SURE: Shizuoka University REpository

SURE: Shizuoka University REpository
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
Title
Author(s)
アフリカツメガエルの初期発生において後期原腸胚以降
の形態形成を制御する新規分子機構の解析
森山, 侑輝
Citation
Issue Date
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Version
2013-01
http://doi.org/10.14945/00007649
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Rights
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静岡大学
博士論文
アフリカ ツメガエ ル の初期発 生 において
後期原腸胚 以降 の形態形成 を制御す る
新規分子機構 の解析
2013年 1月
大学院
自然科学系教育部
バ イオサイエ ンス専攻
森 山侑輝
次
l頁
序論 ・
ラパ マイシン処理がツメガエルの初期発生に与える影響の解析 ・・・・・・
1. 1
背景 ・・・・・ ●●●●●・・・・・・・・・・・・・・・ ●●●●●
1. 2 材料 と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・ ●●●●●・・・・・ ●●
1. 3 結果 。・・・・ ●●●●●・・・・・・・・・・ ●●●●●・・・・・
第 1章
1.
1 .
1.
1.
3. 1
3. 2
ツメガエルにTORClシ グナルは存在す る
ラパ マイシン処理はツメガエルにおいてTORClシ グナル を阻害す る
3.3
3.4
3.5
ラパマイシン処理は発 生速度 を遅延 させ る
ラパ マイシン処理 は色素沈着阻害を引き起 こす
ll頁
12頁
14頁
20頁
ラパ マイシ ン処理 は内臓奇形 の原因 となる
1. 4 考察 ・・・・・ ●●●●●・・・・・ ●●●●●●●●●●・・・・・ 25頁
1. 5 図 と表 ・・・・・ ●●●●●●●●●●・・・・・ ●●●●●・・・・ 31頁
。 38頁
第 2章 新規遺伝子xッ 7C2′ がツメガエ ルの初期発生に与 える影響 の解析 ・ ・・・
2. 1 背景 。・・・・ ●●●●●●●●●●・・・・・ ●●●●●・・・・・ 39頁
2. 2 材料 と方法 。・・・・ ●●●●●●●●●●・・・・・ ●●●●●●● 42頁
1 .
2. 3
2.
2.
・・・・・ ●●●●●・・・・・ ●●●●●・・・・・ ●●●●●
2.
2.
3. 5 xvWC21は anti‐ BMP活 性 を有す る
2. 4
2. 5
3章
3. 1
3. 2
3. 3
3.
48頁
3.1 2つ のCRド メインを有す る新規遺伝子xッ WC2′ を同定 した
3.2 〃WC2′ は初期神経胚期 か ら後方神経領域 に発現す る
3.3 xvWC21は 後方神経形成 に関わ る
3.4 xvWC21は pro‐ BMP活性 を有す る
2.
第
結果
考察 ・・・・・ ●●●●●・・・・・ ●●●●●●●●●●・・・・・
図 ・・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
MEK/ERKシ グナルが有す る時期特異的性 の調査 ・・・・・ ●●●●●・・
背景 ・・・・・ ●●●●
材料 と方法 ・・・・・・
結果
3. 1
σ
』″κ
52頁
55頁
63頁
64頁
68頁
73頁
mRNAと DNAの 打 ち分 け はMBTの 前後 においてMEK/ERKシ グナル
を活性化 させ るの に適 した手法 である
発 生初期 のMEKIERKシ グナルの活性化 は卵割停止を引き起 こす
3.3. 2
3.3.3 MBT直 後 のMEK/ERKシ グナルの活性化 は後方化 を引き起 こす
3.3.4 神経化 は更 に後期 のMEK/ERKシ グナル活性 に依存す る
●●●●●●●●・・・・ ・・
考察 ・・・・・ ●●●●●●●●●●●●
図 ・・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●・・・・・・・
●●●●●・・・・・・・・
総合議論 ・ ・・・・ ●●●●●●●●●●・・・・・
3. 4
3. 5
79頁
85頁
95頁
●●●●●●●●・・・ 100頁
参考文献 ・・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●●●●
●
●●●●●●●●0 105頁
謝辞 。・・・・ ●●●●●●●●●●●●●● ・・・・・
序論
精子 と卵が出会 う事で受精卵が形成 されて卵割が進み、複雑な成体 になる為 にはどの
様なイベ ン トが行われているのであろうか。 この疑間は人類が古より抱き、 これまでに
数多 くの研究者がその疑間を解明 しようと試みてきた。 ドイツの生物学者で あり哲学者
であるヘ ッケルは「個体発生は系統発生を繰 り返す」 と言 う反復説を唱え、特 に1874
年 に彼が魚綱、両生綱、ハ虫綱、鳥綱、そして哺乳綱の発生段階を比較 したイラス トを
用 いて説明 した「あらゆる生物 において非常 に良 く似た発生段階を通 る」 と言 う仮説 は
今の発生生物学 においても広 く支持 されてお り、つ まりこれ はどの生物 も卵 か ら複雑 な
形を形成するまでに共通で簡単な構造 を介 している事を示 してい る。現在の生物学 は京
都大学の山中伸弥教授が
"12年
にノーベル医学生理学賞を受賞 した内容である、4つ の
因子を導入する事 によって分化 した細胞 の運命をリセ ットし、多分化能 を有す るiPS
C_induced_plunpotent ttm)細
胞σttahaShi and Yamanaka,知 ∝)を 用 いて 自身の細胞から人工
的に臓器 を作製す ると言 つた応用 。再生医学 に注目が集まってい る。 しか し、 これまで
の発生生物学の知見ではどのように臓器が形成 されてい くのか と言 う基本的なメカニズ
ム も解明 されていない事が多 く存在 してい る。 さらに、ヘ ッケルが述べていた全ての動
物が通 る道である「受精卵から非常 に良 く似た発生段階」 に至るまでも、 どの様 に形成
されてい るのかは明らかになつておらずヽ多 くの研究者が明らかにしようと試みてい
る。
卵から複雑な形 を持 つた成体 になるには、 どのような事が行われているのか と言 う疑
間は紀元前5世 紀まできかのぼつた、古代 ギリシャ時代から考えられていた。 この当
時、 ヒポクラテスはアル クマイオ ンが唱えた熱・ 冷 。乾・ 湿の要素 によって発生を説明
1
しようと試 みていた。彼 は「医学の父」 としても知られてい るように科学 を超 自然的な
力(迷信 や呪術)や 神々の仕業から一線 を引いて考 えていた。 また、今 日の科学の起源 は
その約 1世 紀後 に古代ギ リシャの哲学者で 「万学の祖」 として知 られてい るアリス トテ
レスによると考えられてい る。彼 は数百種類の生物 を観察、解剖 した結果、受精卵から
成体 になるまでにはどの様 な過程が存在するのか と言 う問いに対 して19世 紀後半 まで議
論が続けられた2つ の考 えを提唱 した。 1つ は胚 のあらゆる構造 はそもそもはじめから形
成されていて、その後 は単 にサイズが大きくなると言 う前成説で、 これはヒ トの精子 の
中に小さな ヒ ト(ホ ムンクルス)が 入っているのを見た と主張する科学者が現れたほど、
特 に宗教が広 く広まつた17世 紀後半までは主流な考え方 になっていた。 もう1つ は成体
の各構造 は継続的に形成 されると考えられ る後成説でアリス トテ レスはこちらを支持 し
てお り、現代の生物学でもこちらの意見が大多数 に支持されてい る。 この論争が約知∞
年 もの長 い時間繰 り広げられていた事からもわかる様 に生物学者 はこの疑間を常 に追 い
続けていた。
しか し、15904に オランダのヤ ンセン父子が 自作の顕微鏡を発明す るとい う革命 を起
こし、1820年 から1880年 までの間 に ドイツの植物学者 シュライデ ン と動物学者 シュワン
によって顕微鏡観察の結果提唱 された、 「生物体 は細胞よりな り、細胞 は生命の基本単
位である」 とい う細胞説 によ りその論争 は終わ りを告げる事 になった。 この細胞説 に
よつて多細胞生物 は細胞 と細胞が織 りなす共 同社会であると言 う考 え方が受け入れら
れ、 これまで正 しい と考 えられていた前成説 の考 え方は衰退 していき、科学者の興味は
細胞 と細胞 のネ ットワー クに関心を示す事 になつた。
1880年 代後半、細胞 に興味を抱いた ドイツ人の発生学者ルーはアフリカツメガエルの
,こ
2細 胞期胚の片割球を熱 した針で刺 し、その後の発生を観察 したところ、残 りの割球か
ら胚 の片側が見事 に形成 される事を見 いだ し、 ツメガエル胚 において各割球の性質 と運
命 はそれぞれの卵割 に際 して決定されると結論づ けた。
細胞間ネ ットワー クの存在 については示唆されていたが、その意義 について明確 に述
べたのは192年 にシュベーマン とマンゴール ドが行 つた有名な両生類の移植実験である
(Spemann and Mangold,192)。
2人 は2種 類の同時期 の発生段階のイモ リを用 いて、片方
のイモ リの原 口背唇部 を他方のイモ リの本来原 口背唇部 が形成される領域 の180度 反対
側 に移植する事 によ り異所的な二次軸を有 したイモ リ胚 を獲得 した。 この原 口背唇部
はシュペーマンオーガナイザー として知 られており、今 日ではツメガエルの胞胚期 にお
いて背側植物極側 に存在す るニ ューコープセンターから分泌 されるNoddの 影響を受け
―and Ⅳο
gg"― expresSng)セ ンターに由
″
た背側動物極側 に存在す るBCNE(blastula cあ ″′
来する と言 う事が知 られてい る(KuЮ da
ctal.,2004D。
この実験 により細胞間ネットワー
クを伝 える何かが胚、そ して細胞 の中に存在 している事が示唆された。
現在では多 くの研究から細胞間ネ ットワー クを伝える正体が遺伝子や シグナルである
と言 う事が当た り前 に理解されているが、 どの様 に して発生 と遺伝子が結びついたので
あろうか。20世 紀の前半 にアメリカ人のモーガ ンはショウジョウバエの突然変異体 を集
め、それ らの間で交配実験を行 う事で染色体地図を作製 した。 この当時1900Tに メン
デルの法則が再発見 されていた ものの、遺伝学 は遺伝要素の世代から世代への継承 を明
らか にする為 の学問で、発生学 はどの様 に してこの生物体が発生するのか、 どの様 に初
期発生の細胞が互 いに異なつてい くのかを明らかにする学問であつたので、遺伝学 と発
生学 は相反す る物であつた。 しか し、 1940年 代 になつて遺伝子 の実体 はDNAで あり、
3
DNAが タンパ ク質をコー ドしてい る事が明らか になった事 によって、 ようや く相反 して
いた2つ の学問が結 びつ き、大 きな転換がもたらされる事 になった。
その後 の研究 は遺伝子や シグナルが初期発生にどの様 な影響 を与えるか と言 う事 に注
目が集まる事 になつた。実験動物 として用 い られるモデル動物の種類 も多 くな り、 コン
ピュータ等の開発 もあつて、数多 くの生物 にお ける遺伝情報 も明らかになつてきた。遺
伝子を調節する方法 も目的の遺伝子のmRNAに 直接結合 してその機能 を阻害す るアンチ
センスRNAを 用 いることによ り機能欠損す る事が可能 となった。 アンチセンスRNAを
用 いた機能欠損法では細胞や胚 の中に初 めか ら存在す るタンパ ク質の影響 は無視する事
ができなかったが、 さらに、技術が進む と目的の遺伝子を挿入 した り欠損させる遺伝
子組換え生物が確立されてい き、特 にマウスではその非常 に高 い相同組み換え効率 を利
用 して遺伝的に目的の遺伝子の タンパ ク質が存在 し得 る事のない ノックアウ トマウスが
作製 される様 になった。 ツメガエルでは疑似結 体であることからノックアウトツメガ
エルはこれまで報告されていないが、 その卵 の直径が比較的大きい事か ら目的の遺伝子
のmRNAや DNAを 顕微鏡下 において微小 な針 を用 いて物理的に注射す る事 によ り遺伝
子調節する事が可能である。 さらに、目的の遺伝子 に直接結合 してその働 きを阻害す る
MO(aniSense morpholino ttgomeっ と呼ばれる人工RNAを 顕微注入する事 によって機能
欠損 させる事 も可能である。また、その受精様式が体外受精である事から受精前、あ
るいは受精直後 から顕微注入や試薬を含 んだ培養液での処理 によ り遺伝子発現を調節
する事も可能である。 また、実験環境の向上 により様 々な種類の細胞を培養す る事 も
可能 にな り、 その培養細胞 に対 して遺伝子発現 を行 う事 も可能である。 さらに、遺伝子
発現 を調節 したサ ン/7レ に対 してマイクロアレイ法やプロテオーム解析を行 う事 によ
4
り、引 き起 こされた影響をmRNAや タンパ ク質の レベルで網羅的 に短時間で解析する事
も可能である。
ツメガエルはもともと一年中水温が一定なアフリカの高原の湖 に生息 してい るカエル
で、 ホルモンを注射す る事 によリー年中卵を得 る事が可能である事、受精様式が体外受
精である事、卵 のサイズが比較的大きい為 に切 り取 つた胚の一部 を別の胚 に移植させる
と言 う胚操作作業が非常 に容易である事、受精後 わずか3日 でヘ ッケルが述べていた
「非常 に良 く似た発生段階」 に到達す ると言 つた利点がある事から、昭和天皇のご指
示を受けて静岡県が大量養殖 に初 めて成功 した、日本初 の代表的なモデル生物である。
このツメガエルの発生には非常 に特徴的な性質カラつ存在す る。1つ は母性プログラムか
ら胚性 プログラムヘの移行す る時期が哺乳綱等の他のモデル生物 よ り比較的遅 い事であ
る。通常、受精卵 はある一定の時期まではDNAか らmRNAへ の転写 は行われずに卵の
中に存在す るmRNAや タンパ ク質を用 いた母性プログラムによ り発生が進行するが、 あ
る一定の時期からは転写 によって合成 されたmRNAが 翻訳 された影響 による胚性プログ
ラムによって発生が進行する。 この一定の時期 はツメガエルの発生ではMBT(ゴ d‐
」astua
ttnsi■ On)と
呼ばれ、中期胞胚期 に迎える事が知 られてい るが、 ツメガエルのみ
に存在 してい る物ではな く哺乳綱では2細 胞期から柵 胞期の間に存在す る事が明らかに
なつてい る(Edgar,1995)。 しか し、 ツメガエルでは受精後約6時 間、細胞数約舶∞個 であ
る中期胞胚期 と言 う比較的遅 い時期まで母性 プログラムによる発生が観察 される事か
らこの時期の前後 に注目した研究 は数多 く行 われている。2つ 目の特徴 は原腸陥入 と言
う現象がはつきりとしてい ると言 う点である。原腸陥入 と言 う現象、または、原腸胚期
と言 う時期 は他の生物 にも保存 されてい るが、両生類ではダイナ ミックに進行 し、 その
5
様子 が観察 しやすい と言 う事から、特 に遺伝子の情報 が明らかになつてい るツメガエル
において研究 が盛んに行われてい る。母性 プログラムから胚性 プログラムヘの移行の時
期が中期胞胚期 と比較的遅 い時期 に起 こ り、 さらに、原腸陥入 とい う形態形成運動が
非常 にダイナ ミックに進行する原腸胚期以降 は発生における第2の スター トと言 う事が
できるだろう。 そ こで私は、 この静岡発の脊椎動物の代表的なモデル生物であるツメガ
エルを用 いて初期発生に与える影響 を、特 に後期原腸胚期以降 に注目して解析する事 に
した。
まず注目したのは寿命を司 り老化 に関わる分子 シグナルであるTORCl● rget」
摯pamycin ωmplex⊃ シグナルについてである。 ヒ トは生まれた瞬間 に死への歩みを始 め
てお り、死 を恐れ、永遠 の命を得たい と考えて不老不死 になる方法を研究者 に限らず多
くの人間が古から探 し求めてきた。老化 には大きく分けて2種類存在 してお り、1つ は個
体老化、 もう1つ は細胞老化 と呼ばれる物である。個体老化 は筋肉が衰 えた り、シワが
増えた りと一般の女性が老化 と捉 えてい る見かけの老化である。 これは同時 に病気 にな
りやす くなった り、内臓 の機能が低下 した りする為 に、昔 は老化 と言 うと「死 にやす
くなる事」 とも定義 されていた。一方で細胞老化 は分裂・増殖 を繰 り返す事 と定義する
事ができる。細胞 は何回分裂・ 増殖できるか と言 う事が染色体のテロメアに記録 されて
お り、 その回数が減 つてい く事が老化であると考 えられている。 この2つ は一見別々の
物であると感 じられる様 に、歴史的に も個体老化 と細胞老化 は別 々に研究が行われてき
た。 しか し、1990年 代以降 に老化 の研究が進むにつれてその2つ の共通点が徐々に明ら
かにな り、最近では相互 に関連 しながら研究が行われる様 になって きた。
近年では生まれてから死ぬ までの時間 を表す従来から使われている寿命 と言 う言葉の
6
他 に も、生まれてから健康 に生活を送 る事が可能な時間を表す健康寿命 と言 う言葉が使
われてい る。個体老化 と細胞老化が相互 に関連 してい る事からも寿命 と発生を相互 に関
連させた研究 はこの健康寿命 を延ばす可能を秘 めていると考 える事ができる。特 に
MBT以 前 には細胞分裂・増殖が行われてい る事から細胞寿命 に関わ り、MBT以 降では
形態形成運動が盛んに行われる事から個体老化 に関わつてい る事が考 えられる。
そ こで、私 はこの寿命 と老化 に関わつていると報告 されてい るTORClシ グナルが ツメ
ガエルの初期発生においてどのような役割を有 してい るのかを明らか にする事で、単 に
寿命がどの様 に変化するのかに加えて、健康寿命 にどの様な影響 を与えるのか と言 う事
も考えて研究を開始 した。
次 に注目したのは頭部形成や神経形成 に関わつてい ると考えられているBMPQone
morphogeneic Protein)シ グナルについてである。頭部が形成 されるメカニズムに関 して
は、上述 した192年 にシュペーマンオーガナイザーの移植実験が報告 されるとすぐに多
くの研究者 が解明 を試 みようとした事、また、1935年 にノーベル医学生理学賞 を受賞
した事からも非常 に注目を集 めた と言 える。 それ以前 にも18∞ 年代中頃 にはタイ出身の
腹部がつながつたチ ェン&エ ン 。ブンカー兄弟がシヤム双生児 として世界中で知 られた
ことを始 めとして、1981年 にはベ トナムにおいて、下肢結合性双生児であるベ ト&ド
ク・ グエ ン兄弟が特 に日本ではベ トちゃん ドクちやん として有名 になった事からも、科
学者 のみならず一般人からも1個 体から2つ の頭部 を持つ生命体 に対 して非常 に興味を示
していた。
科学者達 は、 そうした事象 を踏まえなが ら頭部 を形成するメカニズムを解明する事 を
試 み、後者 の結合性 双生児の場合 はベ トナム戦争中にアメリカ軍が散布 した枯れ葉剤の
7
中に含まれていた//rオ キシンを含む成分が結合性双生児を引き起 こした事を解明 し
た。 さらに、その後 の研究 において生体内でどの様 に頭部が形成 されてい くのか と言 う
メカニズムが次々と報告 されてお り、現在では頭部 を形成する主要遺伝子の存在 も明ら
かになっている(Ishibashi
et al.,2∞
8)。
しかし、頭部 を形成するメカニズムにはまだ解 き明かされていない疑間が存在 してお
り、 また、 これまでの研究で明らか になっている事の多 くは原腸陥入が始 まる前の事 に
関 しての報告ばか りである。私 は細胞分裂が盛んに行われていたMBT前 とは異なり、胚
性 プログラムで動きだ し、MBT以 降、特 に一番最初 に非常 にダイナ ミックな形態形成
運動を示す原腸陥入 よ り後期の発生段階 にこそ頭部形成のメカニズムを明らかにするヒ
К
ン トが隠 されてい るのではないか と考 えた。 それに加えて、新規遺伝子ッ
2′
は神経形
成を制御す る可能性が高いCRド メイ ンを2つ 有 してい る事、 さらに、初期神経胚期から
発現 を開始す ると言 う他のCRド メイ ンを有 してい る遺伝子 よりも圧倒的に遅 い発現パ
ターンを示す事から、神経形成メカニズムに新たな知見 を加えるのではないか と予想を
立てて研究 を開始する事 に した。
最後 に注目 したのは我々の生活か ら切 つても切 り離す事ができない程非常 に身近な
FGF cflbrOblattgrowth ttcわ
0シ グナルである。 このFGFシ グナルはその名の通 り繊維芽細
胞を増殖 させる因子であるが、繊維芽細胞以外の細胞 に関 しても細胞 の増殖を調節 して
いる事か ら、美容業界 においてはFGFタ ンパ ク質を配合 した美容液の販売やFGFタ ンパ
ク質を皮下へ と直接注射する事 によ り摂取すると言 う事が盛んに行われている。 また、
FGFシ グナルの利用 は美容業界だけではな く、FGFが細胞成長や増殖を活性化させる能
力がある事から、組織 障害時 には修復因子 としても働 き(Must∝ et d.,1991;Yamamoto et
8
」。
,2004D、 ニキビ治療や皮膚 の再生医療、薄 くなつた毛髪の再生にも用 い られてい る。
他 に も恒常性の維持(Fu et J.,2004;Kharitonenkov et J.,2005)や 胚発生における前後方神
経の形成(Hongo
et al.,1999Dに
関わつてい る事が知られている。
この様 に我々の生活 に非常 に身近 に結 びついてい るFGFシ グナルであるが、初期発生
における詳細なメカニズムは明らかになつていない事が多い。上述 した様 に様 々な働き
があると言 う事 は、特定の1つ の 目的の為 にFGFを 摂取 した場合、予想 しなかつた機能
を発揮 してしまい思わぬ副作用を引 き起 こす可能性 も存在する。特 に、美容 に興味関心
が高い比較的若 い世代の女性が妊娠中に美容目的にFGFを 摂取す る事 によ り思い もよら
ない副作用 が母体を通 して子 に影響を与えて しま う事も十分 に考えられる。例 えば、夜
盲症 の改善や、 コンピュータ等の作業 による目の疲れを回復す ると言われてい るビタ ミ
ンA及 びその誘導体であるレチノイ ン酸 は妊婦が過剰摂取 してしまうと子が奇形 で生ま
れてくる可能性が高 くなる とされてお り、 日本の厚生労働省 は一 日の摂取量の 目安 を定
めて公表 している。
FGFを 上述の様 に様 々な用途で用 い るのであれば、特 に初期発生におけるFGFシ グナ
