Kwansei Gakuin University Repository Title ジデヒドロイソベンゾフランの効率的な発生法の開発とその応用 Author(s) 杉本, 遼 Citation 関西学院大学 Issue Date URL http://hdl.handle.net/10236/12350 Right http://kgur.kawansei.ac.jp/dspace 2013 年度 修士論文要旨 ジデヒドロイソベンゾフランの効率的な発生法の開発とその応用 関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 羽村研究室 杉本 遼 ジデヒドロイソベンゾフラン 1 は,環内にクムレン構造を有し,その特徴 的なπ電子構造に由来する独特の反応性を秘めている。中でも,この共役系 O 分子は同一分子内に電子受容部位と電子供与部位とを併せ持つことから, 1 様々な合成反応への利用が期待される。特に,ドナー・アクセプター型の環形成反応によ って反応の連続性が確保できれば,多環式構造の迅速合成が可能となる。しかし,これま でこの分子に関する報告例はなく,その発生法や反応性に関する知見は皆無であった。そ こで本修士課程研究では,ジデヒドロイソベンゾフランの効率的な発生法の開拓と新規π 共役を目的として,検討を行った。 1.ジデヒドロイソベンゾフランの効率的な発生法の開発 まず初めに,ジブロモジフェニルイソベンゾフラン 2 をモデル基質として,ジデヒドロ イソベンゾフランの発生を試みた。すなわち,基質 2 とジフルオロジフェニルイソベンゾ フラン 3 の共存下,–15 ºC で n–BuLi を作用させたところ,ジデヒドロイソベンゾフラン 4 の発生とともに環付加反応が進行し,低収率ながら環付加体 5 を得ることができた。そこ で,溶媒,温度等,反応条件を変えて検討した結果,クロロベンゼン中,–30 ºC で PhLi を 作用させるという条件で,目的とする化合物 5 が収率 38%で得られることが分った。 Ph Br O Br Ph 2 Ph Ph chlorobenzene O O –30 °C → r.t. Ph 38% Ph Ph F Ph Ph O O Ph Ph F PhLi F F 4 3 F 5 O F Ph 3 また,この環付加反応では,捕捉剤を変えることにより,対応する環付加体を得ること ができた。例えば,ジメチルフラン 6 を捕捉剤として用いて同様の条件で反応を試みたと ころ,環付加体 7 が収率 42%で得られた。 さらに,イソベンゾフラン骨格に四つのフェニル基を持つ立体的に嵩高いイソベンゾフ ラン 8 を基質に用いることも可能であった。すなわち,ジフルオロジフェニルイソベンゾ フラン 3 を捕捉剤として用いて反応を試みたところ,きれいに環付加反応が進行し,環付 加体 9 が収率 75%で得られた。 Me Ph O O F Me Ph Ph O O Ph O + chlorobenzene Ph F Br 6 Me Ph Ph Ph Ph Ph Ph Br Ph Ph 5 F Ph F O O O O O Br Ph O 38% 2 Ph O F –30 °C → r.t. Ph 42% 7 Ph chlorobenzene Br –30 °C → r.t. Me PhLi Ph 3 F Ph Ph Ph Ph Ph Ph Ph 9 8 2.連続的環付加反応を利用した多環式骨格の構築および新規π共役系分子の合成 上記の反応で得られる生成物は,ジフェニルイソベンゾフラン部位を有していることか ら,これをアクセプターとする環の伸長が期待できる。そこで,さらなる環付加反応を試 みた。すなわち,これまで同様の条件で,イソベンゾフラン 2 よりジデヒドロイソベンゾ フラン 4 を発生させ,5 との環付加反応を試みたところ,高度に縮環された化合物 10 を得 ることができた。次に,化合物 10 の芳香族化を行うため,三臭化アルミニウムとヨウ化 セシウムを作用させた。その結果,目的とするイソペンタセノフラン 11 は得られたもの の,この化合物は空気中で速やかに酸化され,ジケトン体 12 や過酸化体 13 が生じる結果 となった。 Ph F O O Ph Ph Br O Ph Ph Ph Ph O O O Ph Ph Ph O CHCl3, r.t. F Ph Ph 10 5 Ph Ph Ph Ph Ph F F Ph Ph Ph F O O O Ph Ph 11 Ph O O Ph F AlBr3, CsI F 51% Ph Ph F , n-BuLi THF, –15 ºC F Ph Ph Br 2 Ph 12 F Ph 13 これに対して,ジデヒドロイソベンゾチオフェンを発生させて環付加反応を行った後, 芳香族化を行うことによりイソアントラセノチオフェン 15 が合成できることが分った。 すなわち,2 より誘導可能なイソベンゾチオフェン 14 を用いて,これまで同様の条件で環 付加反応と芳香族化を行うことにより,低収率ながら 15 を得ることができた。 Ph F O Ph Br O Br Ph 2 Lawesson's Reagent CH2Cl2 , r.t. 84% Ph Br S Br Ph 14 Ph F Ph Ph chlorobenzene, –30 ºC 48% Ph F , PhLi S O Ph Ph F AlBr3, CsI CHCl3 , r.t. 14% Ph F S F Ph Ph 15
© Copyright 2024 ExpyDoc