【事例】超音波による金型内アルミニウムの流動・凝固の計測

特集
ダイカストにおける「可視化」最新技術
事例 9
超音波による金型内アルミニウムの
流動・凝固の計測
㈱松村精型
太田
英樹*、茂木
鋳造用金型内を流れる鋳造用アルミニウム(以下、
Al)溶湯の流動および凝固は、シミュレーションを
用いて予測することが可能であるが、その精度は十分
恒太**、松原
功輔***
として、流動・凝固モニタリングの方法を説明する。
図 1 にその模式図を示す。
金型内に液体が充填される前は、境界 A で反射し
とは言いにくい。一方で、溶湯の流動や凝固の具合は、 た超音波 R のみが現れる。液体が金型内部に充填さ
製品品質や寸法精度を左右する重要な要素であり、金
れると、液体を透過して境界 B で反射した超音波 RA
型設計および修正においては必要不可欠な情報である。 が出現する[樹脂の例として文献 1)参照]と考えら
そこで、上記情報を得る方法として超音波を利用でき
れる(流動の計測)
。さらに凝固が進行すると、超音
ないかと考えた。
1)
∼4)
波の音速が早くなり(伝搬時間が変化)
、また振
(超)音波の速度、つまり音速は物質の種類や状態
(液体、固体)によって変化する。この性質を応用し
幅が変化することが報告されている1)、3)(凝固の計測)
。
このような変化を利用した流動・凝固モニタリングを
た超音波は、医療分野における超音波検査(エコー)
、 試みる。
産業分野における非破壊検査などに利用されており、
対象物への超音波の送受信から目的の情報を得ている。
当社では、超音波を用いて金型内を流れる鋳造用
Al の①流動および②凝固を可視化するモニタリング
低融点合金を用いた計測
1.実験方法
上記した挙動を確認する目的で、鋳造用 Al に比べ
システムを開発することを目指しており、本事例では、 て実験が容易である低融点合金を用いて基礎モデル実
そのための基礎実験として、低融点合金や鋳造用 Al
の流動・凝固過程における超音波モニタリング結果に
ついて報告する。
超音波を用いた流動・
凝固モニタリング方法
超音波の送受信を同一のプローブで行う反射法を例
験を行った5)。試験装置を図 2 に示す。
鋳造用金型を簡易的に模擬した試験金型の片面に、
超音波送受信用プローブ(5 MHz)を設置した。試
験金型の空洞部には熱電対を設置し、データロガーを
用いて低融点合金の温度を計測できるようにした。融
点 60℃ の低融点合金を溶解し、54℃ 程度に加熱し
た試験金型内部に流し込み、自然冷却させた。低融点
合金の流入前にパルサーレシーバを用いて反射法によ
*Hideki Oota:金型事業部 金型製造部 設計課 課長
**Kouta Motegi:同部 組立課 主任
***Kousuke Matsubara:同部 設計課
〒933−0951 富山県高岡市長慶寺 805
TEL(0766)
25−1715
058
る超音波の送受信を開始した。
2.計測結果
計測結果例を図 3 に示す。図中の R1 および R2 は、試
験金型内部を 1 回および 2 回反射した超音波をそれぞ