原 著 持続性心房細動に対するカテーテルアブレーション後の血漿中ベプリジル濃度と 心房細動再発予防効果との関連性 福森史郎1,藤井英太郎2,藤田 聡2,杉浦伸也2,村木優一3,岩本卓也3, 4 1, 4 2 3* 辻 泰弘 ,藤 秀人 ,伊藤正明 ,奥田真弘 The relationship between plasma bepridil concentration and preventing recurrence of atrial fibrillation after catheter ablation for persistent atrial fibrillation 1 2 2 2 3 Shiro FUKUMORI , Eitaro FUJII , Satoshi FUJITA , Shinya SUGIURA , Yuichi MURAKI , 3 4 1,4 2 3 Takuya IWAMOTO , Yasuhiro TSUJI , Hideto TO , Masaaki ITO , Masahiro OKUDA * 1 4 Department of Community Pharmacy and Department of Medical Pharmaceutics , Graduate School of Medicine and Pharmaceutical Sciences, University of Toyama ; 2630 Sugitani, Toyama, 930-0194, Japan Department of Cardiology and Nephrology, Mie University Graduate School of Medicine ; 2-174 Edobashi, Tsu, Mie 2 514-8507, Japan Department of Pharmacy, Mie University Hospital ; 2-174 Edobashi, Tsu, Mie 514-8507, Japan 3 (n = 5 ; AF recurrence group)of AF recurrence dur- ABSTRACT ing three months after CA. The median plasma con- Bepridil(Bep)is a potent antiarrhythmic drug centration of Bep was not significantly different against persistent atrial fibrillation(AF) , and is used between the two groups. Meanwhile, the defibrillation widely to prevent AF recurrence in patients with per- treatment for the recurrence of AF before hospital dis- sistent AF after catheter ablation(CA) . However, lit- charge had been less frequently performed in the SR tle is known about the plasma concentration of Bep group than in the AF recurrence group(31% vs required to prevent AF recurrence. The present 100%, p < 0.05). Bep effected a QT prolongation in study was conducted to evaluate the relationship the SR group, but not in the AF recurrence group (median ; +28 vs -12 msec, p < 0.05) . between the plasma concentration of Bep and clinical outcome of AF recurrence. There was no significant relationship between plas- Twenty one patients enrolled in this study under- ma Bep concentration and prophylactic effect for AF went CA for persistent AF from January 2011 to recurrence; however, a QT prolongation by Bep may December 2012 in Mie University Hospital. They be related to the prophylactic effect of the drug for received Bep after CA and were discharged from the AF recurrence after CA in patients with persistent hospital after restoration of sinus rhythm(SR) . The AF. study subjects were divided into two groups according to the