『秦野サイクルシティ 秦野サイクルシティ構想 サイクルシティ構想』 構想』 【目 次】 Ⅰ.提言 Ⅱ.提言概要 Ⅲ.『秦野サイクルシティ構想』策定に至る背景 Ⅳ.⾃転⾞の特性と現状 1.「⾃転⾞の定義」 2.「⾃転⾞の持つ特性(メリット、デメリット)」 3.「秦野市における⾃転⾞利⽤の実態」 4.「⻘年会議所⾃転⾞利⽤アンケートについて」 Ⅴ.提言の具体的内容 「秦野サイクルシティ構想4本柱からの提言」 1.「安全・安心」な⾃転⾞活⽤ 2.「快適」な⾃転⾞活⽤ 3.「楽しい」⾃転⾞活⽤ 4.「健康でエコ」な⾃転⾞活⽤ Ⅵ.⾃転⾞のまち秦野へ・・・ -1- Ⅰ.提 言 我々、公益社団法⼈秦野⻘年会議所は明るい豊かな社会の創造を目的 として、50 年間に渡り、秦野という地域に根付いた様々なまちづくり運動を展 開してまいりました。2013 年、秦野⻘年会議所が創⽴ 50 周年を迎える節 目の年に改めてこの時代背景を踏まえつつ、秦野という地域が誰もが暮らしや すい魅⼒あるまちとして発展し続けていくために以下のような提言を発信いたし ます。 提 言 『秦野サイクルシティ構想』 ⼈や環境にやさしい⾃転⾞を愛するまちを創造し、 明るい豊かな社会の実現を目指す 1.「安全・安心」な⾃転⾞活⽤ 2.「快適」な⾃転⾞活⽤ 3.「楽しい」⾃転⾞活⽤ 4.「健康でエコ」な⾃転⾞活⽤ ⾃転⾞が「安全・安心」、「快適」、「楽しく」、「健康でエコ」に利⽤できるまちづくりを 実践することで、秦野というまち全体が明るい豊かな社会の醸成につながる -2- Ⅱ.提言概要 提言の基本方針 ⾃転⾞の有⽤性を利⽤し、⾃転⾞が「安全・安心」に「快適」に「楽しく」、「健康でエコ」に利⽤できるまちづくりを実践することで、秦 野というまち全体が明るい豊かな社会の醸成につながるという認識 「安全・安心」な⾃転⾞活⽤ 「快適」な⾃転⾞活⽤ 「楽しい」⾃転⾞活⽤ 「健康でエコ」な⾃転⾞活⽤ ・交通ルールの認知度向上 ・⾛⾏空間の整備 ・スポーツサイクルのメッカとし ・利⽤制限の少ない⾃転⾞ ⾃動⾞、⾃転⾞、歩⾏者の てのヤビツ峠のネームバリュ の活⽤は健康促進に最適 通⾏区分を明確にするイン ーを有効活⽤ 道路交通法遵守の醸成 ・互いを思いやる心の醸成 フラ整備 ・動⼒を⽤いない⾃転⾞は ⾃動⾞、⾃転⾞、歩⾏者それ ・観光との連携、地域資源の ぞれが互いを思いやる心の醸成 ・盆地の弱点の解消 ・災害発生時の有⽤性 活⽤ 常に効果的 「坂道」による利⽤者減の解 ヤビツ峠にとどまらせない工 消 夫、地形の利⽤ 地域観光資源の活⽤ 災害発生時における移動⼿段 環境貢献の目線からも非 ・企業連携による⾃転⾞利 ⽤の推進 ・公共交通機関との連携 としての有⽤性の認識向上 ⾃転⾞ラックバス、コミュニテ ィサイクルなどの運⽤検証 提言の前提条件 提言の基本スタンス ⻘年会議所における運動の歴史や地域ビジョンに加え、秦野市の現状な 本提言はあくまでも⾃転⾞活⽤によるまちづくり施策とし どを勘案した上での提言書作成。しかし、その実践には官⺠⼀体で実現 ての運⽤が目的である。実際、秦野市は、今後も物流 に向けての相互協⼒が必要。 の起点として交通量の増加が考えられる。本提言は、 決して既存の交通網や⾃動⾞利⽤を制限したりするも のではなく先記のような事柄に関しても、まち全体が環 提言の将来性 境貢献を⾏っている実績を保持することで、新たなる制 「安全・安心」に「快適」に「楽しく」「健康でエコ」に⾃転⾞を利⽤できる 約を回避する⼿段としての活⽤も⾒込める。 まちの実現はすなわち「安全・安心」に「快適」に「楽しく」、「健康でエコ」 に暮らせるまちを実現する事である。 提言の今後の進め方 ① ⻘年会議所主催の各種事業の開催による提言の周知 ② 企業体、住⺠、⾏政、来訪者、年齢層といった区分を問わない情報の収集と共有 3.提言 秦野サイクルシティ構想策定にあたって 秦野サイクルシティ構想策定にあたって ③ 有識者会議等の設⽴、実現性の検証 ④ 具体的な実現へ向けての実施組織の設⽴ 主体組織の転換 ⑤ モデルケースの運⽤ -3- Ⅲ.『秦野サイクルシティ構想』策定に至る背景 【明るい豊かな社会を目指して】 1963 年秦野⻘年会議所は誕生いたしました。“明るい豊かな社会”の実現とは⻘年会 議所が設⽴当初から掲げる理想であり、我々秦野⻘年会議所も創⽴以来、時代背景に 沿った様々な運動を通じてこの秦野の地において“明るい豊かな社会”の実現を目指してま いりました。 【運動の原点】 平塚⻘年会議所のスポンサーにより、秦野⻘年会議所の設⽴を目指した 21 名の若者 がはじめに取り組んだ課題は「交通安全」でした。⾼度経済成⻑期の真只中、戦後の荒廃 より⽴ち直り物質的な豊かさを⼿に⼊れつつあり、⼀⾯では爆発的なモータリゼーション(⾞ 社会化)が発達し、それと⽐例するように交通事故が増え続けた時代でありました。地域 の子どもたちを取り巻く交通環境が社会問題化する中、交通安全シールを作成、配布し、 地域の子ども達を交通事故から守る運動を展開いたしました。世の中すべてが利便性を追 求している時代において、そこに暮らす⼈々が「安全・安心」に「快適」な暮らしを営めるまち こそが“明るい豊かな社会”と位置づけたのです。 【⾼い環境意識】 1972 年「⿃も住めるまちへ」の合言葉をもとに“バードシティサークル構想”を⻘年会議所 だけでの運動展開ではなく、多くの市⺠を活動に招き⼊れて提唱いたしました。さらに、水無 川の水質汚染を独⾃に調査し公開、発表したスライド「川は泣いている」は環境破壊を社 会問題としていち早く取り上げたものであり、秦野⻘年会議所の持つ⾼い環境意識が具現 化されたものといえます。改めて環境問題がクローズアップされている昨今、こういった土壌を 持ち、意識醸成が⾏われてきた秦野⻘年会議所であるからこそ今⼀度エコ・環境の側⾯か ら“明るい豊かな社会”を考えることができると信じています。 【秦野⻘年会議所 地域ビジョン】 「水と緑」は秦野の魅⼒を語る上で外すことのできないキーワードであると考えています。 