611 綜 説 インタ-フェロンによる肝発癌予防 大 越 章 吾 新潟大学医蘭学総合研究科消化器内科学分野 ( 主任 :青柳 豊教授) Prevention of Hepatocellular Careinoma by Interferon yy Di v i s J ' O no fGa s t T Oe nt e r O l o w mdHe pat o l o w, Gl ・ adL L al pSc hoolo ml p dL k 1 . 1 ] ( ・ mdDp nt { 7 I L b l 。 i p nL , P L <( ) INJ ' L l gL ・ J t , ・ ZUnL ' l ′ P J ・ S i t y ( I ) L I T ・ P t . [ ( ) t ・ : Pn) I :rl L t E 7 kE 7A川 ・ : 1 ( , . I ) Abs t rac t He pa t oc e l l ul a rc a r c i no ma( HCC) i soneo ft hema j orC a us e so fc a nc e r-de a hi t nJ a pa n Ma j or i t yo fHCCpa t i e nt sa r eduet oc hr o ni che p a 徹i sBorCi nf e c t i on.I nt e r i e r oni sapr inc i pa l ant トV i r a la ge ntf orc hr oni cv i r a lhe pa t i t i swhi c hha sva r i e t yo fbi o l o gi c a lf u nc t i ons . Wepa r t i c u1 a r 旦 yf o c us e dont hea nt 卜pr o l i f e r a t i v ef unc dono f呈 nt e r i e r ona nds o ughtt ode t e mi newhe t he rt he . 9pr e v e nt she pa t o c a r c 豆 noge nes 豆 si namo us emode 王whe r eHCC t e mpor la a dmi ni s t r a t i o no fI FN-1 de ve l o pswi t ho utne c r oi n虫a mma t i on. He pa t o c a r c i no ge ni cmi c et ha ta r et r a ns ge n豆 cf o rt hehe pa t ト 旦 )払r3mon t hs , 如) m t i sBv i r usXge ne ( HBx-Tg)we r et r e a t e dw絶hI FN-βo rs a i i ne ( c ont r o 3t o6mon t hso fa ge,a ndt hei nc i de nc eo fHCCwa sde t e r mi ne da t1 8mont hso fa ge . The量 ncide nc eo fHCCwa ss i gni ac an 醇l o we ri nt heI FNβ -t r e a t edmi e et ha nt hec onr s( 0vs5 0% , so bs e Ⅳedi nt hel i v e rof P< 0, 01 ).I n hi bi t 豆 Ono fDNAs ynt he s i si nhe pa t oc yt e sbyI FN19wa HBxITg, it w houta nys i gni f l C a nti l l dt l e t i ono fこ t POp t OS i s . ' nl t l S . t e mpor a 一a dmi ni s t r a t i ono fI FN-i ブ ha sas i gni 鮎a n tpr e ve nt i vee f f e c to nt heoc c ur r e nc eo fHCCi namo us emode l whe r eHCCde ve 1 e pswi t ho uti n aa mma t i on.Theme c ha ni s msa r et hei n hi bi t i ono fDNAs ynt hes i sa ndc e l lc yc l e p r o gr e s s i onofl l e Pa t OL l y t eS . t o l ,i nt e r f e r o n一針 t r a ns ge ni cmo us e, a nt s -pr o l i f e r a t i ve Re ywor ds : He pa t o c e l hda rc a r c i no ma e f f e c t OS HI Re pr i ntr