サリチル酸/メタノール系における 安全なエステル化反応 サリチル酸メチル エステル化反応 O O OH + CH3OH OH サリチル酸 濃硫酸 O CH3OH CH 3 + H 2O OH メタノール サリチル酸メチル サリチル酸メチル 鎮痛消炎剤として外用塗布薬に用いられている。 エステル化反応によって合成される。 エステル化反応に触媒として濃硫酸を使用。 触媒としての濃硫酸 O エステル化 OH + CH3OH OH サリチル酸 O CH3OH 加水分解 メタノール O CH 3 + H 2O OH サリチル酸メチル 酸触媒作用 プロトンH+がカルボキシ基に付加し,メタノールによる求核付加反応を 促進させる。 脱水作用 エステル化反応で生成した水を吸収して,サリチル酸メチルが生成する 方向に平衡を移動させる。 エステル化反応の一般的な触媒である濃流酸はその二つの働きをもつ。 濃硫酸は取り扱いが難しく危険であり環境にも悪い。 研究目的 酸触媒作用と脱水作用をもつ触媒の組み 合わせを明らかにし,安全に行うことので きるエステル化反応の条件を確立する。 濃硫酸の代替触媒 酸触媒作用と脱水作用の働きを利用するため,それぞれ酸触 媒と脱水剤を使用した。 酸触媒 ・酢酸 ・硝酸 ・塩酸 ・リン酸 脱水剤 塩化カルシウム 塩化カルシウムは固定。 酸触媒を変化させたときのサリチル酸メチルの収率を評価。 実験 試薬 使用器具 サリチル酸,メタノール, 硫酸,硝酸,塩酸,酢酸, リン酸,塩化カルシウム 300 mL丸底フラスコ,玉ごめ冷却器,ウォーター バス,分液ロート,三角フラスコ,ロート,500 mLビーカー,ろ紙,ガスバーナー,枝付きフラス コ,三脚,三角フラスコ,スタンド×3,リー ビッヒ冷却器,温度計 実験操作 ① サリチル酸とメタノールを混合し加熱還流を行い,サリチ ル酸メチルを合成した。 ② 生成物とヘキサンを分液ロートに入れ,炭酸ナトリウム水 溶液を少しずつ加え中性にし,抽出した。 ③ 生成物を枝付きフラスコに入れ常圧蒸留を行い,サリチル 酸メチルを精製した。 このような手順でサリチル酸メチルを合成した。 具体的な実験操作 • 下の試料を用い,1時間加熱還流を行った。 • 常圧蒸留では,温度がヘキサンの沸点の69度になった後,フラスコ 内が減圧されて50度になるまで加熱した。 サリチル酸 10.00 g メタノール 25.0 mL 硫酸など ← 加熱還流装置 加熱還流のとき に使用した触媒 の物質量は すべて0.12 mol に統一。 ← 蒸留装置 サリチル酸メチルを合成し,精製した。 収率の算出 m ――――――――― n₁ ――――――――― n₂ = n₁ M × 100 = サリチル酸メチル の収率〔%〕 M=サリチル酸メチルのモル質量 m=合成されたサリチル酸メチルの質量 n₁=合成されたサリチル酸メチルの物質量 n₂=使用したサリチル酸10g の物質量 〔g/mol〕 〔g〕 〔mol〕 〔mol〕 以上の計算で収率を算出した。 酸触媒を変えたときの収率の変化 酸触媒とその収率のグラフ [%] 50 40 30 グラフのデータ は,再現性を確 かめるため2回 行った実験の, 平均の収率を示 した。 20 10 0 硫 酸 酢 酸 硝 酸 塩 酸 リ ン 酸 塩酸が酸触媒のときの収率が最大。 考察 塩酸 硫酸よりも電離度が高く,プロトンが 溶液中により多く存在する。 リン酸 脱水作用があり,他の触媒よりも脱水効果が高い。 結論 濃硫酸を用いなくとも,酸触媒と脱水剤を 用いることで,サリチル酸メチルを合成する ことができた。さらに,酢酸を酸触媒として 用いてもサリチル酸メチルを合成できた。 今後の課題・展望 1. 塩酸,リン酸を酸触媒とした時のさらなる 考察。 2. 脱水剤を変えたときの収率の評価。 3. 新たな酸触媒の探索。
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