群馬工業高等専門学校 電子メディア工学科 教授 大手丈夫 [email protected] Tel:027-254-9000 電界電子放出(FE)による電子源は、大 画面で節電型ディスプレイなどに応用でき るため、開発が進んでいる。 一方、プラズマによる表面改質は、ナノ テクノロジーとして、各分野で広く利用さ れている。 また、炭素材料は優れた特性を有し、各 種の新しい有益な応用が可能なため注目さ れている。 プラズマと炭素材料との相互作用を利用 した新技術は、FE(の電子源)の開発に多 大な貢献をする(している)可能性がある。 これに加えて次に示す種々の応用がある。 電気二重層キャパシタの大容量化 燃料電池の高性能化 半導体などの素子の特性向上 など 新技術の概要 炭素材料表面(基板)をプラズマで処理する ことにより材料表面にナノスケールのニードル を、基本的には基板材料と同じ材質で、基板材 料に垂直に、高い密度で生成できる新技術を発 明した。 3 電界電子放出ディスプレイ 構造 他のディスプレイとの比較 ゲート エミッタ 視野角 応答性 その他 カソード電極 有機EL 全方向 高速 フレキシブル 真空レス薄型 FED LCD PDP 全方向 ほぼ全方向 全方向 高速 やや高速 高速 低消費電力 長寿命 大画面化 大画面化 利点 集束電極 e- エミッタ •低消費電力駆動が可能 42インチパネルで100W以下の消費電 力実現可能 •自発光デバイス 自然でダイナミックな画像 •視野角問題がない •CRT技術の展開が可能 •大画面化が可能 4 プラズマによる表面改質の主な利点 z 高いエネルギーを持つイオンの衝突や、反応性イオンおよ びラジカルなどの作用などにより基板表面を活性化できる。 z ドライプロセスである。 z クリーンなプロセスである。 z 短時間で処理できる。 z 材料の前処理がほとんど必要ない。 z 数々の内容の改質および新しい反応の開発が可能である。 z 微細加工が可能である。ナノテクノロジ-の担い手である。 5 プラズマによる針状突起の生成 高周波電源 プラズマは、主に放電 (グロー放電、コロナ放 電、アーク放電)により発 生する。 ブロッキング コンデサ パワー電極 材料 O2 プラズマ アース電極 排気 本手法では、ブロッキ ングコンデンサを有する 平行平板電極型放電装 置で、高周波グロー放電 によりプラズマを発生し て、プラズマ処理を行う。 6 イオン,ラジカル, 電子など 材 料 パワー電極 アース電極 高周波 プラズマ ブロッキング コンデンサ ~ 高周波 電源 シース + VPP 0 - VSE VSB VSP VPP:プラズマポテンシャル VSB:セルフバイアス VSP:パワー電極のシース電圧(=VPP+VSB) VSE:アース電極のシース電圧(=VPP) 平行平板電極型高周波放電の電位分布 7 放電など 気体分子・電子 励起・解離・イオン化など プラズマ 励起分子 イオン ラジカル 中性分子 光 電子 熱 作用 表面反応 衝突 堆積 吸着 エッチン グ クリーニング ラジカル 橋かけ 構造 スパッタ リング 表面 8 断 面 ○ 酸素プラズマ処理前後の材 料(ガラス状炭素)表面のSEM 写真 (入力電力/処理時間) ○ 材料表面に生成したナノサイ ズの針状突起 未処理 150W/10min. 200W/30min. 9 断 面 ○ ガラス状炭素をCO2プラズ マで処理した表面(上) ○ 炭素繊維を酸素プラズマで 処理した表面(下) 200W/20min. 未処理 100W/15min. 10 1mm2当たりに存在する 集合ニードルの数 [×106本] プラズマ処理時間を変化した時の集合ニードルの特性 0.007 -34 0.006 -35 0.005 ln(I/E2) [A/V2] Current density [mA/cm2] 電界電子放出(FE)特性 0.004 0.003 0.002 0 -37 -38 -39 0.001 0 -36 2 4 6 8 10 Electric field [V/um] 12 -40 0.0011 0.0013 0.0015 1/E [V-1] 0.0017 11 ●次世代ディスプレイの製造は、従来の方法においては、 1.