金型製作・構造

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金型製作・構造
B−8
通気構造を有する金属光造形金型による生産エネルギー低減効果
Study on production energy reduction with the use of gas permeable mold produced by laser sintering
田 中 耕 平*
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〔Kyushu Institute of Technology〕九州工業大学 楢 原 弘 之
***
是 澤 宏 之
2.実験方法
1.はじめに
金属光造形複合加工法は、金属粉末積層造形と高速
(1) 射出成形機電力測定
切削を融合させた加工法である。造形プロセスは、材
通気性金型は樹脂の流動性向上に効果があるため、
料となる金属粉末を造形ステージ上に供給し、レーザ
射出圧力、樹脂温度にかかわる部分の電力を測定する。
ー光を任意の形状に照射し焼結する。さらに高速切削
よって本実験では射出成形機全体、射出圧力を制御す
により寸法精度を向上させる。以上の工程を繰り返す
るスクリューモータ、樹脂の温度を制御するヒータの
ことで 3 次元形状を製作する(図 1)
。本加工法を用
消費電力をそれぞれ測定する。射出成形機には 3 相
いることで、金型と通気構造を一括しての造形が可能
交流が使用されており、ブロンデルの定理より 2 相
1)
分の電圧と電流の測定で電力の算出が可能である2)。
である 。
通気構造を有する金型は、射出成形時における、金
U 相の電圧、電流をそれぞれ Vu、Iu とし、V 相の電
型内部のガスに起因して発生する成形不良の対策とし
圧、電流をそれぞれ Vv、Iv とすると電力 P は式(1)
て有効である。また、通気部から金型内の空気が排出
となる。
されるため、樹脂の流動性が向上し、低圧力で樹脂の
P=Vu・Iu+Vv・Iv
(1)
射出が可能となる。このことから、通気性金型による
射出成形機の電力測定にはNR−500[㈱キーエンス]
成形サイクルの低エネルギー化が期待されている。本
および高電圧計測ユニットNR−HV04[㈱キーエンス]
研究では、通気性金型による生産エネルギー低減に着
を使用する。図 2 に示すように測定器を配線し、測
目し、通気性金型による射出成形機の消費電力低減の
定値と式
(1)
より 3 相交流の電力を算出する。成形に
効果を調査する。
用いる実験用金型の概要を図 3 に示す。樹脂の充填
が困難な薄肉形状の成形を行うことで通気構造の効果
*
Kohei Tanaka:大学院 情報工学府情報システム専攻、
Hiroyuki Narahara:同 教授、***Hiroshi Koresawa:同 教授
〒820−8502 福岡県飯塚市川津 680−4
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を図る。通気部は入れ子となっており、入れ子を造形
し交換することで、通気構造を有した入れ子と有さな
い入れ子で実験を行うことが可能である。
材料供給
レーザー焼結
スキージ
造形物 金属粉末
レーザー光
切削
エンドミル工具
ガルバノメーター
ミラー
(2) 通気構造試験片
本実験では図 4 に示す、格子構造と低密度焼結構
造が組み合わさった通気構造を用いる。格子構造はエ
ネルギー密度の高いレーザー光で格子状に焼結した構
造形ステージ 材料タンク
実験用金型
図 1 金属光造形加工プロセス
成形品形状
可動型 固定型
エジェクタピン
外形:70mm
薄肉部
U
V
モータ
厚み:0.3mm
外径:30mm
ゲート
ガス
成形品
制御盤
入れ子形状
W
通気構造
通気構造
電流測定(A)電圧測定
(V)
PC
NR-500
(KEYENCE)
図 2 電力測定器配線
044
図 3 実験用金型の概要