e que s t st o: S ho goO HK Di v i s i o no fGa s t r o e n t e r o l o gya ndHe pa t o l o g y Gr a d u a t eSc ho o l o fMe di c la a ndDe nt a l S c i e n c e s o f Ni i ga t aUn i v e r s i t y 1-7 5 4As a hi ma c hi -d o r i Chuo-ku, Ni i ga t a9 5 卜 81 2 2J a p a n 別刷請求先 :〒9 5 ト 81 2 2 新潟市 中央区旭町 適 1-7 5 4 新潟大学太学院医歯学総合研究科消化器内科学分野 大越 串 . t T , L ・ 6 1 2 新潟 医学会 雑誌 第 1 2 2巻 第 1 1号 平成 2 0年 ( 2 0 0 8 )1 1月 は じめ に 性 感 癌 な どに広 く用 い られ てい る 1 ) 2 ) .I FN は大 まか に 1,抗 ウイル ス作 用 ,2,免疫調節作 用 ,3, 肝細胞癌 は 日本人の癌 の死 因の 4位 を しめ,健 細胞増 殖 抑 制作 用 を有 す る.無論 ,ウイル ス性 肝 康 上の大 きな問題 で あ る.本邦 におけ る肝 細胞 癌 炎の治療 薬 と しては,抗 ウイル ス作 用 によ って ウ の約 9割 は B型 肝 炎 ウ イル ス ( HBV) と C型 肝 イル スを生体 か ら排除す る作問が主で あるが,免疫 HCV) の持 続 感 染 が原 因 で起 こる. 炎 ウ イル ス ( を賦 活 化 した り,細胞増 殖 を抑 制 す る作用 も深 く 従 って これ らの ウイル ス感染 を制圧すれ ばほ とん 病態 の制 御 に関与 しているもの と推測 され る1 ) 2 ) どの肝 細胞 癌 の発症 は防 げ る と考 え られ る.つ ま I FNが 細胞 裏 面の Re c 叩t O rに結 合 す る こ とに り肝細胞癌制圧 の為の " 敬 " は も う既 に見 えて い c e p t o rSubuni tに 結 合 して い る J AK よ っ て , Re るわ けで あ り,その点 で は現 在肝 臓学会等 で妬 ま ( J a r l uSpr o t e i n-t y r os i neki na s e)が会合 体 を形 成 れてい る肝 がん撲滅運動 の道筋 は我 々の眼前 に可 して互 い に リン酸化 し活性 化 され る.活性 化 した 視 領 域 と して広 が って い る とい え る.本 稿 で は, J AK は Re c e p t o rを リン酸 化 す る. リン酸 化 した Re c e p t o rに STAT ( Si gna lt T a nS duc e r sa nda c t i v a t o ro ft r a ns c r i pも i o n) が 結 合 す る と J AK が S TAT を リン酸 化 す る. リン酸 化 され た S TATは複 合体 主 に この ウ イル ス肝炎制圧 の主務 た るイ ンター フ ェロ ンに よ る,肝 発癌 予防効 果 に関す る動物 実験 の成果 につ いて述 べ る. - を形成 して核 に移行 して,転 写 因子 と して機 能 す インJ j- フ _ しロン t c E. P)の生坤学的作 用 と る.それ に よって最終 的 に I SRE ( I FN-st . i l l l l l l a l- 実験計画の あ らま し イン ター フ ェ ロ ン ( I FN) (今後 文中 に お いて e dr e s po ns ee l e me n t ) を有 す る遺伝子群 が活性化 され る 3ト 5 ) 山 方 我 々 は HBV の Ⅹ 遺 伝 子 (HBx) を I型 I FN を さす こ と とす る. ) は肝 Tr a ns ge neに有 す る トラ ンス ジェニ ックマ ウスモ 炎の治療 薬 と してのみ な らず,腎 がんや血液 の悪 デル を有 して い る 6)7)( 図 1).HBxと肝 発 癌 に開 α ない しβの ・ 草徽 HBxTr ansgeni cmouse HBxg ene A 肝細胞癌発生 図 I HBV遺伝 子 とその Ⅹ遺伝子 を持つ トランス ジェニ ックマ ウス 6 1 3 大越 :インタ-フェロンによる肝発癌予防 しては過去に無数の論文が健 に送 り出 されてきた 綿的な肝がんの個数や大 きさの評価 は,I FN の発 が,未だ発がんへの役割に関 しての定説 と呼ばれ pt os i s稚用 を反映す るも 生 した雇癌 に対す る Apo ei o t r opi cな るものはない.