東南アジア出版市場の量的測定 Author(s) - KANAGAWA University

\n
Title
Author(s)
Citation
<論文>東南アジア出版市場の量的測定
箕輪, 成男; Minowa, Shigeo
国際経営論集, 9: 85-110
Date
1995-08-28
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
東 南 ア ジア 出版 市場 の量 的 測 定
箕
は
じ
め
輪
成
男
に
出版 統 計 の不 備 は途 上 国 に限 った こ とで は な い。 世 界 的 に見 て 出版 統 計 の
比 較 的 整 備 され て い るの は英 ・米 な ど極 く少 数 の 国々 で あ り,し か もそ う し
姻
々の場 合 で も内容 は働
て不+分 であ る.躰
につ いて も同様 で瀦
。
この よ うに出版 統 計 が 世 界 的 に み て一 般 に不備 なの は ,第 一 に 出版 物 が 通
常 は 多 品種 少 量 生 産 の製 品 で あ り,か つ多 数 の小 規 模 生 産 者(出 版 社)に
よ
っ て生 産 され て い るた め,量 的把 握 が 技 術 的 に困 難 だ か らで あ る。 そ して第
二 に は,"出
版 の 自由"を 根 底 にお く出版 社 は,政 府 の統 制 を嫌 い ,政 府 も ま
た 出版 の 自由 を尊 重 して干 渉 を避 けて い るた め,今
日す べ て の産 業 が行 政 指
導 を通 して 管理 統 制 経 済 化 して い るの に対 し,出 版 は ほ とん ど唯 一 ,そ
た形 で の政 府 との関 係 を欠 いた,独
うし
立 独 歩 の産 業 で あ るた め で あ る 。 そ こで
は補 助 金 支 給 そ の他 政 策 の関 与 が な い か ら,政 府 の側 に お け る出版 産 業 の 量
的把 握 の 必 要 もな く,現 実 に把 握 され て い な いの で あ る。
この よ うな基 礎 的 デ ー タ の不 備 は,こ
れ まで 出版 に関 す る議 論 を非 常 に阻
害 して きた と言 わ ね ば な らな い。 正 確 な量 的 把 握 に も とつ く実 証 的 な議 論 で
な く,定 性 的 ・印 象 的 で根 拠 の な い言 い っ ぱ な しの 主張 が す れ違 う,と い う
の が 出 版論 に よ く見 られ る姿 で あ った の で あ る。 発 展 途 上 国 にお け る出版 開
85
発 につ い て の議 論 も例 外 で はな い。 出版 統 計 の 不備 は途 上 国 にお いて 一 層甚
だ しい の が通 例 だ が,そ
う した状 況 下 で 根 拠 の な い開 発 提 言 が これ まで引 続
5)
きな され て きた の で あ る。
第 二 次 大戦 後 続 々 独 立 を達 成 し,国 家 社 会 の発 展 を 目 ざ して営 々 と努 力 を
重 ね て きた途 上 国 は,経 済 開 発 の基 礎 は人 材 養 成(教
育)に
あ り,教 育 の た
め に は 出版 開 発 が 必 要 で あ る こ とを確 認 して きた 。 その 出版 開 発 のた め に 自
国 の努 力 と併 せ て,過 去30∼40年
多 くの援 助 が 先 進 諸 国 か ら与 え られ て きた
が,開 発 成 功 例 は多 くな い。 背 景 の 正 確 な把 握 や 分 析 な し に戦 略 を欠 い た ま
ま行 わ れ る,そ
う した 出 版 開 発 援 助 が 十 分 な成 果 を生 まな い の は故 な し と し
ない。
筆 者 は 出版 開 発 援 助 に戦 略 的根 拠 を提 供 す るた め,本 論 考 にお い て は ケ ー
ス ス タ デ ィ として マ レー シア とフ ィ リ ピン を取 り上 げた 。2国
の 出版 関 連 の
量 的 デ ー タ をで き る限 り収 集 し,そ れ に も とつ く分 析 か ら何 が そ れ らの 国 々
にお い て 出版 開発 の ネ ック に な っ て い るか を明 らか に し,そ れ が従 来 常 識 的
に語 られ て きた 通 説 を いか に否 定 す る もの で あ るか を明 らか に した い と考 え
る。
査
1.調
筆 者 は1994年
て,出
か ら95年 に か け て,フ
版 産 業,さ
ィ リ ピ ン お よ び マ レ ー シ ア2国
にお い
ら に は 公 的 部 門 の 活 動 も ふ くめ る全 出 版 活 動 に つ い て,現
6}
地 調 査 を行 っ た。
第1同
は1994年8月28日
に お い て,1995年2月27日
よ り9月12日
ま で,第2回
よ り3月4日
ま で,出
は補 足 的 に フ ィ リピ ン
版 社 ・書 店 ・政 府 系 出 版 機
関 ・図 書 館 ・大 学 研 究 機 関 等 を 訪 問 す る と共 に,フ
版 社 へ の ア ンケ ー トを 実 施 す る こ と に よ っ て,デ
ィ リ ピ ン に お い て は,出
ー タ の 収 集 に努 め た 。 こ う
して 得 られ た デ ー タ と既 存 の 各 種 デ ー タ を も と に,両
86国
際経営論集Nogユgg5
国 の 出 版 産 業 市場 の全
表11990年
フ ィ リ ピン出版 物 生 産 ・流 通 の概 要
新刊
点数
学校教科書
大学教科書
重版 平均 総冊数 平均定価
金額
点数 冊 数(万 冊)
(ペ ソ)
(百万 ペ ソ)
513
1209
X33
363
560967
44
429
2⑪00160
90
141
IU()05
150
7
370086
35
30
学術書
文芸書
14D
94
児童書
67
172
5000119
42
50
408
164
20{}0114
90
101
17
67
240018
55
10
一般書
50
辞書等
出版社計
(ユ628)
政府学校教科書
政府刊行物
119
研 究機関 ・諸 団体刊行 物
342
書籍総計
雑誌
(2069)
20
個人 出版 等
出版社以外計
一
87
(568)
コ ミ ック ス
m一
11
1000.`34
101〕
34
10008
100
一
一X3522)
捌
3.1.4
}一
一980
一
(1106)
5
655
5
449
-㎜
一fi21
8
(338}
一
5996
…
28
10()
一12855
}
一
-
12∼25
一{053?