複雑な工程が必要で、加熱を要する場合もあり、エネルギ -および製造時間や費用がかなり必要だった。 2.ニ-ドル(電子源)の作成前後の各種処理も要した。 ●今回発明した低温プラズマ(処理)による生成方法は、 1.プラズマ処理の利点を最大限に発揮することにより、非常 に簡単な装置で、ドライプロセスにより、クリ-ンに、短時 間で高性能な電子源を作成することが可能である。 2.外部から加熱する必要がない、省エネルギ-な製造方法で ある。 3.この手法により、最適なFE特性を有する電子源を作るこ とができる。 12 特徴 1.炭素材料からなり、ナノサイズの直径を持つ多数の針状突起 生成物が直立した配列状態になっている表面層を有している。 2.基板との密着性に優れている。 3.少ない工程で製造される。 4.その直径に比べ、長さが非常に長く、生成表面の実質の表面 積も非常に大きくなる。 5.硬く丈夫なニードルが生成できる。 用途 1.ナノサイズで、先端が尖った丈夫なニ-ドルが高密度で形成 されるので、次世代ディスプレイ用電子源として使用できる。 2.少ない消費電力で、材料表面から多量の電子放出ができるた め、節電型で面状態の各種電子源の製造に利用可能である。 3.実質的な表面積の増大化、濡れ性の制御、官能基の付与、表 面物質の結合状態の制御などができるため、蓄電装置等への応 用が考えられる。 13 zディスプレイは、今後あらゆる所で使用され、生産台数も 膨大なものになる。それに伴い、その電子源は使用数が極 めて多くなる。また、すべての産業部門に関係するように なる。 z従来のTVの比べ、消費電力が小さいことから二酸化炭素 排出量の削減などにも貢献でき、環境保全に有用である。 このため、環境関係の産業にも大きな影響をおよぼす。 z炭素材料、酸素ガス、電力が入手でき、簡単な放電装置が あれば、ニ-ドル(電子源)が生成できるので、資源の節 約ができる。 z画面の大型化が可能であるので、大画面を使用する産業も 発展してくる。 14 • 電子源電極の作成に関する基礎的な各種実験・試作が必 要になる。FE特性を最適にするニ-ドルの特性、形状、 耐久性についても詳細に検討する必要がある。 • 本電極と発光体素子とを組み合わせた試作、および実際 に本素子を使用したディスプレイを作成し、その特性 (状態や様子)測定(観察)などのために、企業との連 携が重要になる。 • FEへの応用だけでなく、他の機能性素子等への応用も 開拓する必要がある。 15 z 生産台数が著しく多い。また、大量生産により低価格化ができ る。これらのために、大量製造が可能な生産システムを構築す る必要がある。放電の形態などにも工夫が必要である。市場の 拡大も不可欠である。この場合、各種企業との連携が必要にな る。 z 製造の自動化ができる方法なので、自動製造装置の開発を行 う。 z 超微細ディスプレイの製造も可能である。電子源としての発熱 量も小さい。このことを利用したシステムを開発できる(生物への 応用など)。また、超大型ディスプレイも製造できる。 z 数々の応用が考えられるので、各種の市場の開拓をしなけれ ばならない。 16 発明の名称:電界放出用電子源電極およびその製造方 法ならびに電界放出用電子源電極素子 出 願 番 号:特願2008-143227 出 願 人:独立行政法人 国立高等専門学校機構 発 明 者:大手丈夫ら 発明の名称:表面改質炭素材料および製造方法 出 願 番 号:特願2007-305094 出 願 人:独立行政法人 国立高等専門学校機構 発 明 者:大手丈夫ら 17
© Copyright 2024 ExpyDoc