2000 年には秦野⻘年会議所の運動指針として地域ビジョン「みどり燃ゆる水清らかな心 のまち秦野」を掲げました。 秦野⻘年会議所は地域ビジョン策定以来様々なまちづくり事業を展開し、その中で「秦 野湧水マップ」(秦野駅南⼝)、「秦野市観光案内図」(渋沢駅南⼝)を作成、建⽴し、 秦野市における水と緑の名所などを紹介しております。また、地域資源の活⽤法を探り、秦 野市内の様々な市⺠団体との協働による事業展開を⾏ってまいりました。それら活動を通 じ、水と緑と地域資源を結び“明るい豊かな社会”を実現するツールとして「⾃転⾞」が浮か び上がってきたのです。 -4- 【地域資源の活⽤】 秦野には様々な地域資源があります。中でも近年注目されているのがスポーツサイクルの メッカとしての存在感であり、ヤビツ峠はスポーツサイクル愛好家の聖地のような存在となって います。⼀⽅、秦野に集まるスポーツサイクル愛好家の乗⾞マナーなどが社会問題化しつつ あります。また、市内を横断する国道 246 号線名古⽊交差点を起点に北上していく経路 がヤビツ峠ヒルクライムの主体となっており、言い換えると「秦野に来訪する」というよりも「ヤビ ツ峠に来訪する」というアクションが主体であり、来訪者は増加すれども秦野全体で地域資 源を有効活⽤し、観光に活かされているとは言い難い状況となっています。 しかし、スポーツサイクル愛好家の来訪者数は増加傾向にある中でこれを社会悪ととらえ ることなく、受け⼊れることで様々な効果も⾒込めます。例えば、秦野市内には丹沢⼭系、 湧水郡、鶴巻温泉、震生湖、各地寺社仏閣など⼭の⼿と下町に地域資源が点在し、そこ に来訪者が周遊できる働きかけを⾏うことで観光産業としての経済効果が⾒込まれると同 時に近隣商業施設に働きかけ、駐輪スペースの整備を⾏うことでさらなる利⽤増なども⾒込 めるのではないでしょうか。 【災害時における⾃転⾞の有⽤性】 2011 年 3 月 11 ⽇、未曽有の⼤災害が⽇本列島を襲いました。「東⽇本⼤震災」です。 その際に秦野⻘年会議所は秦野市内の⻘年団体(秦野商工会議所⻘年部、秦野工 業協同組合ジュニア会)と協⼒し、保管されていた放置⾃転⾞ 150 台余りを整備し、被 災地へ寄贈いたしました。発災間もない被災地は、道路という道路いたるところが起伏しア スファルトは崩落し非常に危険な状態でありました。⼀⾒安全そうな道路でも、地中に埋設 されているガス管や電気、水道管の破裂など、危険性の⾼いところへは⾃動⾞の侵⼊を禁 止している地域が多く残っておりました。そのような被災地における交通⼿段で最も重宝され るのが⾃転⾞なのです。ではなぜ秦野⻘年会議所は発災から 2 週間余りという早いタイミン グで⾃転⾞の寄付を実現できたのか。それには 1995 年の阪神淡路⼤震災における⽀援 経験からなるものでした。寄贈した⾃転⾞は被災地において避難施設を巡回する交通⼿ 段として、ライフラインの破損の点検の巡回などに⼤きく役⽴てられたとの報告を両件から頂 戴しており、コミュニティサイクルなどの運⽤が災害発生時に緊急の交通⼿段としての整備に もつながるということを事実が裏付けております。 -5- 【結びに】 秦野市は全国 3 番目の速さで公共水道が整備されたことを筆頭に、各種インフラ整備が 充実しているまちであります。特に⾼度経済成⻑期から現在にわたり整備された交通網の 中でも、鉄道としては市内に急⾏列⾞の停⾞駅が 4 駅ありそのうち 1 駅には特急列⾞も停 ⾞します。また、⾃動⾞利⽤においても⽇本の⼤動脈である東名⾼速道路の秦野中井イ ンターチェンジが玄関⼝としてあり、さらには、国道 246 号線のバイパス化、新東名⾼速道 路の整備開通が眼前に控えていることなど、非常に利便性の⾼いまちであるといえ、都心部 から 60 分程度で訪れることのできるアクセスの良い環境にあります。そのような環境に位置し ながら、豊富な水と緑を満喫できるまちであり、⾥地⾥⼭が常に⾝近に感じることのできるま ちであります。この「住みやすい環境」であり、いい意味での「田舎」である今の秦野の姿を未 来へと残していきたいという思いが本構想の策定の原点であります。そして、今まちが抱える 問題として、決して経済の成⻑や商工業の発展を咎めるつもりではなく、⾃動⾞の排除や 利⽤者減を狙った構想ではありません。この秦野というまちにおいて我々秦野⻘年会議所 はあえて「⾃転⾞」というツールを活⽤することが、今の良い環境を未来へ残すための指標と なり、“明るい豊かな社会”を創造し、“みどり燃ゆる水清らかな心のまち”を実現させるもので あると信じて、「秦野サイクルシティ構想」の⽴案に⾄りました。 -6- Ⅳ.⾃転⾞の特性と現状 1.「⾃転⾞の定義」 ⾃転⾞は、道路交通法では「軽⾞両」の⼀種であり、⾃動⾞同様に、⾞両の⼀部として 規定されている。そのため、本来通常は歩道ではなく、⾞道を⾛らなければいけない(標識 などで⾃転⾞の通⾏ができる歩道は、通⾏帯も⾛⾏可能)。ただし⾃転⾞から降りて、押 しながら歩⾏する場合は歩⾏者と⾒なされる。 ⾞両 ⾃動⾞ 原動機付⾃転⾞ ⾃転⾞ 軽⾞両 荷⾞ ⼈⼒⾞・⾺⾞等 トロリーバス 図 4-1-1 -7- 2.「⾃転⾞の持つ特性(メリット・デメリット)」 ⾃転⾞は近年、経済性に優れ健康的で、環境にやさしく、交通環境の適正化に寄与す るなど、まちづくりに貢献する多様なメリットがあります。⼀⽅で、⾃転⾞利⽤者の安全性の 問題や交通ルール・マナーの問題、⾃転⾞が関わる事故や、放置⾃転⾞問題などのデメリ ットがあります。 ◎健康に良い 利 ⽤ 者 の 視 点 ま ち と 住 ⺠ の 視 点 メリット デメリット ◎天候や勾配に左右される 体を動かし、適度に良い運動になる。 雨、雪、気温などの気象、勾配条件により、乗りにくく なる。 ◎経済的である ◎交通弱者になりやすい ⽐較的購⼊費が安く、燃料等が不要であまりお⾦が 対⾃動⾞において、交通事故の被害者になる場合 が多い。 掛からない。 ◎気軽に利⽤しやすい ◎交通加害者になりやすい 近距離の移動に適しており、⼿軽に目的地まで⾏け ⾃転⾞利⽤のマナー・ルールを守らずに歩⾏者との る。