ルが及 ぼす影響 とメカニズムの解明は必要 になつて くるが、明らかになっていない事 は
数多 く存在する。 ツメガエルの初期発生においては卵割の停止(MacNicol
後方化(HOngo
et d.,1999D、
そして神経化(HardCaste
et d.,1995)、
et J.,2CX10)に 影響を及ぼす と言 う事
が報告 されているが、特 にMBT以 降 において生 じてい ると考 えられてい る後方化 と神経
化が どの様 なメカニズムによって引き起 こされてい るのか と言 う事 は明らかになつてい
ない。 そ こで、私 はFGFシ グナルの中でもMAPKKに 該当す るMEK分 子を用 いて、FGF
9
シグナルが特 にMBT以 降 にどの様 な働 きを有 してい るのか と言 う事 を解明す る研究 を開
始 した。
本博士論文 では胚性 プログラム によって発生が進行す るMBT以 降 の中で も、特 にク
ナ ミックな形態形成運動である原腸陥入が進行 した後期原腸胚期以降 にお ける形態形
成 をそれぞれのシグナルが どのように制御 してい るのか と言 う事を解明する研究 を行 つ
た。第 1章 では細胞 生物学 において細胞成長や増殖 に関 わつてい ると考 えられて い る
TORClシ グナル をラパ マイシンで阻害 した場合 に、細胞生物学 の知見 に加 えて、形態形
成運動 が行 われ る原腸胚期後期 に どの様 な影響 を与えるのかを報告す る。第2章 では初
期神経胚期以降 に発現 を開始 す る2つ のCRド メイ ンを有する新規遺伝子″7C21が ツメガ
エルの初期発生 において どの様 な影響 を与えるのか と言 う事をBMPシ グナル と関連 させ
て報告す る。第3章 ではNIAPKKで あるMEKを 用 いてMBT以 降 にお けるMEK7ERKシ グナ
ルが どの様 に働 いて い るのか と言 う事を報告す る。最後 に胚性 プログラムに よって発生
が進行するMBT以 降で原腸陥入が進行 した、発生における第2の ス ター トとも言 える後
期原腸胚期以降のシグナル を解析す る重要性 を述 べ る。
10
第 1章
ラパ マイ シ ン処理が
ツメガエル の初期発 生 に与 える影響 の解析
1。
1
背景
TOR ctargetゴ 摯pamyCin)は 酵母からヒ トに至るまで全ての真核生物 において高度 に保
存 され、TORClと TORC2と 呼ばれる2つ の異な る複合タンパ ク質 として働 くために必要
スレオニ ンキナーゼである。その名前からも想像できる様 にラパ マイ
不可欠なセ リンノ
シンはTORキ ナーゼ領域 に直接結合する事 によ りTORC2に 関 しては基本的には作用 し
ない ものの、TORClの 働 きを阻害する事が報告 されている(De
Virgilio and Loewith,
2006)。
ラパ マイシンはイース タ ー島の土壊 に生息す る放線菌Sttpわ り あ Jygra“ ″jC″ Sか ら
発見 された真菌 に対するマ クロ ライ ド系の抗生物質であ りα
その名
`zina Ct al.,1975)、
前 は、 イース ター島の現地名である 「Rapa N面 (大 きな崖)」 と菌類 に由来す る抗生物質
を示す接尾語 の 「mydn」 に由来 して い る。 その作用 は ヒ トの細胞 において免疫抑制能
や細胞増殖抑制能 があると言 う事が発見 されてか らとって変 わ られ、それ以降 ラパ マイ
シンの作用 について数多 くの報告がなされてきた。出芽酵母 においては ラパマイシン処
理は細胞内 にお ける同化 の過程 を阻害 し、同時 に異化 と増殖 に関す る過程 を活性化 す
る(De
Virg■ io and bew■ h,2006)。
゛
ラパマイ シン処理 した細胞 の多 くはす くさま細胞増殖
を停止 し、細胞周期 が停止 した状態であるGO期 へ と移行す る。 マ ウスにおいては適量
のラパ マイ シンを投与す る事 に よ り寿命 を約 10%程 度引き延 ばす事が報告 されてい る
(HarriSOn et al.,2CXD)。
それ らに加 えて、 ラパ マイシンを用 いたFKBP‐FRB bindingア ッセ
イが最初 に報告 され ると(BanaSZynsH et J.,2006)、
゛
す くさま細胞 生物学 の分野 を中心 と
して利用 され る様 にな り、医学や発生生物学 の分野 において も広 く応用 され るようにな
った。 しか し、 自然環境や妊婦 に対す る影響等 を考慮 に入れ ると安全な利用法が重要
12
であるに も関わら嗅 ラパマイシンが発生に与える影響 に関 しての報告 は皆無である。
ラパマイシンが脊椎動物の発生に与える影響 を解析す るためには水棲動物 は非常 に理想
的な候補のモデル生物である。非常 に興味深 い事 にゼ ブラフイシュにおいてラパマイシ
ン処理された胚 は72
hPf(hOurs past ferti‖ zation)の 緩やかな発生速度の遅れ と腸形成 に対
して深刻な影響を及 ぼす事が確認 されていた(Makky et」 .,2CX17)。 本研究ではま哄
TORClシ グナルがツメガエル胚 において も存在する事を確認 した上で、 ラパ マイシン処
理 はツメガエル胚 に対 してもTORClの 活性 を阻害す る事 を示丸 その上で、 ッメガエル
胚 をラパマイシン処理 してTORClシ グナルを阻害す ると、ゼ ブラフィッシュの場合 に確
認 された発生速度 の遅れ と内臓形成 に与える影響 に加えて、色素沈着阻害が引き起 こさ
れる事を紹介 し、TORClシ グナルが後期原腸胚以降 における形態形成運動 に強 く関わ
っているシグナルである事 を示現
13
1.2
材料 と方法
人工授精 と胚の取 り扱い
ツメガエルの未受精卵 は、」リロさせたい時間の12時 間前 にヒ ト絨毛性 ゴナ ドトロピ
ン(注 射用HCGlCXXXl、 富士製薬工業)を 筋肉へ2∞ unit、 皮下へ2110
udt、
納
uni注 射
したメスよ り得た。解剖 によ り取 り出 したオスの精巣の半分 を細か く切 り刻み作製 し
た精子懸濁液 を用 いて人工授精 を行 つた。精子懸濁液やd訳″b mRNAの 顕微注入後 の1
時間の回復期間の胚 の培養 にはlxス タイ ンバーグ氏溶液(S殷 艶 inberg's Pludon)(58 mM
NaCI、 OJ“
ン、5
mM KCl、 0.34 mM CaN034H20、 0.83 mM MgS04-7H20、 0.lg/Lカ ナマイシ
mM Tris‐ HCl、
PH 7の を用 いた。胚の培養 は全てo.lx SS(lx SSの 10倍 希釈)を 用 い
て行 った。人工授精 させた胚 は、受精30分 後 に1%チ オグリコール酸溶液(1∞ mlの O.lx
名メルカプ ト酢酸、和光純薬工業)と 5N NaOHを 3 mlの
sSに lmの チオグリコール酸σり
混合物)を 用 いてゼ リー層 を取 り除いた。胚 の培養 は全ての場合で22℃ の恒温槽 の中で
行 つた。
RT‐
PCR
目的のステージに達 した各サ ンプル胚 をRNA抽 出液(フ ェノールpH 576 ml、 グアニ ジ
ンチオシオネー ト23.6g、 チオ シオ ン酸 ア ンモニ ウム15.2g、
334」 、 グリセロール10d、 そ してNuclease―Free
3M酢 酸ナ トリウムpH
5.3
water(キ アゲ イ)を 50 ml混 合 して作
製。RNAiso(タ カラバ イオ)、 ISOGEN(ニ ッポ ンジーン)、 そ してTRIzol(ラ イフテクノロ
ジーズジャパ ン)と 同等 品)に 溶 か し、 フエノール・ クロロフォルム核酸抽出法 によ り
RNAを 抽出 して15″ 1の Nucleasc―Free
RNA 4μ
l、
Nuclease‐ Free water(キ
water(キ アゲ ン)に 溶解 した。その後、抽出 した
アゲ ン)6.5 μ 5x RT Rcactionバ ッフアー(和 光純薬工
l、
14
業)6″
ランダムプライマー(1∞ μM、 ライフテクノロジーズジャパ ン)3 μ dNTPs(5
l、
1、
mM/各 、和光純薬工業)3″ kジ チオ トレイ トール (0.lM、 和光純薬工業)3μ k RNA分
解酵素阻害剤 (タ カ ラバ イオ)05″
1、
MMLV r enzyme(和 光純薬工業)l μlを 混合 し、
30° Cで 10分 間、42・ Cで 2時 間、 そ して72° Cで 10分 間反応 させてcDNAを
合成 して、最後
に30/1の 超純水 を加 えた。
上述の方法 に より作製 したcDNA 2″
pH 8.3)3″
1、
10x PCRバ ッフアー(1∞ mM THS、 8∞
1、
mM KCi
10x MgC12 3 μl、 い汀 P(2mM、 サ ーモフィッシ ャーサイエ ンティフィック)
25 μl、 プライマー ミックス(20″ M/each)l μl、 Taqポ リメラーゼ (タ カラバ イオ)05 μl、
超純水
18
μlを 混合 させて、94℃ で5分 間反応 させた後 に94℃ で30秒 、55° Cで 30秒 、72
・Cで 1分 間のサイクル をEFfα の場合 は25サ イクル、賓凛、rψ ゎ′
、C力 ο″j″ 、Nog8れ の場
合 は30サ イクル行 い、72℃ で 10分 間反応 させた。 プライマーの配列 は以下 の通 り。
fw:5'‐
CACAGGCrCノ VttITACCC-3'
"R‐
TaR_rv:5'― GGTCTCTACCATATCCCT‐ 3'
″
C′ わr‐fW:5'― AAGGGGAGAAACrCGACrAじ 1lCCA-3'
rapわ r‐ Ⅳ:5'-11lCATCrCrcGGTCrGTATCC-3'
EFfα ‐
fw:5'― CCTGAACCACCCAGGCCAGAT「 GGTG‐ 3'
rv:5'‐ GAGGGTAGTCAGAGAACCrCrccACG‐ 3'
〃 ′α―
Cあ ο
〃れ
fw:5tCCTCCAATCCAACACTCCAGCAG-31
rv:5LGGAGGACGAGGAGし 11lGGGACAAG‐ 3'
Cあ ο
だれ―
No8gれ
fw:5'‐ AGT「
GCAGATGTGGCTCT‐ 3'
No88れ ―
Ⅳ:5'‐AGTCCAAGAGTCTCAGCA‐
3'
15
アガロース電気泳動
PC嵯 物 5″ 1と 6x
Loading Dyeを l μl混 合 し、1%ゲ ルの ウェルに全量流 し込み、135V
でそれぞ●23分 間泳動 した。
Poly・
HEMAプ レー トの作製
Poly‐ HIWhaJttp01y
2‐ hydЮ xyethyl methacり ate、 P01ysdences)の 原液(12%濃 度)を エ
タノールを用 いて4%に 希釈 したものを コーティング液 として用 いた。40 mmプ ラスチッ
クシ ャー レ(ア ズワン)の 底面 にコーティング液を一様 になるように広げ(5∞ Ⅳ 枚
)、
残
液を可能な限 り取 り除いた後、 クリーンベ ンチ内において殺菌用紫外線 を照射 した状態
で十分 に乾燥 させた。
ラパマイシン処理
.ラ パマイシン (LC LaboratoHes)は 疎水性であるため、両親媒性であるDMSO cdimethメ
即lfQxide)に 溶解 させることで0.lx SSに 溶解可能 にした。 まず、1∞ mgの ラパマイシン
を5dの DMSOで 溶解 させ(20
mg/ml)、
HIWhプ レー トを用 いて10、
40、
1∞ 口ずつ分注 し、-20° Cに 保存 した。Poly―
そして80山 Iの 濃度 に希釈 したラパマイシン溶液
"、
(20 mg/」 のラパ マイシンを0.lx SSを 用 いて希釈 した物)中 で1枚 につ き15個 の胚 を2細 胞
期からSt.42ま で培養 した。
Westem BIotting
St.42に 達 したサ ンプル胚 をタンパ ク質抽出液であるPhospho Ready sdution(450口 の
phospho stay soludon(メ ル ク)に 対 し、50口 の10x protein inhibitor solution(ロ
シユ・ ダイア
グノスティックス)を 加えたもの)60口 に溶か し、脂質 を除去す る為 に等量の トリクロロ
エチ レン(和 光純薬工業)を 加えてタンパ ク質部分を回収 した。 その後、 タンパ ク質20 μ
l
16
と5x Loading Dyeン 1を 混合 させて95° Cで 5分 間還元反応 を行 った後 に、全量 を5‐ 20%の
濃度勾配 を持つゲルであるSuperSepTM ACE(和 光純薬工業)を 用 いて150Vで 90分 間泳動
す る事 によ リタンパ ク質を分子量 の大 きさによって分離 した。 さらに、ゲルに存在す る
タンパ ク質 をPVDF膜 (メ ル ク)に 1lo mAで 1時 間の条件 で転写 した。 そのPVDF膜 に対 し
て抗体標識 には一次抗体 としてウサギ由来 のS6K(1:250、 日本ケ ミコン)と p‐ S6K
lphOSpho― S6K、
120CXl、
Gene Tex)を 用 いて、二次抗体 は抗 ウサギポ リクローナル抗体
(1:5∞ ∞ 、サーモ フィッシ ャーサイエ ンテイフイック)を 用 いて標識 し、ImageQuant Las
4000 mini(GEヘ ルスケアジャパ ン)で 検出 した。
mRNAの 作製 と顕微注入
PCS2ゼ 沢ルらの
(.ラ
′
で切断 した後、mMESSAGE mNIACHINE SP6 kit
り を制限酵素助 ′
“
イフテクノロジーズジャパ ン)を 用 いて榊
あ mRNAを 合成 した。 また、合成 した
ル勲勁 mRNAは 発生速度の遅延 を観察 した際は125 ng//1の 濃度 に希釈 し、顕微鏡下 に
おいて電動顕微注入機(IM-3∞ 、 ナ リシゲ)で 微小 ガ ラス針 を使 い2細 胞期 のツメガエル
胚 の両割球 に2 nlず つ、計50
pg、
内臓形成 の観察 の際 は50 ng//1の 濃度 に希釈 し、顕微
鏡下で微小 ガ ラス針 を使 い2細 胞期 のツメガエル胚 の両割球 に2Jず つ、納
pg顕 微注
入 した。顕微注入 は針 を刺 した事 による損傷 を緩和す る為 にlx SS中 で行 い、注入後 1時
間の間 は損傷 か らの回復 の為 にlx SSで 培養 した。 その後 は0.lx SSに 戻 し、22℃ の恒温
槽 にて培養 した。
胚 の観察 とステー ジング
受精後 15分 おきに胚 を観察 し、 ツメガエル胚 のステージ ングを行 った。 そ して胚 の半
数が特定 のステージ(本 研究 ではSt.10、
13、
22、
17
26、
28、
36、
38、
40、 42、
そ して45)に
達 した時間を記録 した。観察周期の間に半数以上の胚が特定のステージを越えた場合
では、計算 によって到達 した時間を予測 した。 この到達時間の予測 は1つ ずつ等間隔 に
ステージに到達すると考 え、(直 前の観察 における受精後経過時間(h』
+0・ 25/(今 回の
到達数 ‐前回の到達数))と い う計算式を用 いて、半数の胚 が特定のステージに到達 した
時間を予測 した。計算 は時間[h]単 位で行 い、イヽ
数点第2位 を四捨五入 した。今回の実験
では胚全体 の数を15個 、胚 の半数 を8個 として計算 した。計算例:直 前の観察 における受
精後経過時間は13 hpfb特 定のステージに達 した胚 の数 は直前の観察で7個 、現在の観
察で1013と する。 この時、13 hpf+025/(10‐
と、 13.l
hpfと
7)と
な り、小数点第2位 を四捨五入する
なる。各ステージのステージングの根拠 は下記の通 りに従 った。St.lo
背側 に原 日の色素沈着が観察 される。St.1■ 原 口が完全 に閉じる。St.22:神 経溝が完
全 に閉じる。St.26背 側 の軸が直線状 になる。初期のメラニ ン形成細胞 と眼胞 の隆起が
観察 される。St.2&フ インの構造が初 めて観察 される。St.36眼 球 とセメン ト腺が明確
に観察 される。St.3&フ インの領域が拡大 し、躯幹から尾 にか けての前後軸の半分の距
離を占める。St.40:後 ろ側 の卵黄 とフィンの境界が垂直 になる。St.42:腹 側部分のフィ
ンが肛門の前部領域 に明確 に現れる。St.45:腸 の領域 に二重 コイル構造が観察 される。
また、St.42以 降のラパマイシン処理胚 物
ルb mRNA注 入胚では、誘発 された構造的
変化 によってステージングが困難なため、St.38、
40、
そして42の 3点 から回帰直線 の式
を求め(y=ax+b)、 Xの 値 にコン トロール胚 がSt.45に 到達 した時間 を代入す ることで処
理胚 と注入胚 の到達時間oの 値)を 算出 した。
内臓 の摘出
St.45の 胚をPBSFA(10x PBS(PhOSphate bufFered saline:塩 化 ナ トリウム80g、 塩化 カリ
18
ウム2g、 リン酸水素ナ トリウム144g、 リン酸二水素 カリウム24gを lLの 超純水 に溶
解、PH 7o:ホ ルムアルデ ヒ ド:超 純水=111:8で 混合 した物)を 用 いて固定 した。 その後、
胚 をlx PBSに 置換 し、頭部 と尾部を使 い捨てナイフによって切断 した。 そして実体顕微
鏡下で ピンセ ットを用 い腹部の皮を開き、内臓以外の部分 を取 り除いた。次 に内臓 と
胴体を結合 してい る部分 を切断 した。
組織切片
組織切片 に用 いたSt.45の 胚 はPBSFAを 用 いて固定 した。 その後胚 を70%エ タノール、
1∞ %エ タノール、 そしてキシレンの順番で置換 し、パ ラフィンに包埋 した後 にミクロ ト
ームを用 い81mの 厚 さに切断 した。次 にキシレン、100%エ タノール、70%エ タノール、
そして水の順番で置換 し、ヘマ トキシ リン とエオシンによる染色(HE染 色)を 行 い、再 び
"%エ
タノール、1∞ %エ タノール、 そしてキシレンの順番で置換 し、疎水処理を行 つた
後 にカナダバルサムを用 いてプレパ ラー トに封入 した。
19
1。
3
1. 3。
結果
1
ツメガエルにTORClシ グナルは存在する
TORタ ンパ ク質 は酵母から脊椎動物 に高度 に保存 されてお り、 ラパマイシン感受性 の
TORClと ラパマイシン非感受性 のTORC2と 呼 ばれる2つ の物理的に も機能的にも異なつ
た複合体 を形成する(De Ⅵrgilio
and Loewith,2006)。
このTORClの 阻害 はTOR、
raptor、
ラパマイシン、FKBP12間 で複合体を形成する結果引 き起 こされる(図 1‐ 2A;Lorenz and
Hdtman,1995)。
このFK5%結 合タンパ ク質 と呼ばれるFKBP12は ツメガエルの初期発生
において全てのステージで発現 してい る事が既 に報告 されてお り(Nishinakamura
1997)、
et d.,
この事 はラパマイシンを用 いてTORClシ グナルを阻害す る為 には追加でFKBP12
を追加する必要 はない事を示 してい る。実際 に予備実験か らΠttPf2 mRNAを 顕微注入
してもラパマイシンの阻害能が上昇すると言 う事 は確認 されなかった(未 記載デー タ
)。
そうした中で私 は、 ツメガエルの初期発生におけるTORClを 構成す る因子である賓,Rと
raprarの 発現時期をRT
PCR法 により分子 レベルで解析 した。 その結果、■,Rも ´
″″″も
未受精卵からSt.45ま で全ての時期で連続的に発現 してい る事が観察された(図 1‐ 1)。 ツ
メガエル胚では胚性 プログラムによって制御 されてい る接合子性 の遺伝子発現 はSt.85
付近のMBTと 呼ばれる時期から開始 される。 この接合子性 の発現 を示す遺伝子の中で
はFttf2
Rと ψ ″″
も代表的な分子であるC″ t伽翅りやNog8′ ″の発現 と比較 しても賓フ
の発現 と同様 に、未受精卵か ら幼生期 にか けて連続的に発現 してい る事が明らかになっ
た。
1. 3。
2
ラパマイシン処理 はツメガエルにおいてTORClシ グナルを阻害する
がマターナルに存在 している事
ツメガエル胚 に確かにTORClを 構成 する賓)Rと ψ ″夕
20
が明らかになつたので、次 に、 ツメガエル胚 においても実際にラパ マイシン処理が
TORClの 活性 を阻害す る事が可能である事を明らかにする為 にwestm Blotting法 による
生化学的解析 を行 つた。TORClの 活性 を調べ る際 にはTORClの 下流因子であるリボソ
ームタンパ ク質p70S6Kの リン酸化状態 を解析す る(Fingar
et江 .,2∞ 2)方 法が一般的に用
い られてい るので、2細 胞期からSt.42ま での期間 ラパマイシン処理 した胚か ら抽出 した
タンパ ク質 に対 してS6Kの リン酸化状態 を確認 した。 その結果、 コン トロール胚 では
S6Kの リン酸化が確認 されたのに対 して、 ラパマイシン処理胚ではS6Kの リン酸化 は阻
害されてい ることが確認 された(図 1‐ 2B)。 以上の結果より、 ラパ マイシンはツメガエル
胚 において もTORClシ グナルを効果 的に阻害す る事が可能である事が明らかになっ
た。
1。
3.3
ラパマイシン処理は発生速度を遅延させる
ラパ マイシンがツメガエル胚 において も十分 にToRClシ グナルを阻害する能力を有
する事が明らかになつたので、 ラパ マイシン処理がッメガエルの初期発生に与える影響
を明らか に しようと考 え、20″ Mの ラパマイシ ン溶液で2細 胞期からSt.42ま での期間 ツ
メガエル胚 を処理 した。同 じhポ ラパマイシン処理 した胚 を コン トロール胚 と比較 し
た場合、特 に眼の形成 に注目してみると、発生が停止されてい るのではな く、遅れてい
ると言 う事が確認 された(図 1‐ 3A)。 次 に、発生の遅れ とラパマイシン処理 との関係性 を
明らかにしようと考え、異な る濃度(10、
20、
40、
80μ M)の
エル胚を処理 した(図 1-3B、 表 1‐ 1)。 この実験条件では8.5
ラパマイシン溶液でツメガ
hpfに
おいて コン トロール胚 の
半分 はSt.10に 達 していたが、80μ Mの ラパマイシン処理胚では04時 間の発生の遅れが
生 じていた(図 1‐ 3B、 表 1‐ 1)。 10/Mの ラパマイシン処理胚 では コン トロール胚がSt.22に
21
到連す る24 hpfに おいて平均 で0.8時 間の明 らかな発生速度 の遅延 が確認 された(図
表 1-1)。 コン トロール胚 とラパ マイシン処理胚 の間の 目的のステージに到連す る
1‐ 3B、
までの時間のずれ は全ての場合 にお いて、培養 した時間の差 を示 してい る。例 えば、80
″Mの ラパマイシン処理力ヽt.42に おいて5時 間の遅れを生 じさせた場合、 コン トロール
胚 カヤ0.3 hlttFSt.42に 達 したの に対 して、 ラパマイシン処理胚 では コン トロール胚 がSt.
