九州代数的整数論 2013 —講演概要— P:=プロジェクター使用,∗:=講演者 2 月 11 日 (月) • 伊藤 剛司 (千葉工業大学),高倉 裕 (九州大学 )∗ 「馴分岐岩澤加群の µ-不変量について」P 虚 2 次体 k 上の Zp -拡大 K における S-分岐岩澤加群(S は奇素数 p と無縁な k の素イデアルの有限集合)を考え る.S-分岐岩澤加群とは K 上の S 外不分岐最大アーベル pro-p 拡大との間の Galois 群であり,これは有限生成捻れ Zp [[Gal(K/k)]]-加群になる(特に,S = ∅ の場合が通常の岩澤加群となる).S-分岐岩澤加群の µ-不変量を µS とおく. S の 2 つ以上の素イデアルが完全分解する Zp -拡大に対しては µS > 0 となることが分かる.そこで, 『S の中の 1 つの素 イデアルのみが完全分解する Zp -拡大に関して,µS がどのようになるか』ということに関して調べた. また,Zp -拡大の 1st layer の ray 類群を計算することで,µS = 0 であることを判定できる場合もある.本講演では実 際に Magma を用いて計算した結果について,いくつか興味深い現象を確認することができたので紹介する. • 平之内 俊郎 (広島大学) 「A tensor product in the category of reciprocity functors」 相互関手 (reciprocity functor) とは, Voevodsky の motif の圏に於けるテンソル積を拡張するために Ivorra-Ruelling に よって導入されたもので, (半 Abel 多様体とは限らない)代数群や(A1 -ホモトピー不変でない)presheaf with transfer などを含みます. こうして得られた「テンソル積」と有限体上の曲線の積に対する類体論の関係について紹介します. • 加藤 文元 (熊本大学) 「Yet another Fake Projective Plane via p-adic uniformization」 This is a joint-work with Daniel Allcock (Austin). A fake projective plane is a smooth complex algebraic surface that has the same Betti numbers as, but is not isomorphic to, the projective plane. The first example has been constructed by Mumford more than 30 years ago, which has been yielded from 2-adic uniformization. Ishida-Kato showed that there are two more FPP’s coming from 2-adic uniformization. A complete classification of FPP’s is nowadays known due to recent works by Prasad-Yeung and Cartwright-Steger. It is also known that the three first examples, Mumford’s and Ishida-Kato’s, are the only possible FPP’s that can be obtained from 2-adic uniformization. In this talk, we will see that there’s yet another FPP that can be constructed in the framework of 2-adic uniformization; namely, by quotient of Drinfeld ball by a uniform lattice with torsions. In order to show that the new FPP is not isomorphic to the previously known ones, we go to the associated Berkovich spaces, and compare the homotopy type of them. • 宮谷 和尭 (東京大学) 「有限体上の超幾何函数」 一般超幾何函数 n+1 Fn には,Gauss 和を用いて定義される有限体上の類似がある.本講演では,この函数の数論幾何 的な性質を紹介する.また,ある種の超曲面の族との関連について,講演者による結果も含めて紹介する. • 山下 剛 (豊田中央研究所) 「p-adic multiple zeta values and motivic Galois groups」 We show the upper bounds of p-adic multiple zeta (L-) value spaces which comes from the theory of mixed Tate motives. This is a p-adic analogue of the upper bounds of multiple zeta (L-) value spaces given by Goncharov, Terasoma, Deligne-Goncharov. We also formulate a p-adic analogue of a conjecture of Grothendieck on a special element of the motivic Galois groups for the mixed Tate motives. • 小関 祥康 (京都大学数理解析研究所) 「Full faithfulness theorem for torsion crystalline representations」 2006 年に Mark Kisin によって,クリスタリン p 進表現の成す圏からのある制限関手が充満忠実であるという定理が 証明されました(Breuil 予想).本講演では,その定理のねじれ版を紹介します.ねじれ表現の場合,p 進表現の場合と は異なり,絶対分岐指数や Hodge-Tate 重みに制限をつけなくてはいけません.本講演で紹介する充満忠実性定理にも それらの仮定がついていますが,その仮定が充満忠実性に対して「ほとんど必要十分」になっていることも話します. 