現時点ではきぬめて Pl HBxの生物学的作用によって HBV による肝発癌 のであ り,魔境事態の発生 を予防す る系ではない に関与す るもの と考 えられている 8)9).このマウ iと呼 ば スにおいては生後数 か 月よ り,肝 に Foc FN (P) を過 3回 ,3か月のみ投 月のマウスに I 与 して最終 的 な肝 がんの発生率 を比 較 した 10) 2か月を過 ぎ れ る異型性の高い細胞集団が生 じ∴1 我 々が用 いたマ ウスにおいては少 な くとも生後 noma ( 腺腫)や HCC を生ず るようになると Ade nomaや HCCの発生 はないた 1 2カ月までは Ade るようになる. め,この系では,その ような魔境性病変の存在 し FN 投与時 期 もその よ うで ある ない とき (人の I そ こで,この マ ウスモデル を用 いて,実際 に I FN 授与によって肝発癌が予防 され るか否かにつ いての実験 を勘案 した 1 0 ) このマウスにおける肝発癌 には免疫反応の関与 はない.つ まり,肝 に,人の慢性肝炎 に見 られ る と考 えられ る.以上の観点か ら我 々は,生後 3か FN投与 を行 なった. と考 えられ るため)に I 我 々はこのマウスに対 して生後 3M か ら 6 Mま FN-βを 5 0 0 0 I U/ g体重の でに限定 して週 3回,I 量 で授与 し,生食 を授与 した群 と最終 的 な HCC ような炎症性細胞浸潤 などは観察 されない.また, の発生頻度 につ いて検討 した ( 図れ このマ ウスに HBV が感染 して ウイル ス増殖 を行 8M の時点 における HCCの発生頻度は I FN 生後 1 その結果, っているわけで もない.HBx遺伝子 とい う単一の 非授 与群 で 5 /1 0( 5 0%)であったが,I FN投与 遺伝子の健用 に起 因 して,おそ らく Mul t i s t e pに 遺伝子異常が積み重 なって最終的に肝細胞癌 とい /1 5( 0%) と有意 に ( P〈 O . 01 )I FN授 群 では 0 与群 において HCCの発生 が抑制 され た ( 表1 ). う表現型 を生み出 しているもの と考 えられ る.過 去の実験成績 よりこのマウス肝 においては,正常 つ まり,通常肝 に HCCやその前段階の Adenoma の観察 され ない時期 に I FN を一過性 に授与 した dUの取 り込み マウス肝に比 し肝細胞 における Br だけで HCCの発生予防 がな され ることがわかっ pt os i sが先進 していることが示 されている や Apo l l ) .このような肝細胞の細胞回転の先進が最終的 HCVの完全排除 )が得 られな 行 った場合著効 ( FN 治療 を た.この実験結果 は C型慢性肝 炎 に I に遺伝子異常の蓄積 を促進 し肝発癌 にいたってい くて もある程度 HCCの発生頻度 が抑制 され ると FN ると考 えられ る.従 って このマウスを用いた 王 い う臨床 デ ータを裏打 ちす る もので ある 1隼 ま の発癌予防実験 は,先 に述べた I FN の代義的な 3 たI FN 投与群 で は非授与群 に比 して肝 の組織学 つの作用の うち,HBx遺伝子の発現抑制 に伴 った 的異型度の進行程度が緩やかになることもわかっ 細胞増殖抑制作用が最終的に肝 がんの発生 を減 ら た つ まり,I FN 非投与群のマウス肝 においては, すか という問いを検証す るものである. Pl eomor phys m) や, 肝 細胞 の大 小不 同 な どの ( Pi knot i eNuc l e usなどの組織異型 が経時的に進行 また,第二の点 としてマウス肝発癌モデル を用 FN による肝発癌 予防 に関す る実験 は過去 いた I してい くが,I FN を授与 した肝ではそれ らの組織 翼 型 の レベル が抑 制 され るこ とが観 察 され た. に も報告が ある.あるゲル-プは G-Mycを高発 現す る トランスジェニ ックマウスに生後直後 より I FN 投与 マウスでは今回の実験 では HCCの発生 FN の継続投与 を行 い結果的 に一部の群 に 生涯 I nomaの発生 は観 察 は観 察 され なか ったが,Ade おいてのみ肝 がんの発生 ( 個数および大 きさ)杏 され た こと ( 義 損,組織異型 の レベルの進行 は FN の細胞増殖 抑 制 した と報告 してい る 12)13). I I FN 投与群 に比 し緩やかではあるが起 こってい く 抑 制 僅 用 に は 2つ あ り,細 胞 周 期 抑 制 館 周 と こ とを考 え ると,今回の HCC発生 予防効 果 は, Apopt os i s促進作用である.後者の 軸 opt os i s促進 件用 は抗腺癌細胞効果 が主 な ものである.