ざしきわらし第13号 - 岩手県立二戸病院

二戸病院広報
第13号
平成 23年 11 月 15 日
〒028-6193
岩手県二戸市堀野字大川原毛 38 番地 2
TEL
0195(23)2191
FAX
0195(23)2834
URL
http://www.ninohe-hp.net/
編集発行
岩手県立二戸病院
広報委員会
東日本大震災を経て
院長
鈴木
彰
平成 23 年 3 月 11 日、大地震が起き、津波
が襲い沿岸を中心に多くの被害が出ました。今
は徐々に後片付けが始められ、復興計画が考え
られ、復興へと動き始めています。
回復するか分からず、すぐ地元の業者さんに電
話をしまくり重油を少しずつ確保。幸い今回は
1 日ちょっとで電気は回復し、胸をなでおろし
ました。
当院は、免震構造で地下にゴムやらバネやら
様々なものがありそれらにより建物を支えて
いるため、建物被害はほとんど無かったと言っ
ていいでしょう。地震発生後の対応も、2年前
に県の総合災害訓練を二戸病院を中心に行っ
た事もあり、DMAT(災害派遣医療チーム)の訓
練を受けた事務を中心に素早く対応できたと
思われます。救急時の患者さん受け入れ態勢の
整備も早く、いつでも受け入れ可能でしたが、
当地域の被害も少なく、久慈病院も無事機能を
維持していたため他の地域からの患者さん搬
入がなくて済みました。
本当に何もなくてよかったのですが、今後、
何か病院が被害を受けることがあった時に大
丈夫か、という事を考えていくと、内部的に問
題点が挙がってきます。その問題点への対応を、
具体的に細かく詰めて対応策をだす必要が有
ると思っています。しかし、病院だけで医療を
行うことは可能ですが、病院を維持していくこ
とはできません。今回、停電が起こりましたが
その直後非常電源に切り替わり病院維持に必
要な最低限の機能や暖房・照明等は確保されま
した。しかしそれにも限度があり、使用してい
る重油がなくなると電気の供給ができなくな
り、病院の機能が維持できなくなります。重油
の備蓄はぎりぎり節約して 3 日分、電気はいつ
患者さんの食料は 5 日分くらい備蓄があり
ますが、泊まり込みで働く職員の食料は確保さ
れていません。病院の医療業務をしながら食料
確保に、などと言ったら大変です。また、ガソ
リン不足が問題となりましたが、これも職員の
足を直撃しており出勤が出来ない事態にまで
発展。院内に宿泊場所を設置するなどして対応
しましたが十分ではありません。特に困ったの
はおしめです、子供用のおしめ。物がなくなり
「三戸の○○にある」というと職員が買いに走
り確保しましたが、もうどこにもないという事
になり地元の一般の方々に呼び掛けて布のお
しめの材料を集めるか、ということも考えまし
た。今回は何とかその前に徐々に出回るように
なりそれは行わずに済みました。
そのような大変な時に、食料や物品を差し入
れしてもらったり、地元の業者の方々から確保
していた物品を納入してもらったりして大変
助かりました。やはり、何かの時に病院を支え
てくださるのは地元の方々の力だと再認識い
たしました。
何かの時だけでなく、普段から病院の事を理
解していただくことがすべての原点と思いま
す。病院からの情報を発信し、よりご理解いた
だくよう努力したいと思います。この広報をご
理解の一助にしていただければ幸いです。
自然放射線と医療放射線の話
放射線科長
及川
浩
福島第一原子力発電所の事故以来、放射能(放射線)の話がニュースに出ることが多くなっています。ここでは、自
