第61回日本食品科学工学会:DART

DART-MS を用いた気相中揮発性成分の迅速分析方法の開発とフレーバーリ
リース現象検知への適用
(1 エスビー食品(株),2 バイオクロマト(株),3 エーエムアール(株),4(株)島津製作
所)
〇佐川岳人 1,工藤由貴 2,西口隆夫 2,川向孝知 3,塩田晃久 3,渡辺淳 4,星大
海4
【目的】喫食時に感覚として認識する食品の香りには、食物の物理的変化に起
因するフレーバーリリース現象も大きく関与すると考えられるが、その現象は数
秒間という短時間での変化であるため、それを連続的に質量分析計で検知する
事は困難であった。そこで、本研究では、まず喫食時に近い状態で気相中に分
散した揮発性成分を、秒単位という短時間で迅速かつ安定的に測定できる手
法の開発を行った。さらに、その手法を用いて、フレーバーリリース現象の検知・
計測ツールとして適用できる可能性について検証を行った。
【方法】香りを感覚として感じる状況を想定して、大気圧下でのイオン化が可能
でサンプリングからの時間追従性の高い、リアルタイム直接質量分析法(Direct
analysis in real time mass spectrometry analysis: DART-MS analysis)を採用し
た。システムは、イオン源に DART-SVP (IonSense Inc.)を採用し、質量分析計と
しては LCMS-8040 (島津製作所)を使用した。揮発性成分の効率的なイオン
化と質量分析計への取り込みを行うために、揮発成分分析用デバイス(バイオク
ロマト)を用い、分析試料中のとなる揮発性成分は空気を用いて分析用デバイ
スまで移送した。試料としては、クローブとオールスパイスを用いて比較分析を
行った。また、スペアミントのエッセンシャルオイルを添加して作成したモデルチ
ョコレートを用いて、溶解時のフレーバーリリース現象の確認を行った。
【結果】クローブとオールスパイスを測定した結果、それぞれに特異的なマスス
ペクトルが検出され、2 種類のスパイスを識別する事が可能であった。また、マス
スペクトル中のいくつかのシグナルについての帰属推定も可能であった。モデ
ルチョコレート分析では、その溶解過程で、揮発性成分のトータルイオン強度及
びエッセンシャルオイル由来と思われるカルボンのイオン強度の増加現象が確
認できた。本分析法は、揮発性成分の迅速分析法として有効であり、フレーバ
ーリリース現象を計測するための有用な手法となりうることも示唆された。
公益社団法人
日本食品科学工学会
第 61 回大会要旨