また、公共交通機関と違い時間の制約が無い。 接触など、交通事故の加害者になる場合がある。 ◎⾃然を感じられる ◎盗難に遭いやすい 全⾝で風を受けながら、⾃然を感じ心地よく⾛れる。 持ち運びが可能で、簡易な鍵が多い為、盗難に遭う 場合が多い。 ◎環境にやさしい ◎交通事故の増加 排気ガスを出さず、エネルギー資源を使わないため、 ⾛る場所が曖昧で、⾞道上での⾃動⾞と⾃転⾞、 環境負荷の低減が期待される。 歩⾏者と⾃転⾞の事故が多発している。 ◎交通渋滞の緩和 ◎景観の悪化 ⾞からの転換が進むことで、交通渋滞の緩和が期待 違法駐輪により、まちの景観の悪化要因となってい される。 る。 ◎まちの活⼒の創出 ◎コストの増⼤ 気軽に利⽤できることから、まちに気軽に訪れやすく、 放置⾃転⾞の撤去や破棄費⽤がかさみ、⾏政コス まちの活性化が期待される。 トが増⼤している。 -8- ●メリット① ⾃転⾞は⽇常の中で健康づくりができる︕ ⾃転⾞は、移動⼿段でありながら、適度な運動になる乗り物です。⽇常生活の中で利 ⽤することで、⾃然に健康づくりをすることができます。 ■活動内容別の 100kcal のエネルギーを消費する時間 階段を下りる 32 ボーリング 32 普通の歩き(67m/分) 32 早歩き(95~100m/分程度) 24 自転車(ゆっくり、16km/時未満) 24 バドミントン 21 野球またはソフトボール 19 スイミング 16 エアロビクス 14 ジョギング 14 テニス 14 サイクリング(約20km/時) 13 階段を上がる 13 ランニング(161m/分) 10 0 5 10 15 20 25 30 100kcalのエネルギー消費時間(分) 健康づくりのための運動指針 (厚生労働省より) 図 4-2-1 ⽇常生活の中で、⾃転⾞に乗ること(ゆっくり、16 ㎞/時未満)においても、その消費カ ロリーはウォーキングに匹敵し、スポーツをした場合と同等の効果を得ることができ、本格的な サイクリング(約 20 ㎞/時)では、スイミング、エアロビクス、ジョギングよりも効果的にカロリー を消費することができます。 また、イギリスの公的機関が公表した資料によると、⾃転⾞通勤をしていない⼈は、してい る⼈に対して、死亡率が39%⾼いことを医学的に⽴証しています。現在、⽇本⼈の約 65%が運動不⾜と言われています。スポーツをすることに対しハードルが⾼いと感じる⼈が多 いことも原因の⼀つだと思われますが、⽇常的に⾃転⾞に乗ることで、運動不⾜の解消に 役に⽴つと思われます。 -9- 35 ●メリット② ⾃転⾞は経済性に優れている︕ ⾃転⾞はどれだけ利⽤しても、維持費が余り掛からない経済的な乗り物です。例えば、 毎⽇クルマを 10km 利⽤した場合、1 年間の燃料費は 4 万円以上掛かります。その他に も保険料や税⾦、⾞検代などで、クルマの維持費は年間で 12 万円以上となります。⾃転 ⾞を利⽤すれば、それらの維持費は掛かりません。 従って、⽼若男⼥を問わず、誰もが気軽に⾃転⾞を所有し、⽇常生活に取り⼊れること が容易と考えます。 ■クルマと⾃転⾞の年間維持費 クルマ 自転車 ガソリン代 43,800円 ― 自動車税 39,500円 ― 車検費用 41,290円 ― 124,590円 0円 合計 ※想定条件は、毎⽇平均 10km 利⽤、⾞両は排気量 2,000cc、燃料 10km/㍑、ガソリン単価 120 円/㍑ ※⾞検費は 1 回 82,580 円(⾃動⾞重量税、⾃賠責保険及び検査⼿数料)、2 年に 1 回のため 1/2 を計上 図 4-2-2 さらに、重要なことは、前記の通り⾃転⾞に乗ることにより運動不⾜が解消され、生活習 慣病などの解消により、医療費、交通費などの間接的な費⽤の削減が期待されます。 - 10 - ●メリット③ ⾃転⾞は移動距離が短ければ、クルマよりも早い︕ ⾃転⾞は、目的地まで 500m から 5km 程度の距離では、クルマやその他のどの交通⼿ 段よりも所要時間が短いとされています。この 500m から 5km 程度の距離帯で、所要時 間が最も短いとされているのは、⽇本だけではなく、EU やオーストラリアの⾃転⾞政策や計 画などにも記述され、世界的な標準とされています。 ■交通⼿段別の移動距離と所要時間の関係 図 4-2-3 この所要時間が短いという中には、渋滞に巻き込まれることなく⾛⾏できるため、渋滞時 間をカットできることや、目的地での駐⾞場探しの時間を節約できることも含まれます。 - 11 - ●メリット④ ⾃転⾞は環境にやさしい︕ ⾃転⾞は、CO²(二酸化炭素)をはじめとする排気ガスが出ない乗り物です。例えば、クル マを利⽤して、1 ⼈を 1km 運ぶ場合、約 190g の CO²が排出されますが、⾃転⾞では排 出されません。 ■交通⼿段別の二酸化炭素の排出量の⽐較 自家用乗用車 188 自家用乗用車 188 自家用軽乗用車 152 自家用軽乗用車 152 営業用乗合バス 94 営業用乗合バス 国内航空 94 111 国内航空鉄道 17 鉄道 地下鉄 1716 路面電車 地下鉄 36 16 新交通システム 2736 路面電車 自転車 111 0 新交通システム 27 00 自転車 0 20 20 40 40 60 60 80 80 100 100 120 140 160 120 140 160 180 180 200 200 ※平成 12 年度での試算値(国土交通省資料より) 図 4-2-4 - 12 - ★デメリット ⾃転⾞利⽤に付随する問題点 ⾃転⾞のマイナスの特徴 1)雨などの天候、坂道などの地形等の⾃然的要因 2)多くの荷物などを運べないことの物理的な要因 3)⾃転⾞⾛⾏空間のなさ、⾃転⾞駐⾞空間のなさ等のインフラ的要因 4)⾃転⾞の盗難 5)簡易な交通⼿段であることからルールやマナー違反を起しやすい、また起こしても⼤きく 咎められないという構造的要因 ⾃転⾞は前述に上げたメリット①〜④などのように、⼀般的にはプラスの要素を多く有す る優れた交通⼿段であるとともに、⾃転⾞利⽤に対するデメリットは、⼤きく分けて、雨や気 温などの気象、勾配などの⾃然環境、買い物の量の制限などの⾃転⾞が持つマイナスな特 徴と、ルールやマナーといった安全性の問題、放置問題など⾃転⾞利⽤に伴う弊害の、二 つの観点からの利⽤促進が難しいとする要因が考えられます。 - 13 - 3.「秦野市における⾃転⾞利⽤の実態」 ①秦野市の地形の特性 秦野市は丹沢⼭塊と渋沢丘陵に挟まれた盆地であり、南北⽅向に⼤きく勾配差がありま す。市街地は、⽐較的勾配が少ないですが、⼭間部にかけては勾配が急な地域があるとい う地域特性を有しております。その為、⾃転⾞利⽤者にとっては⼭間部と市街地の往復は 困難なものと思われます。 図 4-3-1 - 14 - ②⾃転⾞交通事故の年別推移 秦野市の⾃転⾞事故については平成 18 年をピークに減少、増加を繰り返しております が、全体的には減少傾向となっています。 しかし、⾃転⾞事故は軽度の接触や事故については警察に届け出ていないケースも多く あると考えられ、単に事故数が減少したとも言えないかと思われる。しかし、ここ数年の市内 の道路整備、拡張により、事故発生数が少なくなったことも減少の要因になったかと思われ ます。 自転車交通事故年別推移( 10年間) 年 年 平 成 24 年 平 成 23 平 成 22 年 年 平 成 21 平 成 20 年 年 平 成 19 年 平 成 18 平 成 17 平 成 16 平 成 15 年 年 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 図 4-3-2 ⾃転⾞交通事故年別推移 ※ 秦野警察署資料より - 15 - ③市内の⾃転⾞事故発生状況 市内の⾃転⾞事故の発生状況については、⾃転⾞対⾞の事故が⼤半とな っており、そのうち出会い頭と右左折時の巻き込み事故が約 9 割を占めていま す。 事故類型別 H24 年 対車事故 80 件 対人事故 6件 合 計 86 件 自転車 対 車の事故件数( H 2 4 ) 出会い頭 右折時 左折時 正面衝突 追突 その他 0 5 10 15 20 25 30 その他 追突 正面衝突 左折時 右折時 出会い頭 17 1 7 10 18 27 系列1 自転車 対 人の事故件数(H 2 4) 車両単独 人対車両その他 背面通行中 対面通行中 0 系列1 1 2 3 4 5 対面通行中 背面通行中 人対車両その他 車両単独 0 2 1 3 図 4-3-3 ⾃転⾞事故類型別 ※秦野警察署資料より - 16 - ④年代別にみた⾃転⾞事故件数 年代別にみた事故件数は、その他(会社員、主婦等)が全体の約 4 割程度占めている。 また、小学生、⾼齢者の事故件数が 3 割程度を占めている。 年代別事故件数(H2 4) 幼・園児, 0 小学生, 12 中学生, 9 その他, 35 高校生, 9 幼・園児 小学生 中学生 高校生 大学生 高齢者 その他 大学生, 8 高齢者, 13 図 4-3-4 ⾃転⾞事故年代別 ※秦野警察署資料より 今後、平成 32 年の新東名⾼速道路の秦野インターチェンジ開通をきっかけに、今後さら に企業誘致を計画している秦野市は市内を⾛る⾃動⾞の数も増加すると思われます。国 道 246 号線や県道 42 号(秦野平塚道路)などの幹線道路が⾛り、また市内に多くの 教育施設を持つ秦野市として市⺠の⾃転⾞ルールの周知やマナーの向上は必要不可⽋ であると考えます。 - 17 - 4.「⻘年会議所⾃転⾞利⽤アンケートについて」 ◆秦野市内における⾃転⾞利⽤に関する実態と意識 秦野市⺠を対象に、平成 25 年 8 月 20 ⽇(火)〜9 月 28⽇(土)にアンケート調査 を⾏い、⾃転⾞の利⽤実態とニーズ等を把握しました。 「⾃転⾞利⽤に関するアンケート調査」の概要 1.≪調査⽅法≫ 調査期間 ︓ 平成 25 年 8 月 20 ⽇(火)〜9 月 30 ⽇(月) 調査⼈数 ︓ 1,342 ⼈ 調査対象 ︓ 秦野市内で⾃転⾞を利⽤している、利⽤したことのある⼈ 調査⽅法 ︓ 対象者に⼿渡し、その場で記⼊、もしくは持ち帰り記⼊していただき 後⽇回収 2.≪調査項目≫ ○属性(性別、年齢、居住地区、職業) ○⾃転⾞の利⽤状況について ・⾃転⾞保有の有無 ・利⽤頻度、目的 ・利⽤する理由、利⽤しない理由 ○⾃転⾞利⽤環境について ・⾃転⾞利⽤環境に必要な事 ・⾃転⾞⾛⾏で危険と感じる時 ○交通ルールの認識について ・交通ルール、マナーの認知 ○⾃転⾞利⽤促進について ・今後の利⽤促進の必要性 ・利⽤促進に今後あったら良いイベント - 18 - 【属性】 【回答者の性別】 男性 46% 女性 54% 図︓回答者の性別 【年齢別】 20歳未満 10% 20代 10% 30代 30% 40代 28% 50代 14% 60代 6% 70歳以上 2% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 図︓年齢別 【 居住地域別】 市外 12% 南 17% 南が丘 4% 鶴巻 5% 西 15% 大根 6% 渋沢 7% 北 14% 東 9% 本町 11% 図︓居住地区 - 19 - 30% 35% 【職業別】 学生 13% 会社員 33% 会社役員 3% 団体職員 3% 公務員 9% 自営業 7% 主婦 28% 無職 2% その他 3% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 図︓職業別 【⾃転⾞の利⽤状況について】 【自転車保有率】 38% 0% 26% 20% 40% 自分の自転車がある 36% 60% 家族共有 80% 100% 保有なし 図︓⾃転⾞保有率 【自転車の利用頻度】 毎日 13% 週3~4 6% 週1~2 12% 19% 月数回 50% 利用しない 0% 10% 20% 30% 図︓⾃転⾞の利⽤頻度 - 20 - 40% 50% 60% 【自転車利用の主な目的】 35% 19% 18% 8% 7% 6% 5% 2% そ の他 子 供 の送 