Title Association among blood pressure control in elderly patients

Title
Association among blood pressure control in elderly patients with
hypertension, left atrial structure and function and new-onset
atrial fibrillation: a prospective 2-year study in 234 patients( 内容
と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
渡邉, 崇量
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第939号
Issue Date
2014-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/49055
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[
崇
]
氏名(本籍)
渡
邉
量(岐阜県)
学位の種類
博
士(医学)
学位授与番号
甲第
学位授与日付
平成
学位授与要件
学位規則第4条第1項該当
学位論文題目
Association among blood pressure control in elderly patients with
939
26
年
号
3
月
25
日
hypertension, left atrial structure and function and new-onset atrial
fibrillation: a prospective 2-year study in 234 patients
審 査 委 員
(主査)教授
石
塚
(副査)教授
清
島
達
夫
満
教授
惠
良
聖
一
論文内容の要旨
近年,高血圧症が心房細動の発症リスクとして最も重要であるという報告が散見されている。高
血圧症は左室に圧負荷をかけ,左室肥大の原因となり,引き続き左室心筋の柔軟性を低下させ左室
拡張能を低下させる。これらは加齢によっても見られる。また,この変化が引き続き左房容積も増
加させ,左房のリモデリングを引き起こすとされ,このことが心房細動に関連していると言われて
いる。我々は以前,高血圧症による左室容積の増加,左房拡大および左房機能低下が新規発症の心
房細動の独立した危険因子であることを報告している。しかしながら,高血圧症を有する高齢の患
者において血圧のレベルと新規心房細動との関連を評価した報告はない。それに加えて,左房構造
や機能と新規心房細動発症について明らかにした報告もほとんど認めない。最近,
feature-tracking 法という新しいエコー技術により,左房容積や左房機能が評価できるようになっ
た。本研究の目的は,この技術を用い,高血圧症を有する高齢の患者において,降圧の程度が心臓
の構造と機能や新規心房細動発症に及ぼす影響とその関連性を評価することである。
【対象と方法】本研究は非ランダム化前向き研究である。それまでの 2 年間の間に心電図上で心房
細動の記録がなく,心房細動の症状もない 65 歳以上の高血圧症を有する 380 名の患者を対象とした。
患者をその血圧によって,収縮期血圧 130 mmHg 以下で拡張期血圧 80 mmHg 以下の good BP control
群,収縮期血圧 140 mmHg 以上または拡張期血圧 90 mmHg 以上の poor BP control 群,それ以外の
moderate BP control 群の 3 つに分けて,65 歳以上の正常血圧 73 名をコントロールとして加え,さ
らに 2 年間調査した。二次性高血圧症,上室性不整脈,左室収縮障害(EF<50%),最近 6 ヶ月以内の
鬱血性心不全・心筋梗塞・脳卒中の既往,中等度以上の僧帽弁疾患,重症の大動脈弁疾患,大動脈
解離または瘤,腎機能障害,精神疾患,心臓以外の重症な疾患を有する患者と,群が変わった患者,
計 188 名を除外した。さらに 2 年間の期間中血圧コントロールが安定せず群が変わった患者や,悪
性腫瘍・脳梗塞など計 31 名を除外した。最終的に計 234 名の患者について検討した。試験開始時と
2 年後に心エコーを施行し,従来の方法および feature-tracking 法を用いて左室および左房機能を
評価した。新規心房細動発症の評価方法はこれまでの心房細動発症を評価した研究における評価方
法と同様に,患者は外来にて毎月心電図を施行し,症状のある患者には Holter 心電図を追加施行し
て決定することとした。
【結果】正常血圧群と good BP control 群では試験開始時と 2 年間フォローアップ後いずれも,左
室と左房の構造および機能は poor BP control 群に比べて保たれていた。2 年間の変化においては,
poor BP control 群では左室容積の変化が正常群に比べて著明に大きかった。左房機能に関しては,
2 年間の経過中において poor BP control 群と正常群あるいは poor BP control 群と good BP control
群の間いずれも有意な変化は認めなかった。2 年間の経過で,6.0%が新規心房細動発症を認めた。
内訳は,正常血圧群で 2 名,good BP control 群で 1 名,moderate BP control 群で 3 名,poor BP control
群で 8 名であった。Poor BP control 群では他の 3 群を合わせたものに比べて有意に新規心房細動
発症が多かった(ハザード比: 7.015; 95%信頼区間: 2.433-20.22; p<0.001)。全 234 名において新
規心房細動発症を認めた患者は,心房細動のない患者に比べて左房容積の拡大と左房機能の低下を
認めていた。多変量 Cox 解析の結果,2 年間の変化で見ると,poor BP control の高血圧と,年齢が
新規心房細動発症の独立した予測因子であり,試験開始時では,左室拡張能の指標である E/e’が
独立した予測因子であることが明らかになった。
【考察】本研究では,poor BP control 群における左室容積,左室拡張能,左房構造,左房機能が
試験開始時とフォローアップ後いずれも正常群に比べて低下していた。これらのパラメータは左室
容積と左房径を除いて 2 年間のフォローアップの間変化は認めなかった。新規心房細動発症には,
短期間の間の心臓の構造・機能の改善よりも,長期間に及ぶ血圧の安定したコントロールの方が影
響し,高齢の高血圧症患者においては血圧コントロールが poor な場合に新規心房細動発症が増加し
ていた。
本研究の限界としては,第 1 に本研究がフォローアップ中に血圧が安定している患者のみが対象
であることであり,実臨床では血圧が安定しない患者に心房細動の発症が多い可能性があるが,今
回の研究ではそれらの患者が除外されていることであり,またそれが対象選択の偏りとなっている
ことである。第 2 には,本研究の対象患者数が少ないこと,第 3 にはこれまでの報告でも指摘され
ているが,新規心房細動発症の評価方法が症状や毎月一度の心電図検査に依存しているため,イベ
ントが過小評価されている可能性があること,第 4 に,βブロッカーやアンギオテンシンⅡ阻害剤
など他の心房細動に影響を与える薬剤の影響が完全に除外できないこと,最後に,feature-tracking
法がマニュアルトレースにより 2 次元で評価しており,最近の 3 次元 feature-tracking 法よりも心
臓の構造や機能の評価が正確でない可能性があることが挙げられる。
【結論】新規心房細動発症は,長期の血圧コントロールに影響を受ける。高齢の高血圧症患者にお
いては,厳重でない血圧のコントロールは新規心房細動発症のリスクを増加させる。
論文審査の結果の要旨
申請者
渡邉
崇量は,新規心房細動の発症は長期間の血圧コントロールに影響を受けることを
明らかにした。また高齢の高血圧症患者においては,厳重な血圧のコントロールが新規心房細動の
発症リスクを低下させることを明らかにした。本知見は,実臨床における高齢の高血圧症患者の治
療方針を決定する上で有用であり,新規心房細動発症を抑制することにより高齢の高血圧症患者の
生活の質の維持も期待できるという点で循環器学に寄与するものと認める。
[主論文公表誌]
Takatomo Watanabe, Masanori Kawasaki, Ryuhei Tanaka, Koji Ono, Kazuhiko Nishigaki, Genzou
Takemura, Masazumi Arai, Toshiyuki Noda, Sachiro Watanabe and Shinya Minatoguchi: Association
among blood pressure control in elderly patients with hypertension, left atrial structure
and function and new-onset atrial fibrillation: a prospective 2-year study in 234 patients
Hypertens Res. 36,799-806. (2013)