マウス 完全 な ものではな く,HCCが発生 す る素地 で あ に生涯ずっと 王 FN を授与 し続 けるのであれば,最 る肝細胞の発癌 へ の遺伝子変化 を抑制 し,HCC 無論 その発生 をシャッ トアウ トして しまうような 6 1 4 新潟医学 会雑誌 第1 2 2巻 第1 1号 平成 2 0年 は0 0 8)l ュ月 通常の HCC発生時期 HBxt r ans geni cmous e 0 好事 3 6 1 12 18M 甘 Sacr i f i ce Cont r ol( 生食) ∩=10 l FN-B ( 5, 000U /gr am) 3t i mes /week 匿聖 n-15 図 2 実験 ( I FN投与)スケジュール 表l I FN-∫ ?群 とコン トロ-ル 性 食)群 における肝臓癌の発生頻度 Adenoma HCC コントロール 頼=10,M: ドニ3: 7) 2( 20%) 5( 50%) l FN-β ( n=15,M: F=8: 7) 2そ 13%) 0( 0%) ' ':P<0. 01,Ex ac tFi s c hert es t の発生 を遅 延 させ てい る結 果 で あ る と考 え られ た. Cや Adenomaなどの腺癌性病変 では,まだ HC 3か ら 6 考 えられない.しか しなが ら,この時期 ( か 剛 のマ ウス肝 には最終 的に Ad e no maや HCC に進 展 す る極 く初 期 の病 変 ( Foc i ) が存 在 し, FN を授 与 して最 終 的 に の 出 現 の な い時 期 に I 王 FN が早 めにそれ らの病変 を Apo p t os i s誘導効果 HCCの発生予防効果 が観 察 され た とい う実験 事 に よって排 除 して しま うため に,HC Cの発生 予 実 に対 して次 にどの よ うなアプロ-チ をすべ きで 防効果 が得 られ たのか もしれない.繰 り返すが こ あろ うか ? のマウス肝 には細胞浸潤 などの肝炎の兆候 は存在 王 FN には Apo p t os i s誘導効果 が あ り,殺腫癌細 せず,また HBVウイル スその もの が増殖す るモ 胞効果 を有す ることで広 く悪性疾患の治療 に使わ FN の細胞増殖抑制効果 と デルで もな く,純粋 に I FN一 声は I FN-aに比 し強 い れ て い る.特 に I Apo p t o s i s誘導効果 があるとす る報告 が多い 15)抽 肝 発癌予防効 果 の関係 をア ッセ イす る系で ある. そ こで この効果 を細胞周期抑 制効果 ( DNAの取 しか しなが ら,この実験 モデルでは腺癌性病変の o pt os i s誘導効果の 2つ にわけ り込み阻害 ) と Ap FN を授 与 してい るため,抗感癌効果 ない時期 に I HBx-Tgマ ウス肝 ( I nⅥv o) とマ ウスよ り得 ら C発生予防効果 に結びつ いた とい うことは が HC I mVi Wo)の両方 におい れ た初代肝細胞 培養 系 ( 6 1 5 大越 :インタ-フェロンによる肝発癌予防 てI FN一声によるこれ らの効果の誘導 を検討 した. その繭に,予備 実験 と して人 の培 養肝 細胞 に 察 され た が有 意 差 は認 め られ なか った. ( 図 3, お ける I FN19の細胞増殖効果の ア ッセイを行 っ た 油 .過去 に I FN を用 い た肝癌 培養細胞株 に対 更 に,この 王 nVi voの効 果 を 王 nⅥt r oにて確認 す るため,HBx-Tgマ ウス門脈 に EGT先 コ ラジ す る細胞増殖抑制効果の ア ッセイ結果 は無数 にあ FN-βの ェネ-スを注入 し,初代肝細胞 を得 て,王 る.しか し,我 々の実験 の標的 はあ くまで癌 では 効果 を検討 した く 図 3,I nⅥt r o) .王 FN-β投与 に dU 細 有意 に減少 した よって有意 に Br な く,正常 ほ だ感化 していない とい う意味 で) 下.I nVi v o) 陽 性 胞 数 の肝 細 胞 に対 す る 王 FN の効 果 で あ る.従 って , 一方 ( 上),TUNEL陽性細胞 r ma lHe pa t oe y t eCe l lLi neと誼われて い 我々は No 差 は認め られなかった ( 下). 数 が は 上 昇 したが有意 る WRi 1 -68 ( 正 常 の入肝細胞 で あれば数 回の分 これ らの結果 によ り,HBxITgマ ウスを用いた 裂で終 わって しまうため,幼弱 な肝 か ら得 られた またま株化 した,つ まり " 痩"由来 ではない とい I nⅥvoと I nVi t r oの実験 において I FN-βは肝細 胞 における有意 な DNAの合成抑制効果 を示 した う意味で No r ma lとい う形容詞 がつ いていると考 pt os i s誘導効果 は有意ではなかった.