然に浴びている放射線と、医療行為で浴びる放射線について述べます。
① 放射線と放射能
「放射線」と「放射能」という言葉が混同されていることが多いのですが、実はおのおの定義が違います。放射線
(正式には電離放射線)は、不安定な原子核が崩壊(壊変)するときに周囲に放出する粒子または電磁波のことで、
α線、β線、γ線の3種類があります。放射線障害防護上の単位はシーベルト(Sv)です。放射能とは、放射線を出
す性質のことで、言い換えると、放射線を出す物質(放射性物質または放射性同位元素)は放射能を持つということ
になります。単位はベクレル(Bq)です。
② 自然放射線
あまり知られていませんが、実は私たちの周りにはもともと放射線があり、一定量の放射線を常に浴びています。
自然界にもともとある放射性同位元素や地球外からくる宇宙線などがあり、国や地域により量は異なりますが、日本
人の場合は平均で約 1.5mSv の放射線を1年間に浴びています(図1)。
このうち、内部被曝を起こす天然放射性核種にはカリウム 40 という物質があります。このカリウム 40 は天然のカ
リウム全体の中に約 0.01%含まれており、成人男性の体の中には 4000Bq 分存在しています。それによる内部被曝は
1年間に約 0.17mSv になります。カリウム 40 は食品の中にも含まれています(表1)が、自然界に広く分布してお
り、含まれる食品を食べないようにすることは意味がありません(カリウムが入っている食品には必ずごく少量含ま
れているためです)。
③
医療放射線
X線写真やCT検査などの検査では放射線を浴びることになります。実際に浴びる量は検査によって異なり、胃や
大腸の透視検査、CT検査では浴びる量が多くなります(表2)。
一般の人が医療被曝以外に浴びる人工放射線の量については、国際放射線防護委員会(ICRP)が1年間に 1mSv
以下にするように勧告しており、国内では放射線障害防止法により 1mSv 以下と決められています。しかし、医療放
射線については、患者さんの不利益にならないように上限は決められていません。上限が決まっていると、その量ま
で検査を受けた人は次の放射線を使う検査ができないことになり、診断や治療が遅れることになりかねないからです。
ただし、医師や放射線技師は放射線を使う検査において、なるべく浴びる線量を減らすように努めることが求められ
ています。
RS ウイルス感染症について
薬
剤
科
近頃、ニュースや新聞等で RS ウイルス感染症という言葉を耳にします。今年は例年よりも早い
ペースで感染が増加しているというのですが、そもそも RS ウイルスというのはどのような感染症
なのでしょうか?
RS ウイルスとは?
RSウイルスとは、乳幼児の代表的な呼吸器感染症です。毎年、冬季に流行し、乳児の半数以上
が1歳までに、ほぼ100%が2歳までに感染し、その後も再感染を繰り返します。
症状の現われ方
感染後4∼5日の潜伏期ののち、鼻汁、咳、発熱などの上気道症状が現れます。3割程度の人は
このあと炎症が下気道まで波及して、気管支炎や細気管支炎を発症し、咳の増強、呼気性の喘鳴(ぜ
いぜいする)、多呼吸などが現れてきます。
すべての患者さんの1∼3%が重症化し、入院治療を受けます。心肺に基礎疾患がある小児は重
症化しやすいとされます。通常は数日∼1週間で軽快します。
新生児も感染して発症し、がんこな無呼吸を起こすことがあるので注意が必要です。また、細気
管支炎にかかったあとは、長期にわたって喘鳴を繰り返しやすいといわれています。
RS ウイルスを予防する!
