PDF - NTT物性科学基礎研究所

ナノ機械共振器の高速振動制御
N11
~機械振動を自在に転送する~
振動エネルギー
振動エネルギー
高いQ値を有する半導体ナノ機械共振器は高感度センサや低消費電力ロジックなど優
れた用途を与える微小電気機械素子として注目されます。しかしながら、高Q値機械共
振器では減衰時間が長いため、一度振動が止まり再び使用可能となるまでに時間を要
します。私たちは、このQ値と繰り返し動作速度のトレードオフ問題を回避する技術とし
て、GaAs連結機械共振器のコヒーレント操作を用いた高速振動制御手法を提案します。
Vd = 1 mVpp
Vp = 1.54 Vpp
図1.周波数領域(中)と時間領域(右)で見た機械共振器(左)の応答の模式図。
共振器2
共振器1
tπ
fp = f2 – f1
自然減衰
πパルス操作
全て共振器2に移る
t
πパルス操作
繰り返しπパルス操作
@ f1
共振器1
共振器サイズ: 100 µm x 34 µm x 0.8 µm
Vd = 1 mVpp
Vp
fd = f1
tπ秒後
→ 共振器1のエネルギーが
共振器2
@ f2
共振器1
Vd
時間
周波数
Vd
Vp
GaAsの圧電効果を用いて2つのナノ機械共振器をオンチップ結合させることに成功し
ました。この結合を時間領域制御(コヒーレント制御)することにより、エネルギーを隣
の共振器へと速やかに移し、本来の減衰時間を待たずして振動を止める新しい手法
を見出しました。本手法は、高Q値機械共振器の高速連続使用を可能とする手法とし
て、センサ応用や演算処理応用など幅広い用途において期待されます。
Vd
fd = f1
Vp
fp = f2 – f1
変調ストップ
→ 共振器1と2の結合オフ
共振器1のエネルギーは
共振器2に移ったまま
Vp = 1.54 Vpp
t
tπ
図2.GaAs連結機械共振器(左上)におけるコヒーレント振動(右)。共振器1と2の差周波
(f2-f1)で周波数変調(左下)すると共振器間に結合が誘起され、エネルギーの往来が生じる。
図3.πパルス操作(左上)を行った際の共振器1の時間応答と自然減衰との比較
(右上)。tπ秒の変調を行うと減衰時間を待たずに共振器を止めることができる。この
πパルス操作により高Q値機械共振器の素早い繰り返し動作が可能となる(右下)。
NTT物性科学基礎研究所
岡本 創 ([email protected])