1/4 ASIA Indicators 定例経済指標レポート インドネシア中銀、予想外の金利据え置き決定(Asia Weekly (7/18~7/22)) ~物価も金融市場も落ち着くなか、先行きは追加利下げの可能性がくすぶろう~ 発表日:2016 年 7 月 22 日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹(03-5221-4522) ○経済指標の振り返り 発表日 指標、イベントなど 7/18(月) (ニュージーランド)4-6 月消費者物価(前年比) (シンガポール)6 月非石油輸出(前年比) 7/19(火) (香港)6 月失業率(季調済) 7/20(水) (マレーシア)6 月消費者物価(前年比) (台湾)6 月輸出受注(前年比) 7/21(木) (香港)6 月消費者物価(前年比) (インドネシア)金融政策委員会(BI レート) (7 日物リバースレポ金利) 7/22(金) (台湾)6 月失業率(季調済) 結果 コンセンサス 前回 +0.4% +0.5% +0.4% ▲2.3% ▲3.0% +11.6% 3.4% 3.5% 3.4% +1.6% +1.7% +2.0% ▲2.4% ▲5.0% ▲5.8% +2.4% +2.5% +2.6% 6.50% 6.25% 6.50% 5.25% 5.25% 5.25% 3.96% 3.98% 3.96% (注)コンセンサスは Bloomberg 及び THOMSON REUTERS 調査。灰色で囲んでいる指標は本レポートで解説を行っています。 [インドネシア] ~物価や金融市場の安定を受けて中銀は金利据え置くも、先行きも緩和姿勢はくすぶる~ 21 日、インドネシア銀行は定例の金融政策委員会を開催し、政策金利であるBIレート及び翌日物預金フ ァシリティー金利(FASBI) 、翌日物貸出ファシリティー金利を2会合ぶりにそれぞれ 6.50%、4.50%、 7.00%に据え置く決定を行った。来月から主要政策金利に適用される7日物リバースレポ金利も2会合ぶりに 5.25%に据え置かれている。足下のインフレ率は同行が定めるインフレ目標(4±1%)の範囲内に収まるな ど物価が管理可能な水準に落ち着くなか、来月に予定される政策金利の変更の円滑化とともに、先行きも緩和 的な政策を通じて景気のモメンタムを強化するとの姿勢を維持している。さらに、政府が先月末に決定した「租 税特赦」措置を支援するとともに、金融市場の深化を通じて政府の財政政策を側面する考えをみせている。な お、世界経済については「英国のEU離脱などの不透明感を受けて期待に比べて緩やかな拡大に留まるが、そ れに伴うリスクは低下している」との認識を示しており、同国経済についても「依然限定的ながら回復基調が 続いている」とした。その上で、足下で貿易黒字が拡大するなか、通貨ルピア相場については「米国の金融政 策や英国のEU離脱など外的要因に伴い下落する一方、租税特赦措置を受けた市場のセンチメント改善を受け て底入れしている」とした。先行きのインフレ率も「目標の域内に収まる」とし、金融市場についても「落ち 着いた推移が続く」との見方を示している。結果、先行きも一段の緩和の可能性がくすぶると予想される。 図 1 ID 政策金利の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 図 2 ID インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2/4 [ニュージーランド] ~景気の先行き不透明感を反映してサービス物価に下落基調、ディスインフレ続く~ 18 日に発表された4-6月の消費者物価は前年同期比+0.4%となり、前期(同+0.4%)から横這いで推移 している。前期比は+0.42%と前期(同+0.17%)から上昇ペースが加速しており、食料品価格は比較的落ち 着いている一方、年明け以降の原油相場の上昇などを理由にエネルギー価格は上昇に転じるなど、生活必需品 を巡る動向はまちまちである。なお、食料品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年同期比+1.0%と前 期(同+1.0%)から横這いで推移しており、準備銀(中銀)が定めるインフレ目標の下限付近で推移してい る。ただし、前期比は+0.00%と前期(同+0.51%)から上昇ペースは鈍化しており、通貨NZドル安に伴う 輸入物価の上昇などを受けて消費財物価に上昇圧力はくすぶるものの、景気の先行き不透明感を反映してサー ビス物価は下落基調を強めており、物価に下押し圧力が掛かりやすい状況となっている。 図 3 NZ インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [マレーシア] ~エネルギー価格の上昇一服に加え、景気の先行き不透明感によりディスインフレ基調へ~ 20 日に発表された6月の消費者物価は前年同月比+1.6%となり、前月(同+2.0%)から減速した。前月 比も+0.17%と前月(同+0.26%)から一段と上昇ペースが鈍化しており、生鮮品を中心に食料品価格には上 昇圧力がくすぶっている一方、年明け以降の原油相場局面が一服していることを受けてエネルギー価格は落ち 着いており、生活必需品を取り巻く物価動向はまちまちの状況が続いている。なお、当研究所が試算した食料 品とエネルギーを除いたコアインフレ率は減速基調を一段と強めており、医療関連など一部のサービス物価で 上昇圧力はくすぶるものの、サービス全体では景気の先行き不透明感を反映して物価上昇圧力が後退している ほか、消費財物価についても全般的に落ち着いている。中銀は先週 13 日の定例会合において予想外の利下げ に踏み切っており、その理由に景気及び物価見通しの下振れを挙げているなか、先行きについてもしばらくの 間に亘って緩和姿勢が続く可能性は高いと見込まれる。 図 4 MY インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [台湾] ~輸出受注に底打ちの兆しも力強さはないなか、製造業を中心に雇用調整圧力が強まる動き~ 20 日に発表された6月の輸出受注額は前年同月比▲2.4%と 15 ヶ月連続で前年を下回る伸びとなったもの の、前月(同▲5.8%)からマイナス幅は縮小している。