結核感染診断検査T-スポット .TBについて

結核感染診断検査T-スポット(R).TBについて
~特徴、測定方法、結果判読~
◎藤本 一満 1)
ファルコバイオシステムズ総合研究所 1)
結核発病リスクが高い者および発病後感染拡大リスクが高
い者に対する潜在性結核感染症(LTBI)の治療の有効性
が確立し、結核感染診断の重要性は増した。LTBI の
絶対基準がないため、LTBI に対して感度、特異度は
直接推測することはできないが、従来、結核感染診断
方法として行われてきたツ反は過去の BCG 接種や非
結核性抗酸菌等の影響を受けるため特異度に問題があ
った。これに対して結核特異抗原の刺激によって
リンパ球から遊離されるインターフェロン-γ(IFN-γ)を測定する
IFN-γ 遊離試験(IGRA)は、高特異度、信頼できる
客観的な測定法、被験者の再診不要等からツ反に比べ
有利な点をもつ。現在、IGRA として 2009 年に
クォンティフェロン®TB ゴールド(QFT)、2012 年に Tスポット®TB(T-SPOT)が健康保険に収載され、両方法と
も広く利用されている。
今回、T-SPOT の特徴、測定方法および結果判読等に
ついて報告する。
[結核の感染と発病]
感染とは、結核菌に感染し体内に菌はいるが免疫で
封じ込まれて活動せず潜伏している状態、発病とは、
感染した後に免疫力低下、免疫抑制剤の使用などで体
の抵抗力が弱くなり、結核菌が活動し始めて体の中で
増殖している状態をいう。
[T-SPOT の特徴]
1.採血管:ヘパリン血 1 本。2.採血から検査までの
時間:最大 32 時間。3.検体保存温度:18~25℃。
4.結核特異抗原:ESAT-6、CFP10 の 2 種。5.測
定対象:25 万個の末梢血単核球(PBMC)当たりの IFNγ 産生細胞数。6.検出法: ELISPOT 法。7.検査
日数:2 日。8.検査の自動化率:およそ 10%。9.
感度、特異度:感度は活動性結核患者 80 名中 78 名が
陽性 97.5%、特異度は結核感染リスクの低い 111 名中
110 名が陰性 99.1%(試薬添付説明書より引用)。10.
QFT との相関性:結核菌感染リスクの高い被験者による
陽性一致率は 75/76(98.7%)、結核菌感染リスクの低い被
験者による陰性一致率は 97/97(100.0%)。
[T-SPOT の測定方法]
1.全血から PBMC を分離し、規定の細胞数に調製
する。2.抗 IFN-γ 抗体を固相したマイクロプレートの
4ウェルに 25 万個ずつ PBMC を分注し、ESAT-6、
CFP10 を加え 16~20 時間反応させる。3.ウェルを洗
浄したのち、ALP 標識抗 IFN-γ 抗体を加え反応させ
る。4.ウェルを洗浄して非結合の抗体を除去後、基質
試薬を加える。5.基質が分解されるとウェル底の膜に
暗青色のスポットとして染みつき、IFN-γ を産生した
エフェクターT 細胞の存在を表す(ELISPOT 法)。6.
エリスポットリーダーおよび目視確認にてスポット数を計測する。
7.一定の判定基準に従い、スポット数から結核感染の
有無を判定する。
[測定結果の判定法]
1.(ESAT-6 のスポット数)-(陰性コントロールのスポット数)
を①とする。(CFP10 のスポット数)-(陰性コントロールの
スポット数)を②とする。2.陽性:①および②の両方、
あるいは片方のスポット数が 6 以上の場合。陰性:①お
よび②の両方のスポット数が 5 以下の場合。3.判定保
留:①および②の両方の最大スポット数が 5~7 の場合。
4.判定不可:陰性コントロールのスポット数が 11 以上の場合。
陽性コントロールのスポット数が 20 未満の場合。
図 T-SPOT 測定結果(陽性例)
[結果分布]
当社に T-SPOT の依頼のあった 21,266 検体(2013 年
2 月~2014 年 4 月)の結果分布をみたところ、陽性
8.1%、陰性 87.3%、陽性域の判定保留 1.5%、陰性域
の判定保留 1.1%、判定不可 1.8%、PBMC 規定値未満
0.2%であった。
[まとめ]
T-SPOT は、PBMC の洗浄およぶ細胞数の調製をす
ることで安定した検査結果が得やすく、感度および特
異度が高いことから、結核感染者の特定が可能となる。
当日は、よくある質問に対する回答を紹介する。
連絡先 0774-46-1010