42に 達 した5時 間後 の75.3 hpfに 同 じステージに達す る事 を意味す る(こ の際の発生速度
は93/%で あるx図 1‐ 3B、 表 1‐ 1)。
以上 の結果 か ら、 ラパ マイシン処理 した事 によつてツメガエルの初期発生 において発
生速度 の遅延 が引き起 こされ る事 が確認 された。 ここで、 ラパマイシン処理力rroRCl
シグナルを阻害 した結果 として発生速度の遅延 を引き起 こしてい るのであれば、別 の手
段 を用 いてTORClシ グナル を阻害 した場合 にも同様 の発生速度 の遅延が起 こるのでは
ないか と考 えた。TORの 上流 にはR"様 smdl GTPaseで あるRheb eas mm。 log卸 HChed in
hrain)と
呼ばれ る、正の調節因子 が知 られてい る。 このRhebが Rasttsmdl GTPascで ある
b
事を応用 して、20番 目のセ リンをアスパ ラギ ンに置換 した常時不活性 型であるa沢 力ι
O物 渤
gaガ ″ Rみ あヽ
の コンス
rュ ′
トラク トを基 にして合成 したmRNAを 2細 胞期 のツメガ
エル胚 に顕微注入 し、発生速度の遅延が引 き起 こされ るのか に注 目して、 ラパ マイシ ン
処理胚 の結果 と比較 した。 その結果、ほ hあ mRNAの 顕微注入 によ り、尾芽胚期 まで
はラパマイシンとほぼ同 レベルで発生の遅れが引き起 こされ る事が確認 された(図
1‐ 3】 3、
表 1‐ 1)。
1. 3.4
ラパ マイ シン処理 は色素沈着阻害 を引き起 こす
ラパ マイシン処理 力汀ORClシ グナル を阻害 して発生速度 の遅延を引き起 こす事が確認
22
されたが、私 はそれ以外 にもラパマイシン処理が及 ぼす初期発生への影響があるのでは
ないか と考 えて更 なる解析 を行 った。 この際、 ラパ マイシン処理またはほ hあ
mRNA
の頭微注入は発生速度を遅れ させるので、 コン トロール胚 とラパマイシン処理胚、また
はほ
hι
らmRNAの 顕微注入胚 を比較す る際は、同 じhpfに おける比較ではな く、同 じス
テージに到達 した胚を比較 した。具体的には コン トロール胚 は70.3
るが10、
20、
40、
80″ Mの
ラパマイシン処理胚では35、
40、 45、
mRNAの 顕微注入胚では1.6時 間の遅れが生じるので73.8、
74.3、
hpfで St.42に
到達す
50時 間、あ滋あ
74.8、
75.3、
71.9 hPfに
おける胚 と比較 した。 さらに、St.45で はラパマイシン処理が初期発生に与える影響が
大きいので後期のステージか ら推定時刻 をそれぞれ算出して、その時刻 における胚 と比
較 した。上述の方法を用 いてラパ マイシン処理がツメガエルの初期発生 に与える影響 に
ついて表現型を観察 した結果、色素沈着阻害を引き起 こす事が確認 された(図 1‐4D。 通
常のツメガエルの発生ではコン トロール胚で確認 されたように神経管、卵黄、体節の領
域 に色素沈着が広がる(図 1‐ 43。 一方で、 ラパ マイシン処理胚では眼の色素沈着 に関 して
の阻害 は確認 されなかつたものの、特 に頭部神経管の領域 を筆頭 に卵黄や体節領域で
の色素沈着の阻害が引き起 こされてい る事が確認された(図 1つ 。 また、α沢ルみmRNA
の顕微注入胚では色素沈着の阻害 は確認 されなかつた(図 1‐ 5C)。 さらに、 コン トロール
胚 とラパマイシン処理胚 の間で黒色色素形成細胞 に注目してみるとその数自体の減少 は
確認 されなかつた。 この事か ら、 ラパマイシン処理 はメラノサイ トの初期の分化の過程
や増殖 を阻害 してい るのではな く、色素沈着が起きる過程への進行を阻害 してい ると言
う事が示唆された。
1. 3. 5
ラパマイシン処理は内臓奇形の原因 となる
23
St.42の ラパマイシン処理胚 において色素沈着阻害以外 に もラパマイシン処理が及 ぼ
す影響を解析 したところ、将来 の内臓を形成する領域を含 む卵黄部分がラパマイシン処
理胚では コン トロール胚 に比べて肥大 してい る事が確認 された(図 1→ 。 さらに、St.45
におけるラパマイシン処理胚で ははつき りとした影響が確認 された。 ラパマイシン処理
胚では コン トロール胚 と比較 して全体的 に胚 の大きさが小さい事が確認 され、 これは
あ mRNAを 顕微注入 した場合 にも確認された(図 1-5A‐ C)。 また、 コン トロール胚 と
硼
は Lあ mRNA顕 微注入 した胚では黒色色素形成細胞の成熟が確認 されたが、 ラパ マイ
シン処理胚 では確認 されなかった(図 1‐ 5A‐ C)。 眼の大きさ全体 に関 してはコン トロール
胚 に比べてラバマイシン処理胚 と″彫ぁ mRNA顕 微注入胚 において小 さくな り、 さら
に、 ラパ マイシン処理胚では水晶体が眼杯で包まれていない事も確認 された(図 1-5A―
C)。
上述の影響 に加えて、最 も影響が大きかつたものは内臓形成 についてである。 この時
期 における通常の胚 の腸 はコン トロール胚で確認されたようにコイル ドコイルの構造 を
有 し、内・ 外側 のループはともに2回 ループしてい る(図 1‐ 5A、
D、
G)。
しか し、 ラパマ
イシン処理 した胚の腸ではコン トロール胚 の場合 の様な コイル ドコイル構造 は確認 され
同様 の結果 はね勲め mRNA顕 微注入胚
ず に、1回 巻き構造が確認 され(図 1‐ 5B、
E、
の場合 にも確認 された(図 1‐ 5C、
また、 ラパマイシン処理 した胚を176
F、
I)。
H)、
期培養 した場合 においても、 コイル ドコイル構造が確認されなかつた(図 1る
24
)。
hpfま
で長
1.4
考察
本研究 はTORClシ グナルをラパマイシンを用 いて阻害する事で、 ツメガエルの初期
発生にどの様な影響 を与えるのかを解析する事を目的 として進 められた。 ま哄 ツメガ
エルにTORCl構 成因子が存在す る事 をRT‐ PCR法 による発現解析 によ り示 し(図 1‐ 1)、 そ
して、 ラパマイシン処理がツメガエルにおいて もTORClシ グナルの働 きを阻害す る事を
Westem Blotting法 によ り生化学的に明らかにした(図 1‐ 2)。 さらに、初期発生に与える影
響を調べた ところ、発生速度が遅延する事(図 1-3、 表 1-1)に 加えて、後期原腸胚期以降
に色素沈着形成を阻害す る事(図 1‐4、
す(図 1-5、
-6)と
-5、
―
o、 そして内臓形成 において奇形 を引き起 こ
い う非常 に大きな形態形成 に対する影響が確認 された。
ここでは、1)TORClシ グナルが ツメガエルにも存在する、2)ラ パマイシン処理 によ
る発生速度 の遅れ、3)ラ パ マイシン処理 による初期発生への影響、41ラ パマイシン処
理 とわ勲勁 mRNA顕 微注入の差異 について考察をお こなう。
1)TORClシ グナルがツメガエルにも存在する
ラパマイシンを用 いて発生に与える影響を解析する前段階 として、即 _PCR法 によ り
′
がッメガエル胚 に存在 してい るのか と言
TORClを 構成する主な因子であるTaRと ″
グο
う事を解析 した ところ、母性的に未受精卵か ら幼生期 の期間で連続的に発現 してい る事
が確認 された(図 1-1)。 この事 に加えて、 ラパ マイシンと複合体を形成することによ り
TORClの 働 きを阻害するΠCP12も ツメガエルの初期発生において母性的に発現 してい
る(Nishinakamura ct」 .,1997)と 言 う事 を考慮 に入れると、TORClシ グナルの阻害剤であ
るラパ マイシンは未受精卵以降 に処理する事が可能である事が明らかになった。
TORClシ グナルがツメガエルに存在す る事実 とラパ マイシン処理をお こなうタイ ミング
25
が明らかになつた上で、 ツメガエル胚 においてもラパマイシンカ汀ORClシ グナルの活性
を阻害する事が可能か と言 う事 を明らかにする為 にラパ マイシン処理胚 (80″ M)に 対 し
てWes“ m BIotting法 によ り、下流のS6kの リン酸化状態 を生化学的に解析 した。 その結
果、St.42の 段階でラパマイシン処理胚で はS6Kの リン酸化が阻害 されると言 う事が確
認 され 図1‐ 2B)、 ラパ マイシンはツメガエル胚 においてもTORClシ グナルを阻害すると
言 う事が明らかになった。 この結果 について、 ラパ マイシン処理を始めてからTORClの
活性が低下す るまで に要する時間がい ささか長 い様 に感じられるが、ツメガエルの2倍
の発生速度であるゼ ブラフイッシュにおいて、 ラパマイシンを用 いたS6Kの リン酸化 の
抑制 には28時 間かかるとい う報告がある(Makky
et al.,2∞
7)。
この事か ら、ツメガエル
におけるラパマイシンに対する反応性 はゼ プラフイッシュとほぼ同程度であると言 うこ
とができるだろう。
本研究 では、 ツメガエルにおいて もTORClシ グナルは分子自体 も、そして機能 も存在
すると言 う事を示 した。TORCl構成因子の中でもTORは 、実験生物 として遺伝的知見
が皆無である無顎綱の生物 を除いた脊椎動物亜門 に属す る残 りの5つ の綱 の生物の中
で、進化的距離の最 も遠 い哺乳綱 であるマウス と魚綱であるゼ ブラフイッシュ間 におけ
るア ミノ酸配列の相同性 は91%に なる。 この値 は節足動物門から脊索動物門 に至るま
で、ほぼ全ての動物界の生物 にとって初期発生の背腹軸 を決定する上で重要な働きを有
するタンパ ク質Chdに ついて、マ ウス とゼ ブラフイッシュの間の相同性カン7%で あるこ
とを考慮す ると、驚異的な数値 であり、TORが 分子進化的に極 めて重要な役割を担 つた
タンパ ク質であると言 うことを示唆 してい る。
ヵ ラパマイシン処理 による発生速度の遅れ
26
他のモデル生物 と同様 にツメガエル において保存 されてい るTORClシ グナルが初期発
生においてどのような役割を有 してい るのか と言 う事 を明らかにする為 に、 ラパマイシ
ン溶液でツメガエル胚を処理 した ところ、発生速度 に遅延が生 じる事が明らかになった
(図 1‐ 3、
表 1‐ 1)。 さらに詳細 に観察 してみると、同 じ濃度でラパマイシン処理 した胚に
関 しては時間の経過 とともに発生の遅れが大きくなり(図 1-3、 表 1-1)、 同じhpfに おいて
観察すると、濃度依存的に発生速度が遅れる(図 1‐ 3、 表 1‐ 1)。 つ まり、 これ らの結果 は
ラパマイシンの処理時間 と濃度 に反比例 してTORClシ グナルの活性が低下 してい る事を
示 してい る。 また、Rhebは 低分子 のR"様 smal GTPaseで あり、GTPと 結合す ることで
TORClシ グナルを活性化させ、GDPと 結合す ること‐ ORClシ グナルを不活性化 させ
る性質があるので、dnRhebを 用 い る事により、TORClの 活性 と発生速度の関係 を明ら
か にする事ができるのではないか と考 え、献
った。 その結果、翻
hι
ιmRNAを 顕微注入 した胚 の観察 を行
あ mRNAを 顕微注入 してTORClシ グナルを阻害 した場合 におい
ても発生速度は遅延する事が確認 され(図 1‐ 3、 表 1-1)、 この結果 はTORClシ グナルの活
性が発生速度を調節 してい る事を示 してお り、 ツメガエル胚 の初期発生において発生速
度を調節す る分子機構 の存在 を明示 した世界で初 めての研究結果 となる。 また、興味
深 い事 にい くつかの分子 には発生を抑制す る事が報告されている。例 えば、細胞 の増殖
を制御するFGF obЮ blattgrowth iCtOr)シ グナルの下流分子であるMEKの 常時活性型の
mRNAを 注入 した場合、注入後の細胞分裂 を妨げる事が知られてい る(MacNicd
1995;図 3‐ 2、
-3)。
他 に も、TORClシ グナルの抑制 によって寿命が延長される とい う報
告が酵母(Kaebedein
`
2004D、
線虫oa
et J.,
et al.,2005;Powers et al.,2∞
etal.,2004D、
6)、
そしてマウス(HarrisOn
27
シヨウジ ヨウバエ(Kapahi
et al.,2009pに
et al.,
おいてされてい る。 さ
らに、 TORClシ グナルの抑制 による初期発生の発生速度の遅れは、ゼ プラフイッシュ
(Makky et d。
,2∞7)と 線虫(Oldham et d。 ,2∞ 0)を 用 いた研究でも報告 されてい る。 これら
のことから、TORClシ グナルの抑制 による寿命の延長 については初期発生の段階から
の値を考慮すべ きであり、近年、ザイ ゴティックな遺伝子の発現が開始 されるMBTよ
り前の発生初期の段階か らTORClシ グナルは寿命 を制御 してい る事 も明らかになつてい
る(UenO
et al.,2■
2)。
3)ラ パマイシン処理 による初期発生への影響
ツメガエル胚 の色素沈着 はSt.34か ら眼球、神経管、卵黄(消 化管
)、
そして体節の部位
に徐々に確認できるようにな り、St.42付 近ではそれ らの部位 にはっき りとメラニ ン色
5)。
しか し、 ラパ マイシン処理胚では処理濃
素が形成される事が知られてい る(図 1‐ 4、 ‐
度 に関係 な く、神経管、卵黄(消 化管
)、
そして体節の部位 に生 じる色素沈着が薄 くなつ
5)。
てい ることが観察 され、特 に頭部神経管領域 の色素沈着 は大幅 に減少 した(図 14、 ‐
この事から、TORClシ グナルは神経管、卵黄(消 化管
)、
そして体節の部位の色素沈着 に
関わつている事が示唆される。 しか し、TORClシ グナル と色素沈着の関係 に対する報
告 はこれまで皆無であ り、本研究が最初 の報告 となる。 この発見 は体外受精 とい う受
精様式を取 り、 さらに色素沈着の観察が容易 に行 える特徴 を持つ ツメガエル胚を用 いた
からこそ発見できた と言 える。 また、St.20か らラパマイシン処理を施 した胚 の場合、2
細胞期からラパマイシン処理 を施 した胚 と同程度のレベルで色素沈着が抑制されたが、
黒色色素形成細胞 の数 に差はなか つた(未 記載 データ
)。
この結果 は、 ラパマイシン処理
が色素沈着 は抑制す るが、黒色色素形成細胞 の分化 と増殖 には関与 していない事を示唆
してい る。 さらに、脊椎動物の色素沈着 において、上皮細胞の色素細胞 は神経冠 に由来
28
し、網膜色素上皮の色素細胞 は眼杯 に由来 している事が知られてい る(Du口 n
and Le
DouaHn,2∞ 3)。 ラパ マイシン処理 による色素沈着への影響 は上皮細胞 にのみ生 じてい
たことから、TORClシ グナルの活性 は神経冠 に由来す る細胞 の分化 にある程度の影響
力を持 つてい る事を示唆 してい る。
らmRNA注 入胚 の消化管の奇形 はSt,42以 降 に生 じ
また、 ラパマイシン処理胚 とれ磁ι
5)。 そしてこの結果が発生の遅れによって内臓 の形成 が遅
ることが観察 された(図 14、 ‐
れてい る事 とは無関係である事を証明する為 にラパマイシン処理胚 の長期培養を行 つた
結果、消化管の奇形 を維持 したまま発生が進んだ(図 1-6)。 これはTORが 内臓形成 に深
く関わつている事を示唆 してい る。興味深 いことに、色素沈着 を比較 した場合では処理
胚 と注入胚 に差が生じたが、消化管 の形成 を比較 した場合では双方 とも消化管 に奇形
が生じてい る(図 14、
-5)。
この理由として、 ツメガエルの消化管形成 における前駆細胞
同士の相互作用 と時期 の重要性が挙げ られる。 ツメガエルの消化管の形成 には、腸管
の上皮細胞 の構築、各消化管の前駆細胞同士の相互作用が重要であることが知 られてい
るchalmers and Siack,1998)。 おそらく、 ラパマイシン処理 鍬
ルb mRNAの 注入 によ
つてSt.20前 後 の予定消化管領域 におけるい くつかの分化 に影響を与えることで、前駆
細胞 の数や位置 に変化が生じ、 さらに発生の遅れにより後期のステージにお ける前駆
細胞同士の相互作用 を阻害 してい るので はないだ ろうか と考 える。 そして、興味深 い事
に、ゼ プラフイッシュや線虫 においてもラパ マイシン処理 によって消化管形成 に奇形 が
生 じている(Makky et J.,2CXy7;Long et d.,2∞ 2)。 これらの結果 はTORClの 活性が動物界
の胃腸 の形成 に広 く必要 とされてい ることを示唆 してい る。
4)ラ パ マイ シ ン処理 とご慮 陸 らmRNA顕 微注 入 の差 異
29
ラパマイシン処理 とd濃滋らmRNAの 顕微注人 は基本的な概念 としてはそれぞれ
TORCl阻 害剤、 またはTORCl構 成分子であるTORに 直接結合 して、 その働 きを活性化
するRhebの 常時不活性型であるのでTORClシ グナルの活性を阻害す るものであり、発
生速度の遅れや内臓形成 に異常 を誘導す ると言 う事も一致 してい る。 しか し、発生速度
″ mRNA注
の遅れがラパマイシン処理胚 では時間 と共 に大きくなるのに対 して、α沢み
入胚では尾芽胚期 を過ぎると発生の遅れが一定 になることが明らか にされた(図 1‐ 3B、
表 1‐ 1)。 注入す るdzRル らmRNAの 量を変更 した場合、注入量 に比例 して発生の遅れは
徐々に大きくなるが、尾芽胚期 を過ぎた頃から一定 になった(未 記載 データ
)。
この様な
結果 になつた要因 としてmRNAの 性質が挙げられる。 これ は胚 の内部で注入 したmRNA
が リボヌクレアーゼの標的にな り、尾芽胚期以降では完全 に分解され、 さらに翻訳 さ
れたdnRhebも ユ ビキチン化 され、分解されて しまうことで、TORClシ グナルの活性 を
抑 えることが不可能 になった為であると考 えられる。 この様 に分解されてしまうmRNA
やタンパ ク質 に対 し、 ラパマイシンは化学物質であり、生体内の半減期 はヒ トの場合
57-63時 間であると言われてい ることとツメガエルの発生を考慮 に入れると、比較的長
い期間体内に残留 し続けることが可能である。また、 ラパ マイシンの分子量 は914.17で
あり、細胞膜 を透過 して直接体内に浸透す ることが可能である。 そのため、培養液中
にラパ マイシンが存在する限 り、胚 の内部 に浸透 し、胚内にラパマイシンを補充す る事
が可能である。 そして体内に補充 されたラパ マイシンが常 にTORの 活性 を阻害する事 に
よ り、持続的に発生速度の遅れが大きくなると考えられる。TORClシ グナルを両者 の
方法で阻害 した際 に色素形成の阻害が起 こるか否か と言 う違 い もこのメカニズムによっ
て起 こっている事が考えられ る。
30
0
や
や
ら
ゾ
゛
や
や
8
゛
0
゛
raprOr
Chordill
EF,α
[図 1-11
10RCl構 成因子は未受精卵から幼生期において連続的に発現する
未受精卵か ら幼生期における矧 と
r lnRNAの RT―PCR法 による発 現時期 の解析。 TOR、
“"●エル胚 の 中で連続的に発 現 していた。 働∝dinと
raptorど ちらのTORCl構 成因子 もツメガ
は
oggi、はザイ ゴティックに発現する分子として、″ はポジテ ィブ コン トロール として用い
`α
た。
31
A
Rap
TORCl
o‐ S6K
70 kd
F‐
・
・ 罐灘
S6K
[図 1-2]ラ バマ イ シン処理 はツ メガエルにお いてTOR01シ グナル を組害す る
ツメガ エ ル 胚 にお けるラパマ イ シン処理 に よるTORClシ グナル活性 阻害 の解析。 (A)一 般 的
に保存 され て い るラパマ イ シン によるTOIIClシ グナル 阻書 モ デ ル 。 FKBP12-ラ パマ イ シン複合
体 がTORに 結合 し、TORClの 活性 を阻書す る。 S6Kは TORClに よつ て活性 化 され る代表的 な下流
因子。 (B)Testern 31otting法 によるラパマイシン処理胚のS6Kリ ン酸化状態の解析。胚は2
細胞期 から80 JIIの ラパマイシンを含 んだ溶液で処理 され、St.42に おいてタンパ ク質を回
収 した。ラパマイシン処理 した胚 では コン トロール胚で確認 されたS6Kの リン酸化は確認 さ
れなかった。
32
A
Rap
Co
B
日柵=HHH個
ヾ興 e拠増 川猷
0弓 j.5 1L.2
(2-Ce!lxSt.10XSt.13)
24.0
I
2e.5
(St.22)l(St・ 28)
27.5
(St.26)
48.7
52.3
61.9
70.3
(St.36)(St.38)(St.40)(St.42)
95.3
―O-80
-40
―A-20
μM
μM
μM
μM
-10
―o-50 pg
h
(St.45)
hpf
1-3]ラ パマイシン処理 による丁ORClシ グナルの阻害 は発生速度の遅延を引き起 こす
パマ
b mRNA顕 微注入 によるTORClシ グナルの阻害 が発 生速度 に与 える影
ラ
イ シン処理や あ動θ
響 の解析。 (A)同 じ発 生時 間 における コン トロール胚 とラパマイ シン処理胚 の比較。 2糸 田胞
M)し た胚 では発 生速度 が明 らかに遅れてい た (100%、 n=15)。
期 か らラパマ イ シン処理 (20 μ
パマ
ム コースの遅れ。それぞれ の濃度 (10、 20、 40、 80 μ
M)の
シン処理
によるタイ
イ
(B)ラ
パマ
の
イ シンで胚 を処理す る と濃度依存的 に発 生速度 遅れ が確認 された (100%、 n=15、
ラ
b mRNA(50 pg)の 顕微注入 の際
100%、 n=15、 100%、 n=15、 100%、 n=15)。 同様 の影響 はあ動θ
にも確認 された (100%、 n=15)。 St.45(95。 3 hpf、 コン トロール胚 )で はラパ マ イ シン処理
が形態形成 に及 ぼす影響 が非常 に大 きいの で 、St.42か らSt.45ま で の発生速度 の遅れ は
St。
42ま で の発 生速度 の遅れ か ら予測 して計算 した。St.10:背 側 に原 日の色 素沈着 が観察
