ナノカーボンにおける 放射線誘起欠陥の積極的活用

ナノカーボンにおける
放射線誘起欠陥の積極的活用
放射線
和歌山大学 システム工学研究科
助教 村上俊也
e-mail [email protected]
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研究体制
和歌山大学
システム工学部
教育学部
伊東 千尋
木曽田 賢治
村上 俊也
•
•
•
試料合成、加工
分析電子顕微鏡
AFM-ラマン装置
•
•
•
高分解能ラマン
多波長ラマン
極低温顕微ラマン
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目次
・カーボンナノチューブ(CNT)について
・CNT応用におけるX線誘起欠陥の利用
CNTをDDSのキャリアとして活用
DDS:ドラッグデリバリーシステム
内包物質の取り出しにX線照射欠陥を活用
・従来技術との比較
放射線
・X線照射欠陥のラマン散乱解析
・CNTへの物質内包および取り出し実験
・想定される用途、課題
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カーボンナノチューブ(CNT)の構造
CNTの幾何学的構造
性質
4
単層CNT
~1nm
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単層CNTの応用
半導体、金属
・電気伝導性
・高強度繊維
太陽電池
問題点:P型とN型の制御
・ドラッグデリ
バリーシステム
(DDS)
航空機,ロケット
防弾チョッキ
宇宙エレベータ(CNT)
1GPa
アルミニウム チタン
(0.4)
(0.1)
10GPa
鋼
CNTバンドル
炭素繊維
100GPa
1000GPa
CNT1本
芳香族ポリアミド繊維
(ケブラー)
蜘蛛の糸
(0.3-1.8GPa)
問題点:取り出し方法
問題点:チューブ間の接合が弱い
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X線誘起欠陥の活用
電導性制御
P
高強度繊維
DDS
欠陥を介して接合
孔を開ける
N
放射線
欠陥ドープ
炭素材料の欠陥評価
・ラマン散乱分光法
・透過型電子顕微鏡
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X線誘起欠陥の特徴解析
軟X線照射による欠陥導入
内殻電子励起で欠陥が形成する
C. Itoh, T. Murakami, et. al., Nucl. Instrum. Methods
Phys. Res. B 266 (2008) 2772
欠陥が電子状態
へ与える影響
遷移エネルギーの変化
T. Murakami, et. al., Jpn. J. Appl. Phys. 53 (2014) 05FC03
欠陥の直径依存性
細い直径の方が欠陥が安定
T. Murakami, et. al., IOP Conf. Series: Materials
Science and Engineering, 80 (2015) 012016
欠陥の熱安定性
回復可能な欠陥である
200-400℃程度欠陥が動く
T. Murakami, et. al.,J. Appl. Phys. 114 (2013) 114311
欠陥導入による
CNT構造の変化
X線照射とアニールで構造が変化
T. Murakami, et. al., Jpn. J. Appl. Phys. 53 (2014) 02BD11
DDSへ応用
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DDSの適用分野
癌治療
•
•
•
外科治療
化学治療(抗がん剤)
放射線治療
利点…
利点…
再発や転移の抑制に使用
問題点…
副作用が大きい
正常細胞にもダメージ
体質により効果が異なる
局部治療が可能
問題点…
使用不能の場所がある
ダメージが大きすぎることがある
DDS
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DDSの現状
従来技術とその問題点
DDS… 体内の薬物分布を量的、空間的、時間的
に制御した薬物の輸送システム
副作用の低減 (安全性)
使用量の適正化 (経済性)
経口
先行研究のキャリア
注射
親水基
疎水基
患部
塗布
ミセル
薬剤
ベシクル
問題点:薬ごと、患部ごとに物質設計が必要
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DDSキャリアの比較
新技術の特徴・従来技術との比較
新技術
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内包手法(従来手法を活用)
フラーレン@単層CNT
参考:R. Pfeiffer, et. al., Nano Lett. 7 (2007) 2428
CNT
C60
~400ºC
2nm
フェロセン@CNT
参考:Y.F.Li, et. al., Nanotechnology 17 (2006) 4143
2nm
シスプラチン@カーボンナノホーン
参考:K. Ajima, et. al., J. Phys. Chem. B 110 (2006) 5773
