Yakugyo Jiho 薬業時報 平成 26 年 3 月 25 日発行(毎月 10・25 日発行) ISSN 1883-5678 2014 3/25 NO.120 「MRの本音」 ―活動環境の変化とこれから― 12 特集 覆面座談会 「MRの本音」 2014 3.25 NO.120 ―活動環境の変化とこれから― 接待自粛や訪問規制の強化に加え新薬の早期立ち上げによる競合激化などで、 変貌が著しい MR の営業環境。現場で活動する彼らが日々感じることは。 3 Director's voice 長谷川 閑史 武田薬品工業社長 6 TREND ・各社で明確になるMR配置方針 武田は増員、サノフィは大幅減 ・問題解決の鍵は「品質管理」 ダブルソース化だけでは不十分 ・特許切れ前の新薬を一部担当 LCM の強化につながるか ・【話題のひとに一問一答】SBI バイオテック社長 CEO 松森 浩士 氏 ・変貌を遂げるくすりの聖地「道修町」 イノベーション発信、歴史遺産の顔も 11 退屈しない診療報酬の話〈99〉 工藤高 「7対1」を医療費高騰のA級戦犯扱い 18 TOPIC 【2014 年度薬価改定】 長期収載品全体の7割が新ルールで引き下げ 「モーラス」「タケプロン」など大型品も 26 営業活動とコンプライアンス〈24〉 白神誠 「『企業理念』に基づき営業活動を」 27 MR のための後発品講座〈12〉 菊地祐男 「ジェネリックの将来を思い描く」 28 パートナーの常識〈96〉 織田龍喜 「MR の皆さんに最後に一言」 28 知ってナットク医薬品名の由来 笠原英城 「ビデュリオン/オキシコンチン」 29 News Summary & Topics 31 職場の流儀〈123〉 「ブランド戦略」 32 おくすり通信簿〈36〉 関節リウマチ治療薬(生物学的製剤・自己注射) (エンブレル/アクテムラ) 5 Yakugyo Jiho 2014.3.25 本誌内容の無断転写・転載は著作権法上で禁じられています。 本誌に掲載された著作物の複製・翻訳・上映・譲渡・公衆送 信(データベースへの取込および送信可能化権を含む)に関 する許諾権は、小社が保有しています。 本誌の無断複写は著作権法上での例外を除き禁じられてい ます。複写される場合は、そのつど事前に、 (社)出版者 著作権管理機構(電話 03-3513-6969、FAX 03-35136979、e-mail:info@jcopy.or.jp)の許諾を得てください。 特集 覆面座談会 「MR の本音」 活動環境の変化とこれから 製薬企業各社は薬価制度改革や接待規制強化といった環境変化を受け、より効果的で効率的な 営業体制の模索を続けている。最近は製薬企業と市販後臨床試験の在り方に対しても社会の厳 しい目が向けられ、新たな課題を抱えることにもなりそうだ。こうした現状を前に、MR の活 動はどう変化していけばいいのか。5 人の MR らに自由に意見を出し合ってもらった。 (編集部) 【出席者】A氏(外資大手) 、B氏(内資中堅) 、C氏(内資準大手) 、 D氏(内資大手) 、E氏(内資準大手) 【司 会】穴迫 励二 司会 MRにとってここ数年間の 最大の変化は、やはり接待規制の 強化でしょうか。実施から2年近 くたちましたが、営業の現場はど う変わりましたか。 A氏︵ 外 資 大 手 M R ︶ 接待をや めたので医薬品の採用が中止に なったような、極端なことは起こ りませんでした。むしろ、本来使 うべき医薬品が使われ、より適正 な使用が進んだという見方はでき るでしょう。 D氏︵ 内 資 大 手 M R ︶ 前任者と の関係もあって接待が多かった地 域では、医師の抵抗が強くて面談 を拒否されることもありました が、最近は落ち着いています。た だ、接待はなくなっても割り勘行 事 は 増 え た よ う な 気 は し ま す ね。 かえって飲み会が増えたところも あります。 B氏︵ 内 資 中 堅 M R︶ も と も と 接待はしていなかったので影響は 受けていませんが、医療従事者の 反応を見ていても訪問を拒否した りというのは特段なかったように 思います。 