迎 サ イ ク リ ング 仕事 健康増進 通 勤 ・通 学 娯楽 買 い物 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 図︓⾃転⾞利⽤の主な目的 【自転車を利用する理由】 自転車は快適であり、便利だから 22% 健康にいいから 16% 環境にやさしいから 9% 8% 目的地まで歩ける距離ではないから 渋滞がないから 6% 早く目的地に着くから 15% お金が掛からないから 13% 乗っていて楽しいから 7% 他の交通手段がないから 3% その他 2% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 図︓⾃転⾞を利⽤する理由 【自転車を利用しない理由】 2% 自転車に乗れない 6% 道路が走りにくい 車の方が楽で便利 39% 2% 天候に左右される 15% 坂道が多い 車等との事故が怖い 6% その他 30% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 図︓⾃転⾞を利⽤しない理由 ※ その他の回答︓「⾃転⾞の必要性がない」、「故障している」、「歩いた⽅が健康によい」、 「バイクの利⽤」、「子供を乗せる装備がない」など。 - 21 - 【⾃転⾞利⽤環境について】 【自転車利用の必要性】 自転車利用はむしろ減少 させるべき 2% 自転車利用を促進する必 要はない 23% 自動車利用を減らす必要 はないが、自転車利用を 促進すべき 50% 自動車利用を減らし、自転 車利用を促進するべき 25% 図︓⾃転⾞利⽤環境に必要なこと 【自転車走行で危険と感じる時】 車の交通量が多いとき 21% 11% 車に追い越されるとき 6% 車が左折するとき 路肩が狭いとき 20% 歩道が狭いとき 14% 歩行者が多いとき 13% 5% 交差点を横断するとき 夜道を走るとき 9% 1% その他 0% 5% 10% 15% 図︓⾃転⾞⾛⾏で危険と感じる時 - 22 - 20% 25% 【交通ルールの認識について】 92% 車道を走る場合、左側を走る 歩道通行不可の場合、車道を走る 8% 81% 歩道を通行できる場合、車道よりを徐行する 19% 62% 38% 78% 歩道通行できる場合の一時停止義務 22% 84% 2台以上での並走の禁止 一時停止、一方通行などの道路標識の遵守 16% 88% 歩道への駐輪禁止 12% 77% 23% 95% 飲酒運転、二人乗りの禁止 子どもにヘルメットを着用させる 5% 83% 携帯電話や傘さしの運転の禁止 17% 92% 0% 10% 20% 30% 40% 50% ルールを知っている 8% 60% 70% 80% 90% 100% 12% 5% ルールを知らない 図︓⾃転⾞利⽤時の交通ルールの認識 車道を走る場合、左側を走る 54% 歩道通行不可の場合、車道を走る 27% 歩道を通行できる場合、車道よりを徐行する 27% 歩道通行できる場合の一時停止義務 29% 45% 20% 39% 20% 36% 46% 2台以上での並走の禁止 33% 55% 歩道への駐輪禁止 4% 5% 33% 8% 76% 子どもにヘルメットを着用させる 27% 12% 58% 0% 10% 20% 30% いつも守っている あまり守っていない 32% 40% 50% 60% 70% だいたい守っている ほとんど守っていない 図:⾃転⾞利⽤時の交通ルール・マナーを守っているか - 23 - 9% 19% 44% 携帯電話や傘さしの運転の禁止 9% 4% 5% 35% 50% 飲酒運転、二人乗りの禁止 14% 10% 58% 一時停止、一方通行などの道路標識の遵守 8% 1%3% 18% 7% 3% 80% 90% 100% 【⾃転⾞利⽤促進について】 【自転車利用の必要性】 自転車利用はむしろ減少 させるべき 2% 自転車利用を促進する必 要はない 23% 自動車利用を減らす必要 はないが、自転車利用を 促進すべき 50% 自動車利用を減らし、自転 車利用を促進するべき 25% 図:⾃転⾞利⽤の必要性 【自転車促進で今後あったら良いイベント】 その他 3% 競技者向けの自転車 レース大会 市民向けの自転車レー 2% ス大会 9% 自転車安全教室 26% 市外へ向けてのサイク リングコース等の広報 14% 観光サイクルイベント 23% 商店街による自転車利 用割引 23% 図:⾃転⾞促進で今後あったら良いイベント - 24 - 【アンケート結果の考察】 アンケート結果からわかるように秦野市内での⾃転⾞利⽤者は通勤通学、または買い物 で利⽤される⽅が非常に多いです。⾃宅から駅、または職場への通勤・通学や、⽇常で買 い物に⾏かれる主婦の⽅による⾃転⾞の利⽤が多いかと思われます。⾃転⾞を利⽤される ⽅の安全と環境整備、マナーの向上を図らなければならないことが明確かと思われます。 また、⾃転⾞を利⽤されない⽅も、環境が整い⾃転⾞利⽤に対する意識の向上を促す ことで⾃転⾞利⽤の需要は増えるものと考えます。⾃動⾞と⾃転⾞の双⽅を使い分け、環 境や健康に配慮した⾃転⾞利⽤を生活の中に取り⼊れていただくことで、快適に暮らしよい 毎⽇を送っていただけるかと思います。 今以上に多くの皆様に⾃転⾞利⽤していただくには、⾃転⾞⾛⾏空間や駐輪場の整備 などのハード⾯に加え、ルールやマナーなどのソフト⾯でも取り組みが必要かと言えます。 - 25 - Ⅴ.提言の具体的内容 「秦野サイクルシティ構想4本柱からの提言」 1.「安全・安心」な⾃転⾞活⽤ 「安全・安心」に⾃転⾞を使うには、⾃転⾞利⽤ルールやマナーを向上させる取り組みや、 ⾃転⾞の安全を守る環境整備の推進が必要と考えます。 1)ルール・マナーの啓発 2)⾛⾏空間づくり 3)災害時の⾃転⾞活⽤ 1)⾃転⾞を正しく利⽤する為のルール・マナーを向上させる取り組みが必要です 秦野市における⾃転⾞事故件数は減少傾向にあると(P15)図 4-3-2で示した通り ですが、全国的に⾒ると⾃転⾞関連事故の全交通事故に占める割合は約2割と⾼い割 合で推移しております。