Q & A

Q & A
Q
低周波音に関する外国での規制の状況につ
いて教えてほしい。
A
最近,低周波音がマスコミで取り上げられる事
例が増え,一般の方の関心も高まっているように思
われます。
規制の状況を述べる前に,注意点を述べておきま
場・工業施設からの低周波音に対する基準値は,昼
間で 42 dB,夜間で 39 dB(以上,すべて住宅内)と
なっています。これは法的な強制力を持つ規制値
で,違反があり,その後の改善がなければ罰金が科
されることになっています。
デンマークでは,10∼160 Hz の音を低周波音とし
て,低周波音の推奨値が示されています(Informa-
す。まず,
「低周波音(英語では low-frequency sound,
tion from the Danish Environmental Protection Agen-
または low-frequency noise)
」という用語について
cy, no. 9/1997(1997))
。ここでは,台湾の場合と同
ですが,実は,これには標準的な定義がありません。
様に A 特性で重み付けをした等価レベルを求めて
国によって,対象とする「低周波音」の周波数範囲
評価指標とします。基準値は,環境や時間帯によっ
が異なるので,注意する必要があります。また,一
て何種類かありますが,例えば,日中の住宅内では
般的に,それぞれの規制には適用条件(受音環境,
25 dB,夕方・夜間の住宅内では 20 dB となっていま
音源,時間帯など)があり,そこから外れる場合に
す。また,ISO 7196(1995)で規定された G 特性重
は適用できません。この点にも留意してください。
み付けを利用して,超低周波音(1∼20 Hz)に対す
以下では,低周波音によって生じる不快感などの
る推奨値も定められています。これは,例えば住宅
感覚的な(心理的な)苦情に関する,住居内部での
内では,時間帯によらず 85 dB となっています。こ
低周波音に対する外国の規制の状況について,筆者
れらは推奨値であるため,強制力はありません。
らが把握している範囲で紹介します。
スウェーデンでは,特定の周波数範囲で等価レベ
感覚的な苦情は,低周波音が知覚されれば生じる
ルを求めるのではなく,1/3 オクターブバンドごと
可能性があります。低周波音の音圧レベルがその人
に基準値を定め,各バンドレベルがそれらを超えな
の感覚閾値(標準的な(若い人の平均的な)感覚閾
いようにするという考え方で推奨値を定めています
値は,ISO 389-7(2005)に規定されています)を超
(SOSFS 2005.6(2005))
。具体的には,31.5∼200 Hz
えれば知覚されると考えられますが,測定方法に
を低周波音の範囲とし,31.5 Hz バンドの 56 dB か
よって閾値が多少異なること,閾値に個人差がある
ら 40 Hz バンドの 49 dB,50 Hz バンドの 43 dB と漸
こと,低周波音に対する反応に個人差があることな
減し,200 Hz バンドで 32 dB となる基準値(住宅
どから,各国の規制値や推奨値は,標準的な感覚閾
内)が採用されています。この場合も推奨値です
値とは異なる場合が多いようです。
が,運用上はその値を守るようにしているようで
台湾では,騒音規制法の一部として,低周波音を
対象とした規制値が策定されています(噪音管制標
す。
以上,3 カ国の状況を紹介しましたが,イギリス,
準(2009 改正))。ここでは,20∼200 Hz の音を低周
オランダ,ドイツ,オーストリア,ポーランド,ア
波音として扱い,その周波数範囲において A 特性
メリカなどでも,低周波音の推奨値が策定または提
で重み付けをした等価レベルを評価指標としていま
案されています。しかし,国際的に広く使われてい
す。基準値は,地域カテゴリー(4 区分)
,時間帯(3
る標準的な規制値はなく,各国が独自に策定・運用
区分),低周波音の音源(3 区分)によって異なりま
しているのが現状です。どのような評価指標を用い
す。例えば,住居専用地域における娯楽・商業施設
て,どのような基準値で評価すべきかについて,今
からの低周波音に対する基準値は,昼間で 35 dB,
後の研究・議論が求められています。
夜間で 30 dB となっており,同じ地域における工
142
(安衛研
高橋幸雄,元山梨大学
騒
山田伸志)
音
制
御