ダイカストのゲートからの溶湯射出挙動の 観察とシミュレーションとの比較

特集
ダイカストにおける「可視化」最新技術
事例 4
ダイカストのゲートからの溶湯射出挙動の
観察とシミュレーションとの比較
日産自動車㈱
佐藤
武志*、砂川
美穂**、神戸
洋史***
鋳造解析はコンピュータの発達により、さまざまな
の解析モデルを示す。ゲート断面積が段階的に小さく
用途で活用されている。ダイカスト工法においても同
なる増速タイプを採用し、キャビティの下側から流入
様ではあるが、その精度については実現象の把握が困
させている。本解析結果と可視化実験の射出挙動を比
難なため、十分に検証が行われているとは言えない。
較し、定性的に流動挙動を考察する。
そこで、本研究ではゲートからの溶湯射出挙動に着
図 2 に T 字ランナーと Y 字ランナーを 45°回転
目し、鋳造解析ソフトの精度を評価することを目的と
させた解析モデルを示す。回転前の解析結果と比較し、
した。
解析精度の変化を考察する。図 3 にゲートからの射
解析方法
出角度α、βを考察するための解析モデルを示す。本
モデルはキャビティの横側にゲートを設けている。ゲ
有限差分法をベースとした市販のソフト「AnyCast-
ート厚 A、ゲート幅 B、ランド長さ C、フィード角
ing」を用いて検証を行った。神戸ら1)が実施したダイ
θを変化させたときの射出挙動を可視化実験と比較す
カストにおけるゲートからの溶湯射出挙動を観察した
る。すべての条件でゲート断面積を 40 mm2 と一定
報告を、解析と比較するデータとして用いた。図 1
にしている。
に T 字ランナー、Y 字ランナーおよび 1 本ランナー
*Takeshi Sato、**Miho Sunakawa:パワートレイン生産技
術本部 パワートレイン技術開発試作部 工法開発グループ、
***Hiroshi Kambe:同 エキスパートリーダー
〒230−0053 横浜市鶴見区大黒町 6−1
TEL(050)3751−2054
No.1 T字ランナー No. 2 Y字ランナー No. 3 1本ランナー 横から見た図
図 1 解析モデル
038
鋳造条件、解析手法などを表 1、表 2 に示す。図 1
∼図 3 に示す No.
1∼5 は N=1、それ以外は N=2 で
実測データを取得している。離散手法は有限差分法を
採用し、可変ピッチで解析モデルを作成した。45°回
転させたモデルのみ、製品部を等間隔で分割している。
No. 4 T 字ランナー
No.5 Y 字ランナー
図 2 45°回転させたときの解析モデル