C氏︵ 内 資 準 大 手 M R︶ 当 社 は 接待経費自体が少なくなりました が、メーカーによっては5000 12 Yakugyo Jiho 2014.3.25 E氏︵ 内 資 準 大 手 営 業 企 画 ︶ そ う で す ね。 お 酒 の 席 で 医 師 と コ しょう。 ので、痛手を受けたMRもいたで 接待が医師と の 貴 重 な 接 点 だ っ た ります。訪問規制がある病院では、 円の枠内でや っ て い る と こ ろ は あ だと感じます。本来の学術的な活 う。意識を改革するいいチャンス にとって長期的にはプラスでしょ D氏 確かに担当者が転勤する と、 新 た な 関 係 づ く り が 難 し く はかかるでしょうね。 築することになれば以前より時間 が、それもなくなり一から関係構 C氏 ある病院の薬剤部長は一覧 表を作っているそうです。各メー は。 司会 奨学寄付金などの内容が明 らかになりましたが、医師の反応 けてひも付きに見られるものは一 たが、ディオバン問題の発覚を受 りました。以前は使途を特定しな C氏 当社はこの1年で奨学寄付 金に対する考え方ががらりと変わ ともあります。そうなると医師と ミュニケーシ ョ ン を 図 っ て 、 親 密 動に完全に移行するのはまだ先の カーがその病院にいくら寄付金を 切禁止することになりました。4 実施を暗に求めるなどしていまし いとは言いながら具体的な研究の 司会 会社の資金提供の考え方に 変化は。 の関係にも微妙に影響します。 な関係を築き 上 げ て い っ た こ と は ことにはなりますが。 入れているのかをランキングして 月以降は病院と契約を交わして委 奨学寄付金は 事 実 で す。 接 待 が な く な っ た 今 、 A氏 接待していたから売れてい たような薬は本来あるべき使い方 いるそうです。直接MR活動を左 受託として行うか、奨学寄付金の 司会 引き継 ぎ に 支 障 が 出 た と い う話も聞きま す 。 限されているの ション活動が制 らみのプロモー と異なり接待が りますが、以前 での競合が始ま D氏 近々SG L T ︱2 阻 害 薬 はなく、そうした寄付金の影響が 基準の中に有効性・安全性だけで B氏 寄付金の多寡と採用の関係 は強くないとは思いますが、判断 ありました︵笑︶ 。 えるのか⋮⋮﹂と言われたことも ﹁この程度の額で大きなことが言 医 薬 品 の 新 規 採 用 な ど に 関 し て、 E氏 大学教授の中にも全て チ ェ ッ ク し て い る 人 は い ま し た。 かを一つの基準に、自社の金額の 上げの何%を寄付に充てているの を開示したので、大手企業が売り ラインに沿って全メーカーが金額 E氏 4月以降は業界として全般 的に減少すると思います。ガイド ギャップが生じています。 う 対 応 な の で、 そ の 辺 り に 少 々 寄付金があれば研究をやるとい まだその認識はなくて従来通りの きそうです。それを医師にさりげ で、武器が限ら まったくないかといえばそうでは 水準を判断するでしょう。周りを ︵笑︶ 。 提供方法見直しへ 懸念されるの は 医 師 と の 距 離 を 縮 に戻るかもしれませんね。 右 す る こ と は あ り ま せ ん が、 一 額を減らすなど、急激に変わって なっているようです。ただ、MR めるのに時間 が 必 要 に な っ た と い C氏 現場のMRもいいかげんな 話で医師に会いに行くと相手にさ 種のプレッシャーになりますね 奨学寄付金への関与が改められることによっ て、その額も減少していくと見通す なく伝えたいのですが、相手側に れてきたという ないかもしれません。 見ながら相対的に多すぎるという と駄目になったという意識は出て いると思う。 A氏(外資大手 MR) うことでしょ う か 。 れないので、勉強してからでない A氏 新しく 担 当 に な っ た 場 合 は 引き継ぎの接 待 な ど が あ り ま し た 面もあります。 