され る時、St。 13:原 口が完全に閉 じる時、St.22:神 経溝 が完全に閉 じる時、St.26:背
側 の軸 が直線状 にな り、初期 の メラニ ン形成細胞 と眼胞 の隆起 が観察 され る時 、St.28:フ
ィンの構造 が初 めて観察 され る時、St。 36:眼 球 とセ メ ン ト腺 が明確 に観察 され る時 、St。
38:フ ィ ンの領域 が拡大 し、躯幹 か ら尾 にかけての前後軸 の 半分 の距離 を 占める時 、St。
40:後 ろ側 の卵黄 とフ ィンの境界 が垂 直 になる時 、St.42:腹 側部分 のフ ィンが肛門の前部
領域 に明確 に現れ る時、St.45:腸 の領域 に二重 コイル構造 が観察 され る時をそれぞれ のス
テー ジ と定義 した。
[図
33
Rap
Co
._
1\
74.3h:│よ
二
_
/Nl
/り I
(ti`
\:
St.42
/CNT
N:
\
│
[図 1-4]ラ パマイシン処理 によ るTORClシ グナルの阻害は色素沈着形成を阻害する
ラパマイ シン処理が ツメガエル胚 の初期発 生に与 える影響 の表現型解析。St.42の コン トロ
ール 胚 では側方 と背側 に色素沈着 が確認 され るが、ラパマイ シン処理 (20 pM)し た胚 では明
らかに色 素沈着 が 阻害 され てお り(100%、 n=15)、 また 、卵黄 の肥大化 も認 め られ る。CNT,
cephalic neural tube(頭 部神 経 管 );NT,neural tube(神 経 管 );Y,yolk(卵 黄 );S,
somite(体 節)。 scale barは l nmlを 表す。
34
A
dnRheb
Rap
Co
;憫
町側
腹側
ロ
[]
`
・
・
:・
巨佃
ililiil¬
1■
側方■
―
背側‖
卜a 卜p
Co
E Rap
F dnRheb
G Co
H Rap l dnRheb
グナル阻害は内臓奇形の原因 となる
パマ
b mRNAの 顕微注入 によつて奇形 が引き起 こされた内臓 の解析。 (A)
ラ
イ シン処理 とあ動θ
コ
St.45の B、 Cに 対す る ン トロー ル 胚 (95。 3 hpf)。 (B)St.45の ラパマ イ シン処理胚 (40
Mの 場合 よ り強か つた。腸 のサイ ズ と形はラパマイ シン処理によつ
μM)。 色素沈着阻害は20 μ
b ttA(200 pg)を 顕微注入 した胚。
て影響 を受けて い る (100%、 n=15)。 (C)St。 45の あ動θ
コン トロール胚 と同様であ
い
ズ
n=15)が
の
た
色素沈着は
(100%、
、
腸 サイ と形は影 響 を受 けて
った。点線 はG― Iで 示す組織学切片 の切断箇所 を示 してい る。 (D― F)外 科的 に取 り出 したA― C
の腸。 上方 のパ ネル は腹側 か らの視点、下方 のパネル は側方か らの視点を表す。 二重 コイル
わmRNA顕 微注入 の際 には確認 されなか った。 1° 、1番
構造はラパマイ シン処理 、またはあ動θ
コ
コ
の
ル
イ 構造。 左 下 には腸構造 の ダイ ア グラム を示す。 (G― I)
目の イル構造 ;2° 、2番 目
b mRNAを 顕微注入 した胚 の どちらの
A― Cの 胚 の組織学切片。 ラパマ イ シン処理 した胚 もあ励θ
腸 形 成 も、 コ ン トロー ル 胚 に比 べ て 薄 く乱 れ た 。 bd,bile duct(胆 管 );li,large
intestine (プ て
識); si, small intestine (/1ヽ 測
易);
測
易); lu, lungs (晟 蚕); pa, pancreas 鮮 朋
st, stomach(胃 )。 scale barは A― Cは 2 nlln、 D― Fは 0.5 nlmを 表す。
[図 1-5]丁 ORClシ
35
長期培養
□
倶」
方
F倶
」
[図 1-6]ラ パマイシン処理による消化管の構造形成の阻害は発生の遅れによる影響 ではない
ラパマイ シン処理 (20 pM)の 長期培養 (176 hpf)。 全ての胚 が風船 の よ うに膨 張 したが、最大
200 hpfま で生存 した。
36
蜀
"n層
n処 理とdnRh● ●mRNA口薇注入した胚の発生議凛 0遅 延の平均
コントロール胚のhpF回
¨
mRM頸 微注入による発生速度燿驚の平均
パ
ラ マイ シン処理は2細 胞期以降、それぞれ のステー ジに達す るまで行 つた。 ぬ騒 oあ InRNAは
2細 胞潮 に顕微 注入 した。胚 は15分 ご とに数 えた。
[表 1-11ラ バマイシン処理または商麟め
37
第 2章
新規遺伝子″ИのJが
ツメガエルの初期発 生 に与 える影響 の解析
38
2。
1
背景
タンパ ク質 は配列の中に独立な機能 を持つ ドメイ ンを1つ または複数有 してお り、 こ
れまでに発見 された ドメインは数百種類 に も及ぶ。 その中の1つ に70か ら100程 度のアミ
ノ酸配列の中にシステイ ン残基を多 く含 む特徴からCR eystine」ch)ド メイ ン と呼ばれ
る分子が存在す る。 このCRド メイ ンを有する分子の中で最 も有名なのは、Chd(sastt et
J.,1994pで ぁり、 この分子 はBMPに 直接結合 してその機能を阻害するアンタゴニス トと
して働 く事 によって神経誘導 に関与す る事が知 られている。Chdは 約 10∞ の ア ミノ酸か
らなる巨大分子で、4つ のCRド メイ ンを有 してお り、そのCRド メイ ンが形成する特異
的な立体構造 によって直接Bヽ Pに 結合 し、Bヽ Pリ ガンドとBM曖 容体 との結合 を阻害
す る事 に よ って BMPシ グナ ル の 働 き を 阻害 す る(Rcco10 et al.,1996;Larram et J.,20Xl)。
外胚葉はデフォル ト状態では神経に分化する予定運命を有 しているが、BMPが 存在す
る場合には表皮へ と分化する。発生の初期に胚全体に分布するBMPシ グナルによって外
胚葉の運命は表皮に限定される事になるが、その状態を背景 として、一部の領域におい
てchd力 おMPシ グナルを阻害する事によって、Chdが 発現 した領域においては外胚葉が
本来の運命である神経へ と分化することになる(De Robenis and KuЮ
da,2CX14)。
初期発生
においてchdは 胚の背側 に多 く局在 してお り、BMP自 身の存在の偏 りよりもむしろ、 こ
の偏 リカおMPシ グナル活性の勾配を生み出し、 この勾配が外胚葉においては神経 と表
皮の境界を決定するのはもちろん、中・ 内胚葉においても背腹を決定する鍵 となる(De
Robe■ is et d.,2000)。
Chdの CRド メ イ ンはCXXCxcモ チ ー フ(Xは 任 意 の ア ミノ酸 )と CCXXCモ チ ー フを持 つ
という特徴がある。Chdの それ と良 く似た配列を有するCRド メインは、Chd‐ like CRド
メイ ン と呼 ばれてお り、 Chd‐ likeな CRド メイ ン を有 す る分子 が これ まで に も数 多 く報 告
されて い る (revieWed inAbreu et al.,2CX12)。 例 えば、 Neuraln/CHL、 Kidin、 PrOcOmagen
HA、 Cv‐ 2(gosweinle唆の 、Tsg⊂ ‖ sted Castrulalon)が 挙 げ られ る(Cofflnier et al.,2∞
1;
Nakayama et al.,2(Ю l;Matsui et al.,20CXl;Zhu et al.,1999;■ arram et al.,2000;Ambrosio et al.,
2∞8;Odgeschlager et J.,2000b。
これ らの分 子 の 中 で、 Neuraun/CHL、 Kieln、
Procollagen IIAは Chdと 同様 に、 そ のCRド メイ ンに よってBMPを 阻害 して、神 経誘 導 に
関 わ る こ とが 明 らか に されて い る。 また 、 Cv‐ 2と Tsgに つ いて は、 それ ぞれ Chd、
BMP
と三 量体 を形成 す る事 が 出来 る こ と、 それ に よってBMPシ グナルの 調節 に関係 して い る
こ とが 分 か って い る。 Cv‐ 2は BMPに 直接 結合 して働 きを 阻害 す るア ンタ ゴニ ス トで あ る
が 、 Chdの 状 態 に よって そ の 振 る舞 い を変 え る。 X卜 に よってchdが 切 断 され 、活性 が 弱
ま つて い る時 には、 Cv‐ 2は BMPシ グナ ル を活性化 させ る方 向 に働 く(Dale et al.,2∞ 2;Lee
et al.,2CX16;AmbЮ sio ctal.,21t8)。
これ は Cv‐ 2カ 泊 MPの フィー ドバ ックに関 わ る こ とを
示 して お り、 Cv‐ 2は 胚 の 背腹 方 向 にか け てのBMPシ グナル 勾 配 を形成 す るた めの 調節者
で あ る とい え る。 Chd‐ likeな CRド メイ ン とそのCRド メイ ンに よ るBMPシ グナ ル調節 の
仕組 み は生 物 間 を超 えて 高度 に保 存 されて い る(re宙 eWed h Abreu et」 .,2∞ 2)。 そのた め
Chd■ lkeな CRド メイ ンは早 くか ら注 目 を集 め 、特 に神経誘 導 を考 え るた め に重要 な研 究
対 象 とされて きた 。
私 は ツメガ エ ル にお いて、 CRド メイ ン を有 す るタ ンパ ク質 をデ ー タベース捜 索 し、 そ
の 結果 、 Chd‐ lkeな CRド メイ ン を2つ 有 す るタ ンパ ク質 を発見 した。 また 、 この遺 伝子
は アメ リカ合衆 国 のThe NIH c■ onal lnsitutes of Hcalth)々 ″の
Shd面 Veに よって2倍体
“
で 脊椎 動物 の モ デル 生 物 として用 い られ て い るネ ッタイ ツメガ エ ルα
is)種
″′たα′
″ぉ ′
“
の遺伝子配列を同定するゲノムプロジェク トの過程で同定され、2012年 の8月 にNCBI
CttOnal ontrfOrD。
Chnology lnfonnttion)に
登録された新規遺伝子でもある
“
(嘔p01039173)。 現在までに報告 されてきた他の分子同様、 この新規タンパ ク質が胚発
生において何か重要な働きを担 ってい る可能性が高 い。私 はこの新規タンパ ク質vwc21
(pn」 llebrand
factorcdOmain‐ containing protein 2■ ike)に ついて、それが初期発生におい
て果たす役割を明らかにする事 にした。 ま哄 発現パ ターン解析 によ り〃WC2′ がツメガ
エルの初期発生 において、いつ どこで発現 してい るのかを確認 した。 そして、xッ wc2′
mRNAの 顕微注入 による機能獲得型、xvWc21-MOを 用 いた機能欠損型の表現型解析
や、xvWC21-MOを 用 いてxvWC21の 機能 を阻害 した際に神経 マーカーに与える発現パ タ
ーン変化の解析か らxvwc21が 後方神経形成 に関与 してい る事を示丸 さらに、働″と
WC2′ mRNAの
マWC2′ mRNAの 共注人実験 か らvWC21が 有するprO_BMP活 性、M4と χッ
共注入実験からand_BM晰 性 をvWC21が 有 してい る事 について紹介 してい く中で、後期
神経胚から発現 してい る州E2′ の神経形成 における役割を述べ る。
41
2.2
材料 と方法
人工授精 と胚の取 り扱 い
ツメガエルの未受精卵 は、排卵 させたい時間の12時 間前 に ヒ ト絨毛性 ゴナ ドトロピ
ン(注 射用HCGl∞ ∞、富士製薬工業)を 筋肉へ2∞ unit、 皮下へ2∞
unit、
約
unit注 射
したメス よ り得た。解剖 により取 り出 したオスの精巣の半分を細か く切 り刻み作製 し
た精子懸濁液を用 いて人工授精を行 った。精子懸濁液や硼
時間の回復期間の胚 の培養 にはlxス タイ ンバーグ氏溶液(Sま
NaCi、
ン、5
あ mRNAの 顕微注入後の1
s“ inberg's plution)(58 mM
Oθ mM KCl、 0.34 mM CaN034H20、 0.83 mM MgS04‐ 7H20、
mM Tris― HCl、
0.lgノ Lカ
ナマイシ
pH 7の を用 いた。胚 の培養 は全てo.lx SS(lx SSの 10倍 希釈)を 用 い
て行 った。人工授精 させた胚 は、受精30分 後 に1%チ オグリコール酸溶液(1∞ mlの O.lx
耶 にlmの チオグリコール酸σJ名 メルカプ ト酢酸、和光純薬工業)と 5N NaOHを 3 mlの
混合物)を 用 いてゼ リー層 を取 り除いた。胚 の培養 は全ての場合で22° Cの 恒温槽 の中で
行 った。
vWC21の クローニ ング
まず、ッ
wC2′ のORFを 単離するために、力 η
比″ Jis種 の配列を参考 にして作製
“
した以下のプライマー とTaqポ リメラーゼ(タ カラバイオ)用 いて物 の s′ ッ
お種のcDNA
““
“
に対 して94° Cで 5分 間反応 させた後 に94° Cで 30秒 、55° Cで 30秒 、72° Cで 30秒 間のサイ
クル を35サ イクル行 い、72° Cで 7分 間反応 させた。
pWC2J‐ ORF‐ fw:5■ GttGGCAGCrATGGCrTr‐ 31
〃WC2J‐ ORF‐ rv:5LCGGGATACrACAGTATCAGG‐
42
3'
ツWQnは ク ローニ ングベ クタ ー
単離 した ア フ リカ ツメガ エ ル のッWC2′ 鰤 WC2′ rを ″の お‐
で あ るpGEM‐T Easy Vector(プ ロメガ )に ライゲ ー シ ョン した(PGEM‐ ″ WC2の 。 さ らに制
限酵素 カ ッ トとライ ゲー シ ョン反応 を利用 し、″ WQ「 oRFを PCS2プ ラス ミ ドにサ ブク
ロー ニ ング した(pcs2″ wC2の 。 ゼ プ ラ フィ ッシ ュのνК
2′
カー
ツWOハ
αッWC2′ ′z′ ι´
びむ
は、産卵後 1日 経過 した胚 か ら作製 したcDNAに 対 して94° Cで 5分 間反応 させた後 に94
°
Cで 30秒 、55° Cで 30秒 、72° Cで 1分 間のサイクルを35サ イクル行 い、72° Cで 10分 間反
応 させ るこ とによ り得 た。 プライマーはゼ プラフイッシュの遺伝子デー タベース を利用
して設計 した。配列 は以下 の通 り。
ッ
WC2′ ‐
ORF‐ fw:5■ GCAAGlllTGじ 11lGAGAC-3'
そ
zッ
WC2み ORF― rv:51-CAC「 ATATAACCGGGGATGA‐ 3'
PCRフ ラグメ ン トはpGEMI Easy Vector(プ ロ メガ )に ライゲ ー シ ョン した (pGEM―
zッ
WC2の 後 、 PCS2プ ラス ミ ドにサ ブ ク ロ ー ニ ン グ した (Pcs2マ ッWC2の 。
′`イオイ ンフォマティクス
遺伝子解析 にはソフ トウェアGENE「 IX‐ NIAC Ver.11を 用 いた。遺伝子あるいはアミノ
酸 の配列 のデー タベース検索や、特定 の配列 に対する相同性 を調べ るために ウェブサイ
トNCBIの デー タベース検索 を利用 した。 また、 ア ミノ酸配列 か らタンパ ク質 の構造 を
推定す るため、 ドメイ ンを特定す るためにはPfam Searchを 用 いた。 アミノ酸配列 の相
同性 を基 に系統樹 を作製す る際 にはcene Bce ClustalW l.83を 利用 した。
RT・
PCR
目的のステージに達 した各サ ンプル胚 をRNA抽 出液(フ ェノール pH 5を 76
ml、
HN=C(NH2)2SCNを 23.6g、 NH4SCNを 152g、 3M CH3C00NapH 5.3を 334J、 GlyceЮ
l
を10
そ してNudease―Free water(キ アゲ ン)を 50 ml混 ぜ合わせて作製 したRNAiso(タ
ml、
カラバ イオ)、 ISOGEN(ニ ッポ ンジー ン)、 そ してTRIzol(ラ イフテクノロジーズジャパ
ン)と 同等品)に 溶 か し、 フェノール・ クロロ フォルム核酸抽出法 によ りRNAを 抽出 して
15″ 1の Nuclease― Free water(キ
Nuclease‐ Free watr(キ
アゲ ン)に 溶出 した.そ の後、抽出 したRNA 4″
アゲ ン)65″
1、
5x RT Reaction Buffer(和 光純薬工業)6″ l、
Ramdom primers(1∞ ″M、 ライフテクノロジーズジャパ ン)3″
光純薬工業)3″ k ttr 01M、 和光純薬工業)3″
0.5″ 1、
1、
1、
l、
い僣Ps(5mM/each、 和
HbOnudease inhibitor(タ カラバ イオ)
MMLV RIr enzyme(和 光純薬工業)1″ 1を 混合 し、30° Cで 10分 間、42° Cで 2時 間、
そ して72° Cで 10分 間反応 させてcDNAを 合成 して、最後 に30″ 1の 超純水 を加 えた。
上述 の方法 によ り作製 したcDNA 2″ 1、 10x PCR Buffer(1∞ mM THS、 8∞ mM KCI
PH 8.3)3″
ク)25″
1、
1、
10X MgC12 3″ 1、
dNrP(2mM、 サ ーモ フィッシ ャーサイエ ンテイフイッ
Primer mixture(20″ M)1″ 1、 Taqポ リメラーゼ (タ カラバ イオ)05 μl、 超純水
18″ 1を 混合 させて、94℃ で5分 間反応 させた後 に94° Cで 30秒 、55° Cで 30秒 、72・ Cで 1
分間のサイクル をODCの 場合 は25サ イクル、〃wC2′ の場合 は30サ イクル行 い、72° Cで
10分 間反応 させた。各 プライマーの配列 は以下の通 り。
pWQみ fw:5LCGATGTAAAGATGGTCCAA-3'
〃 WC2J‐ rv:5LGGGGATACTACAGTATCAGG-3'
ODC fw:5LCAGCTAGCTGTGGTGTGG-3'
ODC‐ rv:5LCAACATGGAAACTCACACC‐ 3:
Whob‐ mountin dtu by団 山 曖Jb
胚 は 目的 の ス テ ー ジ にお い て NIEMFA溶 液 (10x MEM(l M MOPS、 2 mM EDTA、 10
mM MgS04‐ 7H20、 pH 7o:ホ ルムアルデ ヒ ド:超 純水=1:1:8の 割合で混合)を 用 いて固定
44
した。固定胚 は漂白溶液(30%過 酸化水素水30口 、 ホルムア ミド45μ 、10x PBS
(PhOSphate mttred salinc塩 化 ナ トリウム80g、 塩化カリウム2g、
リン酸水素ナ トリウ
ム144g、 リン酸二水素 カリウム24gを lLの 超純水 に溶解、PH7o 90 μ、超純水 735ロ
を混合)を 用 いて蛍光灯照射下 において常温で1時 間脱色 した。発色 にはBM Purple基 質
(ロ
シユ・ ダイアグノステイックス)を 用 い、 4° Cの 遮光環境下 において約48時 間処理 し
た後、発色 の観察 を行 った。
mRNAと MOの 作製 と顕微注 入
B繊4を 制限酵素肋 ″で切断 し、mMESSAGE
WC2′ 、―
C″ 、‐
PCS2=″ WC2′ 、マッ
dWCHINE SP6 kit(ラ イフテクノロジーズジャパ ン)を 用 いて合成 した。 また、合成 し
た″W″ ′mRNAは 50 ng夕 1の 濃度 に希釈 し、顕微鏡下 において電動顕微注入機
(コ
И‐
3∞ 、 ナ リシゲ)で 微小 ガ ラス針 を使 い、2細 胞期 のツメガエル胚 の両割球 に2 nlず
つ、計2∞ pg顕 微注入 した。xvWC21-MOは mRNAの 開始 コ ドンを含む領域 に相補的 に結
合す るよ うにデザイ ン し、合成 を依頼 した(Gene
Tools)。
xvWC21-MO:5LGCrAAACAAAGCCATAGCTGCCAAC‐
塩基配列 は以下 に示す通 り。
3:
xvwca_Molま 2.125 μg夕 1の 濃度 に希釈 し、顕微鏡下 において電動顕微注入機
(IM‐ 3∞ 、 ナ リシゲ)で 微小 ガ ラス針 を使 い、
2細 胞期 のツメガエル胚 の両割球 に2■ 1ず
つ、計8.25 ng顕 微注 入 した。xvWC21‐ MOと zν wC2′ mRNAの 共注入 には4.25″ g夕 1に 希釈
したxvWC21‐ MOと 8∞ ng//1に 希釈 したzッ WC2′
mRNAを 同量ずつ混合 した溶液 を顕微鏡
下 において電動顕微注入機(IM‐ 3∞ 、 ナ リシゲ)で 微Jヽ ガ ラス針 を使 い、2細 胞期 のツメ
ガエル胚 の両割球 に2
nlず つ、xvWC21‐ MOを 計85 ng、
zν
WC2′
mRNAを 計 16∞ pg顕 微注
セαr
入 した。″Ja′ mRNAと xvWC21-MOの 共注入 には2.25 ng//1に 希釈 した″麟″ 勧 ο
盤o mRNAと
4.25″ g夕 1に 希釈 したxvwc21-MOを 混合 した溶液を顕微鏡下 において電動
顕微注入機(IM‐ 300、 ナリシゲ)で 微小 ガラス針を使 い4細 胞期の2割 球 に胚 の片側 に2
ずつ顕微注入 した。C材 と〃WC2′
200Cl ng//1に
希釈 したpWC2′
mRNAの 共注入 には5
nl
ng//1に 希釈 したC″ mRNAと
mRNAを 混合 した溶液 を顕微鏡下 において電動顕微注入機
(IM‐ 3∞ 、ナリシゲ)で 微小ガラス針 を使 い8細 胞期の腹側植物極側 の細胞 に2 nl顕 微注入
した。M4mRNAは
(IM‐ 300、
2.5 ng//1の
濃度 に希釈 し、顕微鏡下 において電動顕微注入機
ナリシゲ)で 微小ガラス針 を使 い、2細 胞期 のツメガエル胚 の両割球 に2
つ、計10 pg顕 微注入 した。BMP4と ″WQJmRNAの 共注入 には5
mRNAと 250
ng夕 1に 希釈 した″WC2′
を使 い2細 胞期の両割球 に2
nlず
M4
ng夕 1に 希釈 した
mRNAを 混合 した溶液 を顕微鏡下で微小ガラス針
nlず つ、25 ng夕 1に 希釈 したBMP4mRNAと 250ng夕 1に 希釈
した″WC2′ mRNAを 混合 した溶液を顕微鏡下 において電動顕微注入機(IM-3∞ 、 ナリシ