absence(n = 16 ; SR group)or presence 1 Keywords : bepridil, atrial fibrillation, catheter ablation, Shiro FUKUMORI, Hideto TO 富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)保険薬局学研究室(〒930-0194 2 三重大学大学院医学系研究科循環器・腎臓内科学(〒514-8507 3 Yuichi MURAKI, Takuya IWAMOTO, Masahiro OKUDA 三重大学医学部附属病院薬剤部(〒514-8507 4 富山県富山市杉谷2630) Eitaro FUJII, Satoshi FUJITA, Shinya SUGIURA, Masaaki ITO 三重県津市江戸橋2-174) * 三重県津市江戸橋2-174) Yasuhiro TSUJI, Hideto TO 富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)医療薬学研究室(〒930-0194 受付日:2013. 9. 27 受理日:2013. 11. 20 TDM研究 ─ ─ 62 富山県富山市杉谷2630) plasma bepridil concentration Rhythm Society(HRS)/ The European Heart Rhythm Association( EHRA) / The European Cardiac Arrhythmia Society(ECAS)が提案したCA 要 旨 専門家の合意声明では,CA施行後の 1 − 3 か月間はAF ベプリジル(Bep)は持続性心房細動(AF)に対し 再発予防のため,抗不整脈薬を投与することが推奨され て除細動効果が強く,持続性AFに対するカテーテルア ている6)。そのため,持続性AF患者でも同様にCAのみ ブレーション(CA)治療後の洞調律維持目的に繁用さ では洞調律を維持することが困難であることが危惧さ れている。しかしながら,AFの再発を予防するために れ,CA施行後の洞調律維持に対して抗不整脈薬の併用 必要な血漿中Bep濃度に関する情報は不十分である。本 が必要と考えられる。 研究ではAFの再発予防に用いた血漿中Bep濃度とAF再 発予防効果の関連性を評価した。 マルチチャネル遮断作用を有するベプリジル(Bep) は,AFにより短縮した活動電位持続時間およびQT間 持続性AFに対するCA後にBepの投与を受け,退院時 隔を延長することで薬理作用を示す。Bepは他剤無効の に洞調律が維持されていた21症例を対象として,CA後 持続性AFの患者に対して高い洞調律維持効果と除細動 3 か月の時点で洞調律が維持された16例(SR群)とAF 効果を示し7),近年,持続性AFの治療にCAが施行され が再発した 5 例(AF再発群)に分類した。血漿中Bep た患者におけるAFの再発予防としてBepが繁用されて 濃度は両群間で有意な差はなかったが,SR群ではAF再 いる 発群と比較して,退院前に除細動を行った症例の割合が が知られており,適正使用のためには体内動態の特徴を 少なく(31% vs 100%, p < 0.05),Bep投与によるQT間 考慮した投与量の設計が求められる。我が国では,頻脈 隔の延長効果がみられた(+28 vs -30 msec, p < 0.05)。 性不整脈患者における血漿中Bep濃度の有効治療域は 本研究において,BepのAF再発予防効果に血漿中濃 250−800 ng/mLとされている10,11)。しかしながら,持 度の影響が認められなかったが,BepによるQT延長効 続性AFに対するCA施行後のAF再発予防を達成するた 果がみられた症例ではAF再発が予防されていたと考え めに必要な血漿中Bep濃度に関する情報が十分得られて られた。 いない。 見出し語:ベプリジル,持続性心房細動,カテーテルア た患者を対象に血漿中Bep濃度とAF再発予防効果の関 ブレーション,血漿中ベプリジル濃度 連性について評価した。 8, 9) 。一方,Bepの体内動態には個体差が大きいこと そこで本研究では,持続性AFに対してCAが施行され 対象および方法 はじめに 1 .対象 心房細動(AF)は血栓塞栓症のリスクを増大させた 2011年 1 月から2012年12月までに三重大学医学部附属 り,無秩序な心房収縮や不適切な心室拍数を生じさせる 病院において,持続性AFに対してCAが施行され,CA ことで心機能低下や胸部症状を出現させたりする。AF 施行後にBepの経口投与を受けた患者を対象とした。 は,発症 7 日以内に洞調律に復する発作性AF, 7 日以 Bepは体重当たりで投与量を調整し, 1 − 2 mg/kg/ 上持続する持続性AFおよび除細動不能の永続性AFの 3 dayを 2 回に分けて内服開始した。CA施行後の入院経 つに分類される。AF発生のトリガーとなる心房期外収 過観察中にAFが発生した場合は,電気的または薬物的 縮の原因の90%以上が肺静脈由来であることから,この 除細動を施行した。すべての患者は洞調律化した状態で 肺静脈と心房間の電気的連関を断ち切るためにカテーテ 退院した。本研究では,重篤な腎障害のある透析症例お ルアブレーション(CA)による電気的隔離術が開発さ よびBep投与後に洞性徐脈が生じてBep投与を中止した れた 1)。抗不整脈薬治療に比してCAは洞調律維持効果 症例を除外した。