Workshop 2014 on Mathematics and Mathematical Education 平成 26 年 9 月 13 日 (土)∼15 日 (月) 於 奈良教育大学 新館 2 号棟 310 講義室 〒 630-8528 奈良県奈良市高畑町 プロジェクト「地域融合で築く理数教育研究拠点における実践的高度教員養成プログラムの開発」の一環とし て,平成 26 年度科学研究費 【基盤研究 C(# 25400204,代表者 伊藤 直治),若手研究 B(# 26800039,代 表者 花木 良)】の援助を受け, 「Workshop 2014 on Mathematics and Mathematical Education」を開催いた します. 世話人 花木 良 (奈良教育大学教育学部) , 吉井 貴寿 (奈良教育大学理数教育研究センター) アブストラクト付きプログラム 9 月 13 日 (土) 14:00-14:30 正五角形の作図可能条件に関する探求 (数学教育学) 住宅 浩明 (早稲田大学大学院教育学研究科 M1) 正五角形の作図法は現在までに数多く編み出されている。それらはいずれも正五角形の辺 の比(即ち 1:φ)を作るため、√ 5 を作図することが主流であり、現行の指導要領では根 号を学んだ中学 3 年時以降に作図が可能となる。しかし, 多角形を学ぶのは中学 2 年に, 作 図自体は 1 年時に学ぶ。それぞれの学年で正五角形が作図できるか、できない場合は「何 が作れれば作図可能か」を考察する、現行の作図指導から一歩引いた授業の提案をする。 14:50-15:20 プロセス能力に関わる数学教材について―英 Bowland Maths. の考察を通して―(数学教育学) 竹間 光宏 (奈良教育大学大学院教育学研究科 M2) 近年の教育の動向として,教科横断的で汎用的な能力形成が注目されている。数学教育に おいても,学習過程に焦点が当てられ,そこで働く様々なプロセス能力の働きが重要である と考えられている。そして,数学という教科の立場では,数学的問題解決を通してこれらの 能力を育成していくことが必要であると考える。本講演では,イギリスの Bowland Maths. について概観し,プロセス能力に関わる数学教材を開発していくための基礎的考察を行う。 15:40-16:10 「正負の数の加法」の教材分析 ー教材に内在するベクトル空間とアフィン空間の構造に焦点を 当ててー (数学教育学) 市川 和貴 (早稲田大学大学院教育学研究科 M2) 数学を学習する際には、教材として何らかの具体的モデルが用いられることがある。その 多くの場合に、教材には指導したい内容以上の構造が内在する。本稿では、 「正負の数の加 法」が指導される際に用いられる教材に内在する構造を明らかにし、内在する構造の観点 から教材を分析する。 16:30-17:00 離散グラフを用いたネットワーク問題に関する数学的モデル化の教材開発とその実践 (数学教育学) 川下 優一 (奈良教育大学大学院教育学研究科 M2) 近年,探究活動や課題学習が注目され,数学的モデル化の教材開発及び実践が行われてい る.今回は中学・高等学校向けの,最短経路問題に関するネットワーク問題の数学的モデ ル化の教材開発とその実践について述べる.水産物運送をテーマに,問題提起からモデル 化,問題解決及び探究活動までを行う教材を開発し,8 月末に曽爾中学校で実践授業を行っ た.教材の特徴の 1 つとしては,単に 1 つの条件を考慮して問題を解決するのではなく,複 数の条件を加味した「重み付け」を行って問題解決及び探究活動を行うことである.また, 今回の実践を踏まえて最短経路を求めるアプリケーションの開発を行っており,その計画 についても言及する. 17:20-17:50 複素数平面の再構成に関する研究−「複素数による軌道」の見方に焦点を当てて− (数学教育学) 小川 俊彦 (早稲田大学大学院教育学研究科 M2) 複素数平面の指導を整理すると,座標平面の点,平面ベクトル,相似変換として複素数の 説明を行なっている.この説明では, 「複素数平面における複素数とは何か」という問いは 常につきまとう.この問いを解消するため,本論文では,複素数平面(座標平面)が「複 素数による軌道」とみられることを示し,複素数平面の再構成を行なう.これにより,指 導の数学的な裏付けを明らかにし,上記の問いに答える複素数の見方を提示することがで きる. 18:10-18:40 結び目を用いた空間観念育成教材の開発 (数学教育学) 荘司 雅規 (奈良教育大学大学院教育学研究科 M1) 現在の小学校のカリキュラムにおいて、中学校と接続される小学校 6 学年での空間に関す る学習が少なくなっている。さらに、中学校での授業を見学するにおいて、空間を認識す る力が低下しているのを感じた。そこで、空間観念というものを定義し、それを向上させ る結び目を用いた教材の作成をしようと考えた。結び目は、空間操作が多いことや不変量 という新たな概念にふれることができるなどの教育価値は以前から述べられていたので、 そのことより教材化することにした。実際に、実践を視野に入れた日常の問題を取り上げ た結び目教材を今回提案する。 9 月 14 日 (日) 10:00-10:30 準ダイアグラムから読み取ることができる結び目の性質 (トポロジー) 本村 悠 (奈良教育大学大学院教育学研究科 M2) 空間にある結び目には,様々な不変量が定義されている.花木は,結び目の影からもとの結 び目の性質を読み取ろうとし,それらの不変量を結び目の影に定義し,考察を行った.今 回,それらの不変量を結び目の影に一部の情報を加えた結び目の準ダイアグラムに対して, 同様に不変量を定義し,考察を行う. 