【S3109 試験】 臨床検査値の異常変動が有害事象とされた症例は

表 2.7.4.3-11
S3108 試験における臨床検査値異常変動の一覧
発現時期 発現時用量
症例番 薬剤
号
肝機能検査
群
F
NOS 異常
F
血中アルカリ
F
性 年齢 因果関係 重篤度
女 5 因 果 関 係 重篤でな
あるらしい い
女
男
4
2
ホスファター
因 果 関 係 重篤でな
あるらしい い
因 果 関 係 重篤でな
あるらしい い
(日)
(mg/日)
82
不明
不明
84
不明
50
ゼ NOS 増加
終了時
中間 (中止) 追跡
投与前
ALP
65
-
66
52
SGPT 24
-
68
22
SGOT 32
-
113
23
T-BIL 0.4
-
0.7
0.9
GGT
50
-
81
63
ALP
51
-
50
58
SGPT 13
-
63
29
SGOT 27
-
53
31
T-BIL 0.4
-
0.4
0.3
GGT
-
10
10
12
ALP 106
145
-
-
SGPT 13
27
-
-
SGOT 21
22
-
-
T-BIL 0.5
0.5
-
-
GGT
16
-
-
16
F:マレイン酸フルボキサミン
*MedDRA-J5.0 にて集計
【S3109 試験】
臨床検査値の異常変動が有害事象とされた症例は,フルボキサミン群の 57 例中 2 例 3
件に認められた(表 2.7.4.3-12)。個々の臨床検査異常変動について,詳細を表 2.7.4.3-13
に示した。
2 例ともに血中乳酸脱水素酵素増加がみられ,うち 1 例では,投与開始日における値
も高く,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加及びアラニン・アミノトランス
フェラーゼ増加もみられた。2 例ともに異常値は追跡時には低下しており,いずれの変
動も重篤とされなかった。
表 2.7.4.3-12 S3109 試験における臨床検査値異常の発現率
マレイン酸フルボキサミン(n=57)
件数
例数
計
肝機能検査NOS異常
*MedDRA-J5.0 にて集計
プラセボ(n=55)
件数
例数
n
頻度(%)
n
発現率(%)
n
頻度(%)
n
発現率(%)
3
3
100
2
2
3.5
3.5
0
0
-
0
0
-
159
表 2.7.4.3-13 S3109 試験における臨床検査値異常変動の一覧
症例番 薬剤
発現時期 発現時用
号
群 性 年齢 因果関係 重篤度 (日)*
量(mg/日)
F
女
4
因果関係
重篤で
あるかもし
ない
れない
4
因果関係な 重篤で
い か も し れ ない
ない
因 果 関 係 重篤で
あ る か も し ない
れない
肝機能検査
NOS 異常
F
女
83
200
84
200
97
-
投与前
中間
終了時
(中止)
追跡
ALP
84
SGPT
11
SGOT 12
T-BIL 0.2
GGT
12
LDH 177
ALP
51
101
13
18
0.4
10
292
50
111
15
22
0.4
9
259
58
105
11
13
0.4
9
206
67
SGPT
SGOT
T-BIL
13
27
0.4
63
53
0.4
29
31
0.3
40
34
0.3
LDH
374
298
261
216
*:S3108 試験の投与開始日からの日数
F:マレイン酸フルボキサミン
注)MedDRA-J5.0 にて集計
2.7.4.4
バイタルサイン,身体的所見及び安全性に関連する他の観察項目
本邦において実施された J3113 試験
(5.3.5.1.1 J3113 試験 表 12.44~表 12.47)及び J3115
試験(5.3.5.2.1 J3115 試験 表 12.22~表 12.25)に関して,生理学的検査(血圧,脈拍,
体重)の全ての測定項目において,フルボキミン投与と異常の発現との関連性は認めら
れなかった。海外試験においても,フルボキサミン投与と血液生化学検査,生理学的検
査における異常発現との関連は示唆されなかった。
心電図検査は,S4001 試験を除く国内外の 5 試験で投与前後に実施された(表 2.7.4.4-1)
