マレーシア輸出は意外に伸びたが、内容は弱い

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ASIA Indicators
定例経済指標レポート
マレーシア輸出は意外に伸びたが、内容は弱い(Asia Weekly (4/4~4/8))
~アジアのディスインフレ基調は今後もしばらく続く模様~
発表日:2016 年 4 月 7 日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 西濵 徹(03-5221-4522)
○経済指標の振り返り
発表日
指標、イベントなど
結果
コンセンサス
前回
4/4(月)
(豪州)2 月小売売上高(前月比/季調済)
+0.0%
+0.4%
+0.3%
4/5(火)
(フィリピン)3 月消費者物価(前年比)
+1.1%
+1.1%
+0.9%
(豪州)金融政策委員会(政策金利)
2.00%
2.00%
2.00%
(インド)金融政策委員会(レポ金利)
6.50%
6.50%
6.75%
(マレーシア)2 月輸出(前年比)
+6.7%
+2.9%
▲2.8%
2 月輸入(前年比)
+1.6%
▲1.5%
+3.3%
+2.00%
+1.40%
+2.41%
4/6(水)
4/7(木)
(台湾)3 月消費者物価(前年比)
(注)コンセンサスは Bloomberg 及び THOMSON REUTERS 調査。灰色で囲んでいる指標は本レポートで解説を行っています。
[マレーシア]
~主力の電子部品関連は依然弱いが、原油安で石油製品や天然ガス関連の輸出に底入れ感~
6日に発表された2月の輸出額は前年同月比+6.7%となり、前月(同▲2.8%)から2ヶ月ぶりに前年を上
回る伸びに転じた。前月比は+0.5%と前月(同▲7.4%)から4ヶ月ぶりに拡大に転じているものの、過去3
ヶ月に亘って大幅な減少が続いてきたことを勘案すれば力強さに乏しい。主力の電子部品や電気機械関連では
引き続き下押し圧力が掛かっているほか、原油や天然ゴム、パーム油などの資源関連輸出も軒並み鈍化基調が
続いている一方、石油製品や天然ガス関連での底打ちが全体の押し上げに繋がっている。国・地域別では、中
国向けに引き続き下押し圧力が掛かっているほか、東南アジアをはじめとする新興国向けも鈍化基調が続いて
いるものの、米国や欧州、日本といった先進国向けの伸びは加速したことが下支えに繋がった。一方の輸入額
は前年同月比+1.6%となり、前月(同+3.3%)から伸びが減速している。前月比は+1.1%と前月(同▲3.2%)
から4ヶ月ぶりに拡大に転じるなど底入れの動きがみられるものの、輸出同様に力強さには乏しい。景気の先
行き不透明感に伴う個人消費の弱さを反映する形で消費財に下押し圧力が掛かっている一方、企業向けを中心
に設備投資意欲の底堅さを受けて資本財輸入が堅調なことが押し上げに繋がっている。結果、貿易収支は+
73.52 億リンギと前月(+53.92 億リンギ)から黒字幅が拡大している。
図 1 MY 貿易動向の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[台湾]
~インフレ動向は食料品次第だが、川上での物価下落がディスインフレ圧力となる状況は続く~
7日に発表された3月の消費者物価は前年同月比+2.00%となり、前月(同+2.41%)から減速した。前月
比は▲0.63%と前月(同+1.95%)から2ヶ月ぶりに下落に転じている。前月に大きく上昇した生鮮品を中心
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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とする食料品価格が落ち着きを取り戻しているほか、エネルギー価格も下落基調が続いており、生活必需品を
中心に物価は安定している。生鮮食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同月比+0.79%と前月
(同+0.84%)から一段と減速しており、前月比も▲0.86%と前月(同+1.03%)から2ヶ月ぶりに下落に転
じている。前月に大幅に上昇した教育関連や医療費をはじめとする一部のサービス物価が下落に転じているほ
か、景気の先行き不透明感を反映して消費財全般で物価上昇圧力が後退していることも影響している。なお、
川上の物価に当たる卸売物価は前年同月比▲4.94%と 19 ヶ月連続でマイナスとなり、前月(同▲4.92%)か
らマイナス幅も拡大している。前月比も▲0.14%と前月(同▲0.35%)から7ヶ月連続で下落するなど、川上
での物価下落圧力が消費者段階でのディスインフレを招く一因になっていると考えられる。
図 2 TW インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
[フィリピン]
~生活必需品のみならず、全般的に物価上昇圧力は後退する展開が続いている~
5日に発表された3月の消費者物価は前年同月比+1.1%となり、前月(同+0.9%)から加速した。なお、
前月比は+0.07%と前月(同▲0.28%)から2ヶ月ぶりに上昇に転じているものの、依然として物価上昇圧力
に乏しい展開が続いている。食料品価格は生鮮品を中心に落ち着いた推移が続いていることに加え、原油相場
に底入れの動きがみられるものの、依然としてエネルギー価格には下押し圧力が掛かりやすい展開が続いてお
り、生活必需品を中心に物価が落ち着いていることが影響している。他方、食料品とエネルギーを除いたコア
インフレ率は前年同月比+1.46%と前月(同+1.46%)と同じ伸びで推移しており、前月比は+0.07%と前月
(同+0.14%)から上昇ペースは鈍化している。航空関連など一部で価格上昇の動きが出ており、これに伴う
輸送コスト上昇が懸念されるものの、消費財全般で物価は落ち着いた推移が続くなど、全体的に物価上昇圧力
が後退している様子がうかがえる。
図 3 PH インフレ率の推移
(出所)CEIC より第一生命経済研究所作成
以
上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容
は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。