}
(768}
一 凹
100011
81
国内生産出版物総計
輸入書籍
輸入雑誌
zoo
(2196) {2069)
163
一
一(1469}
(2210)
330
2045
46
455
輸入合計
(2500}
フ ィ リピ ン総 出版 支 出
書 籍4143万
冊
雑 誌 ・コ ミ ッ ク ス22831万
冊
体 像 に つ い て総 合 的 な絵 が描 か れ,そ
れ は フ ィ リピ ンの場 合,再
4710
訪の機会 に
現 地 出版 人 の検 討 を経 て チ ェ ック され 改 善 され た。 最 終 的 に得 られ た か な り
確 度 の 高 い フ ィ リピ ンの全 体 像 が表1で
あ る。 マ レー シア につ い て は,ま だ
中 間 的 な試 算 の域 に止 ま る もの として,付 録 に掲 げ た。 本 稿 の 目的 は この 調
査 に よ って 得 られ た デー タ を も とに,両
国 を例 に,途 上 国 の 出版 開発 を論 ず
東南アジア出版市場の量的測定87
る こ とで あ り,両 国 の出 版 事 情 を記 述 的 に報 告 す る こ とで はな い。 それ らの
個 別 的事 実 に つ い て は,例
えば フ ィ リピ ン につ い て は,別 途 刊 行 され る ブ ッ
ク ガ ー デ ン・国 際 出版 学研 究 所研 究 調 査 報 告Nα1「 フ ィ リ ピ ンの 出 版 事情
出 版 市 場 の量 的測 定 を中心 に」 を参 照 され た い。
2.フ
ィ リ ピ ン に お け る 出版 活 動 の 規 模
表1は
フ ィ リ ピン に お け る出版 活 動 を,生 産 と流 通 の両 面 か ら,定 量 的 に
総 合 した もの で あ る。 フ ィ リピ ンに お け る書 物 の流 れ に は3つ の領 域 が 考 え
られ る。第 一 は民 間 出版 社 に よ る通 常 の 出版 活 動 で あ り,第 二 は政 府 ・研 究
機 関 ・諸 団体 等 に よる 出版 活 動 で,こ
の 中 に は途 上 国 の商 業 出版 に多 大 の 影
響 を与 え て い る,政 府 系 教 科 書 出版 機関 の ぼ う大 な学校 教 科 書 出版 が ふ くま
れ て い る。 第 三 は外 国 か らの書 籍 ・雑 誌 の輸 入 で あ り,フ ィ リピ ンの場 合,
表1に
見 る通 り,同 国人 の利 用 す る教 科書 以 外 の書 籍 の,実
に8割 以 上 が 輸
入 図書 で あ る とい う状 況 を示 して い る。
第 一 の民 間 出版 社 に よ る出版 の領 域 で はy書 籍 の新 刊 点 数 は1990年 に お い
7)
て1628点 で あ る。 この 数字 は筆 者 らの実施 した ア ンケ ー ト調 査 の数 字 に,現
地 出版 人 との協 議 検 討 を通 じて 多 少 の修 正 を加 えた もの で,か
な り信 懸性 の
ラ
高 い もの で あ る。 重 版 点 数(延
回 数)に
つ い て も同様 で あ る。 出版 社 以 外 の
9)
出 版 書 籍 を加 え た,フ
ィ リ ピ ン の1990年
の 総 新 刊 点 数 は2196点
ご との 平 均 印 刷 冊 数 は,出
版 人 へ の イ ン タ ビ ュ ー や,彼
も とつ い た も の で あ り,ま
た 平 均 定 価 は,ブ
の 在 庫 展 示 品 か ら採 集 し,ま
で あ る。一 点
らの 執 筆 した 文 献 に
ッ ク フ ェ ア 展 示 の 現 品 や,書
店
た 種 々 の 文 献 か ら確 認 して い る 。 こ う し て領 域
ご と の 総 冊 数 と総 販 売 金 額 が 計 算 さ れ て い る 。 こ の場 合 金 額 は 定 価 額 を と っ
て い る か ら,流
通 業 者 の 取 り分 を ふ くむ 出 版 産 業 の 全 経 済 量 で あ る。
民 間 出 版 社 の 出 版 活 動 の 中 で,捕
捉 の比 較 的 困 難 で あ っ た の は 雑 誌 ・コ ミ
ッ ク ス で あ る。 フ ィ リ ピ ン に お け る大 衆 向 け一 般 誌 は,書
88国
陪ミ
糸
蚤営言
命集No.91995
店 を通 ず る よ り は,
ニ ュ ー ズ ス タ ン ドや 街 頭 呼 び売 りな どが 主 要 流 通 手 段 で あ り,こ
とに コ ミッ
ク ス は書 店 店 頭 で は全 く姿 を見 な い た め で あ る。 一 般 誌 とコ ミ ックス につ い
て は,主 要 出版 社 に 当 る こ とに よ って全 体 像 をつ か む こ とに努 め た。
その 他 の 雑誌 につ い て は,例
えば 国立 図書 館 が1990年 に収 納 した定 期 刊 行
物 は4310点 で あ る。 これ に は通 常 の商 業 雑 誌 の ほか に,大 学 研 究 機 関 等 の紀
要 ・年 報 ・各 種 学 協 会 の ニ ュー ズ レタ ー ・会 報 等 多様 な もの が ふ くまれ て い
る。 た だ し出版 産 業 の解 明 に重 点 を お く立 場 か ら は,そ れ ら非 営利 機 関 の発
行 す る逐 次 刊 行 物 の もつ経 済 的 意 味 は大 きい とい えな い。
こ う して得 られ た 表1は 筆 者 の知 る限 り,フ ィ リピ ンの全 出版 販 売 活 動 を
総 括 的 に提 示 した もの と して は じめ ての もの で あ る。 部 分 的 に出版 活 動 の 一
定 領 域 に つ い て の量 的判 断 を示 した論 文 は皆 無 で は な い が,1国
全 体 を統 合 して マ ク ロで 見 る と ころ に この 表1の
た 全 体 的 把 握 に よっ て,は
じめ て,よ
の 出版 活 動
大 きな意 味 が あ る。 そ う し
り整 合 的 な認 識 が 可 能 とな り,部 分 的
な観 察 で は とか く起 りが ち な見 落 としや誤 認 を避 け る こ とが で き るか らで あ
る。
3.マ
表1が
ク ロ観 察q)
フ ィ リ ピ ンの 書 籍 支 出 率
完 成 した こ とに よっ て,種 々 の分 析 ・比 較 が直 ち に可 能 とな る。 先
ず 第 一 に書 籍 支 出率 を考 え よ う。 こ こで書 籍 支 出率 とは,1国
国 民 総 所 得(あ
るい は国民 総 生産)の
だ け の部 分 を支 出 して い るか,い
の 国 民 全 体 が,
うち書 籍 ・雑 誌 を購 入 す るた め に どれ
いか えれ ば,図 書 購 入 の た め に国 民 全体 が
支 払 っ て い る,経 済 的 犠 牲 を示 す 指標 で あ り,
c一遮 響鎌辮 壁
で 示 さ れ る。
これ は 国 民 の 平 均1人
当 り所 得 と,図
比 較 し て も同 じ で あ る。 こ こ で1990年
書 購 入 の た め の1人
当 り平 均 支 出 で
の フ ィ リ ピ ン の 国 民 総 生 産(国
民総所
東南アジア出版 市場の量的測定89
表216力
国 の 書 籍 産 業 比 較(1977年,単
出版産業売上
位 万 ドル)
書籍産業比率(%)
国民所得額
カ
5,400
1,677,346
0,321
2.日
本
3,80〔}
557,741
0,681
3.西
独
1,600
457,734
0,349
340,261
0.41!
