革新 - BIZ FUKUOKA

 日露 戦 争 での戦 勝に沸いた1905︵明 治 ︶年 月に創 業し
た石村萬盛堂は、明治∼大正∼昭和∼平成という時代の荒波を乗
り越えて今年、創業111年を迎える。
地元を代表する老舗企業の一社である同社は、マシュマロの製法
を取り入れた博多銘菓﹁鶴乃子﹂の商品開発をはじめ、洋菓子ブ
ランド﹁ボンサンク﹂による引き菓子需要の創出、ホワイトデーの
前 身 で ある﹁マシュマロデー﹂の考 案 な どの〝革 新〟的 な 取り組み
を実践してきた歴史をもつ。
これらの革新し続けることを自社の伝統とする石村萬盛堂の三
代目社長である石村 悟氏に長寿企業の秘訣をはじめ、ホワイト
デーの誕 生 秘 話、洋 菓 子 ブ ランド・ボンサンクの由 来、さ らに今
後に向 け た 夢 や 思いな どについて 聞いた。そして、福 岡・九州の
今後を担っていく若手経営者やビジネスリーダーらへのメッセージ
などについて語った。
長 寿 企 業の秘 訣 は、〝伝 統〟
と
〝
革新〟
のあんばい
が、いろいろ苦労しました。当時
の洋菓子は焼き菓子やチョコレー
ト、生ケーキなど日持ちの長い商
品と生菓子だけで、ショコラボア
などの中間的なセミソフト︵半生︶
市場は誰もやっていませんでし
た。そこで新たな挑戦を試みまし
たが、なかなか大変でしたね。
い ろ い ろ 苦 労 し た 末、〝手 土 産
市場〟を見出して結婚式の引き出
物として、ボンサンクの洋菓子を
売り込みました。当時、結婚式の
引 き 菓 子 は 和 菓 子 が 中 心 で 最 初、
まったく相手にされませんでし
た。しかし、試しに取り扱っても
ら う と、飛 ぶ よ う に 売 れ ま し た。
潜在的な洋菓子のニーズをもと
に需要を創造した好例であり、私
自 身 で も 革 新 的 だ と 思 い ま し た。
その時期に誕生したのがマシュマ
ロデー、いまのホワイトデーです。
国内1000億円市場 が誕生
したのは意外なきっかけ
誌 の 投 稿 記 事 を 読 ん で 早 速、﹁バ
レンタインデーに君からもらった
チョコレートを、僕のやさしさ︵マ
シュマロ︶で包んでお返しするよ﹂
というコンセプトをもとにして企
画を練りました。
肝心の﹁マシュマロデーを何日
にするか﹂については、女子社員
を集めた企画会議で話し合いまし
た。当初はバレンタインデーのお
返しとして日月を逆読みにした4
月 日が有力でした。しかし、あ
る 女 性 社 員 か ら﹁バ レ ン タ イ ン
デーの返事を2カ月も待つのは
嫌﹂との一言で却下になりました。
次に1週間後の2月 日という案
も出ましたが、お菓子屋として性
急過ぎるので結局、1カ月後の3
月 日に落ち着きました。
最初、マシュマロデーは岩田屋
︵現 岩 田 屋 三 越︶と 一 緒 に 立 ち 上
げ、その際に3月 日という日程
は、雛 祭 り と 彼 岸 と の 間 で あ り、
百貨店の催事場が空いていたこと
もあって、トントン拍子で話が進
みました。そして、翌年には東京
の三越でマシュマロデーの催事を
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す。その参加も一般会員としてで
はなく、何かの委員会の役員を務
めることをお奨めします。
たとえば、委員会での役員を経
験 す る と、自 分 自 身 の リ ー ダ ー
シップが鍛えられます。その経験
は、自社の経営にも生きてきます。
特に経営者がいろいろな会に参加
するのは、自社の経営を良くする
ためであり、積極的に役割を引き
受 け ら れ て は い か が で し ょ う か。
このような交流を通じて自分の
師として尊敬できる人物に出会え
たら、大変意味があります。
自社の社会的存在が、
﹁博多の風景でありたい﹂
やって、全国的に広がりました。
毎年、マシュマロデーをやって
いるうちに百貨店から﹁マシュマ
ロ以外の商品も売りたい﹂という
申 し 出 が あ り ま し た。そ こ で マ
シュマロの白をイメージしたホワ
イトデーとして、すそ野を広げま
した。今日ではマシュマロに限ら
ず、いろいろなお菓子や商品がバ
レンタインデーのお返しに使われ
て、日本国内の市場規模は約10
00億円強と推計されています。
革新を生むアイデアや
ひらめきと出会える
〝場〟
とは
企業経営を革新するようなアイ
デアやひらめきは、いろいろな人
たちと交流する中から生まれるこ
ともよくあります。交流自体は一
見、無意味にみえるかもしれませ
んが、実は大変な価値があります。
その価値を見出せるかどうかは経
営者の力量次第です。
私は博多法人会の会長を務めて
い ま す が、ま ず 会 合 に 参 加 し て、
他の会員と交流することが大事で
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BIZ FUKUOKA
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のものか﹂との問いがありました。
私自身は、創業時では自分のモノ
だと思ってやらないとだめだと考
え ま す。自 分 の モ ノ だ か ら こ そ、