なお,本研究は当該施設の倫理委員会 が優れているとの見解が多数報告されている 2,3) 。しか しながら,AFの持続によりリモデリングが進行した心 の承認を得た後,すべての患者において本研究に対して 文書による同意を得て行った。 房筋では,単回のCAでは不整脈の器質をすべて除去す ることが困難であり,持続性AFに対するCA施行後40− 2 .研究プロトコール 4) 60%の患者でAFが再発することが問題となっている 。 対象被験者は,CA施行後 1 か月, 3 か月および 6 か 一方,発作性AFの治療にCAを施行した患者に対して, 月目に外来受診し,血液生化学検査,心臓超音波検査お 抗不整脈薬をCA施行後から 6 週間投与することで,心 よび12誘導心電図検査を受けた。また,Bep内服前に採 房性不整脈の発生や電気的除細動及び入院の必要性を減 血を行い,血漿中Bep濃度を測定した。退院後 3 か月以 5) 少させたという報告がある 。2012年に,The Heart 上洞調律が維持された症例をSinus rhythm(SR)群, ─ ─ 63 Vol. 31 No. ( 2 2014) 退院時にはAFが認められなかったが,外来受診時の心 リン酸緩衝液(pH 7.4)0.5 mLおよびヘキサン 5 mLを 電図においてAFが認められた患者をAF 再発群に分類 加えて20分間撹拌した。3000 rpm, 4 ℃で10分間遠心 し,AF再発の危険因子および血漿中Bep濃度とAF再発 分離後,ヘキサン層を 4 mL分取した。分取したヘキサ 予防効果との関連性を評価した。なお,Bep投与量は, ン層を45℃で40分間蒸発乾固させた後,残渣に移動相 投与開始から血漿中Bep濃度を測定するまで変更しな 500 μLを加え再溶解した。この溶解液50 μLを高速液 かった。血漿中Bep濃度測定後は,心電図や症状の有無 体クロマトグラフィー(HPLC)装置に注入し測定した。 を確認しながら医師の判断で投与量を調節した。 3 )HPLC条件 血漿中Bep濃度は,Taguchiらの報告に基づいて HPLC法により測定した12)。装置はLC-20A(株式会社島 3 .患者背景によるAF再発に影響する因子の検討 SR群およびAF再発群の年齢,性別,体重,Bep投与 津製作所)を用いた。移動相はアセトニトリル / 2 %ト 量,病歴,CA施行直後のQT間隔,左房径,B型ナトリ リエチルアミン含有10 mMリン酸緩衝液(pH 3.3) ウム利尿ペプチド(BNP)値,医師によるAF診断時あ (40:60)混液,流速は1.0 mL/min,検出波長は254 nm, るいはAFの症状発現時からCA施行までの期間(AF罹 カラム温度は40℃の条件下で行った。カラムはCOS- 病期間),入院経過観察中の除細動の有無および併用薬 MOSIL 5C18-AR-II(15 cm × 4.6 mm, i.d. 4.5 μm par- について比較した。 ticle size)(ナカライテスク)を用いた。なお,測定限 界は25 ng/mLであり,日間差および日内変動は 5 %以 4 .Bep投与後のAF再発に影響する因子の検討 内であった。 SR群とAF再発群の外来受診時の血漿中Bep濃度, QT間隔,ベプリジル投与開始時からのQT間隔の変化, 7 .統計処理 左房径および BNP値を比較した。なお,上記の臨床的 測定値は,中央値(最小値,最大値)として表記した。 因子は,SR群ではCA施行後 3 か月目のものを,AF再 すべての解析はJMPÑ software ver.9(SAS Institute 発群は外来受診時にAF再発が認められた時点のものを Inc., Cary, USA)を使用した。 2 群間の比較には, 用いた。加えて,入院経過観察中の除細動の影響を評価 Student t test, Mann-Whitney U testおよびFisher’ s するため,CA施行後に除細動を行わなかったSR群を exact testを 使 用 し た 。 多 群 間 の 統 計 的 有 意 差 は , SR-CD(-)群,除細動を行ったSR群をSR-CD(+)群 Kruskal-Wallis検定を行った後,Steel-Dwass testによっ とし,SR-CD(-),SR-CD(+)およびAF再発群の 3 群 て求めた。血漿中Bep濃度とQT間隔延長効果との相関 間で血漿中Bep濃度および上記の臨床的因子を比較し は,スピアマンの順位相関係数を算出し評価した。すべ た。なお,血漿中Bep濃度はBep内服から 1 か月以上経 ての解析において有意水準は両側 5 %以下とした。 過した時点のトラフ濃度を用いた。 結 果 5 .血漿中Bep濃度とQT間隔延長効果との関係 研究プロトコールに則した最終的な解析対象は21例 BepのQT延長効果を評価するため,対象被験者の血 (男性18例,女性 3 例)であった。その詳細をFigure 1 漿中Bep濃度と試験開始時からのQT間隔の変化との相 に示す。解析対象の21症例のうち,SR群は16例(76.2%) 関係数を求めた。なお,血漿中Bep濃度はBep内服から であり,AF再発群は 5 例(23.8%)であった。SR群と 1 か月または 3 か月経過した時点のトラフ濃度を用い AF再発群の患者背景をTable 1 に示す。SR群のBep投 た。 与量は16例中13例が100 mg/day, 2 例が150 mg/day, 1 例が200 mg/dayであり,AF再発群はすべての症例で 6 .