2013 年度 下水道新技術研究所年報 [要約版] 雨天時浸入水に関する解析調査研究(F市) 調査研究年度 2013 年度 浸水対策の推進 (目 的) 分流式下水道の汚水管路においては,雨天時に浸入水が急激に増加することにより,流入量が下 水道施設の能力の余裕を超える場合もあり,汚水管路からの溢水,処理施設の機能低下または機能 停止などの影響が懸念される。このような問題に対処するため,まず雨水浸入箇所を特定する必要 があるが,詳細調査には費用と期間を要する。事例ベースモデリング技術は,過去の偏在性降雨と 処理場流入量の関係を統計的に分析することにより,机上の検討によって,詳細調査を行う箇所を 選定できる程度まで雨水浸入箇所を大まかに絞り込む手法である。 本研究では事例ベースモデリング技術を用いて,F市W処理区を対象とした雨天時浸入箇所の絞 り込みを行うことを目的とする。 (結 果) (1)解析結果 過去 3 年間 7 か月の実績降雨を収集し,調 査区域内の降雨に偏在性があることを利用 して,どの地区に多く雨が降った場合に処理 場の流入量が増加するか,影響度の評価を行 った。雨天時浸入水の評価は,最も影響度の 高い場所を1ランクとし順に5ランクに分 け,さらにその中を3ランクに分けて色分け 表示して雨天時浸入解析マップを作成した。 (図-1) W処理区では,主に処理区の北東部の影響 度が高く,南部及び西部の影響度は低い結果 となった。 (2)代表的な偏在性降雨を用いた検証 代表的な偏在性降雨に対して処理場流入 量の応答を見た結果を図-2 に示す。南西の 降雨では処理場の応答は無いが,北東部での 降雨では応答が見られ,解析の妥当性を確認 できた。 (3)雨天時浸入原因の把握 最も影響度が高くなった G7 ブロック周辺 の地形図を図-3 に示す。G7 ブロックは,小 高い丘陵地に囲まれた谷底にあたる地形に なっており,雨水が集積しやすい地形条件に なっている。また,現地踏査から汚水マンホ ール蓋に穴の空いているものを使用してい る箇所もあり,ここから雨水が浸入している こと等が想定された。 図-1 雨天時浸入水解析マップ 図-2 代表降雨での検証図 (まとめ) 本研究では,雨天時浸入水の発生する候補箇所を大まかに 把握することを目的としており,候補箇所を特定できた。 今後は,詳細調査により具体的箇所の特定と原因を把握 し,対策を進めていく必要があると。 図-3 G7 ブロック周辺の地形図 ※ F市, (公財)日本下水道新技術機構 問い合わせ先:研究第二部 小団扇 浩,伊藤 雄二,佐藤 公俊【03-5228-6598】 キーワード 雨天時浸入水,浸入水対策,浸入水絞込み手法,事例ベースモデリング技術
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