「知識」と「常識」 2001年度秋学期 テキスト意味空間分析法 プレゼンテーションの流れ: 1:データの説明 ・データソース ・採取手順 ・エクセルファイル 2:助詞(は・が・を・に・で)別 スクリプト集合の分析とその特徴 3:まとめ 朝日新聞の投書欄「声」 「常識」:約680件 「知識」:約640件 ・採取手順 ターゲット語・件数・検索年を指定し、専用プログラム を用い、下記のデータについて整理する。 ・投書情報(氏名、年齢、性別、職業、投書年月日、等) ・投書全体 ・ターゲット語を含むセンテンス ・ターゲット語に関する意味図式 ・2回以上の意味図式をスクリプトとして採用 助詞(は・が・を・に・で等)別 スクリプト集合の分析とその特徴 「知識」のスクリプト(1) 知識 は・が 知識 や 知識 知識 ある 増える 持つ 深まる 広まる 15 7 2 2 2 ある 身につける 発揮する 生かす 2 2 2 2 ある 持つ つける する なる 言う 5 4 3 3 2 2 ~する 6 と で 「知識」のスクリプト(2) 知識 を 持つ 得る つける 詰め込む 生かす 着ける 持たない 学ぶ 教える 必要とする 深める 増やす 29 与える 17 教えない 10 開放する 9 活用する 6 駆使する 5 提供する 5 広める 5 注入する 4 吸収する 3 集める 3 もたない 3 高める 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 「常識」のスクリプト 常識 常識 が 常識 ある 通用しない 着く 5 2 常識 2 わきまえる 超える 持つ 覆す 逸脱する 疑う 教える 育てる 無視する 欠く 5 4 常識 4 4 3 3 3 2 2 2 に なる 12 考えられない 考える いく 22 3 2 で を と なる 思う いう 考える する 9 7 4 3 2 「知識」の特徴(1) 1.知識は存在する。 2.知識は知っているか知らないかの2通りしかない。 ディジタル的にいうとon or offの状態である。 3.知識は身につくものである。 ただしこれは砂鉄が磁石につくのと同様に、 人は知る一方であって決して拒むことはできない。 「知識」の特徴(2) 4.知識は誰かに使われるものである。(駆使する) 知識は生かされるものであって自らは働かない。 我々は知識を用いて説明したり、進言したりする。 (行動のフィードバック) しかし、知識は死なない。 使われていない時はsleep状態にあると推測される。 5.知識それ自体が能動的に広がったり深まったりはし ない。人が本を読んだり話を聞いたりして増える。 「知識」の特徴(3) 6.知識は存在するところからないところへ移動する。 その結果普及する。 7.知識は詰め込まれたり、注入されたりするが漏れ出る ことは無い。 8.××の集団に加入する場合や、自分の社会的地位には ある程度の知識が要求される場合がある。 9.知識は増加する一方で決して減らない。 負の動詞はない。 『知識』のスクリプトから見えてくるイメージ 世間 知識はneutralな存在である。 →絶対的な存在 従ってその属性は使われ方に依存する。 知識は増加する一方であり減らない。 人間にとって知識とは 膨張を続ける宇宙のような存在である。 「常識」の特徴(1) 1.常識は2者間以上のものの間に成り立つものである。 2.常識は通時的、共時的に変化する「言語」に似たも のである。 3.常識は使用されない。 「知っている」「わきまえる」という事実が重要で ある。 4.「通用しない」ということから逆に常識はある限定 された閉じた領域に作用することがわかる。 「常識」の特徴(2) 5.「になる」「とする」ということから領域の設定のし かたによって常識は新たに作ることが可能である。 例:○○は既に××の間では常識となっている。 →新しい常識の設定 6.「で考えられない」「を欠く」「を逸脱する」という 言葉は否定的に使われる傾向が多いということから常 識は人々の行為を裁きはしないが、評価は行う。 例:常識で考えられない無軌道ぶり。 →常識で考えられる範囲がその領域内での規範。 『常識』のスクリプトから見えてくるイメージ 常識は閉じられた領域で成立している。 普遍的なものではなく、 領域の境界を変える ことで変化させることが可能である。 「知っている」ということが重要であり 行動の規範のようなものである。 人間にとって常識とは 行動規範である。 まとめ(「知識」と「常識」の比較) 1.知識は普遍的であるが、常識はそうではない。 2.知識は使用することに意味があるが、常識はわきま えることに意味がある。 3.知識は広がって行く一方だが、常識はその領域 の主体者達が意識的に広げていくものである。
© Copyright 2024 ExpyDoc