従 っ が,Apo えられ る) とい う Ce l lLi neを柳 、 てI FN-βの細 l l 胞増殖効果の ア ッセイを行 った.結果,この Ce FN一 郎 まDos eDe pe nde ntに細 胞 Li neに対 して 王 増殖抑制効果 を示 した.次 にこの生細胞数の減少 FN-βによる肝発癌予防効果 は Apopt os i s誘 て,I 導効果 よ りむ しろ I FN-βの肝細胞増殖抑制効果 が主であることがわかった. この マ ウ スは HBx遺伝子 の働 きに よって肝 発 が Apo p t os i s誘導 によるか Ce l lCyc l eの抑制 によ 癌 を引 き起 こす モ デル で あ る.そ こで 我 々 は, s pa s e3の As s a yに よ る ものか検 討 を行 った.Ca I FN-βが HBx遺伝子の発現抑制効果 があるか否 か を検討 したすHBx-Tgマ ウスより得 られ た初代 FN-i I 3による有 意 な Apopt os i s って検 討 したが I FN-βの 誘導効 果 は観 察 され なか った.次 に I Ce l lCyc l eに対す る影響 を FACSを用いて検 討 し た.I FN を培 養 土 渦 中 に加 え な い 群 で は Ce l l Cyc l eの進行 に伴 って細胞 が 2 nか ら4mに移動 し, 6時 間複 には一 部 の細胞 が再 び 2 nに移行 してい FN-β を加 え,RNA を抽 出 し, 培養肝細胞 に Ⅰ Rea lTi me-RT-PCRによ)て HBxmRNA( / )レベ ル に変化 が見 られ るか否 か検討 したが,予想 に反 して I FN に よって も HBxm RNAの レベ ルに 打意 な減少 は観察 されなかった. た ( 細胞 が分裂 した ことを示す)那,I FN投与 で I FN が明 らか に HCCの発生予防効栄 を着 す る 多 くの細胞 が S期 に留 まっていた.つ ま り,I FN に もかかわ らず,この マ ウ封 こおけ る HCCの発 によって S期 に細胞 が停止 す る 生 の Dr iv ingf or c eた る HBxの発現 に影響 を与 え なかった ことの解釈 は困難 で ある.しか しなが ら ( S期 ブロ ック) ことが示 された.結果 と して,I FN-βの細胞増殖 l lLi neを用 い た検 討 で は, 抑 制 効 果 は, この Ce Apopt os i s誘導 効 果 ではな く,細 胞周期停止効 果 によると考 え られた. nVi voに お け る 次 に ,HBx-Tgを 用 い て I HBxは非常 に多様 な作 問 を有 す る遺伝子 で あ り, HBxの働 きか ら最終 的 に細胞増殖 克進 にいた る シグナル 伝 達 経 路 の 中 で I FN が よ り Down- St r e a m の事象 を抑制 した と考 えるべ きで あろ う. I FN19の肝細胞への効栄 を検討 した 10). ( 図 3) 先 に述 べ た よ うに I FN の効 果 発現 には STAT と Br dU を飲水 に まぜ経 口投与 し,5日間 I FN-βを 授与 し,肝細胞 における BT dUの取 り込 み を免疫 呼 ばれ る転写 因子の リン酸化 が重要である.我 々 組織淡色 によって検討 した.結果 ,I FN19投与群 では Br dU取 り込み細胞 が有意 に少 ないことがわ しろ細胞増殖促進の方 向 に働 く S l 甘Ⅰ 3に着 目 し, は中で も,主 に細胞増殖 抑 制 に働 く S TATlとむ 組織切片 を TUNEL染色 によって陽性細胞 を検討 I FN-βがその リン酸化 の程度 に影響 を及 ぼすか 否かについて,HBx-Tg由来の初代肝細胞培養お よび先述の WRL-68の両方の系で,We s t e r nBl ot FN一 声授与群では Apo pt os i sの克進 が観 す ると,王 法 を用いて検討 した 輔.結果,両方の細胞 におい かった ( 図 3,上 ,王 nVi vo).しか しなが ら,同 じ 61 6 新潟 医学会雑誌 第 ま 2 2巻 第 1 1号 平成 2 0年 は0 0 8 )l ュ月 A.I FN-β投与による肝細胞 におけるDNA合成への岩響 S ニ aDPal aqE f HOJ aq∈nua L J 一 I nVi vo l nVi t r o (% ) xapu芯 u!p qE!1 Cor l t I FN Cont I F N B.I FN-β投与による肝細胞におけるApoptosi sへの影響 I nVi t r o l nVi vo 0 i i i i i i r r ︻ ︻r % () X a p u 芯u ! pq E 2 11山 北 P= 0. 