不動産市場と活用法 - BIZ FUKUOKA

2016年
BIZ REPORT
不動産市場と活用法
九州7県マンション流通・供給データから読む福岡、熊本の不動産動向
福岡市西部上空からの空撮風景
(提供:福岡市、撮影者:Fumio Hashimoto)
か ら の 景 気 の 回 復・
拡大とともに不動産
取引も活発化して、地
価自体も上昇に転じ始めてい
る。そ し て、九 州 地 域 で 約 1 万
戸が供給されているマンショ
ン市場においてもプレミアム
化やハイスペック化などの動
き も み ら れ る。昨 今 の 九 州 に お
けるマンション販売の動向を
追いながら、マンション選びの
ポイントを考えてみた。
バブル崩壊後、福岡県の地価が
初 め て プ ラ ス に 転 じ た― 。
2015年3月に国土交通省が発
表した福岡県内の公示地価は、前
年にマイナス0・3パーセント
だった住宅地がプラス0・1パー
セントへと、実に 年ぶりに上昇
した。 福岡県の住宅地の地価上昇にお
いて、牽引役となった福岡市の地
価は、住宅地・商業地ともに3年
連続で上昇している。福岡市の住
宅地は戸建て住宅・マンションと
もに需要が堅調で市内の全7区で
上昇を続けており、中でも地下鉄
沿線で生活に便利な地域での上昇
率が昨年より大きかった。このた
め、福岡市における住宅地の公示
地価はプラス2・2パーセントで
前年比0・4ポイント増だ。
一方、福岡市の商業地は、九州
新幹線開業を契機に動き出した大
型再開発ビルの建設プロジェクト
が進む博多駅周辺や、国家戦略特
区としての再開発プロジェクト
「天神ビッグバン」で今後街並み
が一新されていく天神地区での上
2015年公示地価にみる
福岡・熊本の不動産動向
折
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昇幅が特に大きい。この結果、福
岡市の商業地はプラス3・8パー
セントで、同1・1ポイント増と
好調だった。
また、九州新幹線で福岡市から
最速 分の位置にあり、2012
年4月に政令指定都市へ移行した
熊本市の公示地価においても全用
途(住宅地・商業地)でプラス
0・2パーセントと 年ぶりに上
昇した。
熊本市の住宅地は、都心部に近
い住宅地をはじめ、大規模商業施
設の進出によって生活の利便性が
向上した地域や区画整理で良好な
住環境になった地域で戸建て住宅
やマンションへの需要が堅調だっ
た。このため、熊本市における住
宅地の公示地価は、プラス0・3
パーセントで同0・2ポイント増
だった。一方、熊本市の商業地で
はマイナス0・1パーセントだっ
たが、同0・6ポイント改善する
など回復基調にある。熊本市の商
業地においては、ショッピングセ
ンターの進出による商業施設の集
積で店舗需要が堅調なことに加え
て、幹線道路沿いで郊外型施設が
集まる商業地では周辺地域でのマ
ンション需要も相まって下落率が
縮小している。
熊本県全体の地価は全用途でマ
イナス0・6パーセントと 年連
続の下落だったが、熊本市での回
復基調もあって同0・5ポイント
の改善がみられた。
もっとも、福岡・熊本も含めた
全国的な動向としては、2014
年4月の消費税増税前に発生した
駆け込み需要とその反動を踏まえ
て、2017年4月に予定されて
いる消費税再増税の影響を懸念す
る声も聞かれる。その一方で、
30
23
20
◀2014年
九 州 7 県における供
給戸数・販売戸数・年
末在庫数・契約率
※1
※1. 販売中止物件
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Reading
激 動 期 を 経 て 、良 質 物 件 増 加 、
居住性への研究熱心な
事業主選びがコツ
20 07 年 か ら 20 0 9 年 に
かけて、マンション業界に激震を
も た ら し た、
「建 築 基 準 法 の 改
正」
、
「リーマン・ショック」や「世
界同時株安」といった世界経済の
激動期を経て、事業主はマンショ
ンの質の向上や販売 姿 勢の見直
し を 積 極 的 に 行い、慎 重 な 企画
販 売 を 続 け て き ている。そ の 結
果、2012年以降、九州の新築
マンション市場は、概ね堅調に推
移している。その中で特に注目さ
れ、売 れ 行 き が良い物 件は、
「居
住者の生活を第一に考えている」
「立地・環境・機能・仕様・価格の
充 実 を 図 るため、熱 心に研 究 し
ている」の2点が基本。高額化が
強まる中で、各事業主とも、更に
質の高いマンションへの研究を進
