巻頭言 医療費に占める薬剤費増加の現状とその対策

1
医療費に占める薬剤費増加の現状
とその対策
川
合
千
尋
国は薬剤費削減の目玉としてジェネリック医薬
ると、出来高払いと包括払い分も含めた薬剤費全
品の使用を強力に推奨している。
しかしその効果・
体 で の 国 民 医 療 費 に 対 す る 割 合 は 平 成13年 度
副作用の違い、供給の安定性問題等必ずしもすべ
22.2%、平成21年度24.6%であり8年間で2.4%上
ての薬剤を安心して使える状態にはない。薬剤費
昇している。
増加の現状を確認し、その削減にジェネリック医
4.薬剤費削減対策
薬品の使用促進以外の対策がないか考察した。
①薬価を考えた処方。同じ系統の薬剤であって
1.全国の医療費動向
も薬価は微妙に異なる。医学的にその薬剤でなけ
9月に厚労省が発表した「平成26年度医療費の
れば治療効果が得られない場合を除き、出来るだ
動向~概算医療費の年度集計結果~」によると、
け薬価の安い薬剤を使用すること。②高い薬価の
平成26年度の医療費は、前年度に比べて約0.7兆
新薬にすぐには飛びつかない。従来薬で十分コン
円増加し40.0兆円となりその伸び率は1.8%であっ
トロールされているのにもかかわらず新薬に変更
た。内訳は、入院16.0兆円(40.0%)
、入院外13.8
する必要はない。③残薬の整理。受診時必ず残薬
兆円(34.5%)、歯科2.8兆円(7.0%)
、調剤7.2兆
がないか確認し、余っている量に応じて処方量を
円(18.0%)、その他となっている。全体の前年
減らす。服薬コンプライアンスの悪いものは服用
対比伸び率が1.8%であるなかで診療費は1.6%、
法や薬剤を変更する。④重複処方の解消。お薬手
調剤は2.3%であった。平成22年度と平成26年度
帳を確認し、また薬局ごとに二冊持っていること
を比較してみると5年間で総医療費は36.6から
もあるので本人にも十分に確認し他院で同種同効
40.0兆円と9.2%の増加、調剤は6.08から7.20兆円
薬が出ていれば処方しない。⑤多重受診の抑制。
と18.4%の増加と調剤の伸び率が高い。
2ヵ所以上の医療機関で薬が処方されている患者
2.新潟県の医療費動向
さんには1ヵ所でまとめて処方していただくよう
平成26年度の新潟県の医療費は総計6,825億円、
にお話しする。
⑥必要性の低い薬剤を処方しない。
入院2,646億円(38.8%)
、
入院外2,277億円(33.4%)
、
風邪や感染のない創傷に抗生剤を処方しないな
歯科487億円(7.1%)
、調剤1,401億円(20.5%)
、
ど、必要性の低い薬剤の処方を見直す。⑦高齢者
その他となっている。調剤の割合が20.5%と全国
の多剤投与の見直し。
「高齢者が避けるべき医薬
平均の18.0%より高い。前年対比伸び率は全体で
品リスト」等を参考に、投与薬剤の整理整頓に努
0.6%、調剤は0.43%であり、全体では全国に比べ
める。⑧そしてジェネリック医薬品の使用。ジェ
1/3の低い伸び率であった。
ネリック医薬品で問題のない場合には、その投与
3.薬剤費の動向
を継続する。
この概算医療費の動向の中で薬剤費のみを取り
5.まとめ
出したデータはなく、調剤の割合が増えているこ
医療の高度化、高齢化社会で医療費が増え続け
とだけしか分からない。厚労省の推計によれば国
る中、限りのある医療資源を無駄なく使うために
民医療費に占める薬剤費の割合はここ10年ほど
も、まずやるべきことは薬剤費の削減である。常
20%強の水準で横ばいに推移しているとされてい
に薬剤費の削減を念頭におき、患者さんの理解、
る。しかし、この推計値には包括払いの診療に含
また薬剤師の協力を得て診療を進めていく必要が
まれる薬剤費が反映されていない。医薬産業政策
あると考える。
研究所ニュース No. 36(平成24年7月発行)によ
(県医理事)
新潟県医師会報 H27.12 № 789