公益社団法人 浜北青年会議所 2016年度 第39期 理事長所信 理事長 野末 智世 『はじめに』 1978年3月『青年は明日の日本の繁栄を担うべく、正大なる責任と使命感を自覚しなけれ ばならない』設立趣意書に盛り込まれたこの崇高な志のもと、森島初代理事長をはじめとする青 年により誕生した公益社団法人浜北青年会議所は39年にわたり『明るい豊かな社会』の実現に 向けて様々な運動を展開してまいりました。伸びゆくふるさと浜北の未来をより確かなものとす るためには、これまでの成果やまちづくりの考え方を継承しながら、さらに磨きをかけて発展さ せていかなければなりません。また、わが国は、今、本格的な人口減少社会の到来と少子高齢化 の進行や経済・情報のグローバル化など大きな社会環境の変化に直面しております。このような 見通しのつきにくい時代にあっては、未来を自らの手で責任を持って切り拓いていかなければな りません。 『明るい豊かな社会』を目指す我々浜北JCが取り組むべき課題は多く残っています。 だからこそ私たちメンバー一人ひとりが、本来日本人に備わる『思いやり』 『感謝』を持って、 時代に適した運動を展開していかなければなりません。浜北JCには現実に向き合いながら、こ のまちの未来を語り行動することができる逞しいメンバーが揃っています。公益社団法人浜北青 年理事長として2016年度のJC運動・活動の先駆に立ち33名の素晴らしいメンバーと共に この浜北のために活動し、個として誇りと自覚を持ち邁進してまいります。 『好奇心と想像力溢れる未来に』 日本の教育が大きな転機を迎えています。2008年に学習指導要領が改訂されたのを機にい わゆる「ゆとり教育」に終止符が打たれました。文部科学省では語学力や討論力に力を入れる「ス ーパーグローバルハイスクール」を指定・支援する計画が進み、大学では秋入学や4学期制の導 入が検討されるなどより時代に即した教育システムを作る試みが国、学校、家庭、さらには企業 を巻き込んで進められています。教育の現場を見学したことがある人なら誰しも、子供はみな無 限の想像力と好奇心、そして創造性を持ってそのドアを開くことを知っています。だが、思いの ほかそのドアが閉められるのは早く、好奇心と創造性がさまざまな形で阻まれ、締め出されます。 そう、彼らは奥の深い質問をするよりも早く「正解」を知ることのほうがずっと重要だと学んで しまうのです。しかしながら彼らが手に入れるその「正解」は、これから続く人生という名の消 耗戦のマストアイテムではないということを誰に教えられるわけでもなく、いつしか理解してい きます。従って、子どもたちは教育の現場では学ぶことができない好奇心の欲求をITという仮 想空間で満たしていくのです。 このように現在の6~18歳は、教室にいる時間よりも電子機器を使う時間のほうが長く、教 育の現場より説得力のあると考える子どもが多いことでしょう。もちろん、このテクノロジーを 子どもが利用することについて課題も多く、すでに間違った使い方や過度の依存が社会的な問題 -2- となっており、そうして成人を迎えた子どもの多くが昔ながらの権威と組織に懐古的になり、そ れを経た現実は、遠い海の向こうで起きた惨状を見れば明らかです。 しかしながら、果たしてこれは問題だけを注視すべきでしょうか。私は考えます。これらの子 どもの多くはこのインターネットを駆使し、幅広い社会問題に対して高い意識と関心を持ってい るのではないでしょうか。このテクノロジーを使いこなして自分で学習し、自己表現し、さらに はネットワークを作ることができることを彼らは知っており、そして世界のどこかに自分の「印」 を付けたいと切望しています。もちろん彼らの多くは過度に野心的であり世間知らずかもしれま せん。だが、彼らの未来は白紙のページで可能性は無限大です。けれども私たち大人が、その白 紙のページに最初から自信を記せ、夢を書き込めというのも無責任なことではありませんか。私 たちも今までの常識に収まらない彼らを育て、教え、指導するのかを思案するのみでなく、私た ち自身も彼らから学ぶ方法を知らなければなりません。 私たち多くの大人が彼らの考えに歩み寄り、彼らの自己の発想や工夫を、積極的に社会への貢 献や理想とする社会の実現に生かそうとする意欲、つまりは好奇心と想像力を育てること。