これは、交通ルールの認識や遵守する意識が低いことに起因するも のと考えられます。交通ルールを正しく理解し、ルールを守る意識を⾼める必要があります。 また、歩道や駅周辺などでの放置⾃転⾞は、⼀般歩⾏者だけでなくベビーカーを利⽤す る保護者や、⾞椅子を利⽤する⽅々の通⾏の妨げとなります。これは⼀部の⾃転⾞利⽤ 者のモラルの低下によるところが⼤きく、誰もが「安全・安心」に⾏き交うことが出来るまちづく りが必要と考えます。 道路交通法での⾃転⾞のルール ▲歩道と⾞道の区別のあるところは、⾞道が原則、歩道は例外 ▲⾃転⾞は、⾞道の左側を通⾏(右側通⾏は禁止) ▲⾃転⾞が歩道を通⾏する場合は、歩道は歩⾏者優先で、⾃転⾞は⾞道よりを徐⾏ ▲⾃転⾞も飲酒運転は禁止 ▲他の⾃転⾞と並んで⾛ってはいけない(道路標識などにより併進可の場合は除く) ▲夜間、道路を⾛るときは、前照灯及び尾灯(または反射器材)を灯火しなければならない ▲⼀時停止の標識を守り、狭い道から広い道に出るときは徐⾏ ▲傘差し・物担ぎ等の視野を妨げ、安定を失う恐れのある方法での運転は禁止 ▲児童・幼児の保護責任者は、児童・幼児を⾃転⾞に乗せるときは、ヘルメットを着⽤させる・・・など - 26 - 図 5-1-1 ①⾃転⾞運転免許制度の導⼊ 現在、警察署や交通安全協会、市役所が⾏う交通安全教室において、配布している 「⾃転⾞安全運転証」を免許制度とし、⾃転⾞の正しい乗り⽅講習会や、より効果の⾼い 実技講習や、⾃転⾞における試験を導⼊し、その結果により免許証の交付を⾏うことはどう かと考えます。 また、免許証には有効期限を設け、その期間では⾃転⾞のルールやマナーを⾝につけた ⾃転⾞利⽤者ということで、公共施設利⽤割引や、駐輪場料⾦の割引や、商業施設など と提携して、⾃転⾞による来店により様々な優遇が受けられるようにするなども良いのではな いでしょうか。 以上のような取り組みにより、ルールやマナーをしっかりと守った⾃転⾞利⽤者が増えるの ではないかと考えます。 図 5-1-2 - 27 - ②交通安全における指導者の育成 ⾃転⾞利⽤者に交通ルール・マナーを守ってもらうためには、幼少期からの教育や地域ぐ るみの体制づくりが必要であると考えます。 その為には、交通ルール・マナーの知識や⾃転⾞の正しい乗り⽅などを熟知した交通安 全教育を指導できる指導者の育成を、幅広い層で進めていくことが重要ではないでしょうか。 例えば、⾼校生や⼤学生を対象に交通法規や安全教育を講習し、そこで学んだことを基に、 学生達が交通安全教室の企画⽴案を⾏い、市⺠に向けた交通安全教室を実施するなど により、幅広い層の指導者の育成が展開できると考えます。 - 28 - 2)安全で快適に⾛ることができる⾛⾏空間づくりが必要です。 ⾃転⾞は本来、⾞道を通⾏すべき「⾞両」ですが、⾃転⾞の通⾏が可能となっている歩 道も多く存在し、結果として歩道では歩⾏者と、⾞道では⾃動⾞と共存できていない現状 にあります。⾛⾏空間の明確化や、⾃転⾞はもとより歩⾏者や他の交通⼿段利⽤者の安 全を確保する必要があると考えます。(下記、⾃転⾞⾛⾏空間⽅策) ■⾃転⾞の通⾏位置の指定(歩道上での専⽤的空間) 図 5-2-1 幅の広い歩道上でライン・カラー舗装により、⾃転⾞の通⾏位置の指定をするもの。これ により、⾃転⾞はこの部分の通⾏義務、歩⾏者はこの部分に⽴ち⼊らない努⼒義務があ る。 - 29 - ■⾃転⾞道(⾞道上での物理的な専⽤空間) 図 5-2-2 物理的に分離された⾃転⾞専⽤空間。⾃転⾞はここのみを通⾏する義務があり、歩道 やこれ以外の⾞道部分を通⾏できない。原則、対⾯通⾏。 ■⾃転⾞専⽤通⾏帯(⾃転⾞専⽤レーン、⾞道上での専⽤空間) 図 5-2-3 ⾞道上で、⾃転⾞の専⽤通⾏空間を指定するもの。⾃転⾞は⾞道上ではこの部分を 通⾏する義務がある。しかし、歩道が⾃転⾞通⾏可となっていると、歩道通⾏も選択可能 であり、⼀⽅通⾏。 - 30 - ≪⾃転⾞⾛⾏空間別の⻑所短所の⽐較≫ ⾃転⾞通⾏部分の 項目 指定 ⾃転⾞道 ⾃転⾞専⽤通⾏帯 (⾃転⾞歩⾏者道) 歩⾏者からの分離 ⾞からの分離 務無し)歩⾏者との接触 分離 対⾯衝突 対⾯または ⼀⽅通⾏ 不完全分離(法的な義 分離 分離 不完全分離(法的な義 分離 対⾯通⾏ ⾃転⾞どう しの衝突の危険性 務有り)⾞との接触 対⾯通⾏ ⾃転⾞どうしの衝突の危 険性 反対⽅向 対⾯通⾏ 反対側の道 対⾯通⾏ 反対側の道 への移動 路に渡らなくても良い 路に渡らなくても良い 速度はたえず徐⾏また 速度はある程度出せる は歩⾏者がいれば⼀旦 がすれ違いの時は落とす 停止義務 必要あり 速度 1.5m 以上必要(安全 幅員 にすれ違うためには 2.5m 以上必要 連続 2.0m 以上) 広い歩道 して確保は困難 のみ確保 他の進⼊ 他の空間の選択の可能性 歩⾏者の進⼊の可能性 あり あり(⾞道を⾛⾏可能) 沿道利⽤との調整 容易 ルール遵守 不遵守を誘発 ⼀⽅通⾏ ⾃転⾞どうしの衝突なし ⼀⽅通⾏ 反対側の道 路に⾏く必要あり(短区 間なら歩道を利⽤可) 速度はある程度出せる 1.0m 以上必要 道路 構造令の幅員のある道 路では確保容易 ⼀部可能(駐⾞⾞両等 なし の進⼊) なし(⾼齢者、子供等も あり(⾼齢者、子供等も ⾃転⾞道を⾛⾏する義 歩道を徐⾏して通⾏ 務) 可) ゴミ収集、荷物の積み 込み等で障害 普通 やや容易 遵守を励⾏ ※各欄のピンクが⻑所、グレーが短所、緑が普通。 - 31 - 本来であれば前記に挙げる道路整備による⾃転⾞の安全な⾛⾏空間整備が理想で はありますが、現在の状況では多額の費⽤や地元住⺠への理解、道路のセットバックなど 様々な問題があり、新たな整備は難しいと考えます。(P16)図 4-3-3でも分かる ように⾃転⾞による交通事故は交差点での発生が多く、危険であることは明らかなので、 「交差点およびその直前に⾃転⾞専⽤レーン」の設置が有効であると考えます。 専⽤レーンを設ければ、⾃転⾞が通過することがあることを、⾃転⾞のみならず、⾞にも 示すことができ、安全性が向上するのではないでしょうか。 