通信装置 省電力 集 ネットワーク 特 情報通信サービスの環境負荷低減に向けた取り組み ネットワーク系通信装置の省電力化の取り組み こ NTTネットワークサービスシステム研究所では,次の世代を担う「将来 ネットワーク」に向け,サービス指向型プラットフォームの実現,および 光コラボレーションやサービス卸といったビジネスモデルによる新たな価 値創造を目指し,ネットワークアーキテクチャやそれを支える技術開発に 取り組んでいます.本稿では,サーバやルータなどのネットワーク系通信 装置の省電力化に向けた取り組みを紹介します. が じゅんいち 古賀 淳一 は ま の たかふみ みやさか まさひろ 濱野 貴文 くりもと たかし てらうち あつし /栗本 崇 /寺内 敦 宮坂 昌宏 NTTネットワークサービスシステム研究所 的 ・ 高度なオペレーションによる 準化が進められており,この活用によ OPEX(OPerating EXpense)削減を り低消費電力化を実現する網制御方式 NTTは2014年に,新しいICT市場 目指しており,その実現に向け,ネット の確立を目指しています. の活性化に向けて,光サービスをその ワークアーキテクチャの検討や,これ 中継トランスポート網のIP転送機 手段として多様なプレイヤに提供する らを支える技術開発に取り組んでいま 能を担う転送系システムにおいては, ビジネスモデルである「卸モデル」を す.併せて,ネットワーク系通信装置 コスト削減と省電力化を図るため,上 開始することを発表しました.それを の省電力も視野に入れたシステム構成 位階梯への機能集約および市中の汎用 支えるネットワークおよびオペレー 技術の検討も行っています. 装置活用によるネットワークの抜本的 将来ネットワークに向けて ションの進化を加速するための技術戦 本稿では,ネットワーク系通信装置 なスリム化に関する研究開発に取り組 略の 1 つとして,NTTネットワーク の省電力化に向けた取り組みについ んでいます.集線した回線をNTTの サービシステム研究所ではネットワー て,トランスポートシステム,サーバ パートナサービス事業者にサービス単 ク上のさまざまなサービス機能を素材 システム,オペレーションシステムの 位で分割して振り分けるエッジ機能に 化することで,パートナサービス事業 3 つの観点から紹介します. ついて,上位階梯への機能集約とトラ 者の要求にタイムリにこたえ,エンド ユーザへの新しいサービス創出を下支 トランスポートシステム フィック処理能力の大容量化による装 置数削減と省電力化を目指します.ま 中継トランスポート網の伝送機能を た,N+m構成技術による,消費電力 担うリンク系システムにおいては, の抑制と信頼性の向上に向けた検討を 私たちは,サービス指向型プラット ネットワークのさらなる大容量化を見 行っています.さらに,従来のビット フォームのもと,多彩なネットワーク 据えた省電力伝送方式や,省電力装置 当りの消費電力が大きく機能的にも 価値の創造,多様な要望にこたえる を活用した網制御方式に関する研究開 オーバスペックの大規模ルータの網構 ネットワーク機能の提供,社会基盤と 発に取り組んでいます.コア網につい 成から,市中の省電力な汎用スイッチ しての安定 ・ 安全 ・ 経済的なインフラ ては,光波長パスの高密度多重化技術 やルータを無駄なく組み合わせ,トラ の実現に向け, 「将来ネットワーク」 と省電力デバイスの活用を組み合わせ フィック量に応じて効率良くスケーラ の研究開発を行っています.将来ネッ ることで,さらなる大容量トラフィッ ブルに容量の拡大 ・ 縮小を可能とする トワークにおいては, 図に示すように, ク流通時にビット当り消費電力を削減 ことにより,転送系システムのコスト ネットワークの抜本的なスリム化によ 可能なテラビット級光伝送方式の検討 削減と省電力化を図るMSF(Multi る CAPEX(CAPital EXpenditure) を行っています. メトロ網については, Service Fabric)技術に取り組んでい 削減,仮想化によるリソースの柔軟 長距離伝送よりも省電力なデバイスの ます. 