自らの目標に向かって、一生懸命
に頑張ることできるのです。最初
から﹁世のため、人のためでやっ
ている﹂ときれいごとを言ってい
るようでは成功しません。
しかし、ある時期になると、社
会 に 目 を 向 け る 段 階 を 迎 え ま す。
﹁自 分 の 事 業 が 世 間 に ど の よ う に
役立つのか﹂という意識が芽生え
て、社会への貢献に目覚めます。
たしかに世の中での役立ち方
は、企業それぞれであり、当社の
場合、おいしいお菓子を提供する
ことが第一義です。そして、当社
の存在そのものが博多の風景であ
りたいと願っています。
3月14日のホワイトデーは、石村萬盛堂の
「マシュマロデー」
が
スタートだったことを伝えるポップ用画像
1978年3月14日にホワイトデー
の前身であるマシュマロデー
が誕生しました。少女雑誌の
投稿記事をヒントに、現社長の
石村 悟氏が女性社員も交え
た社内会議での議論を経て、
誕生しました。今日では、
「あり
がとう」
を伝える日としても親し
まれ、市場規模は1000億円強
といわれています。
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先日、百年企業をテーマとした
シ ン ポ ジ ウ ム が あ り、﹁企 業 は 誰
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〒812-0028 福岡市博多区須崎町2-1 TEL092-291-2225
1905(明治38)年12月25日
正社員260名 パートアルバイト770名
http://www.ishimura.co.jp/
所在地
創 業
従業員
サイト
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1953年に博多大丸の開店に
伴って
「大丸洋菓子部」
として、
洋菓子部門が発足しました。
その後、洋菓子部門をもとに立
ち上がった洋菓子ブランドが、
「ボンサンク」です。
フランス語
で
「おいしい5つのもの」
という
意味があるボンサンクでは最
初、5品の洋菓子でスタートしま
した。
会社概要
イ善
黄身と砂糖のみを使う鶏卵素
麺の製造過程において大量に
発生した卵白を原料に1910年
頃アメリカから日本へ伝わった
マシュマロの製法を取り入れて
誕生したのが博多銘菓「鶴乃
子」です。
「 人が角いものを作
るなら、
こちらは丸いものを作
れ」
との初代の信条が菓子や
箱の形に現れています。
﹁バ レ ン タ イ ン デ ー の お 返 し が
ないのは不公平だ﹂という少女雑
PROFILE
!?
〝伝統の良さを活かしながら常
に革新を続ける〟〝革新を続ける
ことも伝統とする〟ことが当社の
企業理念です。
石村萬盛堂の代名詞ともいえる
鶴乃子自体が発売当時、和菓子の
中でも際立って洋風の要素を取り
入れた革新的な商品でした。
また、洋菓子自体も地元でいち
早く手掛けました。1953年博
多大丸の誕生時に声を掛けても
らったのが始まりで当初、大丸洋
菓子部としてスタートしました。
その後、洋菓子ブランドとして
立ち上げたのが﹁ボンサンク﹂で
す。ボンサンクのネーミングは私
の名前に由来して、英訳だと﹁グッ
ド・ファイブ﹂になります。フラ
ンス語のボンには﹁おいしい﹂と
いう意味もあり、選りすぐりの5
つのお菓子でスタートしました。
ボンサンクを立ち上げた197
9年に社長に就任して、私自身も
ボンサンクの店頭に立ちました
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創業 111 年の〝革新〟の歴史から生まれた
株式会社 石村萬盛堂 代表取締役社長 石村 イ善悟 氏
1905年12月25日、初代・石村
善太郎氏が創業した石村萬
盛堂は、
「オッペケペー節」で
一世を風靡(ふうび)
した新派
劇の創始者である川上音二郎
の自宅(当時の福岡市中対馬
小路)を借り受けて店を構え
た。創業当時は、落雁や、
カス
テラ、郷土菓子である鶏卵素
麺などをつくっていました。
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博多祇園山笠の山留めにある
現本店(福岡市須崎町)へ移
転したのは、1923( 大正12)年
のことでした。当時としては珍
しかった本店の建物も太平洋
戦争での戦局悪化に伴う強制
疎開命令によって取り壊されま
した。その後、1945年6月の福
岡大空襲で福博のまちは一夜
にして焦土と化しました。
福岡市出身、1948年6月14日生、東京大学経済学部卒。1971年石村萬盛堂に入社、
1979年同社社長に就任。九州電力監査役(社外)、博多21の会会長などを歴任。
現在は博多法人会会長や裏千家博多支部長などを務める。
趣味は読書、
謡曲
(宝生流)
ಱ૪ɁႨ๑Ȧࣅ౫ೢާ
老舗企業が培ってきた〝伝統〟は、
石村萬盛堂創業111年の歩み
from social leader
YELL
∼福岡・九州の社会的リーダーからのメッセージ∼
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