B絆4
ゲ)で 微小 ガラス針 を使 い2細 胞期 の両割球 に4
mRNAと 250
ng夕 1に 希釈 した″WC2′
nlず つ、2.125 ng//1に 希釈 した
mRNAを 混合 した溶液 を顕微鏡下 において電動顕
微注入機(IM-3∞ 、ナリシゲ)で 微小ガラス針 を使 い2細 胞期 の両割球 に8
することで、計BMP4 10 pg+″ 7C2′ 5∞ pg、
pg+″ К
2′
BM解
10 pg+″ ⅣQ′ 1∞ O
nlず つ顕微注入
Pg、
BMP4 10
20∞ Pg顕 微注入 した。顕微注入は針 を刺 した事 による損傷を抑制する為 に
lx SS中 で行 い、注入後 1時 間の間は損傷からの回復の為 にlx ssで 培養 した。 その後 は
o.lx ssに 戻 し、22° Cの 恒温槽 にて培養 した。
lacZ染 色
MEMFAで 胚 を常温20分 間固定 し、PBSを 用 いて常温で胚を10分 間洗浄する作業 を4回
行 つた 。 そ の 後 、 05 M ttFe(CN)6を
8
μl、 0.5 M K4Fe(CN)6を レ 1、 05 M MgC12を 4″ l、
46
0.lg/mlin DMSO Red― gal(RESEARCH ORGANICS)を 4 μ PBSを 976″ 1を 混ィ
等したRed―
l、
gd溶 液中で4° Cで 一晩反応 させた。 その後、PBSを 用 いて常温 で胚 を5分 間洗浄す る作
業 を2回 行 い、再 びMEMFAを 用 いて常温で2時 間固定 した。
47
2.3
結果
2. 3. 1 2つ のCRド メインを有する新規遺伝子x耐0′を同定 した
ツメガエルの初期発生における背腹軸形成、 または、神経・ 表皮形成 には、CRド メ
イ ンを有す る数多 くのタンパ ク質が他の因子 との相互作用 をする事 によって厳密 に制御
されている。具体的にはBMP4リ ガ ン ドとBMP42容 体 との結合 をCRド メイ ンを有す る
Chdが 阻害す る事 により背側領域、あ るいは神経領域が形成される。 しかし、Cv‐ 2と 呼
ばれる分子 はChdと 結合 してBNIIPの 機能を阻害す るand_Bヽ Pと しての機能 を有す る一方
で、BMP4と その受容体 との結合を助けるprO_BMPと しての働きを有 してい る。 これは
CRド メインを有す るタンパ ク質が初期発生 において重要な役割を果たす事を示 してい
る。 そ こで私はCRド メイ ン配列 を基にしたバイオイ ンフォマテイクス解析 の結果、Tsg
の様 に2つ のCRド メイ ンを有す るツメガエルの新規遺伝子″WQ′ を同定 した(図 2-1)。 ま
た、xvWC21が 生体内で どのように機能す るのかは、xvwc21の CRド メイ ン と他の分子の
CRド メイ ンとの相同性比較解析 を行 うことにより推測す ることが可能であると考 え
た。 その結果、xvWC21の CRド メイ ンはCv‐ 2の CRド メイ ン とブ
ト
常 に似てい る分子である
事が明らか になつた(図 2‐ 2)。
2. 3. 2
″vWC2■ ま初期神経胚期から後方神経領域 に発現する
次 に、〃wQ′ がツメガエル胚 において発現 している時期を明らかにする為 に即 _PCR
法 により未受精卵から幼生期 において発現解析 を行 った。 その結果、刑WC2′ は転写が
開始 されるMBT以 前の母性的な発現 は確認 され哄 初期神経胚期 のSt.13か ら発現が開
始 され、 その後幼生期 に至るまで連続的に発現が続 く事が明らかになった(図 2-3)。 さ
らに、″wc2′ がツメガエル胚 において発現 してい る領域 を明らかにする為 にin
48
situ
hybHdization法 による解析を行 つた。 その結果、初期神経胚期のSt.13か ら幼生期 に至 る
まで連続的に、後方神経領域 に発現す る事が確認された(図 2→ 。 この結果 はRr PcR法
による発現時期解析 の結果得 られた、″Mの まst.13の 初期神経胚期から幼生期まで連
“
続的に発現す ると言 う結果 と一致する。以上の結果から新規遺伝子″WC2“ まツメガエ
ル胚 において初期神経胚 から接合子性の発現が開始 され、幼生期まで連続的に後方神
経領域 に発現す る事が明らかになった。
2. 3. 3 xvWC21は 後方神経形成 に関わる
x7"Q′ の発現パ ターンが明らかになつたので、次 はxvWC21が ツメガエルの初期発生
においてどの様 な機能を有 してい るのかを明 らかにする為 に、mRNAの 顕微注入法 によ
る機能解析 を行 つた。 ま哄 ″WC2′
mRNAを 2細 胞期のツメガエル胚 に顕微注入 により
導入 したところ、 コン トロール胚 に比べてセメン ト腺の大 きさに変化 は確認 されない
が、胚が背側化 した際 に観察 されるコロボーマ眼を有す る表現型が確認 された(図
2-5A、
B)。
を機能
ッ
wc2′ mRNAに 相補的に結合 し、翻訳 を阻害する事で″Wα ′
次 に、χ
欠損するxvWC21-MOを 設計 してmRNAの 場合 と同様 に2細 胞期のツメガエル胚 に顕微注
入 したところ、後方の軸構造 と眼の構造が欠損 した腹側化 した際 に確認 される表現型
が確認 された(図 2‐ 5C)。 さらに、xvwc21-MOの 影響がわNQJmRNAに 相補的に結合 し
К
た事 による機能阻害である事を調べ る為 にゼブラフイッシュのッ
2′
であるzッ WC2J
mRNAを 作製 してxvWC21-Moと 共注入 した ところ後方の軸構造 の欠損が回復 した(図
2‐ 5D)。
以上の事からxvWC21は 神経形成、特 に後方の神経形成 に関わる事が示唆され
た。
xvWC21-MOの 顕微注人実験 の結果から、xvWC21が 後方神経形成 に関わつてい る事が
49
表現型の観察の結果 により示唆されたので、xvWC21が後方神経形成 に与 えるか否かを
滋′ mRNAと
分子生物学的に明らかにする事 に した。 リネージ トレーサーである″
xvWC21‐ MOを 珊 胞期のツメガエル胚 の片側 に共顕微注入 しpan_neuralマ ーカーである
動崚の発現領域 の変化 をin dtu hybHdzation法 によ り解析 した。 その結果、πた′ mRNA
単独の顕微注入で は注入側 と非注入側 において力
"の
発現パ ターンに変化 は確認 されな
かつたが(図 2‐ 6A)、 xvWC21‐ MOを 顕微注入 した側 においては後方の働″の発現が欠損
し、それより前方で はSo幾が発現 する領域が広がる事が確認 された(図 2‐ 6B)。 以上の実
験結果 よリツメガエル胚 においてxvWC21は 後方神経形成 に必要である事が示唆 され
た。
2. 3.4 xvWC21は pro‐ BMP活 性を有する
l Chdや Cv-2分 子 が 自身の有す るCRド メインを介 してBMP4と 結合 してBMPシ グナルを
阻害す る事 によ り神経形成 に関わつてい ると言 う事が報告 されてお り、 また、新規 に同
定 されたxvWC21も Cv‐ 2と 良 く似 たCRド メイ ンを有 してお り、 さらに後方神経形成 に関
わってい ると言 う事が明らかになつた事からxvWC21も BMP4や BMP4と 相互作用す る分
子 と関わつてい る可能性が高 い。 そ こで、BMP4と BMP4受 容体 の結合を阻害するChdと
xvWC21と の間に相互作用す る関係があるのかを解析する事 に した。Chdは BMP4に 直接
結合 してBヽ Pリ ガ ン ドとBM曖 容体 との結合 を阻害 してBMPシ グナルを阻害する事 に
より、外胚葉 においてBMPシ グナルによつて導かれる表皮への分化を抑えて神経 を誘導
する事が知 られてお り、8細 胞期 の腹側植物極側 にC″ mRNAを 顕微注入す ると異所的
B)。
しか し、 このC″ と〃WO′
に二次軸が形成 される(図 2イ ‐
mRNAを 同様 に腹側植物
極側 に共顕微注入 したところ、C″ mRNA単 独で顕微注入 した際に確認された二次軸 を
有す る表現型 は確認 さど 、 コン トロール胚 と同様 な表現型が確認 された(図 2-7A、
C)。
以上の事か ら、xvWC21は Chdに よつて誘導 され る神経誘導 を阻害 してBMP4の 働 き
BヽP活性 を有 してい る事が示唆 された。
を助けるpЮ ―
2. 3. 5 xvwC21は ant卜BMP活 性 を有す る
BMPの 働 きを有 してい る事 が確認 されたが、
xvWC21が ツメガエル胚 においてpЮ ―
xvWC21と 良 く似 たCRド メイ ンを有す るCv‐ 2は pЮ _BMPと
and―
BMPの 働 きの両方 を有 し
てお り、xvWC21も prO_BMPの 働 きに加 えてanti_BMPの 働 きを有 してい る事が考えられ
WC2′
る。 そ こで、M4と χッ
mRNAを 共注入す ることでanti― BMP活 性 を有 して い るのか
を検証 した。BMtt mRNAを 単独 で顕微注入 した ところコン トロール胚 と比較 して頭部
構造が欠損 し、軸 が短 くなつた腹側化 した表現型が確認 された力×図2‐ 8A、
77C2′
B)、
BMP4と
mRNAを 共注入 した胚で は頭部構造が回復する事 は確認 されない ものの、濃度
依存的 に軸構造 が回復 してい く事 が確認 された(図 2‐ 8C‐ E)。 以上 の事か ら部分的で はあ
るが、M4mRNAの 顕微注入 に よる軸構造 の欠損 が回復 した事か らxvWC21は and‐
BMP活 性 を有 してい る事が確認 された。
51
2.4
考察
Chd‐likeな CRド メイ ンの中でCv‐ 2と
WC2′ をツ
良 く似た ドメイ ンを有する新規遺伝子ッ
メガエル胚 において同定・ クローニングし(図 2-1、
-2)、
ツメガエルの初期発生において
どのような役割を有 してい るのかを明らか にする事を目的 として研究 を行 つた。 ま哄
〃WC2′ の発現パ ターンを明らかにする為 に、RT‐ PCR法 とin
situ hybHdization法
を用 いて
時空間的解析を行 った ところ、77C2′ はザイ ゴティックに初期神経胚期から後方神経領
域 に発現 してい る事が確認 された(図 2‐ 3、 ‐
o。 また、″WC2′ mRNAま たはxvWc21‐ MO
を顕微注入 した機能獲得型または機能欠損型の機能解析 と、xvWc21‐ MOを 顕微注入 し
た胚 における神経 マーカーSOつ の発現解析から、vWC21は 後方神経形成 に関わつてい る
事が示唆された(図 2‐ 5、
-6)。
さらに、xvWC21が Cv‐ 2に 良 く似たCRド メインを有 してい
る事からChdま たはBMP4と 相互作用 があるのではないかを調べた結果、Cv‐ 2と 同様 に
pro―
BMPと anti‐ BNIPの 両方の性質を有 してい る可能性が示唆された(図 2-7、
-8)。
ここでは、1)初 期発生におけるxvWC21の 役割、2)Cv‐2と 良 く似た分子であるvWC21
カ℃v-2と は異なる時期 に存在する理由について考察 をお こなう。
1)初期発生 におけるxvWC21の 役割
wC2Jが初期発生 どのように影響を与え
新規 に同定 されたCRド メイ ンを有する遺伝子ッ
るのかを明らか にする為 に様 々な解析をお こなった結果、後方神経形成 に関わつてい る
と言 う事が示唆された。 この事 をよ り詳細 に調べ る為 に後方神経マーカー として一般的
に用 い られてい る肋 B9の 発現パ ターンの変化を、xvWC21-MOを 胚 の片側 に顕微注入
した胚に対 してS″ の場合 よりも後期のステージである尾芽胚期 において確認 したとこ
ろ、肋 β9の 発現 には変化を与 えない事が確認 されてい る(未 記載デー タ
)。
52
これらの結
果 を踏まえるとxvWC21が後方神経形成 に対 して有 してい る役割 は、後方神経形成 に必
要不可欠な存在であると言 う訳ではな く、初期神経胚期以降から尾芽胚期 までの発生
段階の中で、後方神経形成 が うまく行われ るように保証する補助的な存在であると考 え
られる。
本研究では、Cv-2と 相同性 の高 いCRド メイ ンを有するxvWC21カ 潮 期発生 に与える影
響を明らかにする事 を目的 に研究 を進めたが、Cv_2の 働 きについてここで今一度整理
したい。Cv‐ 2は 腹側で働 くBMPの フイー ドバ ック因子である(Ambrosio
et al.,2∞ 8)が 、
その働 き方は状況 によって変化 し、実 に複雑であると言 える。Cv-2は BMPが 存在す る
場合 には、BMPと 結合す ることでBMPシ グナルを阻害する。 しか し、 さらにchdが 存在
するとCv-2/BMP/Chdの 三量体をつ くり、 この三量体のChdは 、単独で存在す るChdや
BMP/Chd二 量体のChdと 比べて、Chd阻 害因子であるXlr(Dale
et al.,2002)の 標的 とな り
やすい とい う特徴がある。つ まり、Cv‐ 2と BMPし か存在 しない時にはcv_2は BMPに 対
して消極的に、Cv_2、 BMP、 Chdの 3つ が存在す る時 にはCv_2は BMPに 対 して積極的 に
働 くとい う事である。実際 にC″ とかwc2′
示 し、BM群 と″WC2′
れた(図 2‐7、
-8)。
mRNAを 共注入 した場合ではprO‐ BMP活 性 を
mRNAを 共注入 した場合はan■ _BMP活 性 を示 してい る事が確認 さ
しか し、実際 にxvwcaが chdや BMP4と 直接結合 してそれらの活性 を
有 しているのか、あるいは間接的な影響なのかは明 らかになっていないので、免疫沈降
法 によるタンパ ク質問の結合を生化学的に解析 してい く事が必要 になる。 その解析結果
を踏まえて細胞内でのBMP4の 濃度勾配や、Chdや 、Xlr等 の分子 の分布を考慮を入れる
事 により生体内での役割をより詳細 に解析す る事が可能になるであろう。
2)Cv・・
2と 良 く似た分子であるxvWC21が Cv‐ 2と は異 なる時期 に存在する理由
Cv‐ 2に 良 く似たCRド メイ ンを有す るxvwc21が Cv‐ 2と
ぜであろうか。Cv‐ 2、
Chd、
は異なる時期 に発現す るのはな
BMPの 3つ の役者の状態 は胚での背側 から腹側 にか けての
Chdの 濃度勾配 によって決定 される。背側ではChdが BMPを 阻害 し、腹側ではChdは 減
少 し、Cv‐ 2カ 主
存在す る。正常な胚発生のためにはChdに よるBMPシ グナルの濃度勾配が
重要である(De
Robertis et測 .,2000)が 、CV‐ 2は BMPシ
グナルを調節す ることによって、
その濃度勾配形成 の一端 を担ってい るのであろう。xvwc21と Cv-2で CRド メイ ンの相同
性が高い とい うことは、働 きも似 てい ることが考 えられる。Cv-2が 胚の腹側で働 くのに
vWC21は 後方神経 においてBMPシ グナルの濃度勾配 を作 るために重要である
対 して、ス
のかもしれない。 この可能性の検証 のためには、上述 した様 にxvwcaノ BMPの 二量体、
xvWC2ノ BMP/Chdの 三量体が形成 されるかを免疫沈降法 によって確 かめる必要があ り、
これを明らかにするによ り、緻密 に制御 されている頭部や神経形成 のメカニズムをより
詳細 に説明す る事が可能 になるであろ う。
54
A
■0
20
30
A― TTTGTTTngccA― CA―
40
AMTCC理
熙
50
CAG―
60
TTCTTTGttC
SP
TC― AETTC―
V M L L A工
RCCC― CC―
■50
■40
■30
ACC=G目 Ю囲κKC―
CRl
200
2■ 0
G C E
CR2
370
380
TCttGA型 コg口 cAACAgり OTncA―
220
390
490
500
5■ 0
肥熙 C質鷲
型コ蜜コECmmcTAE鴻
KDGPNCYS DASo SRVI PCGQ
230
― CJEC―
YVWVD SCTKC RCHDGQDVGY
―
―
―
TGエ
C―
CCTCCM
530
C
型鳴 肥喘
C…
ー
240
A R C L V A D
520
鴻 直
■80
CCr
0
420
4■
CCGCTCCCTOe雪 詢GCAGAC
400
reTttGACGGM―
S E C EQC TC D VD G工
縮
―
CNC―
GCC― CACCACCCTGCttTGCAC∝ ASCCrTACCCTACGGAC…
E K工
CC―
■70
■60
T C E A N C S V― Y Y…V G E W Y F L D S D
■90
―
VGE F S L S LAAQ V S
]E― A―
TeTHCCAG―
540
AA
に
―
Tr
AC
R E N S'
B
N
C
[図 2-1]CRド メイ ン を2つ 有す る新規遺伝子 χ酬
を同定 した
"ノ
コ
パ
ー
の
ン
″″」
χ
が
ク
され る構 造。 (A)χ 硼″ Iの ORF塩 基配列 と
るタ
予想
ド
質
す
新 規遺伝子
ペ
ル
プチ ド(SP)を 、赤 下線部 はCRド メイ ン を示す 。 (B)ア
ア ミノ酸配列。 青下線部 はシグナ
ミノ酸配列 か ら考 え られ るwWC21の 構造 モ デル 。数 字はア ミノ酸数 を示す 。
55
A
r
von Willebrand factor C
domain-containing protein 2-like
rossveinless-2
hordin
Twisted gastrulation
vWC2卜 CRl
vWC21
―PT―
‐
Cv‐ 2¨ CRl
Cv‐ 2
Cv‐ 2‐
Cv‐ 2‐
CR3
CR4
Cv-2-C
―Nヽ二Vム しヽぶしヽ
‐ECVITES― ‐‐
ICCRTECIK― ―
―DS― CKK― ‐
―KGKTECHK― K
KC‐
RC―
SC―
[図 2-2]xvWC21は CV-2と 高 い相同性 を有する
wWC21と 他 のCRド メイ ンを有す るタンパ ク質 との相同性解析。 (A)wWC21と ア ミノ酸 レベル
で高 い相 同性 を示 したタンパ ク質 の系統樹。 vWC21は Crossveinless-2と 相同性 が高 い。 (B)
wWC21と Cv-2の CRド メイン配列 の比較。赤枠 はCRド メイ ンを示す。
56
D. q \s ,$ ,\t \6 \$ * tr ,* .5t
{ +. er er. er + + +- +. er.' +- er
I '.$
-\i
田
は
は初期神経胚期か ら幼生期 において連続的 に発現す る
[図 2-3]χ 硼
"ノ 生 期 にお け るχ″
RT― PCR法 に よる発 現時期 の 解析。初期神 経胚期
未 受精卵 か ら幼
"I
mRNAの
い
rは
ポ ジテ ィブ コ ン トロー ル 、 ωじ αrり はネガテ
α
か ら幼生期 まで連 続 的 に発 現 して る。
コ
ィブ ン トロール として用 い た。
57
St.13
背倶
l
前方
側方
St.14
St.14
St.28
背側
方
側方
St.16
St.16
St.32
背側
側方
倶1方
St.22
St.22
St.38
は後方神経領域 に発現す る
[図 2-4]χ ″レ ノ
初期神 経胚期 か ら幼 生 期 にお けるx""I mRNAの in situ hybridization法 に よる発 現領域 の
解析。 St。 13か ら発現 が 開始 し、後 方神 経胚領域 に発現 した。
58
A
(20/20)
B
(12/16)
D
mRNA
(20/20)
χyH/C2′
control
C
(10/14)
xvWC2!― MO
xvllVC21-MO+zソ l″ C2′
mRNA
[図 2-5]xvWC21は 後方神経形成 に関わる
x硼 I mRNAと wWC21-MOを 用 いたwWC21の 機能獲得・機能欠損型 の解析 によ り得 られた胚 の
表現型
耐 A(200 pg)を 顕微
“ 観察。 (A)St.38の B― Dに 対す る コン トロー ル胚。 (B)x″
注入 したSt.38の 胚。 xvWC21の 過剰 発 現 に よ りわず か に背側化 "」
した表 現型 が確認 され た
(75.0%、 n=12)。 (C)wWC21-MO(8.5 ng)を 顕微注入 したSt.38の 胚。 xvWC21の 機能欠損 に
よ り腹側化 した表現型 が確認 された (71.4%、 n=10)。 (D)wWC21-MO(8.5 ng)と z″
雨 ヽ
"」され た
(1600 pg)を 共顕微 注入 したSt.38の 胚。 wWC21-MOに よる腹側化 した影響 が打 ち消
(100%、 n=20)。
59
xvWC21-MO
nfacZ
IA
Sox21
[図 2-6]xvWC21は
後方神経形成 に必要である
acZ ttNA(6。 25
xvWC21-MOを 用 いてwWC21機 能欠損 した胚 にお けるSox2の 発現解析。 (A)″ 」
コ
ロー
ル胚。顕微注入側 と非顕微注入側 でSox2の 発現 に
ng)を 胚 の片側 に顕微注入 した ン ト
変 化 は な い (100%、 n=3)。 (B)″ ヱacz mRNA(6.25 ng)と wWC21-MO(8.5 ng)を 胚 の 片 側 に共
顕 微 注入 した 胚 。 注 入 側 は非 注 入 側 に比 べ て 後 方 の Sox2の 発 現 が 阻害 され 、 さ らに発 現 す る
領 域 の 幅 が 拡 大 した (100%、 n=4)。 *は 顕微 注入 した 側 を示 す 。
60
A
(20/20)
control
B
(15/21)
C
(21/21)
Chd
Chd tt χソl〃 C2′
[図 2-7]xvWC21は pro― BMP活 性 を有す る
xvWC21が pro― BMPと しての機 能 を有す る のか を評価 す る実験。 (A)St.38の B、 Cに 対す る コ
ン トロー ル 胚 。 (B)働 ご mRNA(5 pg)顕 微 注 入 胚 。 Chdに よ り二 次 軸 構 造 が 形 成 され る
(71.4%、 n=15)。 (C)の ご ド ヽ (5 pg)と χ7κ a mRNA(2000 pg)共 注 入 胚 。 働 d mRNA単 独 の
顕微注入 の際 に確認 された二次軸構造 は確認 されなか った (100%、
61
