HA/DR(人道支援・災害救援)における日米協力の現状と今後

1
HA/DR(人道支援・災害救援)における日米協力の現状と今後
本日は、ゲストとして、このようなスピーチの機会を頂き大変光栄です。
我が国は3年前、未曽有の大震災を経験しました。ここにお集まりいただいた各国
からの各種支援や温かい応援は今でも忘れることができません。
改めて感謝申し上げます。
本日は、テーマとして頂いている国内外でのHA/DRにおける日米協力の現状と
今後の取り組みの方向性について発表します。
本論に先立ち、我が国の取り組みについて説明します。
我が国政府は、昨年12月、「国家安全保障戦略(NSS)」及び「平成26年度以
降に係る防衛計画の大綱(25大綱)」を策定しました。
その中で、
「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を基本理念とし、我が国の平和
と安全の維持、アジア太平洋地域の安全保障環境の改善及びグローバルな安全保障環
境の改善という3つを国家安全保障の目標を定め、これを達成するため、6つの戦略
的アプローチをとることとしています。
この「NSS」を踏まえ、今後の我が国の防衛の在り方について指針を示す「25
大綱」を策定し、まずは、我が国自身の能力を拡大・強化するための「統合機動防衛
力」を構築することとしています。
また、防衛力の役割として、アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障
環境の改善を図ることとし、HA/DRを含む国際平和協力活動等の各種活動を積極
的に推進することとしています。
本日は、陸自として積極的に取り組んでいく分野の一つであるHA/DRに焦点を
絞り、説明させて頂きます。
自衛隊は1998年にホンデュラスを襲ったハリケーン災害に際し、初めて国際緊
急援助隊を派遣しました。この際、緊急援助隊の装備品空輸において、米軍基地を使
用しました。本災害に際しては、自衛隊の援助活動に対し、米軍が活動基盤を提供す
るという間接的な協力が行われたといえます。
2010年のハイチにおける地震災害に際して派遣された国際緊急援助隊による活
動においては、在ハイチ米国被災民34名を自衛隊C-130によって空輸する等の
連携が行われています。
このように、アドホックな形ではあるが、日米それぞれの援助活動において初めて
直接的協力がなされたケースといえます。
2
しかし、これらの活動のいずれも、アドホックな形での日米協力でした。
大きな転機となったのが、2011年3月に発生した東日本大震災において米軍が
展開した「トモダチ作戦」です。
この際、日米が初めて共同作戦を展開し、この史上最大の共同作戦を通じ、見出さ
れた数多くの教訓に基づき、日米陸軍種間においてHA/DRを巡る多くの進展がみ
られることとなりました。
最も顕著な進展は、日本国内の災害に際し、日米協力を計画的に実施し得るよう、
日米共同対処要領の策定が推進した点です。
特に、南海トラフ地震に関しては、新たに自衛隊南海トラフ対処計画が策定され、
その中で、日米調整所の設置や調整メカニズムが明記された。
これにより、トモダチ作戦当時「海図のない航海」と揶揄された日米共同作戦は、
平素から明確な「海図」を有することとなりました。
また、在日米陸軍及び在日米海兵隊は、東日本大震災の翌年である2012年から
地方自治体の主催する防災訓練への参加を本格的に開始しています。
このように、HA/DRに際し、アドホックな形で行われてきたこれまでの日米協
力は、トモダチ作戦を境に、日本国内の災害に際して、より計画的に具体的で実効性
ある日米協力を追求する形へと進化を遂げることとなりました。
次に昨年末に実施したフィリピンにおける台風被害への対応における特徴について
説明します。
それは、HA/DRにおけるACSA(物品役務相互提供協定)の初めての適用と
多国間調整におけるヒューマン・ネットワークの発揮です。1996年に締結された
日米物品役務相互提供協定は、国際緊急援助活動における協力については明示的な規
定がなされていません。
そこで、防衛省は2012年に自衛隊法を改正し、国際緊急援助活動における物品
役務の相互提供を可能としました。今般、国際緊急援助活動において日米ACSAが
初めて適用され、米空軍から空輸隊C-130に対して3回にわたる液体酸素の提供
が行われました。
また、多国間調整所がフィリピン軍駐屯地に開設され、合計13ヶ国から代表者が
派遣されました。ここでは、各国の活動状況の共有等が行われました。
3
この多国間調整所には、陸上自衛隊が毎年開催しているアジア太平洋地域多国間協
力プログラム(MCAP)に参加している数名が各国の代表として派遣されていまし
た。
彼らは、既に熱い議論を通じて得られた多国間調整メカニズムのテンプレートなど
を共有していたため、多国間調整所の運営の牽引力としての役割を果たすことができ
ました。
以上見てきたように、それまでアドホックかつ間接的な協力に留まっていたHA/
DRにおける日米協力関係は、徐々に現地における直接的協力へと進化し、トモダチ
作戦を契機に、先ずは日本国内での災害に際して計画的かつ具体的で実効性ある日米
協力を追求する方向性を得ることとなりました。
そして今般のフィリピンにおける活動を経て、日本国内に留まらず、アジア太平洋
地域におけるHA/DRに日米がより緊密に協力して取り組んでいくモメンタムを生
み出したといえます。
」
これまでHA/DR分野で培われてきた日米協力を、より一層アジア太平洋地域の
安定のための協力へと拡大させていくことが必要であり、トモダチ作戦後の日米協力
の進化をさらに発展させるよう、今後も日米が平素においてやれることをしっかり行
っていく所存です。
HA/DRに係るルール作りやルールに基づく訓練・演習は何れも
組んでおくべきものです。
平素から取り
かかる観点から、ARF(ASEAN地域フォーラム)やADMM+(拡大ASE
AN国防相会議)のようなアジア太平洋地域に現存する多国間協力枠組みにおいて協
力し合うことは、平素において地域秩序を形成していく上で極めて有効と言えます。
そのためにも、今次LANPAC(太平洋地域の地上軍)をはじめとする平素から
の軍レベルでの具体的な取り組みを推進させていく所存です。
特に防衛省は、2010年に創設された ADMM+における専門家作業部会に積極
的に取り組んできており、今月から、新たにHA/DR 専門家会合(EWG)の共
同議長国をラオスと共に務めることとなりました。
アジア太平洋地域において軍レベルが主催する多国間協力枠組みも存在するが、A
DMM+がこれらと決定的に異なる点は、軍レベルが主催する多国間協力枠組みにお
けるルール作りが構成国によるボランティアベースの緩やかなものであるのに対し、
ADMM+は国防相会議である故に構成国間で一定の強制力を有するルール作りが可
能な点にあります。
このような枠組みを最大限活用したルール作りが極めて重要です。
4
以上説明したとおり、日米二国間は、SLS(シニアレベルセミナー)等をはじめ
とする各種戦略討議を通じ、アジア太平洋地域の平和と安定に向け、日米協力の更な
る深化に向け努力を重ねています。
今後、2国間のみならず、今次LANPACやMCAP等、軍レベルにおける多国
間での平素からの努力をさらに推進させるとともに、これをさらにADMM+におけ
る国際ルール作りに向けた努力に発展・深化させていく所存です。
今次LANPACは、まさに陸軍種レベルにおける多国間取り組みの一環として極
めて有意義なものです。
平成26年 4月 8日
陸上幕僚長
岩 田
清
文