それ が、このまちの未来を担う子どもたちが成長していく道のりの第1歩ではないでしょうか。人は 新しい可能性を探り、実験し、想像する欲求、つまりイノベーションを起こす内的欲求を持って 生まれるといいます。常識では知識と想像力、科学と空想は非常に異なり、正反対とも考えられ ています。果たしてその常識は通用するでしょうか。子供が世界を学ぶ能力は、世界を変え、ま ったく存在しないかもしれない世界を想像することまで可能にするのかもしれません。彼らの好 奇心と想像力から生まれた創造性は必ず、彼らの未来に意味と方向性を与えてくれると信じてい ます。 『愛する故郷の明日へ』 「対立が偉大なプロジェクトを作る」 アップルの初代iPhoneの開発に参加したカー ク・フェルプスの言葉です。『対立』はネガティブなものではなく、よりレベルの高いものを生 み出すために必要不可欠のステップであり、対立を取り除いてしまうと偉大なプロダクトはでき ないままであったといいます。このアプローチは、ものつくり以外でも有効ではないでしょうか。 日本青年会議所創立以来の個人の修練、社会への奉仕、世界との友情の三信条は、年を追って 具現化され、青年会議所運動とは要するに指導力開発と社会開発であるとの事業スローガンに固 まってきました。われわれ浜北JCも市民社会の一員として市民と共通の生活基盤に立ったもの の考え方見方を出発点とし、市民の共感を求め、住みよい明るい豊かなまちづくりに向かって努 力するとともに、青年会議所の日常活動の場を通じ、われわれ個人をよりよく開発することが青 年会議所運動にほかならないと考えます。青年会議所運動は自由な自発的な意志より加入した会 員の起こす運動であるからには、私たちの住む浜北の運動、市民運動の中心でなければなりませ んし、市民にその意志を認められなければなりません。 これまで浜北JCも様々な団体と共に市民協働に取り組み、この街の明日を想い、その在り方 を追及していきました。今後も今まで培ったネットワークを駆使して鍛錬を続けることが重要だ -3- と考えます。失敗は許されないと考えがちです。しかし、うまくいっても、もっといい方法があ るかもしれないと問題意識を持ち続けること、あるいは新たな変化を見落とさないように目を凝 らし続けることも、伝統を守るのと同じぐらい重要です。社会は生きていて、世の中は常に動い ています。ゆえに我々もベストを探求し続けなければなりません。その志で地域の主体者を巻き 込み、人、企業、行政、NPOなど様々なつながりをこれまで以上に強固なものにしていきます。 『支援から友情へ』 東北の地で起きた震災から5年が経とうとしています。しかし、自分ではあの大災害とその結 果がまだ整理できていないのが現実です。これは政治的にも経済的にも社会的にも、それから文 化的にも、まだ「本当の影響と結果」が見えてないことが多いのではないでしょうか。震災のあ と多くの人が「日本は変わらなくてはならない」と語り、中には「文明的な大転換期」という人 もいました。 あの時、すべてを失った日本が得たものはなんだったのでしょう。個人に置き換えれば、それ まで富に心を奪われた我々が本当の意味での「希望」という言葉と対峙したスタートラインだっ たのかもしれません。あの日まで駆け抜けていた者はあの日を境に立ち止まり、地に膝をついて いた者はゆっくりと歩みだしたのかもしれない。「希望」や「明日」、そして「未来」という言 葉は、過ぎ行く日常に発せられる単なる言葉でなく、また震災の現実は、遠い未来や遠い国の出 来事でなく、「今そこにある危機」、「誰にでも起こりうる瞬間」として自覚されたのかもしれ ません。波打ち際に立つ人いれば、寄せては返す波を見つめる思いはそれぞれでしょう。 われわれ浜北JCは、これまで幾度と現地に赴き、災害ボランティアとして活動してきました。 その支援から生まれた出会いは、いつしか友情へと変わり、遠く離れ住む街は違っても、互いを 想う気持ちに変わりはありません。日常のふとした時に、時には思いもつかぬ場所で彼らを想う 時があります。そんなとき、いつも浮かぶのは彼らの屈託のない笑顔であり、悲しみを乗り越え て歩んでいる姿だったりします。遠く離れた人を想い、その人が住む街に想いを寄せれば、耳に 残るのは眼前に広がる美しい海の波の音であったりします。