A氏 外資は寄付金の額が低いこ Yakugyo Jiho 2014.3.25 13 覆面座談会「MR の本音」 特集 ︻特集︼覆面座談会﹁MRの本音﹂ A氏 寄付金は本来、MRがタッ チするもので は あ り ま せ ん が 、 一 るのではない で し ょ う か 。 差が出ているのか﹂などですね。 て い ま す。﹁ こ ん な に 明 確 に 有 意 E氏 大規模臨床試験データに対 しては、医師が以前にも増して敏 司会 病院の訪問規制が強化され ています。マーケティング戦略に が勢いを増しています。MRの活 テールなどの有効なWEBツール てコール数を稼いだりして満足す 部外資は関与 し て い る 場 合 も あ り B氏 私も医師がデータを厳しく 見るようになったと感じることは も大きく影響しているようです 動もこうしたWEB情報とのコラ かなり変わってきています。MR から直接情報を受けるのは全体の 5割程度に減って、その分e ディ り他の多くの医 〝集合知〟 、つま スアルファした く、それにプラ データだけでな したが、今後は るようになってきていると感じま く、医師自身の判断でデータを見 ら言われたままを信じるのではな かれることをいろいろ想定してか ければという意識があるので、聞 上はきちんとした情報提供をしな C氏 アポイント制が導入される につれて、アポイントを取った以 しょう。 り、プラスにも働くともいえるで MR活動に近付いてきた部分もあ の時間ができたと思えば、本来の B氏 コ ー ル 数 は 減 り ま し た が、 その分、1回の面談にかける準備 起こっています。 A氏 病院であれば廊下に立てな くなるといったことが、現実的に 違うし。 じもあります。地方と都市部でも D氏 医師によってリアルの訪問 を求める場合と二極化している感 求められます。 先生と接点を持つことを期待して もらうのではなく、視聴しに来た いうことです。医師に勝手に見て MRもその現場に同席しなさいと す。会社から指示されるのは必ず 病院の部屋を借りてWEB講演会 C氏 当社は新薬情報をWEBで 提 供 す る こ と が 多 く な り ま し た。 いるのです。そうした活用を強く 14 Yakugyo Jiho 2014.3.25 ことであれば 、 調 整 す る 動 き に な ますね。それ が 改 め ら れ る こ と に あります。あまりに有意差が明確 が、実際に医師との面談は相当難 ボレーションが重要になってくる ることもあります。 よっても、寄 付 金 の 額 は 減 少 し て だと、かえって疑われるとか。 しくなりましたか。 WEB情報との いくと思いま す 。 C氏 信頼できるデータを提示し ても、自社に有利なデータだと何 師の意見も参考 ら訪問します。 A氏 両方提供できるMRが一番 ですね。ツールの一つとして活用 でしょう。 C氏 私の担 当 病 院 で は 当 該 メ ー カーさんの薬 剤 が 採 用 中 止 に な っ にしながら治療 E氏 かつての勘に頼る医療から エ ビ デ ン ス・ ベ ー ス ド に な り ま す。 を進めていくと D氏 訪問規制を敷くのは大病院 が多いですね。そのため、一人で して、施設によって使い分けるの 感に反応するようになったと感じ 司会 ディオ バ ン 問 題 の 現 場 へ の 影響はありま し た か 。 A R B や 臨 かしらメーカーとの関わりを勘繰 E氏 訪問規制や医師の多忙化に よって、医師の情報入手ルートも 床研究全体へ の 信 頼 性 も 含 め て い られることはありますね。MRか コラボは不可欠 かがでしょう か 。 たり、循環器 科 へ の 訪 問 や 説 明 会 いう形に変わっ も多くの医師に会おうとして、あ が最善です。 以前に比べて医師は MR が示すエビデンスデー タをより厳しい目で見るようになったという を開き、そこに医師を集めていま の禁止などの ペ ナ ル テ ィ ー を 受 け てくるのではな まり市場性のない中小病院に行っ たことはあり ま し た 。 いでしょうか。 B氏(内資中堅 MR)
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