ジャパンラグビートッ プリーグ観戦者の観戦動機に関する研究

人間科学研究 Vol. 19, Supplement (2006)
修士論文要旨
ジャパンラグビートップリーグ観戦者の観戦動機に関する研究
∼観戦動機とアイデンティフィケーションの関係モデルの検討∼
Spectator Motivations on Japan Rugby Top League
-Examination
of
Relationship
Model
between
Spectator
Motivations
and
Identification一
中植 弘満(HiromitsuNakaue) 指導:原田 宗彦教授
1.序論
4.研究の方法
大企業が支える企業スポーツチームで構成されているラ
本研究は、質問紙を用いたスタジアムにおける来場者自
グビーのトップリーグは、 2003年の開幕から2005年で3
記式調査によってデータの収集を行った。調査は、 2006年
シーズン目を迎えたが、年々その観客数は著しく低下して
10月8日と22日に東京都・秩父宮ラグビー場にて開催され
いる(ラグビートップリーグ公式ウェブサイト、2005)。今
たトップリーグ第4節と第6節の合計3試合において実施
後、ジャパンラグビートップリーグが日本ラグビー界の中
し、合計で302部の有効回答を得た。データの分・析には、
心となり、リーグ戦における観客を拡大するためには、既
SPSSll.5日本語版とAmos4.0を使用した。
存観客の定着と新規観客の開拓・獲得が必要となる。現在
リーグが置かれている状況からは、既存フアンの減少を食
5.結果と考察
い止めることが、リーグにとって、さらには日本ラグビー
モデルAの結果は、 GFIが.79、 AGFIが.71、 CFIが.74で
界にとって、直ちに取り組むべき課題であるということが
あり(.90以上が基準値とされる)、 RMRが.13 (0に近いほ
言えるのではないだろうか。その初期段階として、既存の
ど良い)、 RMSEAが.13 (基準値は.08から.05以下)、 x7df
観客が′なぜ観戦に来ているのかという、観戦動機を把捉す
が6.36 (基準値は<3.00)であり、適合度は良いとは言え
る必要があると言える。
ない。モデルBの結果は、 GFIが.85、 AGFIが.78、 CFIが
.79であり、 RMRが、 .21、 RMSEAが.12、 x7dfが5.45で
2.先行研究の検討・仮説モデルの設定
あり、こちらも適合度が良いとは言えない。しかし、複数
過去にスポーツ観戦者の観戦動機に注目し、その測定尺
のモデルを比較する際に相対的な値で評価できるAICの指
度の開発を行った研究として、海外ではTrail&James
標を見てみると、モデルB (462.18)の方がモデルA (541.38)
(2001)のMotivation Scale for Sport Consumption
よりも値が小さいことから、 2つのモデルからはモデルB
(MSSCが挙げられる。観戦動機について前述の尺度を用
を選択するということができる結果となった。
いて、他の要因との因果関係に注目した研究として、アイ
デンティフィケーションとの関係に注目して、特定の観戦
6.結論
動機と特定のアイデンティフィケーションが関係している
観戦動機の尺度として用いたMSSC、アイデンティフィケー
と報告している研究がある(Trailら、2003)。本研究では、先
ションの尺度として用いたPAI(Point of Attachments
行研究を元にして特定の観戦動機と特定のアイデンティ
Index ; Trailら、2003)は、どちらの尺度も信頼できる尺度であ
フィケーションが関係しているモデル(モデルB)を倣説
ることが分かった。
モデルとして設定した。その他に本研究では、モデルAと
して観戦動機が共通してアイデンティフィケーションに影
響しているというモデルを設定した。
観戦動機とアイデンティフィケーションの関係モデルを
検証した結果、様々な要素から構成される観戦動機が共通
して、アイデンティフィケーションに影響しているのでは
なく、特定の観戦動機が特定のアイデンティフィケーショ
3.研究の目的
ンに影響するという関係になっていることが示唆された。
本研究は、ジャパンラグビートップリーグ観戦者におけ
る、 ①観戦動機を測定するための尺度の信頼性および妥当
性を検討することと、 ②観戦動機とアイデンティフィケー
ションの関係を明らかにすることで、今後のラグビートッ
プリーグにおけるマーケテイングの基礎資料とすることを
目的とする。
-101-