1.ア
メ
リ
4.フ
ラ
ン
ス
1,400
5.イ
タ
リ
ア
820
173,655{1978)
0,472
6.イ
ギ
リ
ス
810
220,680
(}.3fi7
7.イ
ン
ド
580
96,009
0,604
8.カ
ナ
ダ
570
173,273
0,329
9.オ
ラ
ン
ダ
34U
97,339
0,349
10.ベ
ル
ギ
ー
260
72,540
0,358
11.メ
キ
シ
コ
236{1979)
121,328(1979)
0.94
12.ノ
ル
ウ
ェ
ー
170(1976)
26,085(1976)
0,651
13.デ
ン
マ
ー
ク
151(1976)
337,674(//}
0,400
14.オ
ー ス トラ リア
15.ス
ウ
16.マ
レ
ェ ー
ー
デ
シ
/0.527¥
/0.103
92,641
(489
96
ン
94(1976)
66,177{1976)
0,142
ア
13(1972}
6,427{1973)
0,202
得 に代 え て比 較 の 目 的 で こ こで は 国 民 総 生 産 を 用 い る)は1兆1000億
ペ ソで
あ る か ら,
47.1億 ペ ソ =0
.428%c=11000億
ペ ソ
とな る。
と こ ろ で こ のCの
に お い て1977年
値 は 他 の 諸 国 で ど う な っ て い る で あ ろ うか 。 筆 者 は 旧稿
の デ ー タ を も と に,16力
国 の 書 籍 支 出 率(そ
こで は 出 版 産 業
IO)
比 率 と呼 ん で い るが,実
結 果 は表2の
質 的 に 同 じ こ と を意 味 す る)の
とお りで あ る 。
表 か ら 明 ら か な よ う に,多
を除 い て は,大
も,パ
90国
比 較 を試 みた 。 そ の
くの 先 進 諸 国 は 一 部 例 外(日
体 に お い て0.35%の
周 辺 に収 敏 し て い る。 い か な る国 の 国 民
ン の み に て 生 くる 者 に 非 ず で,知
際経営論集No.91995
本 ・ノ ル ウ ェ ー)
的 な 情 報 や 精 神 的 満 足 を必 要 と し て
い るか ら,全
く図 書 を購 入 しな い とい う国家 は な い。 しか し また我 々 は ,本
の み に て生 き るわ け に いか ず,衣
食 住 とい う基 本 的 支 出 を優 先 せ ざ るを えな
い。 そ こで 図書 購 入 費 は生活 の 余 裕 の 中 か ら捻 出 され るの だ が,そ
の比 率 が
ll)
多 くの 国 でO.35%と
い う同 じ レベ ル に 集 中 し て い る の は興 味 深 い 。
問 題 は フ ィ リ ピ ン の 書 籍 支 出 率 が,0,35%よ
り も は る か に 高 い0.428%を
示
し て い る こ とで あ る。 我 々 は途 上 国 の 現 実 に 対 し て とか く先 入 観 を抱 き が ち
で あ る 。 出 版 開 発 を 論 ず る論 者 た ち は,た
数 もユ ネ ス コ発 表 で100〔}点前 後 と小 さ く,農
と え ば フ ィ リ ピ ン は,年
国 民 一 般 に読 書 を好 ま な い,な
わ ず,読
間新 刊 点
村 地 帯 へ の 教 育 普 及 が お くれ,
ど の 断 片 的 情 報 か ら,フ
ィ リ ピ ン人 は本 を 買
ま な い 人 々 で あ る と の イ メ ー ジ を植 え つ け られ て い る の で は な い だ
ろ うか 。 し か し こ こ で 確 認 し得 たCの
人 々 が,国
民 全 体 と して,先
値0.428%は,明
らか に フ ィ リピ ンの
進 国 の 人 々 以 上 の 経 済 的 犠 牲 を 払 っ て,本
を買
っ て い る こ と を 示 して い る 。 彼 ら は 決 し て 本 の た め の 支 出 を惜 し む,非
文化
的 な国 民 で はな い の で あ る。
4.マ
ク ロ観 察 ②
フ ィ リ ピ ンの 書 籍 価 格
書 籍 支 出 率 の観 察 か ら我 々 は,フ
ィ リ ピ ンの 人 々 が,図
書 の購 入 の た め に,
先 進 国以 上 の経 済 的 努 力 を して い る こ とを知 った 。 これ は我 々 に希 望 を抱 か
せ て くれ る事 実 で あ る。 しか し観 察 の次 の 一 歩 を進 め る と,事 態 はた ち ま ち
バ ラ色 で な くな る。 フ ィ リピ ンの人 々 が,そ
って,ど
表1か
の よ うに多 大 の経 済 的 犠 牲 を払
れ だ けの 書 籍 を手 に入 れ て い るか,が
次 の ポ イ ン トで あ る。 これ も
ら簡 単 に得 られ る。
国民1人 当7入
一3522珊(国
フ ィ リ ピ ン人 は,老
鵯
手冊数 一 年間欝
1饗
万冊(轍
人 も乳 幼 児 もふ くめ て,1人
冊数
分)一 ・.66冊
当 り年 間0 .66冊 し か 入 手
東南アジア出版市場の量的測定91
で き て い な い 。 し か も そ の3分
比 較 し て み る と,ア
の2以
上 が 学 校 教 科 書 で あ る。 こ れ を外 国 に
メ リカ ・ロ シ ア ・日本 ・ ドイ ツ な ど は,い
る れ も年 間7
12)
∼8冊
程 度 を入手 して お り,正 に10分 の1以 下 で あ る。 同 等 以 上 に経 済 的 犠
牲 を払 い な が ら,結 果 と して手 に入 れ る図 書 が10分 の1し
か な い の はなぜ か,
本 が10倍 高 い か らで あ る。
こ こで 国民1人
当 り平 均 所 得 に対 して,書 籍 の平 均 価 格 が どの よ う な比 率
を 占 めて い るか を,筆 者 は書 籍 へ の経 済 的 ア クセ ス率 と名 づ け,か つ て1980
1;i)
年 前 後 の デ ー タ を使 っ て,そ
の 国 際 比 較 を 行 っ た 。 そ の 結 果 は 表3の
で あ る 。 ア ク セ ス の 良 好 度 に 従 っ て6つ
で,フ
ィ リ ピ ン は 最 悪 のFグ
とお り
の グ ル ー プ に分 け られ た27力 国 の 中
ル ー プ に分 類 さ れ,ア
ク セ ス度 は1.14と
計 算 さ
れ て い る 。 こ こで ア ク セ ス 率 と は,
アクセス率一響
蠕畿 響
で あ る 。 これ に 表1の
一総蘇
欝
×1人当曲 民所得
デ ー タ を 当 て は め る と,〃
ア クセ ス率 一1'鶉
霧 器
耕 嘉P×1_17228P・.44
とな る。
上 記80年
の 時 の ア ク セ ス 率 計 算 は,ト
ー タ ル の 平 均 価 格 が 得 られ な い た め,
標 準 的 な 書 籍 の 価 格 を用 い て 計 算 した もの で あ る 。 今 同 の 表1に
も とつ く,
よ り信 頼 性 の 高 い デ ー タ で の 計 算 で は0.44と,80年
な り低 い 結
の 時 よ り,か
果 が 出 た 。 こ れ が デ ー タ の と り方 に よ る もの か,80年
の 改 善 を 示 す も の な の か,は
3のDグ
か ら90年 ま で の10年 間
こ こで は 不 明 で あ る が,そ
ル ー プ に 属 す る悪 い 状 態 で あ り,フ
れ に し て も0.44が
表
ィ リ ピ ンが い ま だ に こ の 状 況 を
脱 却 で き な い で い る こ と を 示 して い る 。
こ の よ う に書 籍 へ の 経 済 的 ア ク セ ス 率 が 高 い こ とsい
の 書 籍 の 価 格 が,市
民 の 収 入 に対 し て 高 率 で あ る の は}本
て 安 くあ る べ き書 籍 の 価 格 が,相
92国
来 生 計 費 に連 動 し
対 的 に 高 過 ぎ る た め で あ る。
出 版 開 発 の 究 極 の 目標 は い う まで も な く,よ
り廉 価 か つ 迅 速 に,読
い か えれ ば1冊1冊
り良 質 の 本 を,よ
り多 く,よ
