論文要旨

様式 3
学 位 論 文 要 旨
研究題目
The association between left ventricular twisting motion and mechanical
dyssynchrony: a three-dimensional speckle tracking study
(心臓ねじれと非同期調律の関連性 経胸壁3Dスペックルトラッキングを用いた検討)
兵庫医科大学大学院医学研究科
医科学 専攻
器官・代謝制御 系
循環器病 学(指導教授 増山 理
)
氏 名
藤原 昌平
重症心不全の治療法として心臓再同期療法(CRT)の有用性は認知されているが、本治療法の適応決
定には左室非同期の存在証明が重要である。心電図で左室非同期を診断する現行のガイドラインでは
CRT 植え込み患者の 30%に効果の乏しい non-responder が存在する。心臓超音波検査による左室非
同期の評価は、従来の 2D スペックルトラッキング(2DT)での解析では限界があり、3D スペックルト
ラッキング(3DT)による解析技術が用いられている。また3DT により心臓全体の捻れ運動を評価する
ことが可能となったが、左室捻れと左室非同期についての関連性や意義について十分明らかにはなっ
ていない。本研究は 3DT を用いて左室非同期と左室捻れについて検討し、臨床的有用性を明らかにす
ることを目的とした。
対象は洞不全症候群に対し DDD ペースメーカーを植え込んだ 25 例である。また正常 9 例をコント
ロール群とした。ペースメーカー植え込み患者において心房ペーシング時、右室心尖部ペーシング時
に心エコー図を記録した。左室非同期を測定し、その他の指標との相関関係を調べた。それぞれのペ
ーシングモードで 3 次元エコーでの記録から 3DT を用いて、求心方向 (RS)、長軸方向(LS)
、円周
方向(CS)
、エリア(AS)各ストレイン、捻じれの指標として Twist と Torsion を計測した。Twist
は心尖部と心基部の rotation の差で求め、Torsion は Twist を心尖部から心基部までの距離で補正し
て求め、心臓全体の捻じれの評価法とした。左室非同期の指標として左室 16 領域の最大 AS の標準偏
差(16SD)を用いた。
その結果、心房ペーシング時では、収縮期ストレイン(RS、LS、CS、AS)、Twist、 Torsion、16SD
いずれの指標にもコントロール群と有意差は認めなかった。心房ペーシング時と比較して LS、CS、
AS、Twist、Torsion は右室心尖部ペーシング時に有意に低下し、左室非同期の指標として計測した
16SD は増大した。また、16SD 変化とストレイン指標とは相関を認めなかったが、左室捻れの指標の
Torsion の変化に有意な相関関係を認めた(r=-0.65 p<0.01)。左室非同期の評価方法として2DT の問
題点を 3DT により克服可能であるが、左室 16 領域全体の良好な心エコー画像を得られなければ計測
ができない。左室全体の捻れ指標 Torsion は従来用いられてきたストレイン指標と比べ左室非同期を
良好に反映しており、心尖部と心基部の 2 断面の計測により簡便に評価可能である。そのため、3DT
を用いた Torsion 評価は左室非同期の簡便な指標として、CRT 植え込みが有効な患者の選択に非常に
有用であるといえる。