更なる友情を育むためにも、今年度 もわれわれは、東北の地へ赴きます。 『来るべき未来へ』 われわれ青年会議所は20歳から40歳までの団体です。今年度は創立より39期を迎え、来 るべき40周年に向けて大きな転換期を迎えています。われわれ青年会議所は、「明るい豊かな 社会の創造」を標榜し、市民運動の先駆者を自負し邁進してまいりました。しかしながら 対外 発信力を強化し社会における存在価値を高め、社会的認知度を向上させる必要があります。青年 会議所が何を行う団体なのか、それに対する社会的合意がなければ、残念ながら社会は変えられ ることはできません。まずはわれわれが発信する情報を自分ごととして認知してもらうための仕 掛けを起こさなければなりません。 -4- また地域の再興が叫ばれている現在、この局面を打開するための必要な発想、地域資源やアイ デアの組み合わせなどを論ずることのみにおわるのでなく、自ら力強い『行動』を起こし、また 公共の担い手として、民主主義へのプロセス参画、経済活動及び環境の整備等の可能性を探るこ とも重要です。浜北には今後も開拓の余地があります。つまり社会的課題を解決していく「ソー シャル・フロンティア」の場が溢れているのです。「フロンティア」とは最先端です。浜北の未 来がどのように現れるのだろうと多くの人の好奇心をくすぐり、同時に野心に訴えかけることが 重要です。 われわれはこの地で生まれ、そして育ち青年となりました。手段や移動手段が進化し、時間的 にも空間的にも距離が縮まり、一つの事柄が瞬く間に他者に影響を及ぼすこの時代だからこそ、 人びととの確実なつながりの中での関心や共感の範囲を更に拡大させ、やるべきことを学び共有 し、行動へ移していきましょう。 『最高の仲間と共に』 40歳というタイムリミットのあるJC活動では、新しい会員を増やし続けなければ、組織は 消滅してしまいます。浜北JCに於いて会員の減少は大きな悩みです。これだけ魅力的な組織で ありながら、なぜ会員が増やせないのか。それは、ひとつに経験値不足からくる不安、そして素 晴らしい友が傍にいるというのに個々のコミュニケーション能力の不足が大きな要因ではない でしょうか。 しかし、メンバーが増えることによって、組織としての価値観は多様化し、得意とする分野も 増えていくでしょう。多様な価値観の中で議論を重ねることは、自らの価値観を確立することに 繋がり、そして同時に価値観が違う者同士の中で共存していく方法を学び、まちづくりや会社経 営に反映することができます。このように、成長できる可能性のドアをJCは沢山用意してくれ ています。自ら修練のドアをノックし、自己研鑽に励んでいきましょう。修練の道は長く険しく とりわけ困難です。なによりも難しいこと、そしてなによりも重要なことは自分と自らのビジョ ンを信じることです。特に失敗したときは自分を信じるのは難しいでしょう。しかし、自分がや ろうとしていることが正しいという内なる確信がなければ、根気を維持することができません。 なかには君の自信を傲慢だと勘違いする人がいるかもしれません。そして君は間違っているとし ょっちゅう言うかもしれない。けれどもわれわれは、その価値観のぶつかり合いの中でも謙虚で あろうと努力しなければなりません。 著名な経済学者がかつてこう記しています。「凍った環境を動かすには、相手の旋律で歌わな ければならない。」われわれも周りの旋律に耳を済ませよう。独善的ではなく、情熱的であろう。 自分の創造力を信じると同時に疑うという行為も自らに課さなければなりません。それは自己を 見つめる力、内省力となり優れた判断力を育む助けにもなるでしょう。来るべき未来への不安を 志へと昇華させ、抱いた志をうねらせ、未来を切り拓け。自身が変化の先鞭とならなくてはなら ない。 -5- ≪基本理念≫ 「心」ある街、未来の創造 ≪基本方針≫ イノベーションを起こす青少年の育成 市民主体の成熟した社会へのアプローチ 震災支援、そして永久なる交流へ 来るべき未来へ更なる飛躍 己の声を胸に刻み、仲間と共に歩む ≪スローガン≫ 心の声を明日へつなげ! いま 高なる予感を胸に -6-
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