。
J3113 試験(5.3.5.1.1 J3113 試験 表 12.48~表 12.49)では,7 例の心電図が異常とされ,
そのうち 5 例(フルボキサミン群 4 例,プラセボ群 1 例)で治験薬との因果関係が否定
されなかった(表 2.7.4.4-2)。因果関係が「関連があるかもしれない」と判断された症例
はフルボキサミン群 1 例(QT 補正間隔延長および心室性期外収縮),プラセボ群1例(QT
補正間隔短縮)であったが,いずれも臨床的に問題はなかった。また,両群間の異常所
見の発現率について有意差は認められなかった(表 2.7.4.4-3)。J3115 試験では,1 例に
PR 短縮が発現したが,程度は軽度であり,投与継続中に正常化した(表 2.7.4.4-4)。治
験薬との因果関係は,「関連があるかもしれない」と判断された(5.3.5.2.1 J3115 試験 表
12.26,表 12.27)。
海外試験(S3107,S3108,S3109)で有害事象と判断された心電図の異常は,S3109
試験におけるフルボキサミン群 1 例にみられた徐脈 NOS のみであり,治験薬との因果
関係は関連ないと判断された(表 2.7.4.4-5)。
160
表 2.7.4.4-1 心電図検査を実施した症例数
試験
J3113 試験
J3115 試験
S3107 試験
S3108 試験
S3109 試験
薬剤群
安全性評価対象例数
F群
P群
F群
F群
P群
F群
P群
F群
P群
182
89
71
131
126
148
150
57
55
F 群:マレイン酸フルボキサミン,
心電図検査実施数
(投与前後)
170
83
61
111
100
119
125
48
45
実施率
93.4%
93.3%
85.9%
84.7%
79.4%
80.4%
83.3%
84.2%
81.8%
P 群:プラセボ
表 2.7.4.4-2 心電図異常変動を示した症例(J3113 試験)
投与量
マレイン酸
フルボキサミン
150mg/日投与
グループ
組
番
年
齢
3
3
5
マレイン酸
フルボキサミン
300mg/日投与
グループ
プラセボ
3
3
4
3
終了時
性 開始前
終了時コメント
異常変動 因果関係
開始前コメント
(正・異)
別 (正・異)
男 正常
異常 心室性期外収縮
異常
ないらしい
女 異常 わずかな ST 低下 臨 異常 非特異的 ST-T 変化
異常
なし
床的には問題なし。組
み入れは可能。
女 異常 左室肥大 ECG 上異常 異常 心 室 性 期 外 収縮 , QTc 異常
あるかもし
を認めたが,臨床上組
延長
れない
み入れには問題ないと
判断した。
女 正常
異常 Q 波の出現がある。しか 異常
ないらしい
し , 臨 床 的 な自 覚 症 状
はない。
女 正常
異常 QTc 短縮 投与前から 異常
ないらしい
認められる生理的変動
の範囲と考えられる
男 異常 特に重篤ではないが心 異常 不整脈(40 秒に 5 個結 異常
なし
房性および心室性の不
滞を認めた)
整脈が認められた。
男 異常 心 房 調 律 , 早 期 再 分 異常 心 房 調 律 , 早 期 再 分 異常 あ る か も し
極,わずかな右軸偏位,
れない
極,T 波増高,わずか
QTc短縮
な右軸偏位 ECG 上の
問題であり,組み入れ
には問題ないと判断し
た。
161
表 2.7.4.4-3
マレイン酸
フルボキサミン
プラセボ
J3113 試験における異常出現率
正常
異常
97.1% (165/170)
2.9% (5/170)
97.6%(81/83)
2.4%(2/83)
p 値 (Fisher 直接確率法)
1.000
表 2.7.4.4-4 心電図異常変動を示した症例(J3115 試験)
12 週後
28 週後
40 週後
異常,
正常
正常
正常
PR 短縮,自覚症状なし
※:投与 6 週後までに 150mg に増量。7 週目から 100mg に減量
識別コード
開始前
52 週後
正常
因果関係
あるかもしれ
ない
表 2.7.4.4-5 心電図異常を示した症例(S3109 試験)
薬剤群 症例 No.
