平成26年度 北海道小学校長会地区活性化支援事業【実践事例レポート】 1 報告地区 :函館地区 2 事例報告学校名 :函館市立神山小学校 3 報告者職・氏名 :校長 筑土 清彦 4 キーワード :望ましい食習慣を目指した食育の在り方 函館市立神山小学校 1 はじめに…本校の概要 本校は函 館市北 部に位 置し,校 区には箱 館戦争時に五稜郭の後 方守 備陣 地として 建設さ れた「 四稜郭」 があり, また, すぐ近く を函館の 「治水 」「生 活用水」の歴史 に深くか かわる亀田川が流れる など ,歴 史と自然 に恵ま れた環 境にある 。平成に 入り新 興住宅地 と し て 地 域 の 人 口 が 増 加 する 中 , 平 成7 年 4 月に 過 密解 消 の た め近 隣 の函 館 市 立 鍛神 小 学 校 か ら 分 離 開 校 し , 今 年 度 20 年 目 を 迎え た 。 児童 数 50 0 名 を 超え た 時期 も あ る が近 年 の 少 子 化 の 影 響 に よ り , 今 年 度, 1 4 学 級3 2 1 名( 特 別支 援 学 級 2) で ある 。 校 舎 は近 代 的 な 3 階 建 て で , 広 い 廊 下 , 木を ふ ん だ んに 使 用 した 教 室, 先 進 的 な教 育 機器 , 暖 房 施設 , 調 理 施設,市街を一望できる屋上スペース等,教育的配慮の行き届いた構造となっている。 2 取組の概要について 昨年 1 2 月, ユ ネ スコ に よ り「 日 本 人の 伝 統 的 な食 文 化」 と し て 和食 が 無形 文 化遺産 に 登 録されたことを受けて,和食が見直されている。 函 館市 では今年 度6月 から月 に1度, 学校給食 に「和 食の 日」を設 け,地 場産食材 を中心 とした和 食給食 を提供し てい る。設定にあたっては,和食給食を通して子どもたちが① 和食のよさや米の食文化を学ぶ②地域の食材のすばらしさ に気づく③食習慣の改善を図る等をねらいとしている。 食育が重視される中,今年度,本校は函館市教育委員会 より 「食 育研究 モデル校 」の指 定を受け ,子ど もの望ま しい 食習慣を定着させ学力向上を図るために食育委員会を中心に組織で食育の研究に取り組んだ。 3 具体的な実践内容 (1) 研究主題… 望ましい食習慣を目指した食育の在り方 ~ 食育と学力の相関に着目して ~ (2) 主題設定にあたって これ まで の 全国学 力 ・学 習状況 調査の 結果か ら,朝食 を毎日 摂っ ている子 どもほ ど,す べての科目で平均正答率が高いとい うことが明らかになっている。 今年 度の 全 国学力 ・ 学習 状況調 査の結 果にお いて,本 校の朝 食摂取 児童と非摂取児童を比較をすると,後者は各 科目 で 20 国語A 国語B 算数A 算数B ポイ ント以上 低いことがわかった。更に,昨 年度実 施したCR 朝食を食べている児童の平均 T学 力検査の 結果においても全学年,同じよ うに各 教科で20 朝食を食べていない児童の平均 点以 上の差が あった。また,全学年の子ども を対象 に実施した 「 食 生 活 ア ン ケ ー ト 」で は , 低 学年 は 9 4% が 朝食 を 摂 っ てい る のに 対 し て ,高 学 年 は 81 % で ,高 学 年 の朝 食 の 摂取 率 が低 くな って いる 。加 えて ,「『 食』 につ いて 興味 や関 心 が あ り , 知 り た い と思 う か 」 とい う 質 問で は ,低 学 年 が 87 % 「知 り た い 」と 答 え て いるのに対し,高学年は33%と低学年の半分以下となっている。 以上のことから,「全国と同様,本校においても朝食摂取率と学力に相関関係が見られ る こと 」「学 年 が進 む につ れ 食 に 対す る 興 味・ 関 心が 薄 れ , 高学 年 の朝 食 摂 取 率の 低 下 が 顕著 で あるこ と」が 判明 した 。 課題解決に向け , 栄養教諭 の専門 性を生か した食に 関する 指導を充実し,「子どもたちの望ましい食習慣」の定着を図り,「日常の授業改善による学 力向 上 」を目 指 し て,「 望 ま しい 食 習 慣の 定 着 を目 指 し た 食育 の 在り方 」を 主 題に据 え 研 究に 着 手 した 。 そ の具 体 目 標と し て,「 朝食摂 取率 を1 00 % にす るこ と」「来 年度 の各 種学力調査等の結果が今年度を上回ること」の2点を設定し,取組を進めることとした。 (3) 食に関する全体計画,年間指導計画の作成 ① 全 体 計画 … 子ど も の望 ま し い 食習 慣 を形 成 す る 上で ,教 育 活動全 体に お いて, 各 教 科と関連づけ,計画的・体系的に指導するために作成した。 ② 年 間 指導 計 画 … 各 教 科に お け る食 に 関 す る指 導 を子 ど も の 発達 段 階に 応 じて計 画 的 に指導するために作成した。 (4) 食に関する指導の充実 家 庭や 地 域 の実 態 , 子ど も の 発達 段 階に 応じ て目 標設 定す る ととも に, 各 教科等 の 指 導の中にも食育の内容を位置付けた。 社会科「食料生産を支える人々」 ◇ 社 会 科 で は ,ゲ ス ト テ ィー チ ャー を 招き , 「昆 布 」につ い ての 学 習を 通し て,食に関する指導を行った。 家庭科「おいしいね 毎日の食事」 ◇家庭科では,函館産の昆布を使用し, み そ 汁 づく り に つ い ての 学 習を 通 し して,食に関する指導を行った。 (5) 栄養教諭による指導の工夫 ① 年間を通してほぼ毎日の給食時間に各学級を訪問し, 配膳指導の後に様々なテーマで講話を実施した。 ② 食に関する指導に関わる各教科等との授業では積極的 に各学級に入り,学級担任とともに食育授業を実施した。 ③ 食への関心を高めるために,調理室前の掲示板を活用 し,月目標や毎日の食材の産地などを紹介した。 (6) 家庭や地域との連携 ① 「学校便り」,「給食便り」,「献立表(一口メモ付き)」等 を配布し,学校の取組を紹介したり,啓発したりして家 庭や地域の理解と協力を得られる情報発信に努めた。 ② 給食試食会や親子料理教室等を実施し,保護者に対し て食事の大切さを伝え るだけでなく,朝食の摂取と学力 の関連について説明した。 (7) 学校給食における「和食の日」の活用 ① 「和食の日」に合 わせて ,月1回「和食便り」を発行し, 子ども・保護者の和食への関心を高めた。 ② 「和食の日」に地 元漁協 ,昆布関係団体等の協力による 出前授業を行い, 実際に 昆布に触れたり,出汁の飲み比 べを行ったりしたことで地場産の食材について興味関心を高め,理解も深めた。 3 終わりに 日々の継続的な食に関する指導に より, 食についての関心が高ま り,給食 の残食が 減った。また,食育推進に向け ,食育 委員会を中 心に様々 な取組を 行ったことで職員間に食育重視 の雰囲 気が醸成さ れた。児 童・保護 者アンケートの結果から食につ いての 関心が以前 より高ま ったとい うことは分かったが,朝食の摂 取率は まだ不十分 なため, 今後も家 庭・地域との連携を一層図って いく必 要がある。
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