者 に提 供 す る こ とで あ る。 そ れ が 達 成 さ れ る つ れ て,
際経営論集No.91995
衰3ア
グル ー プ
ア クセ ス
A
最良
B
良
C
中上
ク セ ス度 に よ る グル ー プ
o.02s
日
o.osZ
ア
O,075
オ ー ス トラ リ ア
0.07s
イ
O.09
オ
0.12
ス
イ
ス
0.13
ト
ル
コ
0,139
ネ
0,167
イ
0.21
オ ー ス ト リ ア
0.26
本(b)
メ
ギ
所得
書籍価格
大
中
中 ・小
安
リ カ(b)
リ ス(b)
ラ
ン
パ
ダ
ー
ル
ラ
il
ン
大1高
ド
ル クセ ン ブル グ
1
中下
D
E
悪
(0.17
メ
キ
4,267
チ
ュ ニ
0.3
ア ル ジ ェ リア
0.45
レ
バ
ノ
ン
0.47
ブ
ラ
ジ
ル
0.49
シ ン ガ ポ ー ル
0.57
ザ
0.58
ケ
0.66
タ
0.74
イ ン ド ネ シ ア
i
F
最悪
シ
ン
コ)
中
ジ ア
ビ
ニ
ア
中
[
小
中
小
高
ア
ノ
イ
カ
メ
ル
ー
ogas
南
ア
フ
リ カ
1.14
フ
ィ
リ ピ
1.36
ナ イ ジ ェ リ ア
1.65
パ
3.69
イ
キ
ン
ン
ス タ
ン
ン
ド
1
…
注)27力
国 の うち メ キ シ コ だ けが 上 の ア クセ ス順 グ ル ー ピ ング にお い て
仲 間 と離 れ て い る 。こ の 表 が 作 ら れ た 以 後 の 著 し い 経 済 発 展 に よ り,現
在 で は,は
る か に 低 率 を達 成 し て い る ケ ー ス が あ る こ と に 注 意 。
東南 ア ジア 出版 市 場 の 量 的 測 定93
教 育 と情 報 伝 達 が よ りよ く達成 され,社
会 開 発 が 進 む と考 えて よい。 こ こで
廉 価 に とい う こ とは,各 国 書 籍価 格 の 絶 対値 の比 較 を意 味 して い な い。 所 与
の 国民 の,所 与 の所 得 レベ ル に対 して,ど
の よ う に重 い経 済 的 負担 で あ るか,
が 問題 なの で あ りyア クセ ス率 こそが 重 要 な の で あ る。
我 々 は,フ
ィ リピ ンの書 籍 ア クセ ス率 が高 い こ と,言 いか えれ ば所 得 に対
して 書 籍 の価 格 が 高 過 ぎ る こ とを知 った 。 それ で は そ う した 高 価格 は なぜ 起
こっ て い るの か,次
に はそ の原 因 が明 らか に され ね ば な らな い。 先 ず ア クセ
ス率 を国 内産 図書 と輸 入 書 に分 けて計 算 して み よ う。
国内産図書のアクセス率』
響
鍔
轍
撃
鍔 欝
幽
の ア クセ ス率一
こ こ に 国 内 産 図 書 の ア ク セ ス 率 に 対 し,輸
縛
格 一1潔P-・
・18
一17111P-1・86
入 書 の そ れ が10倍
も高 い こ と,
す な わ ち フ ィ リ ピ ン全 体 の 図 書 ア ク セ ス 率 を 高 く して い る 最 大 の 理 由 が,こ
の 輸 入 書 の 高 価 格 に あ る こ とが 示 さ れ て い る 。 これ に対 し,国
ア クセ ス 率0.18は,表3で
はCグ
ル ー プ に 属 し,そ
内産図書へ の
う悪 い 数 字 で は な い 。 し
か し フ ィ リ ピ ン に お け る 国 内 産 図 書 の 大 部 分 が 学 校 教 科 書 で あ る と い う事 実
に 着 目 し,そ
れ ら を除 い た,通
常 の意 味 で の 読 書 空 問 に資 す る書 籍 類 の み を
対 象 に して ア ク セ ス 率 を計 算 して み る と,学
555万 冊,そ
の 総 価 格392百
万 ペ ソ,平
校 教 科 書 を除 く国 内 産 図 書 冊 数
均 価 格70ペ
ソだ か ら
学 校 教 科書 を除 く国 内 産 図 書 へ の ア ク セ ス率 ==0 70
と な る。通 常 の 読 書 環 境 を考 え る 一
ヒで は,フ
り,こ
の 場 合 に も同 様Dグ
.417725
ィ リ ピ ンの ア ク セ ス 率 はO.4で
あ
ル ー プ に 属 す る こ とが わ か る。
以 上 の 分 析 か ら フ ィ リ ピ ン 国 民 の 書 籍 へ の ア ク セ ス を 阻 害 して い る の は,
第 一 に輸 入 依 存 と い う事 実 で あ り,第
二 に は国 内産 図 書 の相 対 的 高価 格 で あ
る こ とが わ か っ た 。 そ れ で は不 可 避 的 に 高 価 格 な 先 進 国 書 籍 の 輸 入 は,な
起 り,な
か,を
94国
ぜ 必 要 な の か,ま
次 に考 えて み た い。
際経営論集N〔,.91995
ぜ
た 国 内産 図 書 を高価 に して い る要 因 は何 で あ るの
5.多
国籍 出版 の侵 略
研 究 者 が 渉 猟 す る研 究 の た め の 高度 な文献
を除 い て,通 常 の読 書 の た め
の ほ とん どす べ て の図 書 ・文 献 を,自 国語 で 得 られ る我 々 に は想 像 しに くい
こ とで あ るが,自
国 語 に よ る図書 の生 産 と,既 往 の 蓄積 の な い と こ ろで は
,
情 報 の獲 得 は,外 国語 文献 に頼 らざ る を えな い。 む しろ 日本 な どは例 外 的 な
少 数 例 にす ぎず,多
くの 国 家 ・民 族 で,人
々 は 多言 語 的読 書 生 活 を強制 され
て い る とい っ て よい だ ろ う。 た しか に一 方 で 日本 は,世 界 的 に見 て,学 術 書
の最 大 の輸 入 国 の ひ とつ で あ る。 しか しそれ らは,研 究 者 や 図書 館 に よ っ て
もっ ぱ ら利 用 され るの で あ り,国 民 大 衆 とは無 縁 で あ る。 日本 の全 出版 生 産
量 の 中 で,そ
れ は金 額 的 に2%程
度 を 占め る に過 ぎ な い。
い わ ば必 要情 報 と して受 け入 れ られ るそ れ らの外 国 図 書 は ,日 本 の情 報 活
動 を豊 か に す る こ とは あ っ て も,日 本 の文 化 的 ア イ デ ン テ ィテ ィを阻 害 す る
要 因 に は な らな い。 しか し国 際 語 で あ る英 語 を 自国語 とす る,英
・米 以 外 の
諸 国 に とっ て,英 語 文 献 の大 量 流 入 は,自 国 の文 化 的 ア イ デ ンテ ィテ ィを保
持 す る上 で,重
大 な障 害 とな りう る し,現 に な っ て い る。 カ ナ ダ が そ れ で あ
14}
り,オ
ー ス トラ リア が そ う で あ る。
同 じ 問 題 が よ り深 刻 な 形 で 出 現 す る の が フ ィ リ ピ ンの 場 合 で あ る。 こ こ で
は 英 語 図 書 ・雑 誌 の 氾 濫 が,フ
し て い る だ け で な く,そ
ィ リ ピ ン人 の 文 化 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 麗 乱
の 乏 し い 外 貨 ま で も奪 い,自
い 荒 ら し て い る か ら で あ る。 現 に フ ィ リ ピ ン で,国
上 廻 る 金 額 が,輸
国 出版 の 発 展 の芽 を食
内 の す べ ての 出版 活 動 を
入 出 版 物 の た め に 支 払 わ れ て い る こ とが,表1か
と な っ た 。 英 語 を メ デ ィ ア と し て使 う限 り,フ
ら明 らか
ィ リ ピ ン の 出 版 人 が,米
・英
の 大 出 版 社 に対 抗 す る こ と は む ず か しい 。 そ れ は す で に カ ナ ダ や オ ー ス トラ
リア の 出 版 界 が 証 明 し て き た と こ ろ で あ る。 よ り大 き な 市 場 を背 景 に も つ,
米 ・英 の 出 版 社 に対 抗 し て,よ
い 編 集 ・造 本 ・流 通 を 達 成 す る こ と は,マ
東南アジア出版市場の量的測定95
ス