n=21)。
+BMP4(10 pg)
[図 2-8]xvWC21は anti― BMP活 性 を有 す る
wWC21が anti― BMPと して の 機 能 を有 す る の か 評 価 す る実験 。 (A)St。 38の B― Eの コ ン トロー
ル 胚 。 (B)BMP4 mRNA(10 pg)顕 微 注入 胚 。 腹 側 化 した 表 現 型 が 確 認 され る (82.4%、 n=14)。
1000、 ま た は 2000 pg)共 注 入 した 胚 。 濃 度
(C― E)Bぽ4 mRNA(10 pg)と x硼 ″ I mRNA(500、
依 存 的 に軸 構 造 の 形 成 が 回復 した (81.3%、 n=13、
86。 7%、
62
n=15、
100%、
n=16)。
第 3章
MEK/ERKシ グナルが有す る
時期特異的性 の調査
63
3.1
背景
繊維芽細胞増殖因子 として知 られてい るFGFは 脳下垂体や脳の抽出物 か ら精製 された
増殖因子 であ り、 その名 の通 り、上皮組織や結合組織等 の基盤 として働 く細胞群である
繊維芽細胞 を増殖 させ る活性 を持つぃHlleun,1973)。
その後 の研究 か ら、FGFが繊維芽
細胞 だ けでな く、様 々な細胞 の増殖や分化 に関わる形 態形成因子 として も機能す る こと
力報 告 されてい る●dlly
et」 .,2∞ Q Xu etal.,2CX10;Marchese et」 .,2all;Takahashi et d。
,
201o。 また、組織障害時 に働 く修復因子や仰 陸 toe et」 .,1991;Yamamoto et d.,2004p、
生体 の恒常性 を維持す るための代謝調節因子 としての機能(Fu∝ J.,20C4;Kharitonenkov
et d.,2005)も
有 してい る事 も知 られてい る。 さらに、FGFが ヒ トの疾病 にお ける発症 メ
カニズムに も関わつてい る(OmitZ and Marie,知鯰 ;Chen and Deng,2005;Guti`rrez et J.,
2008)と の報告 もある。他 にも多 くのモデル生物 において、細胞周期(NIacNi∞ let J.,
1995)、
前後方神経の形成(HongO et J.,1999;mrdcastle et J。 ,2CXXl;KosЫ da∝ J.,2002b、
歯芽形成(Neubiser et」 。
,1997)、 そ して軟骨細胞 の分化や骨格形成(Sahni et d,,1999D等 、
多 くの現象がR「 に関わ る分子ネ ッ トワー クによって引き起 こされ るこ とも報告 されて
い る。上述のよ うに、FGFは 発生や分化 の過程 において も非常 に重要な役割を果 た して
お り、数多 くの研究者が注 目して研究 を行なつてい るテーマの1つ と言える。
FGFシ グナルは最初 に リガ ン ドで あるFGFが 集合 し、細胞膜上にあるヘパ ラン硫酸 プ
ロテオグリカ ンに結合す ることで、膜貫通型FGFE容 体(FGFR:FGFIeceptoぅ とヘパ ラン
硫酸 プロテオグリカ ンカYGFに よって架橋 され、FGFR同 士のホモニ量体が形成 され
る。 この二量体の形成 に よってRTRの 細胞 内 ドメイ ンが リン酸化 され、細胞内の因子
へのシグナル伝達 が始 まる。FGFRの 活性化 はShc/FRSttRS分 子な どを介 してGRB2や
SOS等 の分子 に伝 えられ、GRB2や SOS等 か ら形成 され る複合体 は さらに下流 にあるRas
の活性化 を導 く。 この活性 型Rasに よる刺激 を受 けたRafは MEKを リン酸化 させ、 さら
に リン酸化 されたMEKは ERKを リン酸化 させ る。そ して リン酸化 されたERKは Smadlや
核 内の転写調節 タンパ ク質な ど、様 々 なタンパ ク質をリン酸化 させ るこ とで さらに下流
へ とシグナル を伝達 し、多様 な現象 を引き起 こ丸 FGFシ グナルの下流 には多 くのシグ
ナル伝達経路が存在す るが、その中で も生体内において特 に重要な役割 を果 た して い る
MEK/ERKシ グナル を介 した経路 は、Raf/MEK/ERK o鉄 PKKK/NIAPKCMAPK)と い う3
種類 のタンパ ク質 リン酸化酵素 によって構成 され るシグナル伝達 モジュールである。 こ
のシグナル伝達経路 は酵母か らヒ トに至 るまでの全ての真核 生物 において高度 に保存 さ
れて い ることか ら、生体 内の重要な現象 を制御す る細胞内情報伝達の基盤 とも言えるシ
ステムであると考えられ る。
ツメガエルは水棲脊椎動物 の中で も代表的なモデル動物 として世界中で用 い られてお
り、 これ までの研究 では様 々な実験手法 を用 い るこ とでFGFシ グナルの解析が行なわれ
て きた。 それ らの報告 によると、FGFシ グナル はッメガエル胚 の初期発生 において少な
くとも3つ の役割を持 ってい ることが明 らかにされて い る。 1つ 目は、FGFシ グナルの下
流分子 であるMEK/ERKシ グナルに関す る報告である。 この報告で は常時活性型で ある
ε
昴僣κし なriry″ ″ ″″″ 幽
mRNAを 顕微注入す るこ とで、通常中期胞胚期 まで は不
活性状態 にあるMEK/ERKシ グナル を卵割期 のツメガエル胚 において活性化 させた場
合、卵割が停止す ること(MaCNicol
et d。 ,1995)が 明 らかにされてい る。2つ
目は、受容体
であるFGFR4を 用 いた実験 にお ける報告で ある。 これは、常時不活性型である
磁FGF群 は物彬″ 鰺蓼
“
FいMヽ mRNAを 2細 胞期 のツメガエル胚 に顕微注入す る事
65
に よってFGFシ グナル を不活性化 させた際 には、胚 が前方化す る(HongO et」 .,1999Dと い
う報告で ある(左 記論文内では違 う解釈 が されてい るが、表現型 を現在 のツメガエルの
分子発生生物学的指標 を用 いて評価 した場合、前方化 した とい う解釈 になる)。 この報
告 は、FGFシ グナルが後方化 に関わ って い ることを示唆 してい る。 そ して3つ 目は、 リ
ガ ン ドであるFGF8を 用 いた実験 に関す る報告でEいヽmRNAを 2細 胞期 のツメガエル胚
に顕微注入す ると、非常 に強 い神経化 が引き起 こされ る(HardCaste
et J。 ,2CXXl)と
い う報
告である。尚、 この神経化 の分子 メカニズムは、MEK/ERKシ グナル伝達経路を介 した
上で、smadlの リンカー領域 が リン酸化 され るこ とによ り引き起 こされ る ことが明 らか
にされてい る(Pera Ct J.,2CX13;KuЮ da
et d。
,2∞5)。 以上の3つ の報告 はFGFシ グナル を介
するとい う点で共通 してい るが、引 き起 こされ る現象 が全 く異なつてお り、なOFGFシ
グナルが この様 に異なる現象 を引き起 こすのか とい う原因 は未 だに解明 されて いない。
私 は、同一のFGFシ グナル を動か して い るにも関わ ら哄 この様 な役割の違 いが生 じ
る原因 として、FGFシ グナルが活性化す る時期 に依存 して働 きが異なってい るのではな
いか と考えた。上述 した いずれの結果 も、 ツメガエル胚 の発生段階 においてFGFシ グナ
ル を活性化 させ る方法がMEK、 FGFR、 FGFリ ガ ン ドと異なってい る上に、FGFシ グナ
ルが活性化 してい るタイ ミングについて も明 らかにされていないか らである。 そ こで私
は、FGFシ グナル を活性化 させ るために統一 した手法を用 いれば、FGFシ グナルの時期
待異的な役割を解明できると考え、FGFシ グナルの中で もNIAPKKで あるMEKに 注 目 し
てcあ 伍κ mRNAま たはDNAを 用 いてMEK/ERKシ グナルの時期特異的解析 を行 う事 に し
た。 ま哄 初 曖]κ mRNAと
DNAの 打ち分 けがMBT前 後 の異なる時期おいてMEK/ERKシ
グナル を活性化 させ る事が可能である事を確認 した。 さらに、c昴 個κ mRNAの 顕微注
入で少な くとも4mm胞 期から256細 胞期 まで発生段階では卵割の停止が引き起 こされる
αИ7κ DNAの 顕微注入 によ りMBT直 後 にMEK/ERKシ グナルを活性化 させ
事、そして、ο
た場合、中胚葉化を伴 う後方化を引き起 こす事を示現 また、電気的注入法 による非神
経外胚葉への И%mRNAの 導入実験でも、中胚葉化を伴 う後方化が引き起 こされる
“
事を明らかにする。さらに、後期原腸胚 の非神経領域 と神経領域 に И%mRNAを 電
“
気的注入を行 った場合 には後方化 が引き起 こされてから神経化が引き起 こされている事
を確認 した。 これらの事 を踏まえて、FGFシ グナル内のMEK/ERKシ グナルは発生の初
期では卵割の停止が、MBTの 直後では後方化 が、そ して後期原腸胚期以降では神経化
を引き起 こす と言 う時期特異的な働 きを有 してい ると事を報告する。
67
3.2
材料 と方法
と胚の取 り扱い
―
ツメガエルの未受精卵 は、排卵 させたい時間の12時 間前 にヒ ト絨毛性 ゴナ ドトロピ
ン(注 射用HCGl∞ ∞ 、富士製薬工業)を 筋肉へ2∞ unit、 皮下へ知
unit、
計翻 hnit注 射
したメス より得た。解剖 によ り取 り出 したオスの精巣の半分 を細か く切 り刻み作製 し
みmRNAの 顕微注入後の1
た精子懸濁液 を用 いて人工授精 を行 った。精子懸濁液やれ磁ι
時間の回復期間の胚 の培養 にはlxス タイ ンパーグ氏溶液(S毅 艶 inberg's plution)(58 mM
NaCI、
ン、5
0」
θ mM KCl、 0.34mM CN03‐ 4H20、
mM Tris‐ HCl、
0・
83 mM MgS04‐ 7H20、
0・
1ュ カナマイシ
PH 7の を用 いた。胚 の培養 は全てo.lx SS(lx SSの 10倍 希釈)を 用 い
て行 った。人工授精 させた胚 は、受精30分 後 に1%チ オグリコール酸溶液(1∞ mlの 0.lx
ssに l mlの チオグリコール酸K別 名 メルカ プト酢酸、和光純薬工業)と 5N NaOHを 3mの
混合物)を 用 いてゼ リー層 を取 り除いた。胚 の培養 は全ての場合で22° Cの 恒温槽の中で
行 った。
mRNA合成 と顕微注入
PCS2‐ 餡 И Kを 制 限酵素 助 rK・ 切 断 し、 mMESSAGE轟 Wヽ CIIINE SP6 kit(ラ イ フテ ク
ノ ロ ジ ーズ ジ ャパ ン)を 用 い て合成 した 。 また 、合成 したにИ KmRNAは Westem
Blottingの サ ンプル調整の際には25 ng//1の
入畑
濃度に希釈 し、顕微鏡下において電動顕微注
‐
3∞ 、ナリシゲ)で 微小ガラス針を使い、2細 胞期のツメガエル胚の両割球に2d
αИK
ずつ、計1∞ pg、 表現型観察の際にはο
FDAOuoreSCein dextranttne、
Mol∝ ular
微鏡下において電動顕微注入脚
ttAを 50
Probes)を
ng//1の 濃度 に希釈 した溶液 と
1%に 希釈 した溶液を混合 した物を顕
M‐ 3∞ 、ナリシゲ)で 微小ガラス針を使い、 4細 胞期の2
68
つの細胞 に2
nlず つ胚 の片側 に計 1∞
pg、
または1∞ ng夕 1の 濃度 に希釈 し、顕微鏡下 に
おいて電動顕微注入機(IM‐ 3∞ 、ナリシゲ)で 微小ガラス針 を使 い、4_256細 胞期 のツメガ
エル胚 の1つ の割球 に2 nl、 納
pg顕微注入 した。FDA単 独の顕微注入の際 には0.5%に
希釈 した溶液 を顕微鏡下で微小ガラス針を使 い、棚 胞期 の2つ の細胞 に2
nlず つ胚 の片
側 に顕微注入 した。PCS2‐ cttEKDNAは Westm BIOttingの サ ンプル 調整の際 には25
ng/
μlの 濃度 に希釈 し、顕微鏡下 において電動顕微注入機(IM‐ 3∞ 、ナリシゲ)で 微小 ガラス
針 を使 い、2細 胞期のツメガエル胚 の両割球 に2
αИK
PCS2‐ ο
DNAを 50
ng//1の
nlず つ、計1∞
pg、
表現型観察の際 には
濃度 に希釈 した溶液 とFDAを 1%に 希釈 した溶液を混合 し
た物を顕微鏡下 において電動顕微注入機(IM‐ 300、 ナリシゲ)で 微小ガラス針 を使 い、4
細胞期の2つ の細胞 に2
には25
nlず つ胚 の片側 に計 1∞
pg、
アニマルキャップを用 いた評価 の際
ng夕 1の 濃度 に希釈 し、顕微鏡下 において電動顕微注入機(IM-3∞ 、ナリシゲ)で
微小ガラス針 を使 い、2細 胞期のツメガエル胚 の両割球 に2
nlず つ、計 1∞ pg顕 微注入 し
た。
Westem BIotting
それ ぞれ のス テ ー ジ に達 したサ ン プル胚 を タ ンパ ク質 抽 出液 で あ るPhospho Ready
solu■ on(450μ
(ロ
のphospho
stay solu饉 on(メ
ル ク)に 対 し、50口 の10x
pЮ tein inhibitor solution
シユ・ ダイアグノスティックス)を 加えたもの)60μ に溶か し、脂質を除去するために
等量の トリクロロエチ レン(和 光純薬工業)を 加えてタンパ ク質部分を回収 した。 その
後、 タンパ ク質20″ 1と 5x Loading Dyeン 1を 混合 させて95° Cで 5分 間還元反応を行 った後
に、全量を5‐ 20%の 濃度勾配 を持つゲルであるSuperSepTM ACE(和 光純薬工業)を 用 いて
150Vで 900間 泳動する事 によ リタンパ ク質を分子量の大 きさによって分離 した。 さら
に、グルに存在す るタンパ ク質をPVD劇歎メルク)に 1lo mAで 1時 間の条件で転写 した。
そのPVDF膜 に対 して抗体標識 には一次抗体はP44/42 MAPK rabЫ t mAb(1:10∞ 、Cell
SignalinDと PhOSpho‐ メ四42 MAPK,CW Rabbit mAb(1:lKX10、 Cell Signaling)を 用 いて、
次抗 体 は抗 ウサ ギポ リク ロー ナル 抗体 (1:50∞ 、サ ー モ フィ ッシ ャー サイエ ンティ フィ
ク)を 用 いて標 識 し、 ImgeQuant Las 44XXl mini(GEヘ ルス ケ アジ ャパ ン)で 検 出 した 。
FDAを 用 い た胚 の 蛍 光 観察
FDA単 独 、 また はFDAと PCS2“ И tt DNA及 びca″κ mRNAと 共 注入 した胚 は
PBS聡 溶液(lClx
PB'ホ ルムアルデ ヒ ド:超 純水=1:1:8で 混合)で 固定後、遺伝子実験施設
内の実体蛍光顕微鏡を用 いて蛍光観察 した。尚、蛍光の退色を防 ぐために遮光環境下
で固定処理を行 った。
アニマルキャップカット
昴犯κ DNAを
PCS2‐ ο
顕微注入 した胚をSt.9ま で培養 して、lx ss溶 液中で ピンセ ット
で受精膜を取 り除 き、タングステンを酸化 させて細 く加工 して作製 したタングステン針
を用 いて動物極側 の細胞を0.3x O.3 mm2以 下 になる様 に切 り出した。切 り出 したアニマ
ルキャップはlx ssで 2回 ほど洗浄 して卵黄等の余計な異物を取 り除き、St.13に なるま
でlx SSの 中で培養 した。
組織切片
組織切片 に用 いた胚及 びアニマルキャップはst.38で PBSFAを 用 いて固定 した。 その
後、胚 またはアニマルキャップを70%エ タノール、1∞ %エ タノール、そ してキシレンの
順番で置換 し、パ ラフインに包埋 した後 にミクロ トームを用 いて胚 の場合 は8″ m、 アニ
マルキャップの場合は20μ mの 厚 さに切断 した。次 にキシレス 1∞ %エ タノータ
k70%
70
エ タノール、そ して水 の順番で置換 し、ヘマ トキシ リン とエオシンに よるHE染 色を行
い、再 び疎水処理を行 つた後 にカナダバ ルサムを用 いてプレパ ラー トに封入 した。
Whole・ mountin
situ hyb山
n
“
St.13に 到達 したアニマルキャップをMEMFA溶 液(1転
MEM(l M MOPS、
2mM
PH 7o:ホ ルムアルデ ヒ ド:超 純水 =1:1:8の 割合 で混合)を
EDTA、 10 mM MgS04-7H20、
用 いて固定 した。固定胚 は漂 白溶液(30%過 酸化水素水 30口 、fornnamide 45口 、 10x PBS
(PhOSphate buffered saline;塩 化 ナ トリウム80g、
ム144g、
塩化カ リウム2g、 リン酸水素ナ トリウ
リン酸二水素 カ リウム24gを lLの 超純水 に溶解、pH 7o 901tl、 蒸留水 735ロ
を混合 した物)を 用 いて蛍光灯照射下 において常温 で 1時 間脱色 した。発色 にはBM
purple基 質(ロ シュ・ ダイアグノスティックス)を 用 い、 4° Cの 遮光環境下 において約24時
間処理 した後、発色の観察 を行った。
電気的注入法
合成 した И%mRNAを 適切な濃度 に希釈 して リネージ トレーサー として用 いた
“
ECFP(り 物 ιι
a gFaι ″
ο″sο ′
′″
″確 加)mRNA、 そして液 を可視化する為 に ファス トグ
`″
リー ンを混合 した後、顕微鏡下 において電動顕微注入数
IM‐ 3∞ 、 ナ リシゲ)で 微小 ガ ラ
ス針 を用 いて胞胚期 のツメガエル胚 と受精膜 の間隙 にmRNAを 注入 した。その後電気的
注入機 に より抵抗値 を1.8kΩ 、電流 を10 mA、 電圧 を20Vに 設定 し、5m秒 電流 を流 し
た後 に95m秒 電流 を止めると言 うサイクル を7回 繰 り返す事 に よりmRNAを 導入 した。
電気的注入後 の胚 は3%の フィコールが入つた0.lx ssで 培養 した。
EGFPを 用 いた胚の蛍光観察
71
ECFP mRNA単 独 、 また はEcFPと οttα【mRNAと 共 電気 的注入 した胚 は 固定 を しな
い状 態 で 名 古屋大 学 アイ ソ トー プセ ン ター 内 の実体 蛍光顕微鏡 を用 いて 蛍光観 察 した 。
尚、蛍光 の退 色 を防 ぐた め に遮 光環 境 下 で胚 の培養 を行 った 。
72
3.3
結果
3. 3. 1
●
醐
κ mRNAと DNAの 打ち分 けはMBTの 前後 においてMEK/ERKシ グナ
ル を活性化 させ るの に適 した手法である
異な る役者 を用 いて 同一 のFGFシ グナル を動か した時 に卵割 の停止、後方化 :そ して
神経化 と言 う異なる表現型が確認 され た とい う過去の知見 に対 して、FGFシ グナルが働
く時期 によって異な る働 きを有 して い るのではないか と言 う仮説 を立て、 さらに、解析
をより単純 にす る事 ができるように、FGFシ グナルでMEK/ERKシ グナルの一員である
MEKに 注 目して研究 を開始 した。 このMEKは ヽ強 PKKと して も知 られ るキナーゼで ある
為 にNIEKが 存在す るだけでは働 か哄 活性化状態 になつて初 めて下流 であるERKを リン
酸化 させ る事 によつてシグナル を伝 える。 また、 ツメガエルの発生ではSt.85付近 の
MBTと 呼 ばれ る中期胞胚期以降 にな らない と転写が起 こらない為 に、 それ以前 のステ
ージでは母性的 に存在す る分子 の影響 によ り母性 プログラムにて、 それ以降で は接合子
性 な影響 に よる胚性 プログラムに より発生が進行す るとい う性質が存在す る。 そ こで、
このMEKの キナーゼ としての性質 とツメガエルのMBT前 後 での遺伝子調節 のメカニズ
ムの違 いを組み合わせ る事 に より時期特異的 にMEK/ERKシ グナル を活性化 させ る事が
で きるのではないか と考えた。具体的 には ″κ mRNAを 発生初期のツメガエル胚 に
`都
顕微注入す る事 によ り発生の初期 においてMEK/ERKシ グナルを活性化、 また、初
κ
DNAを ツメガエル胚 に顕微注入する事 により転写が開始 されるMBT以 降 におけるBRKy
MEKシ グナルを活性化 させる事ができ、 それぞれの時期 にMEK/ERKシ グナルを活性化
させた際の影響が確認 されるのではないか と考 えた。 そ こで、 ИK mRNAと caMEκ
“
DNAを 2細 胞期のツメガエル胚 に顕微注入 し、それぞれのステージにおけるERKの リン
73
酸化状態をWes“ m BIding法 に よって確認 した。 その結果、例 ИK
mRNAを 顕微注入 し
た場合 ではERKの リン酸イヒがSt.3か ら即座 に引き起 こされて い るのに対 して、cα岨 7κ
DNAの 場合 では コン トロール胚 と同様 にERKの リン酸化 はMBTを 経過 した直後 のSt.9
以降 に強 く検出 された(図 3-1)。 以上の結果 か ら、 И%mRNAと
“
DNAの 打ち分 けは
NIBT前 後 でMEK/ERKシ グナル を任意 に活性化 させ る事が可能で あ り、MEK/ERKシ グ
ナルが有す ると考えられ る時期待異的な働 きを有 して い るかを解析するのに有効 な手段
で ある事 が明 らかになった。
3. 3. 2
発生初期 のMEttRKシ グナルの活性化 は卵割停止を引きlaこ す
れИ%mRNAと
DNAの 打 ち分 けはMEK/ERKシ グナルの時期特異的な活性化 に有効な
αИ7κ mRNAの 顕微注入 に よ り発生の初
手段である事が明 らか にな ったので、 ま哄 ο
期 においてMEKIERKシ グナル を活性化 させた場合 にはMacNた ol
et J.の
実験 と同様 に卵
割 の停止が引 き起 こされ るのか、 また、 それ以外の影響 が観察 され るのかを明 らかに
する為 に、4mm胞 期 のツメガエル胚 の1割 球 に И%mRNA、 またはε
αИK
“
DNAを リネ
ージ トレーサーであるFDAと 共顕微注入 し表現型 を観察 した。 その結果、 コン トロール
胚、 または И K
“
銘ИK
DNA注 入胚 では通常通 り卵割が進行 した(図 3-2A― B')の に対 して、
mRNA注 入胚で は過去の知見 と同様 に、注入 された細胞 において卵割が停止 し