1 6 5 0 N n _( . 50 0 5 ニ aDPar aqE = 一 a NnJ一 0L q∈ コこ aut ・ ・ ・ ・1 山 P= 0. 27 0 Con t I FN Cor l t I FN 図: i てI FN-1 管に よ って STATlの有 意 な リン酸 化 は 発 癌 抑 制 に 結 び つ い た と考 え られ る) に は 確 認 され たが,リン酸 化 S T貯r 3の克進 は観 察 さ ST ATlの リン酸 化 が Ke yEv e n tで あ るこ とが予 れ なか った・本業験 の結果 よ り I FN-βに よって もた らされ る肝細胞増殖抑制効果 ( 結果 と して肝 測 され た.では,何故 王 FN-i M こよって もた らさ れた STA Tlの リン酸化が , 肝 細 胞 の 増 殖 抑 制 ,ひ 6 1 7 大越 :インタ-フェロンによる肝発癌予防 いて は肝発癌予防 に結びつ いたか を解 明す ること 文 献 が本研究の今後の課題 で あると考 えてい る. 最後 に,本研究 の臨床 的意義 は どの よ うな とこ ろに存在す るので あろ うか ?近年 ,ウ イル ス性肝 炎 の治療 は飛躍 的 に進歩 してい る.B型慢性肝 炎 に対 して は従 来 の イ ンター フ ェ ロ ン治 療 に加 え, 経 口の抗 ウイル ス薬 が承認 され広 く用 い られてい FN で あ る.現 る.一方 ,C型慢 性 肝 炎 の主役 は 王 在 は,半減 期 が長 く 1週 間 に 1回の投 与 で よいペ グ イ ンター フェロ ン製剤 が主 役 で あ る.また,経 口 の抗 ウ イル ス薬 の リバ ビ リン との併 用 に よ っ b,高 ウイル ス量 の難治性 管,いわゆ る遺伝子型 1 C型慢 性月 干炎 で も約半数近 くに またその他 の症例 の約 8割 に著 効 が得 られ る よ うに な って きて い FN 無効例 ら. しか しなが ら,まだ多 くの症例 は I つ ま り HCVの駆 除 が達成 で きない例 と して存 在 してい る.また,最 近 C型肝 がん及び その高危険 群 に属す る愚者 は高齢化 してい る.言 い換 えれ ば, これ らの患者 は糖尿病 や高血圧 な どの合併症 を有 し,また進行 した肝病変 の ため血小 板 の数値 が低 FN 治療 を施 行 で きない例 が多 い. 下 し本格 的 な I 昨 今 で は,これ らの症例 に対 して,いわ ゆ る根 治 を 目指 した治療 で はな く,肝 発癌抑 制 を主眼 にお FN の 少 量 長 期 療 法 が行 われ る例 が 多 くな いた I って きてお り,厚 労 省の ガイ ドライ ンで も推奨 さ れ て い る. しか しなが ら,ウイル ス を根絶 しな く て も発癌抑制 を 目指 す とい う上記 の理 論 的根拠 は I FN に よ って ALTの低 下 が得 られ るか らとい う もの で あ り,で は,AL T を低 下 させ る他 の肝庇 護 FN の肝 発 癌 抑 制 効 果 の優越 性 薬 に比 較 しての I FN 自体 の肝欄胞増 は不明確 で あった.本研究 は 王 殖抑制効果 が肝発癌予防 に結 びつ くことを初 めて 示 した もので あ り,その意味 で我 々臨床 家 が肝 発 FN 治 療 の正 当性 に理 論 的根 拠 癌 抑 制 に向 けた I を与 える もので あ る と確信 してい る. 謝 辞 終 りに,本研究 は青柳 豊教授の もと山崎和秀,鈴木 健 太 ら新潟大学第三 内科 の諸先 生方 の手 によってな さ れ た ものであ り謝辞 を表 します. 1)Ta gl i ( T d ' e n・ iP,Ca T ・ a gl i aM,Budi l l onA.Ma n・ aM. Vi t a l e G.Vi s e o n l iC,Ma s c i a r iS,Ta s s one P, Abbr uz z e s eAa ndVe n ut aS:Ne w pha r ma c o ki n e t i ca ndp ha r ma c o d y na mi ct oo l sf o l -i nt e r f e r ona l p ha( I FN-a l p ha)t r e a t mel l tO fhⅢ1 1 a nC a n c e r . Ca nc e rl mmuno II mmuno t he r5 4: 1-1 0, 2 0 0 5 2)pf e f f e r LM, Di na r e l l o CA, He r be ml a n RB, Wi 1 1 i a msBR, Bo r de nEC, Bo r de nsR, Wa l暮 e rMR, Na ga bhus ha n TL,Tr o t t a PP a nd Pe s 沈a S: Bi o l o ie g a l p r o p e l l i e so fl ・ e L I Ombi n a . nta l p ha-i nt e r f e r o ns : 鐘 o t ha nni v e r s a r yo ft hed i s c o v e r yO fi n t e rf e r o ns . Ca nc e rRe s5 8 : 2 4 8 9-2 4 9 9 , 1 9 9 8. 