を前 提 と し,部 数 を競 争 原理 とす る 出版 の メ カ ニ ズ ム か ら言 っ て,ほ
とん ど
無 理 な の で あ る。
よ りよ く編 集 され,よ
り美 し く造 られ,よ
り安 く(相 対 的 な意 味 で)提 供
され る国 際 商 品 の前 に,途 上 国 の 出版 産 業 の 打 つ べ き手 はひ とつ しか な い。
自国 語 とい う言 語 障 壁 に よ って,市 場 を囲 い こむ しか な いの で あ る。 経 済 と
い う よ りも,も っ ぱ ら文 化 的 ア イデ ンテ ィテ ィの 問題 に着 目 して,強 力 に 自
国 語 化 を進 め て い るマ レー シ ア な どの場 合 に は,そ
可 能 性 が感 じ られ るが,自
う した 意 味 で,将
来へ の
国語 の成 立 と普 及 に足 ぶ み を し,動 揺 の見 られ る
フ ィ リピ ン にお い て は,早 急 な事 態 の 改 善 の見 込 み は な い とい わ ね ば な らな
い 。
そ う した輸 入 出版 物 の 実 態 を領 域 別 に見 て み よ う。 フ ィ リ ピンが1990年 に
輸 入 した 書 籍 ・雑誌 総 額25億 ペ ソの 内訳 は,筆 者 の 調査 で は次 の通 りで あ る。
一般 書
書 籍
2,045,000千
i
ペ ソ
{学 術
ペ ソ
ペ ソ(350万
冊)
ペ ソ(180万
冊)
ペ ソ(91万
冊)
22,880千
ペ ソ(656万
冊)
22,700千
ペ ソ(130万
冊)
540,000千
学術 ・専 門書
一般誌
雑誌
455,000千
大学教科 書
1,050,000千
455,000千
・専 門誌
2,500,000千
こ こ で 学 術 ・専 門 書 は,情
報 源 と し て の 利 用 で あ り,多
他 に代 替 の 手 段 は な い 。 日本 が 洋 書 を年 に数 百 億 円(100億
ペ
ソ
品 種 少 部 数 だ か ら,
ペ ソ相 当)購
入 し
て い る の と同 じ こ とで あ る。 一 般 書 の 輸 入 で 目立 つ の は(1)欧 米 の 特 定 出 版 社
に よ るDM販
売 書 や,訪
問 販 売 に よ る 百 科 事 典,②
小説 のペ ーパ ーバ ック
ス,③
料 理 ・フ ァ ッ シ ョ ン ・イ ン テ リア ・工 芸 ・旅 な どの コ ー ヒー テ ー ブ ル
本(と
くに そ れ ら の 売 れ 残 り ゾ ッ キ本 を安 く輸 入)で
内 産 書 籍 の 生 産 は,す
で に述 べ た 理 由 か ら,英
あ る 。 これ ら に代 る 国
語 に 依 存 す る 限 り当 面 見 込 薄
で あ る。
最 近 の 注 目 す べ き現 象 は,タ
96国
際 経 営 論 集No.91995
ガ ロ グ語 に よ るロ マ ンス小 説 本 の流 行 で あ る
が,そ
れ で も都 会 の書 店 店 頭 で は,10対1で
輸 入 ペ ーパ ーバ ッ クス の 方 が 多
い。 国語 よ り英 語 の 方 が 上 等 で あ る,と の偏 見 が フ ィ リ ピ ン人 の人 々 に強 く
見 られ,ま
た タガ ロ グ語 で 出 され る ロマ ンス が,農 村 の英 語 が読 め な い人 々
を対 象 に し,内 容 的 に劣 って い る とす れ ば,前 途 は必 ず し も楽 観 で き な い
。
これ に対 して輸 入 書 籍 の 中 で量 的 に も大 き く,代 替 製 品 の生 産 が可 能 と思
わ れ るの は大 学教 科 書 で あ る。 これ は情 報 として で な く教 育 用 具 と して 同一
種 類 の もの が 多部 数 輸 入 され るの で あ る か ら,国 内 で の代 替 生 産 は可 能性 が
あ る。 フ ィ リピ ン国 立 大 学 前 学 長 ホ セ ・ア ブエ バ氏 は ,大 学 学 部 教 育 の 国語
化 を提 唱 し,5年
間 で 実 現 す る計 画 を樹 て た が,そ
の 方 針 の 浸 透 は簡 単 に行
か な か っ た。 む しろ国語 重 視 に よ る 国際 性 の喪 失 ,を 心 配 す る反対 意 見 も強
か った の で あ る。
同 じ問題 を抱 くマ レー シア で は,国 立 言語 文 学 研 究所(デ
ダ ン ・プ ス タカ)の
ワ ン ・バ ハ サ ・
努 力 もあ っ て,こ れ まで に 自国語 大 学教 科 書 約1800点 を
刊 行 して きた。 近 代 的大 学 教育 シス テム の維 持 の た め に は数 千 点 の教 科 書 が
必 要 といわ れ る か ら,ま だ3分
の1程 度 に過 ぎ な いが ,そ れ で もほ とん ど蓄
積 の な い フ ィ リピン に比 べ れ ば,は
るか に有 望 な状 況 に あ る 。 国 が どの よ う
な 国語 化 政 策 を とるか に もよ るが(現
し切 れ ず,小
に フ ィ リピ ン政 府 は,完 全 国 語化 に徹
学 校 教 育 にお いて さ え,二 言 語 政 策 を採 用 し,算 数 ・科 学 ・英
語 は英 語 で,国
語・
社 会 を国 語 で教 育 して い る),か
りに大 学 教 育 で英 語 を使
用 す る に して も,自 国 の著 者 に よ る英 語 の テ キ ス トを編 集 ・出版 すべ きで あ
る。 幸 い人 口が大 き く,高 等教 育 の 量 的 拡 大 の著 しい フ ィ リ ピンで あれ ば
代 替 製 品 と して の国 産 大 学 教 科 書 は,大
きな可 能性 を もっ た ,ひ
,
とつ の領 域
とい え よ う。 学 術 専 門 雑 誌 に つ い て は,学 術 書 と同 じ こ とが 言 え る
。 この部
分 こそ正 に情 報 の獲 得 受 容 の 過 程 を代 表 して お り,排 除 で きな い国 家 的 コス
トで あ る。 た だ しそ う した 国家 的 コ ス トが 例 え ば 日本 の場 合 ,
学術糠 難
撃
量 一ll耀
一・.・
・5%
で あ る の に対 し フ ィ リ ピ ン で は,
東南アジア出版市場の量的測定97
2.27億 ペ ソ=0
す な わ ち フ ィ リ ピ ン は,日
本 の4倍
.02%11000億
ペソ
も重 い 情 報 コ ス トを,年
々 学 術 雑 誌 に対
して 支 払 っ て い る の で あ る。 し か も こ こ で 実 際 に入 手 し得 る情 報 の 豊 富 さ は
200億 円 対2.27ペ
ソ(9億
円 弱),す
な わ ち20倍
も 日本 の 方 が 多 い わ け で あ る。
他 方 一 般 誌 で は報 道 ・経 済 か ら車 ・コ ン ピ ュ ー タ ・趣 味 工 芸 ・家 庭 ・保 健 ・
男 性 誌 ・女 性 誌 ・ス ポ ー ツ ・テ ィ ー ン エ ー ジ ャ ー 誌 と多 岐 に わ た っ て お り,
これ ら の 多 彩 で,豊
富 な 内 容 を 国 内 で 調 達 す る こ と は 当 面 不 可 能 だ か ら,そ
れ ら に 魅 力 を感 ず る人 々 が,た
と え 高 価 で も購 入 し よ う とす る の は避 け難 い
現 象 で あ る。 問 題 は そ れ ら を 購 入 し う る人 々 と,そ
う で な い 人 々 との 格 差 が
歴 然 と して い る こ とで あ ろ う。
こ う し て 見 て く る と,フ
ィ リ ピ ン出 版 市 場 が,い
出 版 社 の 草 刈 り場 に な っ て い る か,そ
か に深 刻 に外 国 の多 国 籍
して そ の超 克 が い か に厳 しい試 練 で あ
る か が あ き らか で あ る 。 マ レ ー シ ア ・イ ン ドネ シ ア に見 る よ うな,強
語 化 政 策 を と ら な い 限 り,フ
力な国
ィ リ ピ ン は 多 国 籍 出 版 社 の 強 い 圧 力 の 下 で,出
版 離 陸 も 出 版 流 通 革 命 も達 成 し得 な い の で は な か ろ う か 。
s.高
価格 の要因分析
次 の 論 点 は,フ
ィ リ ピ ン の 国 内 産 書 籍 価 格 を 高 く して い る 要 因 は な に か,
