TJ バイオバンク向け PBMC 単離の 自動化 ルクセンブルク統合バイオバンク(IBBL)は 2008 年の創立以来、 多様な疾患のバイオメディカル研究用に高品質のサンプルデータ ベースを開発し、バイオバンクのパイオニアとして不動の地位にある。 同バンクはこれまでに Freedom EVO® ワークステーションを用いて 幅広い生体サンプルを処理・凍結保存できる自動ワークフロー開発 してきたが、このほど末梢血単核球(PBMC)の生細胞も全血か ら標準的に回収できるようにした。 疾患志向性のバイオバンクとして最先端を走る IBBL は、多様な疾患の新たな診断・治療法を 開発するため、最新鋭の自動化技術を駆使して 大規模な疾患特異的サンプルライブラリを構築し ている。隣接するルクセンブルグ総合病院と連携 しながら、特定の疾患の患者から腫瘍サンプル、 血清、全血、血漿、尿、便などの生体サンプ ルを収集し、凍結保存して国内外の研究機関 に提供する。長年 Tecan との良好なパートナー シップを保つ IBBL は、すでに Freedom EVO 200 プラットフォームを用いて革新的な自動サン プル調製プロトコールを多数開発している(テカ ンジャーナル 2012 年第 3 号を参照) 。今回、 PBMC の生細胞を全血から自動抽出する最新 のプロジェクトでは、IBBL の自動化技術の優位 性がさらに鮮明となった。バイオスペシメンサイエ ンス部門の責任者、Fay Betsou 博士は、プロ ジェクトの内容を次のように述べた。「PBMC は、 Freedom EVO® ワークステーションを背景に左から Gael Hamot、Conny Mathay、Fay Betsou おもにリンパ球と単球で構成されます。ワクチン 10 の開発やバリデーションの分野で関心が高まって とで遠心分離後のピペッティングの高さを最適化 CPT チューブを遠心分離後、キャップを外して いるため、製薬業界では PBMC ベースの機能 し、PBMC を効率的に分離するとともに顆粒 Freedom EVO ワークステーションにセットし、血 アッセイのニーズが着実に拡大しています。 球の混入を最小限に抑えた。Betsou 博士は続 漿に懸濁した PBMC を別のチューブに分注す これらの血球は、これまで Ficoll-Paque 法を けた。「Freedom EVO のバフィーコート抽出で る。 次にプラットフォームに搭載された遠心機で 用いて手作業で分離していました。この密度勾 は、チューブインスペクションユニットを用いてピ 再度スピンする。上清を捨て、クライオチューブ 配法は手間と時間がかかり、10 サンプルから ペッティングに最適の高さを検出しますが、今回 を用いて PBMC のペレットを凍結保存液で再懸 PBMC を単離するのに約 4 時間必要です。」 のプロトコールはこれとは異なり、一般集団の平 濁する。 このように処理したサンプルは、最初 均ヘマトクリット値を使用します。平均値を用いる にプログラムフリーザーで徐々に温度を下げて細 そこで IBBL は、 一 般 的 なクエン 酸 抗 凝 にもかかわらず、この自動化プロセスの回収率は 胞の損傷を避け、その後、液体窒素容器で長 固 剤チューブ(クエン酸 ナトリウム 入り BD 61% となり、手作業の 69% に匹敵します。こ 期間凍結保存する。「凍結保存サンプルの品質 Vacutainer® CPT ™ Cell Preparation Tube) れはニーズを十分満たす良好な結果ですが、さら を確保するには、各容器の細胞濃度を一定にす を使用して PBMC を分離するシンプルな自動 に重要なことは、細胞生存率も手作業(79%) べきですが、標準的なワークフローでは不可能で プロトコールを開発した。 開発チームは、各 と同等の 74% となり、自動化の影響がほとんど す。 凍結保存液は室温では毒性があり、細胞 チューブに確実に同量のサンプルを充填するこ ないことです。」 の生存率を保つにはサンプルをすばやく凍結する BIOPROCESSING TECAN JOURNAL 2/2015 TJ 血液サンプル処理のワークフロー 10 ml EDTA 血液回収チューブ 遠心分離・密閉済み スクリプト A 10 ml CAT 血液回収チューブ 遠心分離・密閉済み 8ml CPT 血液回収チューブ 遠心分離・密閉済み チューブを混合し、 サンプルの均質性を確保 チューブを混合し、 サンプルの均質性を確保 スクリプト B 研究目的に応じて選択 チューブを混合し、 サンプルの均質性を確保 チューブを混合し、 サンプルの均質性を確保 システム搭載の 遠心機でスピン 血漿 220 μl、12 本 0.5 ml マトリックスチューブ 血漿 220 μl、12 本 0.5 ml マトリックスチューブ 血漿 220 μl、12 本 0.5 ml マトリックスチューブ バフィーコート 850 μl + 溶解バッファ 850 μl FluidX 2 ml クライオバイアル バフィーコート 950 μl + 水 3 ml + 溶解バッファ 3 ml 15 ml コニカルチューブ PBS 10 ml に PBMC を懸濁 15 ml コニカルチューブ 血漿 220 μl、12 本 0.5 ml マトリックスチューブ 1.6 ml PBMC を Cryostore10に懸濁 FluidX 2 ml クライオバイアル バフィーコート 100 μl + 溶解バッファ 700 μl 96 ディープウェル プレート IBBL の血液サンプル処理ワークフロー Freedom EVO は 24 例の患者のサンプルを 3 「回収率は手作業に匹敵し ますさらに重要なことは、細 胞生存率に自動化の影響が ほとんどないことです。」 時間以内に自動処理するため、結果的にその間、 技術者は他の作業に集中できるようになり、処 理能力が向上しました。」と締めくくった。 1 Hamot et al . Method Validation for Automated Isolation of Viable Peripheral Blood Mononuclear Cells. Biopres Biobank , 必要があるためです。しかし自動化工程は信頼 性と再現性がきわめて高いため、通常このような ことは問題となりません。また Freedom EVO で は、特定の研究で正確な細胞濃度が必要な場 合、細胞を凍結保存液ではなく洗浄バッファで再 懸濁することもできます。」 PBMC のプロトコールは現在、完全にバリデー ションが終了し 、IBBL の標準的サンプル収集 1 ワークフローの一部に組み込まれているため、バ 2015, in press. Tecan のバイオバンキングソリューションに関する 詳細は、www.tecan.co.jp/biobanking を 参照してください。 IBBL に関する詳細は、www.ibbl.lu を参照し てください。 ■この記事は 2015 年 6 月発行 Tecan Journal 2/2015 に掲載されているユーザーストーリーをテカンジャパ ンが日本語翻訳したものです。翻訳文の表現等に疑義 が生じた場合は、原文をご参照ください。 フィーコート抽出といった他のさまざまなワークフ テカンジャパン株式会社 ローと並行してランできる。Betsou 博士は、「こ TEL. 044-556-7311/FAX. 044-556-7312 のプロトコールを複合的なワークフローの一部に PBMC は遠心分離した全血から抽出する。 E-mail: [email protected] 導入することで、今後は異なる種類のサンプルを 並行して自動処理できるようになりました。 また ハイスループットを目的としたわけではありませんが、 BIOPROCESSING TECAN JOURNAL 2/2015 11
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