10:50-11:20 平面閉曲線とその交点の情報から得られる文字列について (トポロジー) 高岡 邦行 (早稲田大学大学院教育学研究科 D3) 結び目ダイアグラムの交点に着目する際, 交点の over/under crossing, left/right crossing, positive/negative crossing の 3 通りの着目の仕方がある. 本講演では, 交点の left/right crossing に着目し, その情報から得られる文字列について考える. その性質上, 交点の over/under crossing の情報を考察することはしないので, 結び目ダイアグラムではなく, 2 次元球面上 の平面閉曲線を扱う. 11:40-12:10 絡み目の配置に関する問題について (トポロジー) 松崎 尚作 (早稲田大学大学院教育学研究科 D3) まず準備として「結び目理論」と呼ばれる位相幾何学の一分野について大まかに説明する。 この分野において、「絡み目」とは、(雰囲気で言えば)「3 次元ユークリッド空間にある、 互いに絡まりあった伸縮自在な輪っか達」を指すが、本講演ではその「絡み目」に関して ある問題を提起し、それ関して得られた結果を紹介する。今回話す問題をかなり平たく述 べれば以下の通りである。 「空間に何らかの曲面達が複数与えられたとき、(注 空間内で、浮輪やビーチボールのよ うなものが幾つかあって、それらが交わっている状態を想像してみて欲しい。)どんな絡み 目がその曲面達に配置出来るか?」 ここで、絡み目が曲面達に配置出来るとは、絡み目を、空間内で切る事なく上手に変形さ せて、輪っかの一つ一つが与えられた複数の曲面のどれかの中に押し込める事を言う。 14:00-14:30 小学校低中学年における定義の構成過程に関する研究―三角形・四角形の概念形成を中心として ― (数学教育学) 大林 正法 (大阪市立田島小学校) 今まで小中接続という観点から,小学校6年と中学校1年をつなぐ研究は多くなされてき た。しかし本稿では,単にこの2学年の接続ではなく,図形教育における小中を一貫させ るカリキュラム構成を視野に入れ,特に小学校低中学年における定義の形成,証明の形を 使った説明の仕方,論理的思考の育成について研究する。この小学校段階での学習と中学 校の論証とをつなげることで小中一貫した図形教育により論証学習の困難さが軽減すると 考えるからである。本稿での論理的思考とは,直観で左右されやすいイメージを言葉で制 御して定義や性質を基に考思することをいう 14:50-15:20 数学教育における子どもの説明の認識に関する研究−調査問題とその分析− (数学教育学) 松井 大樹 (奈良教育大学大学院教育学研究科 M2) 目的は,小学校終了時点から第 2 学年終了時点までの中学生の事柄の正しさを主張する際 の説明の認識の実態のいくつかの側面とその洗練の過程を明らかにし,学習指導への示唆 を得ることである.この目的を達成するために,生徒に調査問題を実施し,その結果を分 析し,考察した. 15:40-16:10 二次元線形リー代数の量子化とその表現論 (代数学) 雪田 友成 (早稲田大学大学院教育学研究科 M1) 本講演ではリー環 sl2 (C) の普遍展開環を変形すること で得られる代数 Uq (sl) の有限次 元表現について有限次元既約表現を決定し、有限次元表現の完全可約性を紹介する。また その過程でいくつかの Uq (sl) の性質を紹介する。 16:30-17:00 局所コホモロジー加群の幾何学的応用の一例 (代数学) 中村 力 (奈良教育大学大学院教育学研究科 M2) 局所コホモロジー加群の定義といくつかの性質を紹介する.その性質を用いて C4 のある 純 2 次元のザリスキ閉集合が,多項式 2 つの零点集合としては表せないことを証明する. 17:20-17:50 置換を用いたパーフェクト・シャッフルの考察(数学教育学) 吉井 貴寿,花木 良(奈良教育大学) パーフェクト・シャッフルとは, トランプを並び変える操作である. この操作を繰り返すと, トランプは元の並びに戻る. これは有限群の位数に対応する. 本稿では, 線形代数で学習す る置換や巡回置換, 合同式を用いてこれを探究する教材を提案する. これは群の学習の素地 となる. このような教材は, 数学的表現のよさを伝え, 大学における数学的活動や課題学習 として適切であることを明らかにする. 9 月 15 日 (月) 10:00-10:30 ハミルトンヤコビ方程式と粘性解 (解析学) 多田 輝夫 (早稲田大学大学院基幹理工学研究科 M1) Lawrnce C.Evans の「Partial Differential Equations Second Edition」のチャプター10 の内容を参考に、1階の偏微分方程式の粘性解を定義し、その基本的な性質を見ていく。 講演では、粘性解という弱解を考えることにより扱える問題が増えること、そして、粘性 解の解の存在と一意性について、次の2つの方程式を中心に考えていく。 |Du(x)| − 1 = 0 in (−1, 1) u(−1) = u(1) = 0 . u (x, t) + min t a∈A {f (x, a) · Du(x, t) + r(x, a)} = 0 u(x, T ) = g(x) on Rn . in Rn ×(0, T ] 10:50-11:20 多項式とハイパー群 (解析学) 釣井 達也 (大阪府立大学大学院理学系研究科 D3) 1 変数複素係数多項式全体の集合 P(x) は*-環の構造を持つ。P(x) に適切に基底を定めるこ とでハイパー群が構成できる。今回は、チェビシェフ多項式を用いて、上記の内容を説明 する。 11:40-12:10 総括討論
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