とい う こ とで あ る 。 出 版 開 発 が 論 じ られ る時,途
出 る苦 情 は,紙
代 が 高 い,印
刷 資 材(た
上 国 出 版 人 か ら往 々 に し て
と え ば フ ィ ル ム や 刷 版 代)が
とい う こ とで あ る。 彼 ら の 書 籍 の 価 格 が 高 くな る の は,こ
あ る と い う。 た し か に フ ィ リ ピ ン で い え ば,輸
ス 協 定 に よ っ て 税 金 が か か ら な い の に,彼
ら書 籍 用 紙 を輸 入 す る と,そ
らの 競 争 力 の 足 を,政
は事 実 だ が,本
98国
高 い,
う した 理 由 か ら で
入 す る 書 籍 に は,フ
ロー レ ン
らが 自分 で 出 版 す る た め,外
れ に は 輸 入 税 が か か り,そ
国か
れ で な くて も弱 い 彼
府 が ひ っ ぱ っ て い る,と
い っ た お か し な 現 象 も あ るの
当 に そ う した 製 作 コ ス トが,彼
らの製 品高 価 格 の最 大 の理 由
際経営論集No.91gg5
に な っ て い る の で あ ろ う か 。 こ こで は今 回 の 調 査 に よ っ て 得 ら れ た
シ ア の デ ー タ に よ っ て分 析 し て い るが ,分
iマ
レー
析 の 結 果 は,フ
ィ リ ピ ン な い し途
価 の標準的繊
要素分析 を謬
上 国 一 般 に 通 ず る もの で あ る 。
先ずマ レー シア と躰
にお ける漕
縦
。
マ レー シア書 籍 例
平 均 日収 に よ る 該 当 日数 換 算
定 価21。5リ
ンギ
流 通 費36.2%7,8リ
ン ギ0
.44日
分
印 税9.5%2.1リ
ン ギ0
.12日
分
ン ギ0
.36日
分
製 作 原 価18.2%3.9リ
ン ギ0
.22日
分
利 益6.6%1.4リ
ン ギ0
.08日
分
ー 般 管 理 費29.5%6
.3リ
21.5リ
ンギ
1.22日
分
日本 書 籍 例
平 均 日収 に よ る 該 当 日 数 換 算
定 価2764円
流通費
35%
968円0.103日
印税
一般管理費
10%
276円0
.030日 分
20%
553円0
。059日 分
製作原価
35%
967円0.103日
分
0円0日
分
利益
o/
分
2764円
定 価 構 成 を比 較 して 先 ず 言 え る こ と は,流
が,マ
レ ー シ ア の 一 般 管 理 費 は,日
日本 の2分
国 の1日
の1強
で あ り,利
本 の5割
0.295日
通 費 と印 税 は ほ と ん ど差 が な い
も高 率 で あ り,製
作 コ ス トは,
益 の 率 が 大 き い と い う こ と で あ る 。 こ れ を,両
分 の 平 均 収 入 と い う共 通 の 指 標 で 比 較 して み る と,
マ レー シ ア対 日本1冊
流通費
印税
一般管理費
分
当 り諸 経 費 の 日収 基 準 比 較
0.44
0.103
4.3倍
0.12
0.03
0.36
0.059
4.{}倍
6.0倍
東南 ア ジア 出版 市場 の 量 的 測 定gg
0.22
製作原価
0.11
利益
00
0
x.22
.295
全 体0
こ こで 定 価 全 体 の 比 較 が4.2倍
合,4.2倍
2.1倍
0.103
=4
と い う こ と は,前
.2倍
出 の ア ク セ ス率 が この場
マ レ ー シ ア の 方 が 悪 い と い う こ とで あ る。問 題 な の は,全
4.2倍 ア ク セ ス 率 が 高 い 中 で,定
い る の は,0般
価 構 成 要 素 別 に 見 て,と
管 理 費 ・流 通 費 で あ り,製
くに 高 い 率 を 示 し て
作 原 価 は む し ろ2.1倍
「悪 さ の 程 度 が 低 い 」こ とで あ る。 言 い か え れ ば,途
体 と して
と,相
対 的 に
上 国 の書 籍 を高価 格 に し
て い る の は,途
上 国 の 出 版 人 が よ く主 張 す る よ う に,紙
め で は な く,む
し ろ流 通 費 や オ ー バ ー ヘ ッ ドの か け 方 の 問 題 で あ り,利
多 く得 て い る た め で あ る,と
代 や 印刷 費 が 高 いた
益 を
い う こ と に な る 。 俗 説 は こ こ で も打 破 さ れ る の
で あ る 。 そ こで さ ら に 各 要 素 別 に 上 記 比 較 の 内 実 を検 証 し て み よ う。
《流 通 費 》
流 通 費 に つ い て み れ ば,マ
と して,1人
レー シ ア で は,1冊
当 り平 均 所 得 の0.44日
の 書 籍 の 定 価 の 中 に流 通 費
分 が 計 上 さ れ て い る,と
卸 店 の マ ー ジ ン ・小 売 書 店 の マ ー ジ ン ・広 告 費 もふ くめ て,流
い う こ とで あ る 。
通 の 経 費 を,
究 極 的 に 物 件 費 が 半 分,人 件 費 が 半 分 とす れ ば,流 通 に か か わ るす べ て の 人 々
が,平
均 して1冊
の 流 通 の た め にsO.22日
分 の 労 力 を か け て い る,と
い う こ
とで あ り,逆 算 す れ ば,1人1日4.5冊
を 売 っ て い る わ け で あ る 。同 じ計 算 を
日本 に つ い て 試 み れ ば,日
当 た り20冊 と い う数 字 に な る 。 要 す る
に,書
本 で は1人
籍 の 流 通 に労 力 を か け す ぎ て い るの で あ る。 そ の 理 由 と し て 考 え ら れ
る の は,
(1)流
通 の 垂 直 的 分 業 体 制 が 整 っ て お らず,物
流 ・資 金 流 ・情 報 流 が シ ス
テ ム化 して い な い た めの非 能 率
②
100国
輸 送 シ ス テ ム の 整 備 が 悪 く,輸
際 経 営 論 集No.91995
送 コ ス トが 高 い こ と
(3)発
行 部 数 が小 さい こ とか ら くる構 造 的非 能 率
で あ る。 例 え ば書 店 に よ っ て は,顧 客 の数 よ り も監 視 の ガ ー ドマ ンの方 が 多
い,と
い っ た特 殊 な社 会 事 情 も また 明 らか に ,流 通 費 を膨 張 させ て い るの で
あ る。
《印
税 》
印 税 率 は,マ
レ ー シ ア は9.5%,日
本 は10%と
印 税 は 国 際 的 に 常 識 的 な 線 で あ る が,し
ほ ぼ 同 じ で あ る 。初 版10%の
か し同 じ10%と
い っ て も,そ
は マ レ ー シ ア と 日本 で は 全 く違 う。マ レ ー シ ア の 書 籍 は,ア
も 日本 よ り高 い 定 価 づ け に な っ て い る か ら で,著
換 算 で は,日
本 の4倍
の意 味
ク セ ス 率 で4 .2倍
者 の 印 税 収 入 は ,平
均 日収
にな るわ けで あ る。
例 えば
マ レー シ ア の 著 者 の 印 税 収 入 は
21.5リ ンギ ×9.5%×3000部
罵6126リ ンギ … …平 均 日収 の350日 分
日本 の 著 者 の 印 税 収 入 は
2764円 ×10%×3000部=829200円
… …平 均 日収 の88日 分
で あ る。
マ レ ー シ ア の 著 者 は1冊
る の に 対 し,日
に と っ て,著
の 本 を書 け ば ,少
な く と も1人1年
本 の 著 者 の 得 る と こ ろ は,3カ
作 の 営 為 は,収
分 の 収 入 を得
月 分 に満 た な い 。 日本 の 著 者
入 よ り も名 誉 に あ る こ とが わ か る 。 そ れ で も 日
本 で は 著 者 が 不 足 す る こ と は な い。 む し ろ 多 くの 人 が 自 著 の 出 版 を希 求 し て
い る。 他 方 マ レ ー シ ア で は,こ
の よ うな 印 税 状 況 の 下 で も ,出
版 社 は著 者 の