てい る事が確認 された(図 3‐ 2C、 C';MacNicol et J.,1995)。
以上の事 か ら、発生初期 にお
けるMEK/ERKシ グナルの活性化 は卵割 の停 止を引 き起 こす事が確認 された。
次 に、発生初期 においてMEK/ERKシ グナル を活性化 させた事 に よる卵割 の停 止が ど
の時期 まで引き起 こされ るのかを確認す る為 に、硼 胞期 か ら顕微注入が可能な最 も遅
いステージで ある256細 胞期 の1割 球 に И%mRNAを 顕微注入 した。 その結果、4rm胞
“
74
期か ら256細 胞期 に注入 した全て場合 において卵割が停止する事が確認 された(図 3-3)。
以上の結果 か ら発生初期 に活性化 されたMEK/ERKシ グナルの影響 による卵割 の停止
は少な くとも硼 胞期か ら256細 胞期 まで継続 され る事が確認 された。
3. 3. 3 MBT直 後 のMEK/ERKシ グナルの活性化は後方化を引き起 こす
44E胞 期か ら256細 胞期 まで にお けるMEK/ERKシ グナルの活性化 は卵割 の停止を引き
起 こす こと(図 3-1)と ι
昴伍κ DNAを 2細 胞期 に顕微注入すると、MBT直 後 のSt.9か らERK
が リン酸化 され、MEK/ERKシ グナルが活性化 され るこ と(図 3-1)が 明 らか になったの
で、次 は、cttEKDNAの 顕微注入法 を用 いてNIBT直 後 のMEK/ERKシ グナルの活性化
が初期発生に与える影響 を解析 した。 この際、ο
昴犯κ DNA顕 微注入 に よる影響 をアニ
マル キャップに対 して評価 を行った。 アニマル キャップはッメガエル胚 の動物極側 に存
在するES細 胞 の様 に多能性 を有 した細胞群で、将来表皮 になる予定運命 を有 して い る
が、様 々なシグナル に応答す る能力がある為 に目的のシグナルが どの様な影響 を及 ぼす
のか を明 らか にする解析 に よく用 い られ る。 ま哄
MBT以 降のM□σERKの 活性化 が ど
の様 な影響 を及 ぼすのかを明 らかにす る為 に、銘ИK
DNAを 2細 胞期のツメガエル胚 に
顕微注入 し、St.9ま で培養 した胚か らアニマル キャップを切 り出 した。 その後、 コン ト
ロール胚 力ヽt.38に なる時期 まで培養 したアニマル キャップに対 して組織切片 を作製 し
て組織学的な解析 を行 つた。 その結果、 コン トロール胚 か ら切 り出 したアニマル キャッ
プは不整形表皮 が形成 された(図 3‐ 4A)の に対 して、cttKDNAを 顕微注入 した胚か ら
切 り出 したアニマル キャップでは血球細胞、間充織、腹側 中胚葉、筋肉様 の細胞 が観察
された事 か ら中胚葉 が誘導 されてい る事が確認 された(図 34B― D)。
以上 の組織学的解析 か らにИK
DNAを 顕微注入する事でMBT直 後 にMEK/ERKシ グ
75
ナルを活性化させると中胚葉の組織 の形成が誘導されると言 う事が示唆されたので、次
は同様 に И%DNAを 顕微注入 した胚から切 り出 したアニマルキャップに対 して、in
“
dtu hybHdizadon法 にて中胚葉の組織 の形成が誘導 されるかを分子生物学的に解析 し
た。 コン トロール胚 から切 り出 したアニマルキャップは表皮 になる予定運命を有 してい
るので表皮 マーカであるぃtoKの 発現 は確認されたが、あ らゆる神経系 を認識す るpan_
neuralマ ーカーである助ψ とあらゆる中胚葉 を認識す るpan‐ mesOdemalマ ーカーである
筋″〔
泌れο
ルリ の発現 は確認 されなかった(Fig
3‐ 5A、
C、
D。
方 でοttα κ DNAを 顕
微注入 した胚から切 り出したアニマル キャップの場合 はの ゎκの発現が減少 し、Xb“の
発現が誘導 されていたが、助崚の発現 は誘導 されなかった(図 3‐ 5B、
から、 ИK
“
D、
D。
以上の結果
DNA顕 微注入 によるMEK/ERKシ グナルの活性化 は神経誘導 は引き起 こさ
ないが中胚葉誘導を引き起 こす事が示唆された。
さらに、MEK/ERKシ グナルを活性化 させる別の方法 として電気的注入法 によ り
caMEKmRNAを 胚 の中に導入することを考えた。 この電気的注入法 はニ ワ トリ胚やイ
モ リ胚な どで良 く使われる手法でツメガエル胚 で応用 してる報告は過去 には存在 しない
が、 ツメガエル胚 においても胞胚期以降であれば 目的のmRNAや DNA、 MOな どを導入
する事が可能である(私 信
)。
そ こで、 リネージ トレーサーであるECFP mRNAを 単独
昴犯κ mRNAの 混合溶液をツメガエル胚 の後期胞胚期から後期原腸
で、またはEGFPと ι
胚期の非神経外胚葉領域 に電気的注入法 によ り導入 した。 その結果、圏
PmRNAの み
を電気的注入法 により導入 した コン トロール胚では、電気的注入 していない通常胚 と同
昴犯κ
じ通常の発生を示 したが(図 3‐ 6A‐ B')、 後期胞胚期 に該当するSt.9.5に おいてο
mRNAを 導入 した胚では全ての胚でmRNAが 導入された領域 において黒色色素を有 した
構造が確認 された(図 3‐ 6C、
C')。
また、初期原腸胚 にあた るSt.10.5に おいてο
昴僣κ
mRNAを 導入 した胚 において も同様 な表現型が確認 されたが(図 3-6D、
St.9,5に
D')、
その割合は
比べて減少 していた。 さらに、後期原腸胚及び初期神経胚 にあた るSt.13に おい
て も同様 に銘ИX
mRNAを 導入 した ところ コン トロール胚 と同様 の表現型が確認 さ
れ、黒色色素構造 を有 した表現型 は確認 されなかった(図 3-6E、
E')。
以上の事か らMBT
直後 のMEK/ERKシ グナルの活性化 は黒色色素構造 を誘導するが、 その効果 は発生が進
むにつれて消失 され ると言 う事 が明 らか にな った。
次 に、後期胞胚期 か ら初期原腸胚期 の非神経外胚葉領域 に И K
“
mRNAを 電気的注
入法 によって導入 した際 に確認 された黒色色素構造 が何 であるかを詳細 に解析す る為
に、黒色色素構造 を有する胚 の組織切片を作製 して組織学的 に解析 に解析 した。その結
果、黒色色素構造 は腹側中胚葉や筋肉様組織 が確認 され る事か ら中胚葉系の組織 であ
る事が確認 された(図 3-7A― C')。 これ らの一連 の実験で中胚葉の誘導が確認 されたが、
これ は後方化 が起 きる際 に付随 して確認 され る現象であ り、MBT直 後 にMEK/ERKシ グ
ナル を活性化 させた場合 には後方化 が引き起 こされ る事が示 された。
3. 3.4
神経化 は更 に後期 のMEK/ERKシ グナル活性 に依存する
上述の実験 に より、MBT以 前 にMEK/ERKシ グナル を活性化 させた場合 には卵割 の停
止が、そ して、MBT直後 にMttERKシ グナル を活性化 させた場合 には後方化 が引き起
こされ る事が確認 されて いた。 しか し、FCF8 mRNAを 顕微注入 した際に確認 された神
経化 についてはcαИ7κ mRNAま たはDNAを 用 いた これ までの実験で確認す る事 はで き
なか った。 また、ツメガエルの神経形成 には表皮 と神経 の境界領域 にあた るプラコー ド
領域 と裏打ちされた 中胚葉領域 か らの神経誘導が必要 であると言 う知見 も報告 されてい
たOpper et d.,201つ ので、電気的注入 によりca口 x
mRNAを 導入する位置を変更すれ
ば神経化 を導けるのではないか と考えた。 ツメガエルの胞胚期か ら原腸胚期 にか けては
原腸陥入運動が激 しく行われてお り、胞胚期 における動物極側 の細胞 は非神経領域 にあ
た り、 また、裏打ちされた中胚葉 は存在 しないが、発生が進んでい くと原腸陥入が進ん
でい くと動物極側 の細胞 には将来 の神経領域及び、 プラコー ド前駆体 の領域 を含み、
その内部 には裏打ちされた中胚葉が存在す ることになる(図 3o。 そ こで、後期胞胚期 に
あたるSt.95か ら中ノ
後期原腸胚 に該当す るSt.12に おいて動物極側の細胞 にc昴 犯κ
mRNAを 電気的注入法 によって導入 し、表現型を観察 した。 その結果、St.95で はコン
トロール胚 に比べて、後方化 した胚の典型的な表現型である眼が欠損 し、異所的な尾部
構造 を有す る表現型が確認 された(図 3‐ 8A‐B')。 初期原腸胚 にあたるSt.105に おいては
腹部 に黒色色素を有する構造が確認 されたが、眼の欠損や異所的な尾部構造 は確認 さ
れなかつた(図 3‐ 8C、
C')。
後期原腸胚期 に該当す るSt.12で は、 コロボーマ眼 と呼ばれ
る眼の形成異常やセメ ン ト腺の拡大等の神経イ
ヒが導かれた際に確認 される典型的な表
現型が確認 された(図 3-8D、
D')。
以上の事をま とめると、 Иtt mRNAを ツメガエルの
“
動物極側 の細胞 に電気的注入法 によ り導入 してMBT以 降に時期特異的 にMttERKシ グ
ナルを活性化させると後方化が起きた後、神経化 が引き起 こされる事が明らかになっ
た。
78
3.4
考察
これ まで に初期発生のみなら哄 数多 くの分野 において様 々な働 きを有 して い る事が
明 らか になつていたFGFシ グナルであったが、時間軸 を切 リロとして順序立てて解析 し
た報告 はこれ まで存在 しなかつた。 そ こで、 これ までに報告 されたFGFシ グナルの様 々
な働 き力■GFを 動かす時間軸 の違 いによって起 こってい るので はないか と考 え(図
3-10A)、
よ リシンプル な解析が可能 になるようにMAPKKで あるMEKに 注 目して役者 を
1つ の分子 に絞 り込んだ。 ま哄
明 らかにする為 には配
MEKを 用 いて時期特異的なMEKIIRKシ グナルの役割 を
κ mRNAと
DNAに よる打 ち分 けが適 してい ると言 う事を生化
学的 に証明 した(図 3-1)。 次 に、 И K
“
mRNAの 顕微注入 に よる機能解析 か ら発生の初
期 にMEK/ERKシ グナル を活性化 す ると少な くとも4細 胞期 か ら256細 胞期 まで は卵割 の
3)。
そ して、 ИK
停止が引き起 こされ る事を確認 した(図 3‐ 2、 ‐
“
DNAの 顕微注入法 に
よる機能解析 ではMBT直 後 にMEK7ERKシ グナル を活性化 させ ると中胚葉化 を伴 う後方
化 が引き起 こされてい る事 を確認 した(図 34、
の口X
-5)。
また、 この事 は非神経領域 への
mRNAの 電気的注入法 による機能解析 で も示唆された(図
神経領域 と神経領域 へのに開 K
3‐ 6、
‐
7)。 さらに、非
mRNAの 電気的注入法 に よる機能解析 を行 つた とこ
ろ、MBT以 降へのMEK/ERKシ グナルの活性化 はMBT直 後 に後方化 が起 きた後 に、後期
原腸胚期 において神経化 が引き起 こされ る事 を明 らか に した(図 3-8)。
ここでは、 1)MEK/ERKシ グナルが有す る時期特異的な役割、2)FGFシ グナルによる
神経化 につ いて述 べ る。
1)MEIm]RKシ グナルが有す る時期特異的 な役割
背景で述べ たよ うに、 И%mRNAの 顕微注入 にようてERKINIIAPKシ グナル を活性
“
79
化 させ るとツメガエル胚 の卵割が停止す る現象が起 こること(MaCNicol et」 .,1995)、
″REM
mRNAの 顕微注入 によ り前方化 した表現型が確認 され る事か ら後方化 に関わ
つてい る事(HongO et J.,1999D、 さらにFGF8 mRNAの 顕微注入 の結果 か ら神経化 に関与
して い るこ と(HardCasde
et al.,知
∞ )が これ まで に報告 されてい る。同一 のシグナル を動
か してい るにもかかわ らずt異 なる表現型を導 くと言 う疑間 に対 して私 は 「FGFシ グナ
ルが活性化 され る時期 によって異なる働 きを示す」 と言 う作業仮説 を立て(図 3-10A)、
それを証明す る為 にMEK分 子 に注 目 し、cttEKmRNAと DNAの 打ち分 けを手段 として
解析 を行 つた。 その結果、 ИttmRNAの 顕微注入 による卵割の停止は本研究 におい
“
て も再現す る事 がで き(図 3o、 発生初期 においてMEK/ERKシ グナル を活性化 させ ると
少な くとも柵 胞期 か ら256細 胞期 まで は卵割 の停 止が引き起 こされ 図3‐ 3)、 鵬 T直 後
では中胚葉化 を伴 う後方化 が引 き起 こされ、後期原腸胚 においては神経化 が引き起 こ
され ると言 う事が示 唆 された(図 3‐ 4、
-5、
-6、
イ、-8、
-9、
-10)。
本研究 によってFGFシ グナルは時期特異的な働 きを持つ事 が証 明されたが、初期発生
において非常 に重要 な働 きを持つWntシ グナル もまた、MBT前 後 で時期特異的な働 きを
有 してい る事が知 られてお り、その下流 にはFGFと 同様 に様 々 なシグナル経路が存在 し
てい るが、その中にcanOnical Wntシ グナル とい う経路 が存在す る。 さらに、 ッメガエル
胚 のcallollical
Wntシ
グナルにおいては、MBTを 境 としてeaJy Wntシ グナル とlate wntシ
グナル とい う2つ の働 きが存在す る ことも報告 されてい る。carly Wntシ グナルはMBT以
前 に働 いて外胚葉 の神経化や中胚葉 の背側化 を引き起 こす(smith and Harland,1991;Cui
ct J。 ,1995)が
、一方でlate Wntシ グナルはMBT以 降 に働 いてBM南呻GFを 介 して後方化
を引 き起 こす(Hoppler and M∞ n,1998;Kudoh et al.,2∞
2)。
callollical Wntシ
グナルにおけ
る時期特異的な役割の違 いは、LIBT以 後 にXbraが接合子的 に働 くことに依 るとい う報
告もあるconica and Gumbiner,2002D。
つ ま り、callollicd
Wntシ グナルカヽBT以 前 には神
経化及 び背側化 を誘導 し、旧 T以 降はXbraに よって後方化を誘導するとい うことにな
る。 また、ca■ y wntシ グナルではリガンドが存在 しない力
S、
late wntシ
グナルではリガ
ン ドが存在す るとい う違 い もcanOnical Wntシ グナルには存在す る。FGFシ グナルについ
て もcanOnicJ Wntシ グナル と同様 にNIBT前 にはFGFリ ガ ン ドが 存在 せ 哄 NIBT後 には リ
ガ ン ドが存 在 す る と言 う事 を考慮 に入 れ る と、 FGFシ グナル の 下流 に あ るERKが 初 曖 K
mRNAの 顕微注 入 に よって鵬 T以 前 に活性化 され る こ とで 卵 割 の停 止 が 引 き起 こされ
た(MaCMCOl et d.,1995)と い う報 告 と、 同 じFGFシ グナル で も上流 に あ るF硬3mRNAの
顕微 注入 で は神 経化 が 確 認 され た(HardCastle ct J.,知 ∞ )と い う報 告 の2つ の報 告 が 示 す
FGFシ グナル の働 きの違 い を説 明 す る こ とがで き る(図 3-lo。 さ らに、 Wntと FGFシ グナ
ル が 協働 して神 経形成 を誘 導 して い る とい う報 告 (McGrew et」 .,1997)も あ り、 carly Wnt
シ グナル とlate Wntシ グナル を決定 す るメカ ニ ズ ムが 、 FGFの 時期 特 異 的 な役割 の 違 い
に関与 して い る可能 性 もあ る。
これ まで述 べ て きたWntシ グナル 及 び本研究 にお け るFGFシ グナ ル に関 して、 ポイ ン
トとなつてい るMBTと い う概念 は、すべての科学者 に受け入れ られてい るものではな
い。M町 の時期 は、同調的に繰 り返 される卵割の結果、胚 の総細胞数が①∞を超える
時期 に相当する。増加す る細胞 に比例 してDNAの 量 も増加するはずであ り、NIBT以 前
に転写が行なわれないのではな く、人為的な手法 による検出ができていないだけでは
ないか とい う考 えを持 つた科学者 もお り、実際、MBT以 前 には発現 しない と考 えられ
81
る遺伝子がMBT以 前 に も発現 してい るとい う報告 もある(Yang
MBT前 後 にお け るSmicl(SmaditeraCung≦ PsF
et al.,2∞ 2)。
しか し、
30-」 ke)の 明確 な リン酸化度合 いの変化
によ り、MBTの 存在 を裏付 ける報告 もある(Collart
et al.,2009D上
に、母性 プログラムか
ら胚性 プログラムヘ遷移が起 こるとい う概念 は他 の分野 にお ける研究者間で も受 け入
れ られてい るため、現時点でMBTと い う概念 の信頼性 は高 い と考 えられ る。従 つて、今
回のよ うにDNAを 顕微注入 した際 には、mRNAが翻訳 され るのはMBT以 降だ と私 は考
えてお り、MBT以 降 にだ け発現す る因子 によって、同 じシグナル経路 で も異なる現象が
引き起 こされ るこ とはあ り得 ることだ と考 えてい る。今 回の実験で、MBT以 降 にMEK/
ERKシ グナルが活性化 され ると後方化 の後 に神経化 が引き起 こされ ると言 った事が示 さ
れた様 に、 MBT以 後 で も異なる現象が 引き起 こされ る事 は多 いに考 えられ るだろう。
a FGFシ グナルによる神経化
餡ИK
mRNAや DNA打 ち分 けによってMEK/ERKの 活性 を時期待異的 に働 かせ る実験
を行 つてい く中で、後期原腸胚期 の非神経領域 と神経領域 にまたが るように電気的注入
αИ7κ mRNAを 導入 させた時 にのみ神経化 が確認 された(図 3-8)。 これまで
法 に よりι
に、神経化 はFCF8 mRNAの 顕微注入 に よって引 き起 こされ る事(HardCastle
et al.,2CXXl)
が報告 されてい るが、 シグナル を伝 える下流 の分子 が接合子的 に発現す る為 に神経化 は
MBT以 降 にMEK/ERKシ グナルが活性化 された結果 として生 じてい る可能性 が非常 に高
い(図 3‐ 10)。 今回の実験 では同様 にMBT以 降 にMEK7ERKシ グナル を活性化 させ る
“
Иtt mRNAの 非神経領域 と神経領域 への電気的注入法 による導入で は神経化 が確認
されたのに対 して(図 3-8)、 初 ИK
DNAの 顕微注入で は神経化 が確認 されなかつた(図
3‐
61が その違 いは一体何 に由来するのであろ うか。両者 において共通 してい る点はMBT
以降 にMEK/ERKシ グナルを活性化させると言 う点であ り、大きな相違点 としては
mRNAで シグナルを動か そうとしてい るのかDNAで シグナルを動かそうとしてい るのか
と言 う違いである。今回の研究 のように、同じ分子 のmRNAと DNAを 用 いた場合で
も、mRNAは す ぐに翻訳 されてタンパ ク質になる一方でDNAは 核 に取 り込まれな くては
ならない為 にその活性 はmRNAに 比べて10分 の1程 度 に減少 して しまう事もあ り(私
信
)、
活性 の強弱の違いが表現型 として現れた と言 う事も考えられる。 また、c麒Ⅸ
mRNAを 後期原腸胚期 に非神経領域 に電気的注入法 によ り導入 して過剰発現 した場合 に
7)。 これらの事を踏まえるとツメガエルに
おいても神経化 は確認 されなかつた(図 3‐6、 ‐
おいてR〕Fシ グナルを介 した神経化 には、非神経領域以外の神経領域、あるいはその境
界線状 にあるプラコー ド領域 に、 ある一定の間値以上のRIシ グナルの活性が必要であ
る事を示唆 してい る。ニ フ トリ胚 では非神経外胚葉領域 にmF4タ ンパ ク質を塗布 した
ビーズを非神経領域 に埋め込む事 によって神経化 が引き起 こされる事αardley
and
Garci"Qstro,2012)、 また、FGFシ グナルを介 した神経化 はMAPKを 介 してい る事
(Stuhlmiller and Garci● Castro,201の
が報告 されてい る。つ まり、 これ らの報告は非神経
外胚葉領域 にFGFシ グナルを働かせるとMttERKシ グナルが活性化 される事 によって
異所的な神経化 が引き起 こされる事を示唆 してい る。 ツメガエル胚 の外胚葉領域が神経
に分化す る為 には裏打ちされた中胚葉の存在が必要であると言 う報告opper et」
.,
2012)が 存在す るものの、 ツメガエル胚 の外胚葉領域 のデフォル トは神経である(Kuroda
ct J。
,2m5)と 言 う事実 に加えて、動物種 によって異なるシステムを使用 してい ると言 う
事 は考 えに くいので、や は り、 ツメガエルの非神経領域FGFシ グナルを働 かせると神経
化 が 31き 起 こされ る可能性 :却熟 ゝ
。
今回の研究 の結果 を踏 まえて神経化 を考 えてみ ると、 ツメガエルの場合 で もニ フ トリ
胚 の場合 において も基本的 にはメト
神経領域 にはぃ
力海К 事 によって神経化す る
能力が備わってい るが、その応答性が異なるとい う事が示唆され る。 この応答性 に関 し
ては、 ツメガエル胚 の非神経領域であるアニマルキャップが複数層 になってお り、それ
ぞれがシグナルに対 して異なる応答性 を有 してい る事 が知 られてい る。 さらに、神経化
をツメガエル とニ フ トリの胚 において考 えた際に、BBrア ンタゴナイズに重 きを置 いた
ツメガエル とFGFシ グナルに よるSmadlの リン酸化 に重 きを置 いたニ フ トリの進化 の過
程 も関わって い るので あろう。 また、 ツメガエルにお ける裏打ち された中胚葉 か らの神
経誘導 は二重保証的 に神経形成 を補助する形で保証 されてい るものであると推測 され
る。
84
St.3 St.4 St.5 St.6 St.7 St.8 St.8.5 St.9
un:nJ.