3)ms s e 毎v aT,Bha t t a c ha r y aS,Br a uns t e i nJa nd Sc hi ndl e rCW:Si gna l i n gt hr o 噸ht heJ Ah US TAT ur eC ha 豆 I e I 曙e S . pa t hwa y,r e c e nta d v a nc e sa nd免ユt Ge n e2 8 5: 1-2 4 , 2 0 0 2 . 4)St a r kGR,he r rI M,Wi l l i a l l l SBR.Si l v e l l l l a nRH . a ndS c hr e 豆 be rRD: Ho wc e l l sr e s po ndt oi nt e r f e r, 如 nu, Re v. Bi o c he m6 7 : 2 2 7-2 6 4, 1 9 9 8. ons 5)pl a t a ni a sLC: Me c ha ni s mso ft yp e一ト a ndt y peu-i nt e l l t l r On-me di a t e ds i gna l l i n g.Na tRe v l mmuno15 : 3 7 5-3 8 6 , 2 0 0 5 . 6)mmCM, Ko i keK,Sa i t oI , Mi ya mur aTa ndJ a yG: HBxge neo fhe p a t はsBv i msi nduc e sl i v e rc a nc e ri nt r a ns ge ni cmi c e.Na t t l r e3 51 :31 7-3 2 0, 1 9 91. 7)Ko i keK,Mo r i yaa,I i noS, Yo t s u ya na giH,藍ndo gl l-l e v e l Y.Mi y a n l ur aT a l l dKur o ka waK:Hi e xpr e s s i ono fl l e P a t i t i sB v i msHBxge I l ea nd he p a t o c a r c i no ge ne s i s i n t r a ns ge ni c m ic e. He p a t o l o gy1 9: 81 0-81 9. 1 9 9 4. n e koSa ndMul ・ a ka l l l iS: 8)Ta n gH,Oi s hiN,Ka Mo l e c ul a rf u nc t i o nsa ndbi o l o gi c a lr o l e so fhe pat i t i sBv i r usxp r o t e i n.Ca nc e rS e i9 7 :9 7 7-98 3 , 2 0 0 6 . 91keAT a ndL eeCG:On e o ge l l e S i sa l l dt r a nsf or in m gv ir us e s :t hehe p a t i t i sBv ir usa ndhe pal l ee t i o p a t I 1 0 ge I l i cl i r l k. t o c e l l u l a r c a r e i l l O 1 1 1 a- t Fr o ntBi os c i1 2: 2 3 4-2 4 5 , 2 0 0 7 . ukiK,Ohko s hiS,Y弧O M, 1 0)Ya ma z a kiK,Suz Kur i t a S,Ao kiYH,To ba K、Taka l l l ur a MA, Ya 1 1 1 a gi waS.Ma t s udaY,Ao y a giYISo gaK, 6 1 8 新潟医学会雑誌 第1 2 2巻 第1 1号 St l i ba s a kiKa n dAo y a giY:Te n l P O l ・ a lt . l ・ e a t me nt wt i hi n t e r f e r o n-be t ap t でV e n t S he p a t o L l e l l ul a l ・ c a t でi no mai nhe p a t i t _ i sBv i usXge r n et r a ns gp ni L l mi c e L . ∫He p a t o 1 4 8: 2 5 5-2 6 5 , 2 0 0 7 . r i y al く .Yo t s u y a n a giH,Shi nt a niY, l l )Ko i keK,Mo F頑eH, Ts ut s umi Ta nd氾mur aS: Co mpe ns a t o r y a po p t o s i si np r e ne o p l a s t i el i v e ro fat r a ns ge ni c mo us e mo d e lf o l ・V i r a lhe p a t o c a r c i no ge ne s i s . t1 3 4: 1 81-1 8 6 , 1 9 9 8 . Ca nc e rLef i s o nnasM. 