当研究所が試算した季節調整値に基づく前月比では 2ヶ月連続で拡大するなど底入れの兆しは出つつあるものの、実額ベースでは一昨年末頃のピークを大きく下 回る展開が続いている。財別では、主力のIT関連をはじめとする電子部品関連のほか、電気製品などに底入 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3/4 れの動きがみられる一方、機械製品や化学関連をはじめとする中間財や基礎財関連は弱含んでいる。国・地域 別では、最大の輸出先である中国本土向けに底打ち感が出ているほか、米国や欧州、日本といった先進国向け にも底入れの動きがみられる一方、その他の新興国向けで頭打ち感が出るなど、これらの景気を巡る不透明感 が輸出の足を引っ張っている様子がうかがえる。 22 日に発表された6月の失業率(季調済)は 3.96%となり、前月(3.96%)から横這いで推移している。 ただし、失業者数は前月比+0.1 万人と前月(同▲0.1 万人)から2ヶ月ぶりに拡大に転じており、新卒者で 改善の動きがみられる一方、既卒者で悪化の動きが強まるなど不透明な状況が続いている。一方、雇用者数は 前月比+0.2 万人と依然として緩やかな拡大が続いているものの、長期的にみれば拡大ペースの鈍化基調が強 まっており、雇用の改善ペースに頭打ちの兆候が出ている。景気の不透明感を反映して小売・卸売を中心にサ ービス業で雇用の頭打ち感が強まっているほか、輸出の低迷に伴い製造業では雇用調整圧力が強まる動きもみ られるなど、厳しさが増している。なお、失業率が横這いで推移している背景には労働力人口の伸びが頭打ち していることも影響しており、雇用環境の厳しさを受けて自発的失業が拡大している可能性も考えられる。 図 5 TW 輸出受注額の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 図 6 TW 雇用環境の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [シンガポール] ~輸出を取り巻く状況はアジア新興国景気の動向と同様、一進一退の展開が続いている~ 18 日に発表された6月の非石油輸出額は前年同月比▲2.3%となり、前月(同+11.6%)から2ヶ月ぶりに 前年を下回る伸びに転じた。前月比も▲12.93%と前月(同+16.82%)に大幅に増加した反動も重なり4ヶ月 ぶりに減少に転じており、一進一退の展開が続いている。主力の機械製品関連には底堅い動きがみられるもの の、金属製品のほか、一部の化学製品関連で輸出額に下押し圧力が掛かったことで輸出全体が押し下げられた。 なお、原油関連を含めた総輸出額は前年同月比▲3.6%と 15 ヶ月連続で前年を下回る伸びとなり、前月(同▲ 2.2%)からマイナス幅が拡大しているほか、前月比は▲2.1%と前月(同+5.4%)から3ヶ月ぶりに減少に 転じている。一方の輸入額は前年同月比▲6.6%と4ヶ月連続で前年を下回る伸びとなり、前月(同▲0.9%) からマイナス幅は縮小している。ただし、前月比は+0.1%と前月(同+5.7%)から辛うじて3ヶ月連続で拡 大し、原油相場の上昇に伴い原油関連の輸入額が押し上げられたほか、主力の機械製品関連の輸入も底堅く推 移している。結果、貿易収支は+52.91 億SGドルと前月(+55.21 億SGドル)から黒字幅が縮小している。 図 7 SG 貿易動向の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 4/4 [香港] ~雇用環境の頭打ち感が強まるなか、インフレ圧力も一段と後退している様子がうかがえる~ 19 日に発表された6月の失業率(季調済)は 3.4%と前月(3.4%)から同じとなり、4ヶ月連続で横這い での推移となっている。なお、失業者数は前年同月比+0.6 万人と前月(同+0.7 万人)から拡大ペースは鈍 化している一方、雇用者数は同+1.6 万人と前月(同+2.1 万人)から拡大ペースが鈍化しており、雇用改善 に頭打ち感が出ている。失業率が横這いで推移している背景には、労働力人口が前年同月比+2.2 万人と前月 (同+2.8 万人)から拡大ペースが鈍化していることが影響しており、景気の先行き不透明感がくすぶるなか で求職自体を諦める動きが出ている可能性がある。分野別では、建設部門やプロ・ビジネス領域で堅調な動き がみられる一方、不動産や金融のほか、教育などのサービス業で厳しさが増すなど跛行色が鮮明である。 21 日に発表された6月の消費者物価は前年同月比+2.4%となり、前月(同+2.6%)から減速した。前月 比は+0.00%と前月(同▲0.10%)まで3ヶ月連続で下落してきた状況が一服しているものの、依然として物 価上昇圧力は後退している。生鮮品及び加工品ともに食料品価格が下落基調を強めていることに加え、年明け 以降の原油相場の上昇に伴うエネルギー価格の上昇も一服するなど、生活必需品を巡り物価は落ち着いた推移 が続いている。当研究所が試算したコアインフレ率も一段と減速感を強めており、消費財全般で物価上昇圧力 が高まりにくい展開が続いているほか、景気の先行き不透明感も物価上昇圧力の後退に繋がっている。なお、 2007 年以降断続的に実施されている公営住宅を対象とする賃料減免措置をはじめとする物価支援策の影響を 除いたベースでも、前年同月比 2.1%と前月(同+2.2%)から一段と減速しており、全般的に物価上昇圧力 が後退している様子がうかがえる。 図 8 HK 雇用環境の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 図 9 HK インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 以 上 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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