2nm
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取り出し手法(新技術)
放射線照射欠陥を利用→CNTの壁に孔を開けて取り出す
放射線
(X線、電子線、
γ線、粒子線など)
放射線
放射線
患部
患部選択制がある場合
患部
患部選択制がない場合
・放射線照射部分が薬の放出部分
・放射線のON・OFFで薬の放出タイミングを制御
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X線照射欠陥
ラジアルブリ
ージングモー
ド(RBM)
2
diameter(nm)
1.5
1
G band
0.8
(ラマン解析)
Dバンド の増大
欠陥の形成
Dバンド の減少
欠陥の回復
(欠陥)
Intensity
D band
X-ray
(1240eV)
X-ray
格子間
原子
600ºC in Ar
空孔
フレンケル欠陥
Raman Shift (cm-1)
T. Murakami, et. al., Eur. Phys. J. B, 86 (2013) 187
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実験(内包物が取り出せるかを確認する)
単層CNT試料
(アルドリッチ社, 直径:1.4nm,
アーク放電により作製)
開端処理(熱酸化)
空気中, 450ºC
フェロセンの内包
(モデル物質)
真空封管→熱処理
(200ºC, 12h)
フィルム化、基板への転写
(湿式法)
単層CNT
のフィルム
開孔(X線照射欠陥導入)
SiO2/Si基板
真空中, 1240eV
欠陥回復(熱アニール)
300ºC(Ar雰囲気)
評
価
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内包実験
RBM
(ラマン解析)
G
D
x5
SWNT
x5
フェロセン内包
RBMの高波数シフト→フェロセンの内包
参考:H. Shiozawa, et. al. , Physica. Stat. Sol. (b) 244 (2007) 4102
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取り出し実験
RBM
RBM解析から推定
G
D
x5
フェロセン内包
x5
X線誘起欠陥導入
(取り出し)
x5
X線照射欠陥
の導入による
RBMのアップ
シフト。
(ラマン解析)
SWNT
X線照射
熱アニール
(回復)
X線を照射しなか
った場合はRBM
は変化しない(戻
らない)。
フェロセン
内包SWNT
熱アニール
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EDSピークの解析
Fe
0.25
照射前
0.15
照射後
照射前
照射後
X線照射前後にFeの濃度が減少した
フェロセンがCNTから放出された
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想定される用途
既存の放射線治療装置を活用した癌治療
X線
ガンマ線
粒子線(炭素イオン、陽子)
X線
ブラッグピーク
相対線量(%)
100
重粒子線
(炭素)
50
0
0
5
10
15
からだの表面からの深さ(cm)
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X線やγ線による照射例
患部
放射線
発生器
複数の放射線発生器を用いて、
患部に高い照射効果を与える
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重粒子線による照射例
放射線
発生器
患部
intensity
重粒子線
重粒子線のブラッグピークを利用して
患部に高い照射効果を与える
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実用化に向けた課題
•
抗がん剤の内包性と取り出し
•
CNTの毒性について
(今の所、単層CNTは毒性がなさそう)
•
CNTの体外への排出について
•
γ線、粒子線での実証
•
内包物に対する放射線の影響
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企業への期待
まずは共同研究で、具体的な応用の可能性を明確化
•
γ線、粒子線による効果の実証
•
放射線照射装置での実証
•
内包物の放射線照射効果
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まとめ
CNTの構造制御、性質制御
内包物の取り出し手法
X線照射欠陥の利用
DDSへの応用
単層CNT
局部化学治療
+
放射線治療
=
薬剤の内包
放射線
放射線誘起欠陥導入
(取り出し)
複合治療
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本技術に関する知的財産権
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お問い合わせ先
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