発 見 に困 難 を感 じて い る 。 経 済 的 に は 魅 力 あ る仕 事 と は い え な い ら し い 。
《一 般 管 理 費》
最 も効 率 の 悪 いの が 一 般 管 理 費 で あ る。 こ こで い う一 般 管 理 費 の 内容 は,
家 賃 ・水 道 光 熱 費 ・通 信 費 ・運 搬 費 ・事務 用 品 費 等 の事 務 所 維 持 費 と,総 務 ・
東南アジア出版市場の量的測定101
人 事 ・会 計 の 人 件 費,本
来 製 品 書 籍 の 原 価 に算 入 さ れ る べ き編 集 人 件 費 や,
流 通 経 費 に入 れ る べ き販 売 担 当 者 の 給 料,も
ふ くめ て す べ て の 人 件 費 を ひ っ
く る め て お り,倉
庫 経 費 か ら運 搬 用 車 輌 費 ・運 転 手 人 件 費 ま で も計 上 し て い
る 。 要 す る に,外
部 に 支 払 う印 刷 代 や 流 通 手 数 料 以 外 の,社
内 で発 生 す るす
べ て の人 件 費 ・物 件 費 を合 わ せ た も の を意 味 し て い る。
と も あ れ こ の 一 般 管 理 費 が 最 も非 効 率 的 で あ る の は,一
目 の 絶 対 額 が 高 過 ぎ るヨ
た
列 え ば 家 賃 が 高 す ぎ た り車 の コ ス トが 高 い とい っ
こ と よ り,固 定 費 と し て の0般
販 売 量 が 小 さ い こ と,に
般管理費構成各項
管 理 費 の 配 布 対 象 で あ る製 品 の,生 産 ・
最 大 の 原 因 が あ る。 流 通 費 の 場 合 と同 じ く,こ
も また1冊1冊
の 書 籍 の 販 売 に対 す る 固 定 費 の か け す ぎ,言
定 費 で あ る0般
管 理 費 の 一 定 額 を か け な が ら,余
こで
い か え れ ば,固
りに も商 量 が 少 な い とい う
こ とで あ る 。
こ こ で 引 用 し て い る マ レ ー シ ア の 仮 説 例 で は,一
9170リ
ン ギ の う ち,人
件 費 に46%の10万5700リ
費 で 雇 う と し て い る の は,マ
般 管 理 費 年 間 総 額22万
ンギ を 当 て て い る 。 この 人 件
ネ ー ジ ャ ー ・編 集 者 ・コ ピー エ デ ィ タ ー ・販 売
係 ・タ イ ピ ス ト兼 受 付 ・会 計 係 ・倉 庫 係 ・メ ッ セ ン ジ ャ ー ボ ー イ の 計8人
で
あ る 。 問 題 は この 仮 説 例 の 出 版 社 の 年 間 の 活 動 量 が,新
出
版,年
間3万6000部,と
一 般 書 の 出 版 な の で ,こ
も か く8人
は,日
刊12点 各 点3000部
大 変 小 さ い こ とで あ る。 あ ま り重 版 は期 待 で き な い
こで は す べ て が 新 刊 か らの 売 上 と さ れ て い る が,と
も の 職 員 を か か え て,年
問12点3万6000冊
本 で は考 え られ な い 。 新 刊 年12点
は,日
で経 営 を維 持 す る こ と
本 で は,社
長1人
だ け の,個
人 出 版 社 の 生 産 量 と い え よ う。 む し ろ 優 雅 と もい え る マ レ ー シ ア の 状 況 で あ
る が,と
(1)出
も あ れ こ こ に示 さ れ る効 率 の 悪 さ は
版 産 業 に お け る分 業 と協 業 の 未 整 備 か ら,小
規 模 な 各 社 が,多
様 な
機 能 の 社 員 を抱 え な け れ ば な ら な い こ と。 し か も ゼ ネ ラ リス トよ りス ペ
シ ャ リ ス ト的 人 材 観 の 途 上 国 で は,マ
(2)発
102国
行 部 数 の制 約
際経営論集Nogl995
ル チ 機 能 の 社 員 を得 難 い こ と。
な ど か ら き て い る。
《製 作 原 価 》
製 作 原 価 の 中 で,最
も重 要 な5つ
日本 の 仮 説 例 で 比 較 す る と,次
を選 び,そ
の 単 位 料 金 を,マ
レー シ ア と
の 通 りで あ る。
日本 マ レー シ ア 平 均 日収 べ 一 スで
(円換 算)
魏
筋 董ぎシ(マレー茜講
組 版 代1頁
当 り2000円292円
1。5倍
フ ィ ル ム 代1頁
当 り1200円413円
3。4倍
印 刷 代16頁
当 り7000円1766円
2.5倍
製 本 代1冊
当 り200円14円
0.7倍
本 文 用 紙 代1冊
当 り75円53円
7.O倍
1冊 当 り
総製 作原価
967円206円
2.1倍
マ レー シア の 書籍 製 作 原 価 は全 体 と して ,日 本 で 作 る場 合 の5分
度(21%)で
×ユ
・
倍)
の1弱 程
あ る こ とが わ か る。 書 籍 は極 め て労 働 集 約 的 な製 品 で あ るか ら,
各 国 出 版 産 業 の経 営 効 率 が 等 しけれ ば,書 籍 の平 均 価 格 は,本 来 各 国 の 労 賃
16)
水 準,い
い か え れ ば 国 民 所 得 水 準 に比 例 す る は ず で あ る。
い ま マ レ ー シ ア の1人
当 り所 得 は,日
US$対2万3801US$1990年)。
が,5分1に
本 の そ れ の10分
本 来 な ら 日本 の10分
止 っ て い る の は,製
作 原 価 の 効 率(対
の1で
の1で
あ る(2368
で き る べ き書 籍
日収 基 準 で)が
す で に見
た よ う に2.1倍
に な っ て い る か ら で あ る。別 の 言 い 方 を す れ ば,単 位 料 金 が 日
収 基 準 で2.1倍
高 い か らで あ る 。 こ の よ う な 観 察 か ら次 の こ とが わ か る。
(1)組
版 代 ・製 本 代 の よ う な,労
理 論 通 り,日
②
働 集 約 的 な部 分 の 作 業 コ ス トは,筆
収 基 準 に比 例 し て 低 い,日
フ ィ ル ム の よ う な 国 際 商 品 に,ど
の 差 が あ り う る の か,む
本 の7分1,15分1で
う し てEl本
あ る。
・マ レ ー シ ア 間 で3倍
し ろ 不 思 議 で あ る。 本 来 な ら,日
っ て も お か し くな い こ の よ う な 資 材 費 が,3分
者 の
の1に
も
本 と同 額 で あ
止 って い る こ とは,
東南アジア出版 市場の量的測定103
途 上 国 出版 人 の 主 張 す る,印 刷 資 材 費 の高 料 金 説 に反 証 を与 え る もの で
あ る。
(3)用
紙 代 は,こ
こで は 日本 の3分
の2で
あ り,た しか に全 製 作 原 価 の 中
で,相 対 的 に最 も割 高 な項 目で あ る。 日本 に比 較 して用 紙 代 の負 担 は7
倍 の 重 さ を もって お り,製 作 原 価 全 体 の割 高 性 を高 め る最 大 の 要 因 で あ
る こ とは確 か だ。 しか し用 紙 代 は,マ レー シア の場 合,定 価 の 中 の4.5%
を占 め るに過 ぎな い か ら,用 紙 代 の 高価 格 を嘆 く途 上 国 出版 人 の主 張 も,
相 対 的 な もの と受 け止 め る こ とが で きるの で あ る。
(4)す
で に述 べ た通 り全体 と して,製 作 原 価 が 出版 書 籍 の高 価 格 ・ア クセ
ス率悪 化 の 原 因 とな っ て い る程 度 は,せ
いぜ い2倍
に4.2倍 の ア クセ ス 率 を結 果 して い るの は,他
で あ り,一 方最 終 的
の原 因(流 通 費 ・一 般 管 理
17)
費 等)に
7.お
よ る の で あ る。
わ
り
に
東 南 ア ジ ア諸 国 に お け る書 籍 ・雑 誌 の 生 産 ・流 通 ・利 用 の 総 体 を,量
把 握 す る こ とに よ っ て,出
版 開 発 理 論 の 前 進 に 資 す る こ と を 意 図 し,か
満 足 す べ き デ ー タ の 得 られ た フ ィ リ ピ ン を 中 心 にz若