【交差点⼿前での専⽤空間を設けている例】 ⾞の前に停止線 (ロンドン) - 32 - 3)災害時の移動を支える環境づくりが必要です。 ⾃転⾞は東⽇本⼤震災時に⾃⽴した交通⼿段としての利⽤に注目を集めました。秦野 ⻘年会議所では、他の⻘年団体と協⼒し秦野⻘年団体協議会として秦野市と協⼒し、 市内の放置⾃転⾞を整備し、被災地へ寄贈するなど、実際に現地での⾃転⾞利⽤の利 便性を目の当たりにしています。そこで、⾃転⾞を災害時における防災・備蓄品と捉え、秦 野市として⼀定の台数を保有し、有事の際に市⺠へ開放するなど有⽤な活⽤法を検討す る必要があると考えます。 秦野⻘年団体協議会として、福島県福島市、岩⼿県奥州市へ寄贈 市内で保管している放置⾃転⾞を整備し、被災地へ輸送 - 33 - 2.「快適」な⾃転⾞活⽤ 「快適」に⾃転⾞を使うには公共交通(鉄道、バス、タクシー)との連携などの環境づくりや、 ⾃転⾞の特性を活かす利便性の⾼い駐輪場の整備などが必要と考えます。 また、秦野市の特徴の⼀つに盆地があります。市内の生活区域にはいくつもの坂道があり、 ⾃転⾞利⽤に際しては困難なイメージがありますが、アシスト⾃転⾞の普及やコミュニティサ イクル(乗り捨て可能なレンタルサイクル)等の交通システムを導⼊することで、気軽に⾃ 転⾞を利⽤してもらえる環境を整え、⾃転⾞の快適性を体感し、尚且つ利便性に優れた 活⽤が実現できると考えます。 1)公共交通との連携 2)駐輪空間づくり 3)⾃転⾞を便利に使⽤できる仕組みづくり 1)公共交通機関と連携し、利便性を促進する取り組みが必要です。 ⾃転⾞利⽤を進めるには、⾃転⾞利⽤者の⻑距離の移動を補う公共交通の利便性を 向上させ、⾃転⾞の利⽤範囲を広げるとともに、駅、バス停、⾃宅と目的地をつなぐ⼿段と して⾃転⾞を活⽤し、公共交通の利⽤を促進する新たな交通体系を構築する必要がある と考えます。 ⾃転⾞ラックバスの例 サイクルタクシーの例 (出典︓神奈川中央交通 HP) (出典︓太田タクシーHP) 上記の例のように、バスとタクシーにラックを設けて⾃転⾞を積載することができる実例もあ ります。市内を⾛る神奈川中央交通のバスでは、このシステムは現在運⽤されておりません が、これは⽚道ごとに⾃転⾞とバス、タクシーを使い分けができ、秦野市のように坂道が多い 場合などには有効的ではないかと考えます。⽇常利⽤から観光まで幅広く活⽤できます。 - 34 - 2)安心で便利に停めることのできる駐輪空間づくりが必要です。 市街地に⾒られる歩道への駐輪は、道路空間の安全性、快適性を損なっています。目 的地のすぐ近くまで⾏くことができる⾃転⾞の良さを損なうことなく、⾃転⾞を停めたい場 所に安心して停められる駐輪空間を整備する必要があると考えます。 短期間駐輪スポット例 短期間駐輪スポットを商店街と連携し空き店舗等を利⽤することにより、市内外から の買物・観光等の⾃転⾞利⽤者のニーズに応じた、駐輪環境を向上させることにより周 遊性やまちの賑わいを創出できるのではないでしょうか。 - 35 - 3)⾃転⾞をもっと使いやすくする為のしくみづくりが必要です。 ⾃転⾞利⽤環境の向上のためには、⾛⾏空間や駐輪空間などの基盤整備と併せ、⾃ 転⾞利⽤時においての不便さの解消や、⾃転⾞をより便利に利⽤できる環境を整える必 要があると考えます。 ●コミュニティサイクルの導⼊ コミュニティサイクルとは、既存のレンタルサイクルとは違い、市内数箇所に設置した「サイク ルポート」のどこでも乗り降りできる生活に密着した⾃転⾞の新しい交通システムです。 1台の⾃転⾞を利⽤者が共有(シェア)する事により、中心市街地での⾃転⾞台数を 減少させ、少ない⾃転⾞台数で多くの利⽤者に提供できる、効率的な⾃転⾞社会が実 現します。 出典︓国土交通省より 図5-2-4︓レンタサイクルとコミュニティサイクルの違い ⾃転⾞を複数の⼈により共同利⽤するコミュニティサイクルは、環境にやさしい新たな利 ⽤形態による「公共交通システム」の⼀つとして注目されています。同システムを導⼊する目 的や場所、サービス内容等により、得られる効果はそれぞれ異なってくるものの、次ぎのような 効果が期待されます。 - 36 - ≪コミュニティサイクルの導⼊効果(目的・メリット)≫ ☆ ⾃転⾞の共同利⽤(サイクルシェア)による⾃転⾞総量の抑制と、それによる放置⾃転 ⾞の減少や駐輪場の省スペース化 ☆ ⾃転⾞交通の抑制とそれによるCO2排出量の抑制 ☆ 滞在時間の⻑時間化・⽴ち寄り施設の増加など、まちの回遊性の向上 (観光客・買物客等)による地域の活性化・観光振興 ☆ まちの景観・魅⼒の向上 ☆ ⾞利⽤から⾃転⾞利⽤の転換による健康増進 ☆ ⼈の流動の増加による犯罪の抑制 ・・・など 図 5-2-5 出典:国土交通省 HP より 上記の分布図からも分かるように、多くの⾃治体にてコミュニティサイクルの運⽤がなされて います。 - 37 - 3.「楽しい」⾃転⾞活⽤ 「楽しく」⾃転⾞を使うには⾃転⾞に乗りたくなるような環境づくりや、観光との連携、サイ クルスポーツの振興による新たな⾃転⾞の魅⼒づくりが必要と考えます。 1)観光との連携 2)スポーツとの連携 1)観光との連携が必要です。 近年秦野市ではロードバイクにて訪れる市外観光客の⽅が多数⾒られ、⾃転⾞が新 たな観光ツールとしての注目を集めております。しかしその⼤半は関東周辺においてロード バイクのメッカとされているヤビツ峠へ向う⼈達です。丹沢に代表される豊かな⾃然や既 存の観光資源との融合を図り、さらに認知をしていただく必要があります。また、市⺠の皆 様や秦野を観光で訪れる⽅々にも⾃転⾞を利⽤していただき、複数の目的地のすぐ近く まで周遊可能な⾃由度を活かし、⾃転⾞の目線で「まち」を⾒つめ、「まち」の魅⼒を再 発⾒する役割を担うと考えます。 ●⾃転⾞マップの作成(観光ルート、サイクリングルートなど) ロードバイクに乗った来街者や、買い物や通勤・通学に⾃転⾞を利⽤する⼀般利⽤ 者など様々な⾃転⾞利⽤者を想定し、観光ルート、サイクリングルートの設定が必要と 考えます。