血漿中Bep濃度測定 100 mg/dayであったが,体重あたりの投与量は両群間 1 )試薬 で有意な差は認められなかった。SR群ではAF再発群と 測定用のBep試薬は,和光純薬工業株式会社から購入 した。アセトニトリル,トリエチルアミンおよびヘキサ 比較し,CA施行後の入院経過観察中に除細動を施行し た症例の割合が有意に少なかった(p < 0.05 ; Table 1 )。 ンはナカライテスク株式会社から購入した。すべての試 CA施行後の血漿中Bep濃度とAF再発予防効果との関 薬は特級品または液体クロマトグラフ用の規格品を用い 連性を評価するため,SR群とAF再発群の外来受診時の た。 血漿中Bep濃度,QT間隔,試験開始時からのQT間隔の 2 )抽出方法 変化,左房径およびBNP値を比較した。血漿中Bep濃度 1 検体あたり 3 mLの血液を静脈から採血した。遠心 は両群間で有意な差は認められなかった(Table 2 )。 分離後(3000 rpm,10 min)に血漿を採取し,測定す しかしながら,Bep投与開始時からのQT間隔の変化を るまで-20℃で保存した。血漿検体(0.2 mL)に100 mM 評価したところ,SR群がAF再発群と比較して有意に TDM研究 ─ ─ 64 Figure 1 Study design, and results. AF denotes atrial fibrillation, and CA catheter ablation. Table 1 Characteristics of patients enrolled in the study ─ ─ 65 Vol. 31 No. ( 2 2014) Table 2 Clinical factors associated with recurrent atrial fibrillation after catheter ablation for persistent atrial fibrillation QT間隔が延長していた(p < 0.05 ; Table 2)。 考 察 SR群ではAF再発群と比較して入院経過観察中にAF を再発し除細動を行った症例が少なかったことから 本研究では,持続性AF患者にCAを施行し,Bepを投 (Table 1 ),対象群をSR-CD(-),SR-CD(+)および 与した時の血漿中Bep濃度とAF再発予防効果との関連 AF再発群に再分類し, 3 群間での血漿中Bep濃度およ 性について評価した。SR群とAF再発群の血漿中Bep濃 び臨床的因子を比較した。血漿中Bep濃度,QT間隔, 度に有意な差は認められなかったが,SR群ではAF再発 左房径およびBNP値は,3群間で有意な差は認められな 群と比較してCA施行後の入院経過観察中に除細動を かった(Figure 2 , Table 3 )。また,ベプリジル投与 行った症例の割合が少なく,Bep投与によりQT間隔が 開始時からのQT間隔の変化を評価したところ, 3 群間 有意に延長していた。従って,Bep投与によるQT延長 で有意な差は認められなかった(Table 3 )。一方,血 効果がみられた症例ではAF再発が予防されていると考 漿中Bep濃度は,試験開始時からのQT間隔の変化とは えられた。一方,CA後早期にAFを再発し除細動が必要 有意な相関が認められなかった(ρ = -0.30, p = 0.26 ; であった症例では,Bep投与にかかわらずAF再発の危 Figure 3 )。 険性が高いことが示唆された。 AFの再発率は患者背景因子により異なり,高齢,高 血圧,心不全,AFの罹病期間および左房径がリスク因 Table 3 Clinical factors associated with recurrent atrial fibrillation and cardiac defibrillation(CD)after catheter ablation for persistent atrial fibrillation TDM研究 ─ ─ 66 Figure 3 Relationship between the concentration of bepridil and the difference of QT interval from baseline in the patients after bepridil treatment. Statistical analysis was performed using Spearman's rank correlation coefficient. Figure 2 Comparison of the concentration of bepridil between SR(open circles)and AF recurrence(closed circles)groups with or without cardiac defibrillation (CD). SR-CD(-)group was not treated with CD after CA. SRCD(+)and AF recurrence groups were treated with CD after CA. N.S. denotes not significant. の変化量と有意な相関が認められなかった。Bepは多く のイオンチャネル遮断作用により,QT間隔を延長する ことで薬理作用を示す。Bepは濃度依存的にカリウムイ オンチャネルを阻害することが報告されているが 18), AFの持続とともに心房筋の電気的リモデリングが進行 19) し,カリウムイオンチャネルが活性化されることから , 13,14) 。