St.9.5 St.10 St.10.5
-―
―
DNA
mRNA
lcD―
ERK
一
un:nJ.
DNA―
‐‐D―
mRNA(I>---
―
―
―
―
-
―
‐
――
-'D-tD
[図 3-1]θ 醐Ⅸ mRNAと DNAの 打ち分けはMB丁 前後 におけるMEK/ERKシ
―
―
tota卜
ERK
グナルの活性化を導 くの
に有効である
cattF mRNAと DNAの 打 ち 分 け に よ るERKの 活性 化 時期 の 解 析 。 ca豚 炒 ヽま た は οatt DNAを 2
細 胞 期 の ツ メ ガ エ ル 胚 に 顕 微 注 入 し 、 そ れ ぞ れ の 時 期 に 抽 出 した タ ン パ ク 質 に 対 し 、
Western Blotting法 に よるERKの リン酸化状態 の解析。 mRNAを 顕微 注入 した胚 では即座 にERK
の リン酸化 が 引 き起 こ され るの に対 して 、DNAを 顕微 注入 した胚 ではMBT直 後 のSt。
の リン酸化 が 引き起 こ され た。
85
9か らERK
A'
FDA
B'
FDAl c'
FDA
[図 3-2]MB丁 以前 のMEK/ERKシ グナルの活性化は卵割 の停止 を引き起 こす
ο
attκ mRNA顕 微 注入胚 の表現型解析。 catt mRNAま たはcatt DNAを 孫田
胞期 のツメガエル胚
レー
ー
ー
ジ
の
に リネ
ト
サ であるFDAと 胚 片側 に共顕微 注入 して、それぞれ の影響 を観察 し
コ
att DNA注 入胚 では発生 には影響 を与えなか ったが、 ca″ xyヽ 注
た。 ン トロール胚 とο
入胚では、卵割 が停止 してい る事が確認 された。
86
8-ce‖
16-ce‖
凛
「
[図 3-3]卵 割 の停 止 は少な くとも4細 胞期 か ら256細 胞期 まで継続 され る
att mRNAを 顕微 注入 した胚 の観 察。 (A)B― H
4細 胞期 か ら256細 胞期 まで の ツメガ エ ル 胚 に ο
に対す る コ ン トロー ル 胚。 (B― H)caMEK mRNA(200 pg)を 4細 胞 期 か ら256細 胞期 まで の ツ メ
ガエ ル 胚 の 1割 球 に顕微 注入 した胚。 全 ての ステ ー ジにお い て卵割 の停 止 が確認 され た。
87
B
A
caMEK
control
C
D
fmに
電
EK/ERKシ グナルの活性化は中胚葉を誘導する
[図 3-4]MBT直 後 の‖
cattF DNAを 顕微注入 した胚 か ら切 り出 したアニマルキャップの組織学的解析。 (A)B― Dに 対
す る コン トロール アニマル キ ャップの組織学的切片。不整形表皮 が形成 されて い た。 (B― D)
ο
a〃%DNA(100 pg)を 顕微注入 した胚 か ら切 り出 してSt.38ま で培養 したアニマル キャ ップ
の組織学切片。 アニマルキ ャップの外層 には不整形表皮が確認 され るが、様 々な 中胚葉組織
が 確 認 され た 。 hc,hematocyto(血 球 );mc,mesenchyme(間 充織 );mls,muscle like
structure(筋 肉様構造);vm,ventral mesoderm(腹 側中胚葉)。
88
Sox2
oontЮ
I
「
Xbra
rk
Cyfoκ
Cyfoκ
CyfoK
[図 3-5]MB丁 直後 のMEK/ERKシ グナ ルの活性化は神経 マーカーの発現 を誘導せ ず、中胚葉 マー
カーの発現 を誘導する
ca辺 %DNAを 顕 微 注 入 した 胚 か ら 切 り出 した ア ニ マ ル キ ャ ッ プ に 対 す る in situ
hybridization法 を用 いた分子生物学的解析。 (A、 C、 E)そ れぞれB、 D、 Fに 対す る コン トロ
ール アニマル キ ャップ。 St.9に お い て コン トロール胚 か ら切 り出 し、St。 13ま で培養 して
それぞれ のマー カー で in situ hybridizationし た。表皮 マー カーのの ι 発現は確認でき
"の
な い。 (B、 D、 F)
るが 、神 経 マー カ ー の力″ と中胚葉 マー カ ー の Xbraの 発 現 は確認 され
cattκ DNA(100 pg)を 顕微注入 した胚 か ら切 り出 し、St。 13ま で培養 してそれぞれ のマー カ
ー でin situ hybridizationし たアニマル キ ャップ。印 ι 発現 が一部消失 し、/braの 発現
"の
が上昇 したがSο ″の発現 は検出 されなか った。
89
明視 野
竜井
EGFP
B'
EGFP
●
A'
ヽ
Normal
(23/25)
control
●
C'
●ヽ
St.9.5
caMEK mRNA
EGFP
EGFP
D'
EGFP+caMEK
EGFP
E'
ECFP+caMEK
EGFP
St.10.5
caMEK mRNA
3′
「
一
(14/16)
”ミ
St.13
caMEK mRNA
CaryJLA
EGFP ttcaMEK
∩′
[図 3-6]MBT直 後 の 非神経領域 へ のMEK/ERKシ グナル の 活性化 は腹部 に黒色色素構造 の形成 を
引き起 こす
それ ぞれ の 時期 にお い て非神経領域 の 細胞 へ catt mRNAを 電気 的注入 した胚 の表現型観 察。
(B、 B')St.9。 5に お
(A、 A')電 気 的注入法 を実施 しなか つたSt.38の 胚 (100%、 n=H)。
コ
い て電 気 的注入法 に よ り藤 マ mRNAを 導入 したC― E'に 対す るSt。 38の ン トロール 胚 (92%、
n=23)。 通 常 の発 生が観察 され た。 (C― E')そ れぞれ のステー ジ にお い て電気 的注入法 に よ り
3θ ″ mRNAと ca〃 7 mRNAを 導 入 した St。 38の 胚。 St.9。 5に 電気的注入 した胚 では 黒色色素 を
有 した構造 が確認 され る (100%、 n=30)が 、St。 10.5の 場合 ではそ の割合 は減少 し(n=62.5%、
n=20)、 St.13場 合 では全 く確認 されず (0%、 n=0)、 コ ン トロール 胚 と非常 に良 く似 た表現型
が確:言 思された (87.5%、
n=14)。
90
caMEK
control
Normal
B
C'
[図 3-7]MB丁 直後のMEK/ERKの 活性化は中胚葉を誘導す る
cattF mRNAの 電気的注入法 によつて誘導 された黒色色素構造 の組織学的解析。 (A、 A')電
気的注入法を実施 しなか つたSt。 38胚 の組織学的切片。 (B、 B')“ ″ mRNAの みを電気的注
入 したC、 C'に 対す るSt。 38の コ ン トロー ル 胚 の組織学的切 片。 (C、 C')“ 序を ca麟
雨 ヽを電気的注入 したSt.38胚 の組織学的切片。黒色色素構造が誘導 された領域 には 中胚葉
が形成 された。
91
明視 野
A'
蛍光
EGFP
control
B'
EGFP
EGFP
St.9.5
caMEK mRNA
ECFP ttcaMEK
C'
EGFP
D'
ECFP+caMEK
EGFP
St.10.5
caMEK mRNA
St.12
caMEK mRNA
EGFP+caMEK
[図 3-8]MBT以 降 のMEK/ERKシ グナルの活性化は後方化、そ して神経化 を順 に引き起 こす
att mRNAを 電気 的注入 した胚 の 表現型観 察。
それ ぞれ の 時期 にお い て 動物 極側 の 細胞 へ ο
9.5に お い て の動物極側 の細胞 に電気 的注入法 に よ りEθ ″ mRNAを 導 入 した 、B―
(A― A')St。
D'に 対 す るSt。 38の コ ン トロー ル 胚 (80%、 n=10)。 通 常 と同 じ表 現 型 が 観 察 され た 。 (B―
D')そ れ ぞれ のス テ ー ジにお い て動 物極側 の細胞 に電気 的注入法 に よ り 料を θatt mRllA
は腹 部 に
を導入 したSt.38の 胚。 St。 9.5で は後方 化 した 表現型 (75%、 n=8)が 、St.10.5で
“
黒色色素構 造 を有す る表現型 (100%、 n=9)が 、 そ してSt。 12で は神 経化 した胚 に典型 的 に観
察 され る コ ロボー マ 眼や セ メ ン ト腺 が肥大 した表現型 (78%、 n=23)が 確認 され た。
92
非神経領域
神経領域
内胚葉
St。
St.12
9.5
att mRNAの 導入 され る領域 がステー ジ毎に
[図 3-9]動 物極側細 胞 へ の電気 的注入法 によ りθ
異なる理由
5ま たはSt。 12に お いて catt mRNAを 動物極側 の細胞 に電気的注入法を用 いて導入 し
St。
た場合、原 腸陥入運動 を考慮 に入れ るとSt。 9。 5で は非神経領域 のみ に、St.12で は非神経
領域 に加 えて神経領域 にもmRNAが 導入 され ると考 えられる。
9。
93
A
卵 割 の停 止
神経化
卵 割 の停 止
後 方化
後 方化
B
グナルが有する時期特異的な機能を表すモデル
本研究前後 での解釈 の相違点。 (A)本 研究以前に想定 していたモデル。BMPシ グナル 制御 が
神経化 を導 く一般説 に加 えて、FGFリ ガ ン ドや レセ プターの発現を考慮 に入 ると、MBT直 後 の
MEK/ERKシ グナル の活性化 は神経化 を導 き、そ の後 に後方化 を誘導す る と考 えてい た。 (B)
本研究 によ り得 られた新たなモデル。MBT直 後 のMEK/ERKシ グナルの活性化 は後方化 を導き、
そ の後、後期原腸胚期以降は神経化 を引き起 こす事 が示唆 された。
[図 3-10]MEK/ERKシ
94
総合議論
本研究では第1章 から第3章 を通 して細胞分裂や増殖 と言 った発生の進行が母性プログ
ラムから胚性プログラムに遷移するMBT、 また、発生の中で1番 最初 のダイナ ミックな
形態形成運動である原腸陥入が行われ、発生の第2の スター トとも言 える原腸胚期 にお
いて、 どの様 な発生現象が行われてい るのか と言 う事を発生 における時間軸 に沿 つて理
解する事を目的に以下 に示す3つ のシグナルに注目して研究 を開始 した。
第1章 はラパ マイシンを用 いてTORClシ グナルを阻害 した際 にッメガエルの初期発生
にどの ような影響与えるのか と言 う事 を解明す る研究である。 ラパマイシンを用 いて
TORClシ グナルを阻害す る事 により発生速度 の遅延、色素沈着阻害、そして、内臓形成
において奇形 を引き起 こす と言 う結果が得 られたが、形態形成 と言 う視点で この結果
を見直 してみると後期原腸胚期 を境 に して大きな変化が現れた。ま哄 ラパ マイシン処
理胚 とコン トロール胚 を比較 した時 に一番最初 に発生に対する影響を観察できるのが
発生速度の遅延である。後期原腸胚期より前の時期 においてはコン トロール胚 と処理胚
を比較 しても大きな変化 は確認 されないが、それ以降 になるとコン トロール胚 において
原腸陥入が完了する時期 になつて もラパマイシン処理 した胚では明 らかに遅れて原腸陥
入が進行 してい る事が確認 された。 さらに、その まま観察を続けてい くと色素沈着阻
害、そして内臓形成 において奇形 を引き起 こす等、次々と発生への影響を感 じ取 る事が
できたが、 これはラパ マイシンの効能がモザイク的に生 じる事 によ り組織毎の分化 のタ
イミングのずれが引き起 こした タイ ミングのずれが引 き起 こした副作用 と言 えよう。
また 、TORClシ グナル は寿命 を制御 して お り、 ラパ マ イ シ ンでTORClシ グナ ル を阻
害 す る事 に よ り寿命 が 延長 され る と言 う報 告 が 酵母 (Kaebendn et d.,2∞ 5;Powes et J。
95
,
2006D、
シ ヨ ウジ ヨ ウバ エ (Kapahi et al。 ,2004D、 線 虫 cJia et al.,2004b、 そ して マ ウス
(HaniSOn et」 .,2009pで 報 告 されて お り、 ゼ プ ラ フィ ッシ ュ(Makky et al.,2CXy7)と 線 虫
(Oldham et al.,2000)を
用 いた研究 では発生の遅れが生じる事 も報告 されてい る。 これ ら
の事 を踏まえると一見、rapmaycinを 用 いてTORClシ グナルを阻害する事で長寿 になれ
ると感 じるが必ず しもそ うとも言 えない。仮 に寿命が延びるとしても、本研究でも確認
されたように内臓形成が正常 に進まな くなる事 によ り、日常生活 において正常な消化
活動ができな くなつて しまつた り、また、 ラパマイシンが免疫抑制剤 としても知 られて
い る事か ら正常な免疫機能 を阻害 してしまう事も十分 に考えられる。つ まり、生まれて
から死ぬまでの時間 を単 に延ばす事 は可能であるかもしれないが、健康寿命 を延ばす
事現在までの段階では難 しい ように思われる。言 い換 えるれば、現段階ではラパ マイシ
ンは「不老不死の薬」ではな く「諸刃の剣」であると言える。
第2章 はCRド メイ ンを2つ 有す る新規遺伝子
"″
爾JJaレ幽螂ねレ C
raЙ れg
aο tti2_ω ″
′″″iz 2‐ ribが ッメガエルの初期発生においてどの様 な働きを有 してい るのか と言 う事
を明らか にする事を目的とした研究である。CRド メイ ンを有するタンパ ク質は自身の
分子内に存在す るCRド メイ ンを介 してBMttBMPに 結合す るタンパ ク質 に結合する事
によ りBMPシ グナルを阻害する事が知 られている。 また、Cv‐ 2と 相同性が比較的高い
CRド メイ ンを有するvWC21カ ℃v‐ 2の 発現時期 とは異なる後期原腸胚ノ
初期神経胚期から
発現 してい る事か らBMPシ グナルを介 してどのように神経形成を調節 してい るのか と言
う事 に注目した。 その結果、 ツメガエル胚 においてvWC211ま BMPシ グナルの働きを促進
す るpro― BMPの 働 き もBMPシ グナル の働 きを 阻害 す るanti― BMPの 働 き も有 して お り、後
方神経形 成 に関 わ つて い る事 が明 らか に な った 。頭 部形 成 を考 え る際 に これ まで の研 究
96
では胞胚期、あるいは初期原腸胚期 までの時期 に関す る研究報告 は数多 くなされて い
る。 しか し、原腸陥入以降 のイベ ン トにおいて どの様 なメカニズ ムによって頭部が形成
されて い るのか と言 う事 は多 くの研究者が追 い求 め、様 々な意見を出 し合ってい るとこ
ろである。 それ故、他 のCRド メイ ンを有す る分子 と比較 して異例 な遅 さである初期神
経胚期 か ら発現 し始 める〃勲
の働 きを解明す る事は新規の知見 を得 られ る可能性が
"′
高 い。特 に″
"Q′
が発現す る時期 において、 自身の分子内に存在す るCRド メイ ンを介
して どの様 な分子 と結合 して相互作用 し合 い、発生に対 して どのような影響 を及ぼすの
か と言 う事を解析す る事 に より、前方神経構造が誘導 された土台の上で どの様 に後方神
経構造の誘導 に関わつてい るのかを解明す る事ができるだろう。
第3章 では初期発生のみな らず我 々の生活 に非常 に身近 なFGFシ グナルの中で、MEK/
ERKシ グナルが有す る時期特異的な働 きを解明す る事 を目的 とした研究 である。 ツメガ
エルの初期発生 においてFGFシ グナルはMEK、 FGFR、 FGFリ ガ ン ドといった異なる分
子 を用 いてFGFシ グナル を調節す るとそれぞれ、卵割 の停止、後方化、そ して、神経化
と言 つた事な る働 きを有 して い る事が示唆 されていた。私 はそれに対 して 「FGFシ グナ
ルが時期特異的な働 きを有 して い る」 とい う仮説 を立てて(図 3‐ lo、 ツメガエルの母性
プログラムか ら胚性 プログラム に変わ る時期であるMBTと タイ ナ ミックな形態形成 を行
う原腸陥入が進行 してい る後期原腸胚期 の2つ の時期 とMAPKKで あるMEKに 注 目 して
研究を開始 した。 その結果、c昴 ″κ mRNAと
DNAの 打 ち分 けはMEK/ERKシ グナル を
MBT以 前 と直後 で活性化 させ る手法 として用 い る事が可能であると言 う事 を明 らか に
し、 それを用 いてMBT以 前 にMEK/ERKシ グナル を活性化 させ ると少な くとも44m胞 期
か ら256細 胞期 まで卵割 の停止引き起 こす こと、MBT直 後 にMEKrERKシ グナル を活性
97
化 させ ると中胚葉化を伴 う後方化が引 き起 こされると言 う事 を明らかに した。 さら
に、餡И7κ mRNAを 電気的注入法 によ り細胞 に導入する事によりMBT直 後では後方化
が引き起 こされ、後期原腸胚期では神経化が引き起 こされる事が明 らかになった。本
実験 によ リツメガエルの初期発生においてFGFシ グナルを動かす と、そのインプットの
違 いによ り最終的に現れるアウトプットが異なると言 う疑間に対 して「FGFシ グナルは
活性化 される時期 によって異な る働 きを有 してい る」 と言 う1つ の考え方を持 つて一石
を投 じる事が可能 になつた。FGFシ グナルは美容や医療 と言 つた分野で非常 に注目を集
め、応用 されてお り我々の生活 に非常 に密着 してい る。 しか し、初期発生においてどの
様 に働 いてい るのか明らかになっていない事が数多 く存在 しているにも関わら哄 日常
生活で使用 している事が現状であ り、善かれ と考えた利用であつた としても思い もよら
ない影響を被 る事になるかもしれない。 それ故、FGFシ グナルが どのようなメカニズム
で生体内で働 いてい るのか明らか にする事 は、発生生物学 に学問的な新たな知見を加
えるだけで はな く、我々の生活 を豊か にする事 にもつながるであろう。
発生生物学だ けでも数多 くの分子やシグナルが存在す る中で上述 したそれぞれ異なる
3つ のシグナルにおける結果 を見ただ けでも、MBT以 降や原腸胚以降 には明らかにそれ
以前の発生段階 とは異なつた影響を初期発生 に与えてい る事が分かる。 しか しながら、
これまでの研究では発生段階 とシグナルを順序立てて解析 した報告 は存在 していない。
現在の生物学 の流れを見てみると、lPS細 胞や培養細胞を用 いて人工的に網膜や腎臓、
そして神経等の器官誘導する事 を目的 とした応用医学や再生医学 に関連 した研究が注目
を集めてい る。 これ らの研究 は最終的 に目的の器官 を形成させる事ができる、 また、そ
の形成された器官が生体内においてしつか りと機能す るのか と言 う最終的な結果 を追 い
98
求める事 に重きを置いた研究であり、 その途 中過程 と言 うのはほとんど考慮 されな
い、 あるいは気 に留めない場合が多い。 しか し、 単純 に細胞数を増やす卵割や細胞増
殖 と言 う発生様式から多種多様な複雑 な形を有す る個体へ と分化するまでには、 それ
ぞれの発生段階において胚や細胞が適切な分子 シグナルを受ける事が必要である。本研
究では時間軸 に沿 つて発生の現象を理解す ると言 う事 を試み、 シグナルが有す る機能が
発生段階 と共 に移 り変わる様子 を明 らか に した。 これは、進化 の過程 において最小限
の分子 シグナルを用 いて多様性を獲得 しようとしてきた生物の工夫であると考 えられ
る。複雑 な形を有する個体が どの様 に形成 されるのか とい う疑間は、胚が複雑な形を有
するまで にどの様なイベ ン トを経てきたのか と言 う胚 の歴史を読み解 く事 と同意であ
る。 それ故、本研究 は発生現象を明らかにする上で、時間軸 と言 う発生の流れを考慮 に
入れて発生現象を読み解 く事の重要性を示唆 してい る。
99
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104
辮
指導教員である塩尻信義教授、黒田裕樹准教授 には本研究及 び博士論文の作製のみ
なら哄 研究者 になる為 の絶大 なるご指導 ご鞭撻 を時 には厳 しく、時 には優 しく、賜 り
ましたことを心よ り感謝 申 し上 げます
`修
士時代 に所属させていただ きました丑丸研究
室では、丑丸敬史教授をは じめ、研究室 メンバーには研究 とはどの様 に行 うべ きである
かを教育学部出身の私 に教えて くださった事を感謝申し上 げま丸 また、名古屋大学の
竹島一仁教授 には電気的注入法 の技術 を教えていただき、共同研究 を快諾 していただ
き、本研究がよ り深まりましたこと感謝申し上 げま丸 同期の原佑介氏 は小学生の事か
ら、祢次金進氏 は学部時代 から、そ して、守翔子氏 とは修士課程 よ り友人 として、時 に
はよきライバル として切磋琢磨 してこれまで研究できた事 を誇 りに、そ して、嬉 しく思
いま丸 さらに、た くさんの後輩 と共 に研究 を進めることができ大変幸せで、 その中で
も大畑佳久君 には厳 しい事 をた くさん言 いましたが、一緒 に研究できてよかつた と思
いま丸 学部時代を含 めまして、静岡大学では9年 間、研究生活 は7年 間 と長 い間お世話
にな りましたが、静岡大学から、 そして、大学 を支えて くださっています静岡県民の皆
様からのサポー トなしには研究生活 を成 し遂げる事 はできませんで した。生まれ故郷 で
もあり、心の故郷でもある静岡に感謝 しま現 そして、2012、 2013年 度 と研究生活 をサ
ポー トして くださる(財 )日 本学術振興会 に も感謝申し上げま丸
本研究 と、本論文の執筆 は父・ 森山和広氏 と母・森山香美氏の命を削ってで も与えて
くださった惜 しみない愛情 とサポー トがあって初 めて可能 になった ものでありますじ最
後 に、私が誇 りに思 うすばらしい両親 に心か らの感謝を述べ させていただきまして本論
文を完結させていただきま現
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