化 ・ 効率化,網全体にまたがる統合 活用が期待できる中距離伝送方式の標 えするサービス指向型のプラット フォームの検討をしています. これらの取り組みによって,トラン NTT技術ジャーナル 2015.1 29 情報通信サービスの環境負荷低減に向けた取り組み パートナ サービス事業者 ネットワーク ネットワーク 機能 機能 VM オーケスト レータ VM 汎用ハードウェア サーバ コントローラ ネットワーク ネットワーク 機能 機能 VM VM ネットワーク コントローラ 汎用ハードウェア トランスポートシステム ネットワークの抜本 的なスリム化による CAPEX削減 オペレーションシステム サーバシステム 仮想化による リソースの 柔軟・効率化 NTTグループ コラボレーション 網全体にまたがる統合 的・高度なオペレーショ ンによるOPEX削減 転送系システム リンク系システム 中継トランスポート網 10G-OLT/ WDM/TDMアクセス ホームゲート ウェイ 固定 モバイル Wi-Fi VM: Virtual Machine OLT: Optical Line Terminal WDM: Wavelength Division Multiplexing TDM: Time Division Multiplexing 図 将来ネットワークアーキテクチャ スポートシステムの消費電力を従来の ス共有のメリット最大化やサービス展 種多様なネットワーク機器をサービス 2 分の 1 に削減することを目指して 開の迅速化を目指した,ネットワーク 品質や信頼性を満たすようにリソース います. 機能の仮想化による柔軟な機能構成の を設計し運用してきました. すなわち, 実現に向けた研究開発に取り組んでい 急激な負荷の増加を想定しある程度の ます. 余力も持った収容設計を行い,また障 サーバシステム サーバシステムにおいては,リソー 30 NTT技術ジャーナル 2015.1 これまでの通信ネットワークは,多 害発生時においてもサービス継続でき 特 集 るよう予備系の装置を用意する冗長構 レーションでは,統合コントロールの 研究開発を推進していくうえで,本稿 成を採用してきました. 導入により,ネットワーク全体にまた で述べた取り組みに限らず,今後もさ 将来ネットワークにおける新たな がる統合的,かつ高度なオペレーショ まざまな角度から省電力化に対するア サーバプラットフォームは,小型 ・ 低 ンが可能となります.具体的には,① プローチを進め,NTTグループ全体 コストの汎用サーバを複数組み合わせ ネットワークサービスの一括設定や故 の省電力化を目指していきます. る分散アーキテクチャを採用します. 障時の復旧自動化などによるオペレー 提案するアーキテクチャでは,システ ション作業量の削減,②仮想化技術の ムにかかる負荷に合わせて必要な装置 利用によるネットワークサービスと装 台数を自動的に増加,減少させること 置の保守の分離に伴うリモート ・ オン によってサービス品質を維持し, また, サイト運用の抜本的効率化の実現,な ほかの現用系装置にバックアップデー どが期待されています.そして,これ タを相互に持たせることにより,予備 らの実現によりオペレーションに必要 系装置を設けず求められる信頼性を実 なリソース(例えば,現在オンデマン 現します. これらの取り組みによって, ドで行っているオンサイトの現地派 システム全体としてサービス品質や信 遣)が削減された結果,オペレーショ 頼性を確保したまま,リソースを効率 ン業務全体にかかわる電力消費の削減 的に活用することによって,サーバ台 が可能となります. 数と消費電力を従来の 2 分の 1 に削 減することを目指しています. オペレーションシステム また,OpS自体の電力消費について は,まず①によりオペレータ端末など 必要なOpS設備量の削減が期待でき ること,②によりサーバなどの物理的 (左から) 古賀 淳一/ 栗本 崇/ 濱野 貴文/ 寺内 敦/ 宮坂 昌宏 オペレーションシステムにおいて な管理対象装置数の削減が実現すると は,複数装置および複数レイヤをまと 個々の管理対象に対応する装置向け めて管理制御する形態の実現を目指し OpS設備も合わせて削減することがで た統合コントロールと呼ばれる管理機 きることから,消費電力の大幅削減も 構の研究開発に取り組んでいます. 期待できます. 私たちは,将来ネットワークの実現に向 けた研究開発を推進し,ネットワークコス トの抜本的削減と,光コラボレーションや オープンイノベーションによる新たな価値 の創造に貢献します. 今後の展望 ◆問い合わせ先 現在のオペレーション技術では, ネットワーク装置ごと,ネットワーク レイヤごとに準備されたオペレーショ 本稿では,ネットワーク系通信装置 ンシステム(OpS)をネットワーク管 に対する省電力化の取り組みを紹介し 理者が組み合わせて利用する形態でし ました.NTTネットワークサービス た.将来ネットワークにおけるオペ システム研究所は将来ネットワークの NTTネットワークサービスシステム研究所 企画担当 TEL 0422-59-3112 FAX 0422-60-7420 E-mail nskensui lab.ntt.co.jp NTT技術ジャーナル 2015.1 31
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