そうすることで、観光で訪れた来街者や⾃転⾞愛好家の周遊性が増加するも のと考えます。 サイクリングマップ例 - 38 - (那須⾼原ロングライド HP より) ●携帯端末アプリを活⽤した情報発信 ⾃転⾞利⽤者がいつでもどこでも気軽に⾃転⾞に関する情報を取得できる携帯端末 アプリによって、市⺠や来街者などが観光スポットや休憩スポット、飲食店などの様々な情 報を取得、書き込みが出来る、秦野市独⾃のシステム構築が可能であれば、楽しみなが ら⾃転⾞に乗りたくなる環境が生まれるのではないかと考えます。 (出典︓cosoado Cycles plus より 2013 年 3 月 31 ⽇運⽤終了) 2)スポーツとの連携が必要です。 ●⾃転⾞利⽤促進イベント 近隣チームである、湘南ベルマーレサイクルロードチームなどと連携し市⺠が参加できる サイクリングイベントを開催することで、⾃転⾞利⽤促進に繋がるものと考えます。 また、難題は多数ありますが、運動公園周辺やヤビツ峠周辺といったサイクリストの発 着地点を利⽤した、クリテリウム⼤会(短いコースを何度も周回する⾃転⾞ロードレース のこと)の開催などを実現することで、来街者の増加による観光資源の活⽤やネームバリ ューの拡⼤が⾒込めるのではないかと考えます。 - 39 - 4.「健康でエコ」な⾃転⾞活⽤ 「健康でエコ」に⾃転⾞を使うには、健康管理や環境にやさしいライフスタイルの推進が必 要と考えます。市⺠の健康増進や環境問題に対する意識向上をさせることにより、「健康な まち秦野」「深呼吸したくなるまち秦野」を目指します。 1)健康維持のための利⽤推進 2)環境意識の変⾰ 3)企業への⾃転⾞通勤の推進 1)健康維持のための⾃転⾞利⽤の推進が必要です。 ⾃転⾞は、時間・場所の制約がない、移動範囲が広く、運動持続時間が⻑く、運動強 度の調整範囲も広い乗り物です。 ≪⾃転⾞こぎと他の運動形態との⽐較≫ ⽐較項目 ⾃転⾞ ジョギング スイミング 場所の制約 ⾃由 ⾃由 限定(プール、海) 時間の制約 ⾃由 ⾃由 限定(泳げる時間) ⾏動範囲 広い 狭い 非常に狭い 運動持続時間 ⻑時間 ⻑くは続かない ⽐較的短時間 運動強度の調整 範囲が広い 範囲が狭い 範囲が狭い 膝・腰の悪い⼈ 可能(体重の3割) 困難(体重の5〜6倍) 可能(歩⾏で体重の 1/2〜 1/3) ※塗りつぶし部分はメリットに、塗りつぶしのない部分はデメリットに相当する。 出典︓「中⾼年ためのスポーツ医学」より作成 上記のように、有酸素運動が出来る⾃転⾞こぎは、最も理想的な運動形態であることが わかります。 ●健康づくりの効果を体験してもらうために、⼀定期間⾃転⾞を利⽤してもらうモニターを募 集し、その前後で健康診断・体⼒測定などを⾏い、その効果を体験してもらい、目標を持っ て楽しく健康づくりをおこなえる仕組み作りが必要と考えます。 - 40 - 2)環境問題に対する意識の変⾰が必要です。 ⾃転⾞は二酸化炭素を排出せず、またエネルギー資源を使わないため、環境負荷の低 減ができることは明白であり、地球的規模で考えて、環境に優しい乗り物であると言えます。 そこで秦野市としてできることは、⾃転⾞利⽤の推進から、直接的に二酸化炭素量を減ら すことはもちろんのこと、この秦野の地がモデルケースとなり、低炭素社会に向けた取り組みや 概念を近隣市町村、⽇本全国、世界に向けて発信し、市⺠意識の変⾰へと繋げていくこと が重要であると考えます。 3)企業を対象とした⾃転⾞通勤の推進が必要です。 現在、秦野市においても交通需要マネジメントの推進による、事業所の⾃主参加型ノー マイカー・エコ通勤の推進やTDM教育の実施といった施策をおこなっておりますが、各事業 所従業員を対象としたモビリティマネジメントを推進し、⾃転⾞利⽤による環境や健康に対 する影響などについての情報提供などを⾏い、⾃発的な⾏動の転換を促して、クルマ通勤 から公共交通機関や⾃転⾞への利⽤推進が必要と考えます。 ※TDM︓Transportation Demand Management(交通需要マネジメント)の意。 - 41 - Ⅵ.⾃転⾞のまち秦野へ・・・ 提言書「秦野サイクルシティ構想」の実現においては、官⺠⼀体となって⾃ 転⾞の有⽤性を理解し、「安全・安心」に「快適」に「楽しく」「健康でエコ」な利 ⽤ができるまちづくりを⾏うことで、明るい豊かな社会が形成されることに繋がる という共通認識をもって進めていくことが必要です。 我々秦野⻘年会議所は今後、これまでの 50 年間の活動の中で培ってき た、様々な⼿法を⽤いて、このサイクルシティ構想の周知を⾏ってまいります。そ の為には市⺠や⾏政、市内企業の⽅々と協⼒し、情報の収集や発信をして 認識の共有を図り、まちづくりへの意識変⾰を⾏う必要があります。そして、この サイクルシティ構想の実現へ向けた準備を秦野⻘年会議所の運動を通して⾏ ってまいります。将来、この提言が結実し定着したその先には⾃転⾞を利⽤す る⼈も、利⽤しない⼈も、誰もが安全に安心して暮らせるまち。便利に楽しく⾃ 転⾞が利⽤できるまち。⼈や環境にやさしい⾃転⾞を愛するまち。すなわち明 るい豊かなまちへと変わっていくことと確信します。 この提言書の定着を目指していく過程では、様々な課題があると思われま すが、我々、公益社団法⼈秦野⻘年会議所は、⾃分たちのまちの将来を考 え、明るい豊かな社会の実現を目指し、この「秦野サイクルシティ構想」を作成 いたしました。我々秦野⻘年会議所が掲げるスローガン「みどり燃ゆる水清らか な心のまち秦野」を創造すべく、そして⾃転⾞を利⽤してこの秦野のまちが更に 魅⼒の増すことを願って、この提言書を提出いたします。どうぞご理解とご協⼒ の程、宜しくお願い申し上げます。 - 42 - 秦 野 サイクルシティ構 想 編集・発⾏︓公益社団法⼈秦野⻘年会議所 平成25年11月17⽇ - 43 -
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