また,CA施行前後にかかわ AF再発群においてBepの有する薬理作用が減弱した可 らずBNP値が高値であるほどCA施行後のAF再発の危 能性がある。また,カリウムイオンチャネルに遺伝子多 子としてあげられる 15) 20) 険性が上がるとの報告がある 。さらにLeong-Sitらは, 型が報告されていることから ,同一血中濃度でも患者 抗不整脈薬併用の有無に関わらず,CA施行後,初期 6 によってBepの心筋組織への移行性やイオンチャネルへ 週間の再発の有無がその後の長期的な再発の強力な独立 の親和性が異なる可能性がある。これらのことから,持 16) 予測因子であることを報告している 。本研究において, 続性AF患者において,血漿中Bep濃度とQT延長効果に 年齢や高血圧,心不全の既往および左房径に関しては 相関が認められなかったと考えられる。 BepのAF再発予防効果はBep投与後のQT間隔延長の SR群とAF再発群に有意な差は認められなかった。一方, AF再発群がSR群と有意な差は認められなかったもの 有無を評価すべきであるが,Bepは薬理作用の延長線上 の,AFの罹病期間が長く,外来時のBNP値が高値傾向 に,過度のQT間隔の延長に伴うtorsades de pointesの にあった(Table 1 , 2 )。さらに,AF再発群は全症例 発症が報告されており,血漿中Bep濃度が1000 ng/mL ともにCA施行後の入院経過観察中にAFを再発し,除細 以上であることがtorsades de pointesのリスク因子であ 動を行っている。これらのことから,AFの罹病期間, るとの報告がある11)。従って,副作用防止の観点からも CA施行後のBNP値およびCA施行後早期のAF再発が, 心電図だけでなく血漿中濃度をモニタリングする必要が 長期的なAF再発の予測因子であることを推察している。 あると考えられる。 一方,本研究にはいくつかの限界がある。 1 つ目に, 本研究において,血漿中Bep濃度はSR群とAF再発群 において有意な差が認められなかったが,SR群では 持続性AFの治療にCAを施行した患者におけるBepの Bep投与によりQT間隔が延長していた。一方,AF再発 AF再発予防効果を評価することに限定したことから, 群において,血漿中Bep濃度がある程度維持されている 今回の結果が発作性AF患者に対するAF再発予防や洞調 にもかかわらずQT延長が認められなかった。Shigaらの 律復帰目的にBepを使用した患者には適用できない可能 報告では,発作性または持続性AF患者において,血漿 性がある。 2 つ目に,症例数が少なく,観察期間が 3 − 中Bep濃度‐時間曲線下面積がQT間隔の変化量と弱い 6 か月と比較的短いことである。従って,症例数を増や 相関があることを報告しているが17),本研究のCA施行 した検討を行うことで,長期的な観察データの集積とそ 後の持続性AF患者において,血漿中Bep濃度がQT間隔 の詳細な検討が可能になると考える。 ─ ─ 67 Vol. 31 No. ( 2 2014) tion. Europace. 2009 ; 11 : 1620-1623. 結論として,持続性AFの治療にCAを施行した患者に おいて,BepによるAFの予防効果が認められたが,血 9 )Sugiura S, Fujii E, Senga M, et al. Clinical features of patients with left atrial thrombus undergoing anticoag- 漿中Bep濃度とAF再発予防効果に関連性が認められな ulant therapy. J Interv Card Electrophysiol. 2012 ; 34 : かった。一方,CA施行後早期にAFを再発し除細動が必 59-63. 要であった症例では,Bep投与にかかわらずCA施行か 10)Kamakura T, Yamada Y, Okamura H, et al. Optimal ら数か月後にAF再発の危険性が高いことから,Bepに dose and blood concentration of bepridil in patients よる再発予防効果の指標として,QT間隔を確認するこ with arrhythmias. Jpn J Electrocardiol. 2011 ; 31 : 150- とが有用な手段であると考えられた。今後長期的な観察 157. データの集積が必要と考えられるが,本研究の結果は, CA施行後のAF再発予防に対する薬物療法を行う上で有 用な知見になると考えられる。 引用文献 1 )Haïssaguerre M, Shah DC, Jaïs P, et al. Electrophysiological breakthroughs from the left atrium to the pulmonary veins. Circulation. 2000 ; 102 : 2463-2465. 2 )Wazni OM, Marrouche NF, Martin DO, et al. Radiofrequency ablation vs antiarrhythmic drugs as first-line therapy of symptomatic atrial fibrillation : a randomized trial. 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