低強度コンクリートが使用された 開口耐震壁の 破壊性状

低強度コンクリートが使用された開口耐震壁の
破壊性状に関する実験的研究
三重大学大学院
三重大学大学院
三重大学大学院
田中 準一
畑中 重光
三島 直生
序論
実験
実験結果
総括
研究の背景
• 日本建築防災協会発行の耐震診断基準では,同基準が適用可能な
コンクリート強度の下限値として13.5 N/mm2が示されており,それ未
満のものは診断・補強の対象外としている。
• 下限値未満の建物は少なからず存在し,またその下限値も力学的根
拠に基づき定められたものではない。
• 実務上も低強度コンクリート建物に対する診断評価,改修評価に関
する問い合わせは多く,低強度コンクリートを視野に入れた耐震診
断・耐震改修の基準の策定が望まれている。
• 低強度コンクリートが使用されたRC柱の研究はいくつか行われてい
るが,壁が取り付いた場合の研究は進んでいないのが現状である。
序論
実験
実験結果
総括
研究の目的
有開口耐震壁に関して,以下についての検討を行う。
既報の研究※において,低強度コンクリートが使用された無開口耐震壁
については実験が行われた。
1) 低強度コンクリートが用いられた有開口耐震壁の耐力および
変形特性を実験により明らかにすること。
2) 上記のような部材の性能評価方法の妥当性を検討すること。
*:大石祐太:低強度コンクリートが使用されたRC無開口耐震壁の破壊性状に関する研究,平成22年度修士論文梗概,2011.3
序論
実験
実験結果
総括
実験概要
190
320
190
200
200
200
500
要因および水準
要因
水準
7,21
モルタル圧縮強度[N/mm2]
開口数
1, 2
開口位置
柱際面,壁中央
160
380
160
125
160
130
160
125
800
800
800
中央に開口が1個
(S-W.C壁中央)
柱際面に開口が2個
(D-W.E壁際面)
中央に開口が2個
(D-W.C壁中央)
等価開口周比:0.4(一定) → 開口低減率:0.6
序論
実験
実験結果
試験装置概要
立体フレーム
鉛直ジャッキ(容量500kN)
荷重計(容量500kN)
接触型変位計
パンタグラフ
L型 載荷梁
水平ジャッキ(容量500kN)
荷重計(容量500kN)
レーザ変位計
接触型変位計
土台
ひずみゲージ
・梁を剛と仮定
・実構造物の1/5を想定し,モルタルで作製。
総括
序論
実験
実験結果
総括
最終ひび割れ図
低強度試験体
(a)Fc7W-1*
1/100rad
(c)Fc7-S-W.C
1/125rad
(e)Fc7-D-W.C
1/100rad
(g)Fc7-D-W.E
1/125rad
普通強度試験体
(b)Fc21W-2*
1/50rad
(d)Fc21-S-W.C
1/150rad
(f)Fc21-D-W.C
1/125rad
(h)Fc21-D-W.E
1/125rad
*:大石祐太:低強度コンクリートが使用されたRC無開口耐震壁の破壊性状に関する研究,平成22年度修士論文梗概,2011.3
序論
実験
実験結果
総括
最終ひび割れ図
低強度試験体
全ての試験体がせん断破壊した。
普通強度と低強度で最終的な破壊モードに大きな違いはみられなかったが,
普通強度の有開口試験体が一本の大きなひび割れが発生したのに対し,
(e)Fc7-D-W.C
(a)Fc7W-1*
(c)Fc7-S-W.C
(g)Fc7-D-W.E
1/100rad
1/100rad
1/125rad
1/125rad
低強度は柱の主筋に沿った付着ひび割れや,柱および壁の全体に細かなひび割れ
や圧壊が発生した。
普通強度試験体
これは既往の研究と一致している。
(b)Fc21W-2*
1/50rad
(d)Fc21-S-W.C
1/150rad
(f)Fc21-D-W.C
1/125rad
(h)Fc21-D-W.E
1/125rad