めており、2016年は、マンショ
ン市場 がより活発 化することが
予想される。
BIZ FUKUOKA
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坂本康行氏
編集部長
均1割強もアップしており、中でも
佐 賀 県 内で販 売されたマンション
の平均単 価は2割 強もアップした
というデータもある。今後、さらな
る景気拡大で地価の上昇も想定さ
れて、さらに人 手不足や材 料 高 が
続いていくものとみられる。
となるのは、「これまで、どれだ
けの実績のある売主、建築会社な
のか」という〝実績〞だ。過去に
実績が多い業者ほどノウハウがあ
り、長年営んでいれば、それだけ
信用度も高いといえる。
その業歴については、不動産の
営業免許番号からある程度知るこ
とができる。免許番号の頭につい
ている( )内の数字は5年毎の
免許更新回数を示しており、その
数が多いほど営業年数が長い。
さらに業界団体に加盟している
ど う か も ポ イ ン ト に な る。不 動 産
業界には
(社)
不動産協会、
(社)
不
動 産 流 通 経 営 協 会 が あ り、マ ン
ション管理には
(社)
高層住宅管理
業 協 会 が あ る。不 動 産 業 界 は 団 体
を組織して、自主規制を通じて社
会的信用を高める努力を積み重ね
て き た。こ の よ う な 団 体 に 加 盟 す
る業者は、一定基準に基づく資格
審査に合格した者である。
これらの点を踏まえてもマン
ション選びにおいては、〝優秀で
良心的〞な業者選びがポイントで
あることは間違いない。
毎月、定期的に九州一円を回り、マンショ
ン情報を収集、分析をおこなっている。
月
刊マンション統計書の発刊、集大成とし
て年鑑統計書「福岡県マンション市場動
向とその方向」
「九州・山口 7 県マンショ
ン市場と そ の 方 向」を 発 刊。最 新 版 は、
2016 年 2 月発刊予定。
その他、賃貸マン
ション年鑑、各種市場調査手掛ける。
個人向けマンション選びの
ハウツーとポイント
個人にとって人生最大の買い物
となるのは、〝我が家〞だ。この
人生最大の選択を成功に導く上で
欠かせないのが、良い業者を選ぶ
〝目〞である。
マンションの購入においても、
「良い業者が、良い住まいをつ
くっている」という事実を多くの
人々が経験する。住宅を巡っては
建築・販売・補修・管理・仲介・
売買などさまざまな不動産業者が
関わる中、「どの業者が優秀で良
心的なのか」を見極めることがで
きれば、マンション選びは半ば成
功したともいえる。
その業者選びで、まずポイント
PROFILE
「2020年の東京オリン ピ ッ ク
までは景気は拡大を続け、 地 価 の
上昇に加えて、人手不足や 材 料 高
で建築コストも上昇してい く 」 と
いう見方も強い。
昨今の不動産を巡る状況下で
は、金融商品として登場し た リ ー
ト(不動産投資信託)の浸 透 や 不
動産ファンドの台頭、さら に 外 資
などによるグローバル投資 の 活 発
化していく中、不動産を〝 賢 く 〞
活用していくことが求めら れ る 。
そのためには、不動産のプ ロ を 外
部ブレーンとして持つことも今
後、必要ではないだろうか 。
244棟・6980戸にほぼ匹敵
する数字だ。しかし、実際には前
年からの在庫戸数が2745戸あ
り、新規供給戸数のみの契約率は
・1パーセントとなる。
一方、マンションの供給戸数と
年間販売戸数を九州各県別にみて
みると、福岡県は供給戸数
(6291戸、九州内比率 .0
パーセント)、年間販売戸数
(4490戸、同 .8パーセン
ト)で、ともに全体の約2/3を
占めるという圧倒的な首位だ。次
いで鹿児島県の供給戸数(767
戸、同8・0パーセント)・販売
戸数(552戸、同8・1パーセ
ント)、熊本県の供給戸数
(641戸、同6・7パーセン
ト)・販売戸数(448戸、同
6・6パーセント)が続き、上位
3県による九州内シェアは実に8
割を超える。
さらに九州内におけるマンション
販売の動向について、九州7県およ
び主要8都市における平均単価お
よび平均坪単価ともに上昇傾向に
ある。過去3年間でみてみると、平
有限会社 住宅流通新報社
販売価格や建設費の
上昇がみられる九州内の
マンション市場
2014年に九州7県に お い て
供給されたマンションの戸 数 は 住
宅流通新報社調べによると、
9573戸だった。一方、 年 間 販
売戸数6828戸で、契約率は
・3パーセントだった。 販 売 戸
数自体は一見、新規供給戸数
71
69
65
66