開始前
終了時*
所見
異常変動 因果関係
マレイン酸
異常,臨床的に意味なし 異常,臨床的に意味あり 徐脈 NOS TESS**
なし
フルボキサミン
*: 投与 25 週目
**:治療開始後に発現した又は悪化した有害事象
2.7.4.5
特別な患者集団及び状況下における安全性
2.7.4.5.1
内因性要因
本邦において実施した J3113 試験及び J3115 試験に関して,内因性民族的要因に基づ
く安全性に関する検討は実施していない。
2.7.4.5.2
外因性要因
本邦において実施した J3113 試験及び J3115 試験に関して,外因性民族的要因に基づ
く安全性に関する検討は実施していない。
2.7.4.5.3
薬物相互作用
本申請のために臨床薬理試験は実施しなかったため,本項に該当する新たな情報は得
られていない。
2.7.4.5.4
妊娠及び授乳時の使用
J3115 試験において,投与開始後に妊娠した症例が 1 例あった。本症例への治験薬投
与は中止された。なお,出産後,母子の健康状態に問題ないことを確認した。
162
2.7.4.5.5
過量投与
本申請において,本項に該当する新たな情報は得られていない。
なお,現在市販されているフルボキサミン製剤の添付文書には,以下の記載がなされ
ている。
「【使用上の注意】8.過量投与
徴候・症状:特徴的な症状は,悪心・嘔吐・下痢等
の胃腸症状,眠気及びめまいである。その他に頻脈・徐脈・低血圧等の循環器症状,肝
機能障害,痙攣及び昏睡がみられる。処置:特異的な解毒剤は知られていない。直ちに
胃洗浄を行い,対症療法を行うこと。活性炭の投与が推奨される。強制排尿や透析はほ
とんど無効である。」
2.7.4.5.6
薬物乱用
本申請において,本項に該当する新たな情報は得られていない。
2.7.4.5.7
離脱症状及び反跳現象
本申請において,本項に該当する新たな情報は得られていない。
2.7.4.5.8
自動車運転及び機械操作に対する影響又は精神機能の障害
「2.7.4.2.1 有害事象の解析」において記述したように,社会不安障害を対象とした国
内外の臨床試験において,フルボキサミン投与群の有害事象として傾眠及び嗜眠が高頻
度に発現した。傾眠の発現率は,J3113 試験で 43.4%,S4001 試験で 26.1%,S3107 試験
で 20.6%,S3108 試験で 12.8%であった。また,嗜眠の発現率は,S4001 試験で 10.9%,
S3107 試験で 6.9%,S3108 試験で 4.1%であった。
フルボキサミンによって傾眠及び嗜眠が発現することについては,既承認の「うつ病
及びうつ状態」並びに「強迫性障害」の承認時にも同様の傾向が認められており,既にフ
ルボキサミンの市販製剤の使用上の注意においても,重要な基本的注意として,「2.重
要な基本的注意 (1)眠気が起ることがあるので,本剤投与中の患者には,自動車の運
転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」を記載し,使用に際す
る注意喚起を十分に行っている。
163
2.7.4.6
市販後データ
2.7.4.6.1
国内市販後データ
本邦では,1999 年 4 月にうつ病及びうつ状態,強迫性障害の適応で承認されている。
19
年 月まで(約 6 年間※)のフルボキサミンを投与された患者数を,
月から 20
年
販売した原薬から算出すると約 900 万人となる。
表 2.7.4.6.1-1
19 年
月
日
~
19 年
月
日
19
19 年
月 日
~
20 年
月 日
年
日から 20
月
20 年
月 日
~
20 年
月 日
20 年
月 日
~
20 年
月 日
年
20 年
月 日
~
20 年
月 日
月
日の原末出荷数量
20 年
月 日
~
20 年
月 日
20 年
月 日
~
20 年
月 日
20 年
月 日
~
20 年
月 日
合計
販売数量
(kg)
表 2.7.4.6.1-2
曝露されたと推定される患者数
一日量 125mg を 6 週間投与と仮定
販売した原薬の総数量(kg)
患者一人当りの投与量(kg)
推定患者数
市販後調査として使用成績調査,長期特別調査,小児特別調査及び市販後臨床試験を