*:大石祐太:低強度コンクリートが使用されたRC無開口耐震壁の破壊性状に関する研究,平成22年度修士論文梗概,2011.3
序論
実験
実験結果
総括
最終ひび割れ図
低強度試験体
(a)Fc7W-1*
1/100rad
(c)Fc7-S-W.C
1/125rad
(e)Fc7-D-W.C
1/100rad
(g)Fc7-D-W.E
1/125rad
普通強度試験体
(b)Fc21W-2*
1/50rad
(d)Fc21-S-W.C
1/150rad
(f)Fc21-D-W.C
1/125rad
(h)Fc21-D-W.E
1/125rad
*:大石祐太:低強度コンクリートが使用されたRC無開口耐震壁の破壊性状に関する研究,平成22年度修士論文梗概,2011.3
序論
実験
実験結果
総括
既往の耐力評価式(せん断)
大野・荒川min式*1
普
0.053pte 0.23 18 + Fc
Q su =
M/(Q・l) + 0.12
通
強 修正荒川mean式*1
0.068pte 0.23 18 + Fc
度
Q =
su
低
強
度
M/(Q・l) + 0.12
+ 0.85 Pse ・σwy + 0.1σoe ・be ・je
+ 0.85 Pse ・σwy + 0.1σoe ・be ・je
山本提案式*2
Q 𝑠𝑢2 = 𝑘𝑟 ∙ 𝑄𝑠𝑢1
k 𝑟 = 0.244 + 0.056𝐹𝑐
(ただし,kr≦1.0)※
※圧縮強度が約6N/mm2~12N/mm2の試験体の実験結果に基づく
【記号】Pte:等価引張鉄筋比,Fc:コンクリート圧縮強度,l:壁の全長
M/(Q‣l):せん断スパン比,Pse:等価横筋比,σwy:横筋の降伏強度
σ0e:柱軸方向応力度,be:等価壁厚,je:応力中心間距離
*1日本建築防災協会「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」,*2山本による提案式
序論
実験
実験結果
総括
耐力評価(普通強度)
200
◇普通強度
Fc21-W
• 大野・荒川min式(△)およびmean式
(▲)を用いた場合,有開口,無開口
試験体ともに安全側に評価された。
(修正荒川mean式(▲)を用いた場
合,実験値/計算値が1.27~1.48)
160
実験値[kN]
Fc21-S-W.C
120
Fc21-D-W.E
Fc21-D-W.C
80
40
大野荒川min式
修正荒川mean式
0
0
40
80
120
160
計算値[kN]
最大耐力の実験値と計算値の比較
200
序論
実験
実験結果
総括
耐力評価(低強度)
200
◇低強度
大野荒川min式
修正荒川mean式
• いずれの有開口試験体も,すべて
の耐力式でほぼ安全側に評価され
た。一方で,無開口試験体ではmin
式(△),mean式(▲)で若干危険側
となった。
実験値[kN]
160
120
80
Fc7-W
Fc7-S-W.C
Fc7-D-W.E
Fc7-D-W.C
40
0
0
40
80
120
160
200
計算値[kN]
最大耐力の実験値と計算値の比較
序論
実験
実験結果
総括
耐力評価(低強度)
200
◇低強度
大野荒川min式 + 山本提案式
修正荒川mean式 + 山本提案式
• いずれの有開口試験体も,すべて
の耐力式でほぼ安全側に評価され
た。一方で,無開口試験体ではmin
式(△),mean式(▲)で若干危険側
となった。
• 修正荒川mean式に山本提案式
(●)の低減率を適用することで,有
開口,無開口試験体ともに,実験値
/計算値が1.0を上回った。
実験値[kN]
160
120
Fc7-S-W.C
80
Fc7-D-W.E
Fc7-W
Fc7-D-W.C
40
0
0
40
80
120
160
200
計算値[kN]
最大耐力の実験値と計算値の比較
序論
実験
実験結果
総括
耐力評価
200
◇有開口(開口周比による低減率:0.6)
• 普通強度試験体は修正荒川mean