2 月 12 日 (火) • 杉山 真吾 (大阪大学) 「GL(2) の保型 L 関数の中心値の平均の漸近的な振る舞い」 Ramakrishnan と Rogawski は、素数レベルの楕円正則カスプ形式に付随する保型 L 関数の中心値の平均に関して、レ ベルを無限大にした時の漸近公式を与えた。また都築氏は square free レベルの Hilbert カスプ波動形式に対する同様の 漸近公式を与えた。本講演では、都築氏の漸近公式の一般のレベルの Hilbert カスプ波動形式への一般化について話す。 • 兒玉 浩尚 (近畿大学) 「A congruence property of Igusa’s cuspform of weight 35」P 井草のウエイト 35 の 2 次ジーゲルモジュラー形式がある不思議な合同関係を満たすという研究結果が得られたので, それについて紹介する.証明には奇数ウエイトの場合の Sturm 型定理と数値計算を用いる. • 岡田 健 (京都大学数理解析研究所) 「A finiteness of twists of a fixed Abelian variety with constrained prime power torsion」 K を代数体とし, K(µ`∞ ) の最大不分岐副 ` 拡大を考える. K 上定義される次元 g の Abel 多様体でその ` 羃等分点が この体上定義されるものは, ` についての直和をとっても有限個しかないだろうということが Rasmussen 氏と玉川氏に よって予想, 研究されており, いくつかの K, g については肯定的な結果が得られている. 本講演では, 一つの Abel 多様体 を固定したとき, その twist となっていてかつこの条件を満たすものは有限個しかないという講演者の結果を紹介したい. • 前田 芳孝 (北海道大学) 「所謂「前田予想」の最近の状況について」P レベル1のモジュラー形式のヘッケ体に関する,所謂「前田予想」の最近の状況について話します.また,時間があ れば, (古い話ですが)志村型ゼータ関数の特殊値と楕円曲線の等分点に関する土井・肥田・前田の結果について,数値 例などを紹介しながら語ることにします. • Dohoon Choi (Korea Aerospace University) 「Eichler cohomology for Jacobi forms」 Eichler established an isomorphism between a special group cohomology and a space of modular forms. This isomorphism has been vastly studied by many researchers. In this talk, I will talk about Eichler cohomology theory for Jacobi forms. 2 月 13 日 (水) • 森澤 貴之 (早稲田大学) 「有理数体の Zp 拡大の中間体の類数について」 有理数体の Zp 拡大の中間体の類数は 1 になるか, という問題を考える. これを Weber の類数問題と呼ぶ. だが, 類数 そのものの計算は難しいため, p とは異なる素数 ` について, 類数の `-非可除性問題を考える. この問題に関し, 単数の高 さの計算を行うことで進展が得られたので, それに関して講演させていただく. これは同志社大学の岡崎龍太郎氏との共 同研究である. • 河本 史紀 (学習院大学),岸 康弘 (愛知教育大学 )∗ ,冨田 耕史 (名城大学) 「Continued fraction expansion with even period and a primary symmetric part with extremely large end」P √ 1, ω(d) を実二次体 Q( d) の標準的整数基底とする. 我々の目的は ω(d) の連分数展開の周期を使って実二次体全体を 分類し, 各周期ごとに実二次体の類数を調べることである. 連分数による数値実験の結果から, 各周期の最小元が類数 1 の実二次体を与えることを予想している. もしこれが正しいならば類数 1 の実二次体の無限族が得られる. 各周期の最小 元を探すために「末尾急増型 (主要) 対称部分」という概念の導入を行う. 末尾急増型 (主要) 対称部分は「pre-ELE 型有 限列」から構成されることがわかる. 副産物として, 4 以上の各偶数周期において極小型実二次体の無限族を構成する. • 梅崎 直也 (東京大学) 「Grothendieck のモノドロミー定理について」 Grothendieck は剰余体にある条件のついた完備離散付置体の ` 進表現のモノドロミーが擬冪単であることを示しまし た。つまり ` 進表現があたえられたとき、体を拡大することによってその惰性群の作用を冪単にすることができます。 この講演ではモノドロミーとは何か、あるいは幾何と数論にどのような類似があるのかという点から始めて、多様体 のエタールコホモロジーにあらわれる表現について、上述の定理における体の拡大次数に関する講演者の結果について お話します。 • 佐久川 憲児 (大阪大学) 「A control theorem for the torsion Selmer variety」 1970 年代にメイザーは素数 p で通常良還元を持つような有限次代数体 k 上の楕円曲線 E に対して、メイザーのコント ロール定理と呼ばれる定理を証明した。これは、基礎体 k の円分 Zp 拡大に沿って出来る E のセルマー群の塔の振る舞 いを記述するものである。ここで、E のセルマー群は E の捻じれ元のなすガロワ・コホモロジーの部分群であったこと に注意する。本講演では、楕円曲線のセルマー群の類似であるような、曲線の基本群から定まるような非可換群を係数 に持つガロワ・コホモロジーの部分集合に対するメイザーのコントロール定理の類似について述べる。また、この類似 物はミンヒョン・キムの定義したセルマー多様体の類似物ともなっている。 • 安田 正大 (大阪大学) 「GLd の smooth 表現の Galois 圏的解釈と保型 Euler 系」 円単数やモジュラ曲線の Beilinson-加藤元はノルム関係式という関係式をみたし, Euler 系の構成に応用を持ちます. 局 所体やアデール群の表現の理論を, 適当な層の理論を用いて解釈することを通じて, このノルム関係式を導出するしくみ を明らかにする試みについてお話します. お話しする内容は, 近藤智氏 (IPMU) との共同研究を通じて得られたものです. アブストラクト作成責任者:三柴 善範 (九州大学)
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