岐阜県 GAP ※への取組による安全な農産物づくりの推進 活動期間:平成19年度~(継続中) ○ 残留農薬検出、汚染米流通、産地偽装表示など食の安全を脅かす事例 が発生しており、産地では、これまで以上に安全な農産物の生産・供給体制 の強化が求められるようになった。 ○ このため普及指導センターでは、コーディネート機能を発揮し、推進体制 の構築を支援するとともに、生産組織に対してわかりやすくGAPを説明・指 導するなど、GAPの導入を推進。 ○ その結果、県内では、平成23年度末時点で21産地で取組がスタート。 具体的な成果 普及指導員の活動 1 GAPに取り組む産地の増加 ■普及指導員が生産組織とJA、市町村等 ■産地でGAPへの理解が促進され、県内で の関係機関との間でGAPへの取組に向 GAPに取り組む産地が増加。 けて合意形成を進め、推進体制を整備。 岐阜地域では、生産部会、JA、市町とと H20 H23 もに「GAP運営委員会」を設立。 0 → 21 2 生産者の意識の変化 ■清潔な服装、農薬の適正な管理等ルール を徹底するとともに、生産者同士が相互に 情報交換をおこなうことで、生産者が安全 な農産物づくりをより意識するように変化。 3 農家の経営改善 ■GAPによるチェック を実施した結果、整 理整頓が徹底さ れ「物をなくさない」 「作業動線の見直し」 につながり、作業効 率が向上。 ■栽培管理等、各種記録用紙への記帳と回 収によりデータが蓄積し、分析することで、 施肥・農薬の使用料が削減。 ■GAPの必要性、取組方法について理 解を高めるため、研修会の開催や巡回 指導による説明を実施。また、GAP への取組が始まってからは、確実に実 施できるよう組織や農業者を支援。 ■県庁や農業革新支援専門員との連携に より普及指導員は、必要な情報を集め るとともに生産現場の課題を整理し、 点検項目リストを作成。 ■巡回指導時の農業者との意見交換や提 出された記帳データを分析し、点検項 目の見直しを産地へ指導。 普及指導員だからできたこと ・直接農業者に接し、生産現場の状況を 十分に把握している普及指導員だからこ そ、産地に対して分かりやすく説明し、 理解を得ることが可能。 ※GAPとは: 農業生産工程管理の略で、農産物の生産 及び出荷の段階で、発生し得る危害や環境への悪影響等 の要因(リスク)を分析して農作業の点検項目を定め、点検項 目に従い実践した結果をチェックして記録に残し、記録を分 析して新たな点検項目を定めることを繰り返し、リスクを最小 限にとどめる仕組み。 ・高いコーディネート力を持つ普及指導 員だからこそ、関係者の合意形成を進め、 GAPへの取組体制を整備することが可 能。 岐阜県 1.取組の背景 岐阜県では、県土の保全と県民に安全・安心な農産物を提供することを目的 とした「ぎふクリーン農業」理念の普及と登録制度の推進を図ってきた。 しかし、全国で発生した残留農薬検出、汚染米流通、産地偽装表示など食の 安全を脅かす事件・事故の発生により、ぎふクリーン農業の制度だけでは十分 に対応ができない農薬、肥料の適切な使用以外の食品リスクへの対応も求めら れる状況となってきた。 そこで近年、欧米をはじめとした世界各国で採用されているGAP(農業生 産工程管理)*に注目し、有効活用に向けて正しい知識の普及と制度の定着を 図ることとした。 ※GAPとは 農業生産工程管理の略。 農産物の生産及び出荷の段階で、発生し得る危害や 環境への悪影響等の要因(リスク)を分析して農作業の 点検項目を定め、点検項目に従い実践した結果をチェ ックして記録に残し、記録を分析して新たな点検項目 を定めることを繰り返し、リスクを最小限にとどめる 仕組み。 2.