RS ウイルスは非常に感染力が強く、ウイルスがおもちゃなどに付着してから4∼7時間は感染
力を持っているといいます。日ごろから外出の後や調理、食事の前、鼻をかんだ後などは石鹸でよ
く手を洗いましょう。
また、RS ウイルスが流行する冬の季節には、赤ちゃんを人ごみになるべく連れて行かないなど
の配慮も予防に繋がります。
RS ウイルスは眼や鼻、口の粘膜から感染します。赤ちゃんは手近に置いてあるものを何でも口
に入れたがりますから、家庭内で風邪をひいている人がいるときは、アルコールティッシュなどで
赤ちゃんの周りの物をこまめに消毒しましょう。また、風邪をひいている大人は、マスクをつけて
唾液や鼻水が飛び散らないように気をつける事も大切です。
RS ウイルスに感染すると、大人は軽い風邪で済んでも、初めて感染する赤ちゃんは高熱など重
い症状が出ます。家族の人が風邪をひいたら、たとえ軽くても油断せずに手洗いや消毒を心がけま
しょう。
リハビリテーション科紹介
二戸病院リハビリテーション科は、理学療法士(PT)2名、作業療法士(OT)2名、言語聴覚士(ST)1 名と
いう片手程のスタッフで日々奮闘しています。二戸病院は基幹病院であり、急性期リハビリテーションを中
心とした院内での患者訓練の業務のほかに、広域支援リハビリテーション病院という顔を併せ持っています。
その中で、リハビリテーション科では年2回ほど「二戸地域リハビリテーション実施施設等従事者研修会」
を開催しています。この研修会は二戸地域を支えているリハビリテーション関係職種の方々や関連施設の
方々とともに学びあう機会を設け、お互いのスキルアップにつながるような内容という主旨で開催していま
す。
平成 23 年度の第 1 回研修会では、
二戸病院地域医療福祉連携室主任医療社会従事士の熊原直子さんと、
主任看護師の獅子内明美さんによる「地域医療福祉連携室業務について」という内容で講義していただき、
ケアマネージャーや介護士、訪問看護師などたくさんの職種の方々に参加していただきました。次回の研修
会は 2 月頃開催予定となっています。
今後もこのような研修会を開催していくことで、地域連携を推進していくことがこの二戸圏域において
大きなキーワードになると思われます。地域連携が本来有るべき姿になれるような、ひとつのきっかけにな
れれば幸いです。
二戸病院では、地域の一員として、二戸まつり流しおどりに毎年参加しています。今年の流しおどりは9
月3日(土)に開催され、二戸病院からは、職員、家族合わせ総勢約90名が参加しました。
台風の接近により、一週間前からの天気予報は雨!! 当日が近づくにつれて、降水確率はどんどん上が
り、おどりの練習をしながらも、内心、今年は延期になるかな…、と思っていました。しかし、なんと当日
は奇跡的に朝から晴れ空(くもり?)
。晴れることを信じて練習に励んだのが報われたのかもしれません!?
パレード出発前には、入院患者のみなさま等に少しでも二戸まつりの雰囲気
を味わってもらうと、正面のロータリーで、流しおどりの披露を行いました。
たくさんの方にお集まりいただきありがとうございました。
パレード直前には心配していた雨が降り出しましたが、出発に合わ
せるかのように上がり、今年も無事参加することができました。
また、二戸病院では、おどりもさることながら、
毎年、二戸まつりにお集まりの方々に楽しんでい
ただけるよう、仮装にも力を入れています。
来年も楽しんでいただけるよう、引き続き
工夫を凝らしたいと思います。もちろん
おどりの方も手は抜きませんよ。
それではまた来年をお楽しみに。
食中毒は年中起こる可能性があります
二戸病院
臨床検査科
食中毒とは有害・有毒な微生物や化学物質等毒素を含む飲食物、水を人が口から摂取した結果として起こ
る下痢や嘔吐や発熱などの疾病(中毒)の総称です。
食中毒を予防する三大原則といわれているのは
1
細菌を付けない
調理の前には手や爪を洗う。調理器具は清潔に保つ。
2
細菌を増やさない
調理後は早めに食べきる。使わない食材はすぐに冷蔵庫へ。
3
細菌を殺す(不活化する)
きちんと中まで加熱調理。調理器具などのこまめな殺菌。
食中毒は、その原因になった因子・物質によって(1)細菌性食中毒、(2)ウイルス性食中毒、(3)化学性
食中毒、(4)自然毒食中毒、その他に大別されます。
今回は細菌性食中毒について書いてみます。(主な菌のみです)
細菌性食中毒は、細菌そのものが増えて発症する感染型と細菌が出す毒素により発症する毒素型が代表的
です。
○ 感染型食中毒
① サルモネラ菌
② 腸炎ビブリオ
③ 病原大腸菌
④ О−157(病原大腸菌の一種)
⑤ カンピロバクター
○ 毒素型食中毒
① 黄色ブドウ球菌
② ボツリヌス菌
○ ウイルスによる食中毒
細菌ではありませんが、食中毒の原因となるウイルス。
① ノロウイルス
食中毒が疑われたときは、まず水分の補給が大事です。特に夏場は水分不足が起こ
りやすくなります。そして下痢が始まると脱水症状を起こします。
特に乳幼児には注意が必要です。
食中毒の予防は手洗いと加熱が基本です。