実施した。これら市販後調査,副作用自発報告及び研究報告に基づき,医療機関への適
正使用を促進するための添付文書改訂が随時行われており,現在の添付文書に至ってい
る。20
年
月
日付けの「新医療用医薬品に関する安全性定期報告書」により,現
在までの国内市販後データがまとめられている。
2.7.4.6.1.1
使用成績調査
本調査は 19
年
月~20
年
月までの期間(約 3 年間※)に,両社合計で 3000 例
を収集目標として実施された。対象となる適応症ならびに用法用量は承認適応及び承認
用量に従って実施した。その結果,3195 例が収集された。
そのうち,安全性解析対象となった 2956 例中,601 例 914 件(20.3%)の副作用が見
られた。
副作用の内訳は,「胃腸障害」が 312 例 385 件,
「神経系障害」が 171 例 186 件,「精
神障害」が 83 例 102 件,
「代謝および栄養障害」が 60 例 63 件,「全身障害および投与
局所様態」が 43 例 45 件,
「臨床検査」が 35 例 57 件,
「皮膚および皮下組織障害」が 15
例 17 件,
「心臓障害」が 13 例 15 件,
「肝胆道系障害」が 12 例 12 件,
「腎および尿路障
害」が 8 例 8 件,
「血管障害」が 6 例 6 件,
「呼吸器,胸郭および縦隔障害」が 4 例 4 件,
※新薬承認情報提供時に追記した。
164
「生殖系および乳房障害」が 4 例 4 件,「血液およびリンパ系障害」が 3 例 3 件,「骨格
系および結合組織障害」が 2 例 2 件,「眼障害」が 1 例 1 件,「耳および迷路障害」が 1
例 1 件であった。
発現頻度 1%以上の主な副作用は,
「悪心」7.21%(213 件/2956 例)
,
「傾眠」3.52%(104
件/2956 例)
,
「食欲不振」1.59%(47 件/2956 例)
,「胃不快感」1.39%(41 件/2956 例)
,
「頭痛」1.05%(31 件/2956 例)であった。
表 2.7.4.6.1.1-1
初回承認時と使用成績調査における副作用比較(使用成績調査での 10 件以上の副作用)
区分
調査施設数
調査症例数
副作用等の発現症例数
副作用等の発現件数
副作用等の発現症例率
承認時迄の状況
140
712
306
690
42.98
副作用等の種類
動悸
上腹部痛
便秘
下痢
消化不良
悪心
胃不快感
嘔吐
倦怠感
口渇
γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加
食欲不振
食欲減退
浮動性めまい
頭痛
傾眠
不眠症
易刺激性
躁病
5
5
36
6
2
84
6
11
23
51
10
11
4
18
15
69
12
6
6
使用成績調査の累計
627
2956
601
914
20.30
副作用等の種類別発現症例(件数)率(%)
(0.70)
13
(0.44)
(0.70)
14
(0.47)
(5.06)
27
(0.91)
(0.84)
23
(0.78)
(0.28)
13
(0.44)
(11.80)
213
(7.20)
(0.84)
41
(1.39)
(1.54)
22
(0.74)
(3.23)
18
(0.61)
(7.16)
16
(0.54)
(1.40)
12
(0.41)
(1.54)
47
(1.59)
(0.56)
14
(0.47)
(2.53)
17
(0.57)
(2.11)
31
(1.05)
(9.69)
104
(3.51)
(1.69)
26
(0.88)
(0.84)
12
(0.41)
(0.84)
17
(0.57)
また,有効性解析対象症例は 2581 例であり,改善した症例(改善以上)は 2003 例
(77.6%)であった。
表 2.7.4.6.1.1-2
収集症例数
3195 例*
デプロメール錠・ルボックス錠市販後使用成績調査結果(両社合算)
安全性解析
副作用発現件数/例数
対象例
(副作用発現率:例数/例数)
2956 例
914 件/601 例(20.3%)
*:デプロメール 1638 例,ルボックス 1557 例
165
有効性解析対象例
改善例数(改善率)
2581 例
2003 例(77.6%)