1 2)Me L r l eP,Cl l e V a l l i e rM,LevyR,Ma Te r r a di l 豆 os0,SiAhme dSN,Tr e poC,Bue ndi a e p OL:Pr e l i mi na r yr e s ul t so f MAa ndⅥv i t S -TT i nt e l i e r o n-a l p hat he r a p yo nwo o dc huc khe pa t i t i s v i uS-i r nduc e d he pa t o e a r e i n咽e ne S 豆 S :po s s i bl e be ne 伽i nf e ma l et r a ns ge ni cm ic e.JHe pa t o 豆3 4 : 5 6 2-5 6 9 , 2 0 01 . ud L,k&a nc o i sL,Che v a l l i e r 1 3)Me r l e P,B朋 Ta M,Gue T r e tS,Ma i s o nna sM,Bo r de sI ,Sa weTr a i nI .Tr e L pOCa ndVi it v s ki -Tt ・ e p ol J :Lon gt e nl lhi gh-dos ei l l t e r f t n) n-a l l ) hat l l e r a P ydt , l i l y S k i 平成 2 0年 緩0 0 8 )l a月 t l e S i si l 一 He p a dn a ir v uS-r e l a t e dhe p a t o r a r L i n oge X/ my ct T a nS ge ni cmi c e.Onc 昭e ne2 2:2 7 6 22 7 71 . Z O O S . 1 4)So gaK,S hi ba s a kiK a ndAo y a giY:Eだe c to f i nt e r ぬr o no n豆 nc i de nc eo fhe p a も o c e l l ul a rc a r c i no ma i n pa t i e nt s wi t hC hr oni c he p a t i t i s C. He p a t o ga s t r o e n t e r o l o g y5 2: 1 ま 5 4-1 1 5 8, 2 0 0 5 , ・f n .He t t 7 J O gP J . 1 51J o l l t l STG,Ma c ka yI R,Ca l l i s t e t 1 ) e v Hl i s hI Ua ndl J i nni l neAW:Ant i pr o l i f t l r a t i v p p ot e nc i e so fi n t e r f e r o nso nme l a nomac e l ll i ne s t a, a ndxe no gr a 鮎: hi ghe re f B c a e yo fi nt e T f e r o nbe JNa t lCa nc e rl ns を8 4: 1 1 8 5-1 1 9 0 ,1 9 9 2 . 1 6)Da md i ns ur e nB,Na ga noH,Wa daH,Ro ndoM, 0も a H, Na ka mur a M, Noda T, Na t s 喝 J , Ya ma mo t oH,Do kiK,Ume s hi t aK,Do noKa nd Mo nde nM: St r o n ge rgr o wt h-i nhi bi t or ye f f e c to f i nt e r f e r o n( 王 FNト be t ac o mpa r e dt oI FN-a l p ha i sme di a t e dbyl I T Ns i gna l i n gI ) a t hwa yi nhe p a t oar c a r e i no maC e l l s . 王 nH One o 13 0: 2 0巨 2 0 8 , c e l l ul 2 0 0 7 .
© Copyright 2025 ExpyDoc