曲げと重心の移動量で調整します。これが、バラン
スの取れた舵とりへと発展していくのです。
今月はスキー板を
〝滑らせる〟ことに集中!
134
◎基本の滑りを
ナチュラルスタンスで
◎基本の滑りを
オープンスタンスで
両スキーをぴったりつけるのではなく、自然にそろえたナチュラルスタ
ンスで基本の直滑降をします。目的は基本と同様、滑るスキー板と一
体となり雪面抵抗を感じること。ナチュラルスタンスは、スタンスが広
いと両脚に乗ることがむずかしいコブ斜面、あるいは2本のスキー板
をそろえて滑走面を広くして浮力を出したい深雪などで有効です。
両スキーを腰幅くらいに開いて滑ることで、両スキーの
4本のエッジが効果的に使いやすくなります。また、左右
のバランスも保ちやすくなるため、整地された斜面でのス
ピードに乗った滑りや硬く締まったアイスバーンなど、舵
とりのむずかしい場面で有効なスタンスです。
模範
コブ斜面でのナチュラルスタンス
スキー板をそろえて
エレガントに滑る
オープンスタンスは
アルペンレースの基本スタンス
生徒の滑り
137
スキー
じ、省エネ
外力を感 く!
し
疲れず楽
模範
オープンスタンスでの滑り
生徒の滑り
全体的には良い基本的な滑りです。さらに進行方向への働
きかけがあると、
もっと荷重感のある滑りになります
スーパー
シニア・ ジ!
で
チャレン
少し固くなってしまったのか、目標に向かって滑っていく意識
よりも、直滑降のフォームを維持しようとする滑りになって
います。そのために腰が少し後ろに残り、右脚荷重が強くな
り、左脚が内側に入り、女性に多く見られるX脚が出てしま
っています。リラックスしたポジションから目標に向かって滑
り込んでいくイメージで滑ると良いでしょう
136
Training 3
斜面変化に対応しよう
斜面変化のある場所を選んで直滑降をすること
で、外力をより効果的に感じられるポジションを確
認します。斜面変化でもつねに先へ先へと重心を移
動する意識を持ち、移動を止めずに滑ることで、つ
ねに雪面とのコンタクトが取れます。とくに1〜3に
かけては意識的な早い重心の移動が必要です。斜
面変化にも躊躇しないで勇気を持って滑り込んでい
くことが大切です。
パイロン1
パイロン2
パイロン3
Training 5
抜重要素の少ない
上下動を覚えよう
スーパー
シニア・ ジ!
で
チャレン
スキー
じ、省エネ
外力を感 く!
し
疲れず楽
Training 6
限界スピードを高めよう
パイロンで運動スペースを作り、流れのある運動リズムを
覚えましょう。この運動は上下運動ですが、進行方向に向け
ての働きかけを忘れ、
その場で上方向に伸びきって抜重し、
その場で沈み込んで荷重しようとすると抜重要素が大きく
なり、雪面コンタクトが取れない不安定な滑りになってしま
います。理想的な滑りは、
つねにスキー板が雪面に接してい
ることです。目線はひとつ先のパイロンに置きます。そうす
ることで、
その方向に重心を移動させながら上下動を行なう
ことができるので、
つねに一定に荷重できます。また運動の
流れも途切れず、スムーズな連続運動になります。この流れ
(リズム)は、連続回転のリズムに結びつきます。
1
2
斜度が変化する局面に向かって重心を先行させることを
意識し、スキー板と一緒に移動し続けていきましょう
3
自分の限界スピードを超えると、無意識のうちに守りに入
ってしまうものです。ゲレンデの状態が良く、周囲に人がい
ないときなどを選び、少しずつ自分の限界スピードを高める
練習をすることが大切です。限界スピードを上げることで、
滑りや斜度感覚に余裕が出てきます。ただし、こういったス
ピードトレーニングのなかでこそ、今までに行なった基本を
忘れないようにしてください。目標をかならず設定すること。
そしてその目標に向かって積極的に移動するイメージを持
ち、スキー板と一緒に身体を滑らせていきます。こういう意
識を持つことで、スピードが上がっても、スキー板全体で雪
面をとらえることができ、安定した滑りができるのです。
写真の生徒の滑りは、まさにその基本どおりになっていま
す。このような基本的な働きかけができて初めてスキー板の
性能を活用した舵とりが可能になっていくのです。まずは基
本の直滑降を大切にしてください。
4
Training 4
「ため」
と「はずみ」を覚えるために
直滑降でジャンプ
4
3
2
1
6
5
ギューッ(圧、エネルギーをためる)
直滑降で滑りながらジャンプして、
「ため」と「はずみ」の感覚
を身につけましょう。滑走中のジャンプは、しっかりと踏み蹴れ
る“足場"がないとできません。2では進行方向へ“ポン"と踏み
蹴り、空中で進行方向へスキー板と一緒に移動するイメージで
ジャンプします。そして、着地(3)と同時に進行方向に自分か
ら滑り込んでいくイメージで“ギューッ"と圧、エネルギーをため
(4)、ふたたびジャンプ(5)。トレーニング2で進行方向への働
きかけを身につけたことで得られた外力を効果的に活用する圧
感覚が、ここでの「ため」と「はずみ」につながります。
139
ポンッ(進行方向に踏み蹴る)
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