活動内容(詳細) (1)GAPへの理解の促進 1)ぎふクリーン農業に取り組む 124 の園芸組織に対して、県内 10 箇所の 農林事務所(普及指導センター)が、栽培研修会等生産者が集まる機会に GAPの必要性、制度の概要について説明した。 2)各生産組織のリーダーに対しては、巡回指導などの機会を通じて、G APの導入に向けた検討を行った。 3)生産者に限らず、JAや市町村等の関係機関に対して、営農連絡会議 等の場でGAPに関わる情報を共有した。 (2)GAPに取り組む体制の整備 1)普及指導員が、農業革新支援専門員等と連携しながら先進地の情報収 集を行うとともに生産組織や関係機関に先進地の視察を提案した。先進 地の視察により、産地の意識を高めた。 2)岐阜農林事務所では、普及指導員の活動によりJAぎふえだまめ部会、 岐阜市園芸振興会のほうれんそう部会及び大根部会の部会長の合意を 得て、平成 21 年3月に「GAP運営委員会」を設立した。GAP運営 委員会では、事務局としてJAぎふ、外部委員として全農岐阜、各市町、 岐阜県 農林事務所(農業普及課)が就任し、地域一帯となった推進体制を整備し た。 (3)GAP実施方針の提案 1)県で作成したGAP導入推進マニュアルを参考として、生産現場の実 態や危害要因を踏まえ、チェックリストの作成を支援した。 2)生産現場での確認・実施状況調査の方法、記帳内容の確認・活用方法 等について、普及指導員がコーディネート機能を発揮して合意形成を行 い、役割分担を明確にした。 (4)GAPへの取組開始後のフォローアップ 1)巡回指導時にGAPへの取組状況を確認し、問題がある場合は改善を 促した。また、生産者に疑問点がある場合は、 納得できるようわかりやすく回答した。 2)提出された記帳データの分析を行い、巡回指 導時の意見や状況を踏まえながら、新たなチ ェックリストの提案を行った。 3.具体的な成果 (1)GAPに取り組む産地が急増 GAPの理解が進み、取組産地が平成 20 年度 の0から平成 23 年度の 21 へと急増した。 (2)生産者の意識が変化 生産者からは、「ほかの生産者の作業場を見て、参考にしたい」といった意 見が聞かれるなど、生産者の自助努力で、より質の高い農産生産を目指す意識 の変化が感じられた。 (3)農家の経営改善 1)GAPによる生産工程チェックにより、 整理整頓が徹底され、 「物をなくさない」 「作 業動線の見直し」につながり作業効率が向上 した。 2)農作業、農薬・肥料の在庫管理などの記録・ 記帳を通じ、生産効率の分析や無駄な資材の 購入を防ぐことが可能となり、経費節減につながった。 岐阜県 4.農家等からの評価・コメント(岐阜市 高橋司郎氏(岐阜市園芸振興会長)) GAPへの取組は、当たり前のことで必要であり、やって良かった。普及指 導員には、GAPへの支援のほか、安全な農産物づくりを行う上で必要な栽培 暦や防除暦を作成してもらっており、非常にありがたい。 5.普及指導員のコメント(農業経営課 農業革新支援専門員) GAPの本質は、生産者(生産部会)自らがその必要性を理解し、リスク回 避を含む様々な問題点を洗い出し、いかに回避するかを考え、実践することに ある。これは、JAなどの集荷組織も同様と考える。普及指導員は、関係者各 位の意識を醸成・改革することについて重要な役割を担うと考える。 6.現状・今後の展開等 1)GAPの取組に対する意識が生産者の間で高まりつつあるが、取組姿勢 には個人差があると思われる。意識がまだまだ低い生産者に対しては、現 地確認や巡回指導で地道に指導していくことが必要である。 2)GAPが導入されてまだ日が浅く、チェックリストの見直しが必要であ り、引き続き、より完成されたチェックリストの作成に向けて支援するこ とが必要である。
© Copyright 2024 ExpyDoc