式(▲),低強度試験体は修正荒川
mean式に山本提案式(●)を適用し
た実験値/計算値を抜き出し,有開
口試験体を比較する。
実験値[kN]
160
120
80
40
修正荒川mean式 + 山本提案式(低強度)
修正荒川mean式(普通強度)
0
0
40
80
120
160
200
計算値[kN]
最大耐力の実験値と計算値の比較
序論
実験
実験結果
総括
耐力評価(有開口)
200
◇有開口(開口周比による低減率:0.6)
y=1.63x
実験値[kN]
160
• 有開口試験体の低強度試験体(●)
と普通強度試験体(▲)を比較する
と,低強度試験体の方がせん断耐
力を過小評価する傾向がみられた。
y=1.27x
120
80
40
修正荒川mean式 + 山本提案式(低強度)
修正荒川mean式(普通強度)
0
0
40
80
120
160
200
計算値[kN]
最大耐力の実験値と計算値の比較
序論
実験
実験結果
総括
190
320
800
190
200
200
200
500
まとめ
160
380
800
160
125
160
130
160
125
800
等価開口周比:0.4(一定) → 開口低減率:0.6
1) 普通強度および低強度ともに,開口周比が同一であるにも関わ
らず,水平耐力は異なることが確認できた。
2) 有開口の低強度試験体および普通強度試験体を比較すると,耐
力算定式において,開口周比による低減率を0.6とした場合,低
強度試験体の方がせん断耐力を過小評価する傾向がみられた。
序論
実験
実験結果
総括
水平荷重-層間変形角関係
200
180
水平荷重[kN]
160
140
Fc7W-1
Fc7-S-W.C
Fc7-D-W.C
Fc7-D-W.E
Fc21W-2
Fc21-S-W.C
Fc21-D-W.C
Fc21-D-W.E
120
100
80
60
40
20
0
0
5
1/2000 1/500 1/250
1/1000
10
1/125
15
1/100
層間変形角[×10-3rad]
20
1/50[rad]
25
190
320
200
200
200
500
開口周比(開口低減率)
160
190
800
開口周比=max{
160
800
200×320
=0.4
500×800
Σli
:壁の幅
lw
Σli 320
= =0.4
lw 800
低減率=1-開口周比=1-0.4=0.6
125
160
130
800
Σhi ・li Σli Σhi
,l ,h }
h・lw
w
w
Σhi ・li
:開口の見付面積
h・lw
Σhi ・li
=
h・lw
380
Σhi
:壁の高さ
hw
Σhi 200
= =0.4
hw 500
160
125
試験体概要
φ6-@50
4-D13
実験結果
1-D6
4-D6
φ6-@50
4-D13
φ6-@50
4-D13
1-D6
4-D6
総括
150 150
実験
1-D6
4-D6
40
100
700
800
φ3.2-@60
100
100
50100
190
700
800
φ3.2-@60
100
320
100
アンカーボルト用長ナット
100
40
100
アンカーボルト用長ナット
φ2.6-@50
Fc7-S-W.CおよびFc21-S-W.C
700
800
100
アンカーボルト用長ナット
190 100 50 50100 125 160 130 160 125 100 50 50100 160
Fc7-S-W.CおよびFc21-S-W.C
φ2.6-@50
150 150
φ2.6-@50
100
φ3.2-@60
Fc7-D-W.CおよびFc21-D-W.C
380
160 100 50
Fc7-D-W.EおよびFc21-D-W.E
Fc7-D-W.CおよびFc21-D-W.C
図4.2.2 開口補強筋の一覧(補強筋:1-D6)
200
序論
Fc7-D-W.EおよびFc21-D-W.E