た 。 す で に,こ
れ ま で 流 布 し て きた,俗
とた び 表1の
な り
干 の議 論 を展 開 して き
説 ・先 入 観 を破 る,い
が 試 み られ て い る 。 紙 数 が 尽 き た い ま,こ
ね ば な ら な い が,ひ
的 に
くつ か の 提 示
れ 以 上 の 議 論 の 展 開 は後 日 に譲 ら
よ う な トー タ ル の 絵 が 描 か れ た い まzそ
を 利 用 し て 次 々 に 議 論 を展 開 し,強
れ
固 な 根 拠 の 上 に 戦 略 と戦 術 を 提 唱 す る こ
とが 可 能 とな っ た は ず で あ る 。 そ し て フ ィ リ ピ ン出 版 開 発 を論 ず る場 合 に,
い か な る論 者 とい え ど も表1の
前 提 を 無 視 し て 語 る こ とは 許 され な くな る だ
ろ う。
い う まで も な く表1の
も つ 限 界 を超 え て,さ
と協 力 に よ っ て 描 き っ づ け られ,や
104国
際経営』
論集No91995
ら に完 全 な 絵 が,人
が て い つ の 日 か,時
々 の努 力
系列 比較 が 可 能 に な
る こ とが望 まれ るの で あ る。 そ して 同 じ努 力 が フ ィ リピ ン以 外 の 諸 国 に拡 大
され るな らば,厳 密 な形 で の 国 際比 較 が 我 々 に とっ て可 能 に な り,さ
らに多
くの 可 能性 が 開 け るだ ろ う。
最 後 に この論 文 の 出発 点 で あ る現 地 調 査 に対 す る2人
ター ・パ チ ェ コ女 史(ア
ロ ン氏(マ
の現 地 協 力 者,エ
テ ネ オ ・デ ・マ ニ ラ大 学 出版 部 長)と
レー シ ア国 民 大 学 出版 部 長,マ
ス
ハ ス ロム ・ハ
レー シア 書籍 出版 協 会 会 長)に
特
別 の感 謝 を捧 げた い。 これ ら両 氏 の協 力 な し に は この研 究 は存 立 し得 な か っ
た の で あ り,い わ ば両 氏 は この 論 文 の共 著 者 と もい うべ き人 々 な の で あ る。
筆 者 は また,こ
長)と
の調 査 ・研 究 の機 会 を与 え られ た トヨ タ財 団(飯
島宗一理事
くに調 査 実施 に協 力 ・支 援 を与 え られ た 黒 川 千 万 喜 専 務 理 事 ・牧 田東
一 ・若 山佳 子(現
笹 川 財 団)・ 姫 本 由 美 子 の 諸氏 に感 謝 した い
。 また 資料 の 入
手 に つ い て便 宜 を は か られ た ア ジア経 済 研 究所 の 明 峰 晶 子 さん とユ ネ ス コ ア
ジ ア文 化 セ ンタ ー の 田島 伸 二 氏 に も感 謝 申 し上 げ る。
注
1)例
轍
えばわが国の場 合年間発行 され る新刊点数や書籍 ・雑誌 の売上額 について
の ソ磁
か らデー タが得 られて いるが,完 全 な もので は繊
また新刊点
数 の分 類 で は 図書 館 十 進 法 に よ る もの が 提供 され て い るが,そ う した 学 問 分 野
別 で な く,個 々の 書籍 の 出 版 目的 に も とつ く機 能 的分 類 に よ る報 告 は な3!.ま
して や 機 能 的 分 類 に も とつ く出版 冊 数 ・出版 金 額 とな る と一 層 系 統 的 な デー タ
4)
は乏 し くな る。
2)日
本 にお い て継 続 的 に提 供 され て い る出版 統計 に2種
納 本 に も とつ く出版 年 鑑 編 纂 の統 計 で あ り,第2は
類 あ る。ひ とつ は国 会
取 次 会 社 トーハ ン を経 由 す
る商 品 の 流 れ に基礎 をお く,出 版 年報 統計 で あ る。 これ らは それ ぞ れ の 目的 と
手 段 か ら くる制 約 を もっ てお り,完 全 とは い い難 い 。
3)筆
者 は か つ て こ こで い う書 籍 生 産 の 機 能 的 分 類 を1979年 度 に つ い て 試 み て
い る。 拙 著 「情 報 として の 出版 」第4章
4)そ
を参 照 され た い 。
の意 味 で ニ ッテ ン会 長 武 塙修 氏 が 多 年 継 続 発 表 して お られ る 「出版 物 販 売
東 南 ア ジ ア出 版 市場 の量 的 測 定105
額 の実 態 とそ の分 析 」は貴 重 な貢 献 で あ る。 これ は流通 チ ャ ン ネル別 の販 売額
を確 認 す る作 業 を 中心 に 出版 販 売 の 実態 分 析 に迫 る もの で あ る。
5)最
近 の そ の ひ とつ の例 が ユ991年2月
イ タ リー ベ ラ ジ ネ の ロ ッ ク フ ェ ラ ー 財
団 ヨー ロ ッパ セ ンタ ー で催 され た"途 上 国現 地 出版 産 業 の 開発"ワ
プ で あ る。 筆 者 は 出版 開 発 援 助 の 前 に,科
が,援
ーク ショッ
学 的 研 究 の 必 要 な こ とを 強 調 した
助 団体 代 表 た ち は き く耳 を もつ こ とな く,彼
らの"善
意"に
も とつ く,
た だ し成 功 の保 証 の全 くな い種 々 の プ ロ グ ラ ム を語 るの に終 始 して い た。参 加
者 の1人IvanKats氏
は そ う した心 情 を"firemancomplex"(火
消 し根 性)だ
と弁 明 した 。 「理 くつ は と もか く,困 っ て い る人 が い た ら飛 ん で 行 く」 の だ と。
6)調
査 は トヨタ財 団 の プ ログ ラ ム と して実 施 され た 。 トヨ タ財 団 は過去20年 近
く 「隣人 を知 ろ う」プ ロ グラ ム を実 施 して きた 。 ア ジア諸 国 間 の翻 訳 出版 を援
助 す る こ とに よっ て,旧 宗 主 国 との交 流 にの み偏 って い た ア ジア諸 国 の 文 化 交
流 に,よ
り広 い 展 望 の機 会 を提 供 し よ う とい う もの で あ る。す で に数 百 点 に の
ぼ る各 国 現 地 語 に よ る出版 が実 現 し,ア ジア の 出版 情 況 に大 きな イ ンパ ク トを
与 え て きた。 この 「隣 人 を知 ろ う」 プ ロ グ ラ ム に よっ て出 版 され た書 物 が,現
地 に お い て どの よ う に流通 ・利 用 され,ど の よ う な影 響 を与 え て い るか を調 査 ・
確 認 す る と共 に,現 地 の全 般 的 出版 事 情 の 中 でi今 後 同 プ ロ グ ラ ム を ど う改 善
で き るか を模 索 す る 目的 で,財
団 か ら筆 者 に調 査 を委 嘱 され た もの で あ る。現
地 調 査 に 当 って は トヨ タ財 団 の名 声 ・信 頼 に よ っ て 実施 上 多 大 の便 宜 を得 た。
7)1628点
に は,フ ィ リ ピン国 内 で 印 刷 された 外 国 書 と くに大 学 教 科 書 の リプ リ
ン ト版 が ふ くまれ て い る。 フ ィ リピ ン人 の 著 者 に よ って 書 か れ,フ
出版 され た書 籍 の 点 数 に つ い て は,何
な どの 数字 が 示 され て い る。表1か
ィ リピ ンで
人 か の識 者 に よ って500点 ・700点 ・800点
ら考 え て これ らの数 字 は少 し過 小 評 価 で あ
り,実 際 に は1000点 を越 え て い る と思 わ れ る。
8)ア
ン ケ ー トの 回答 そ の もの は,回 答 者 の業 務 上 の秘 密保 持 を考 慮 し公 表 しな
い。 ア ンケー トは1990年 に お け る機 能 別 分 類 に も とつ く新 刊 点 数 ・重版 点 数 ・
総 出 版冊 数 ・出版 金 額 を問 うた もの で,回
答16社 有 効 回 答 数15で あ った 。 フ ィ
リ ピ ン に お け る商 業 的 出 版 活 動 の85∼90%は
これ に よ っ て捕 捉 され て い る と
思 わ れ る。
9)こ
れ に対 して ユ ネ ス コ発 表 の フ ィ リ ピ ンの1990年 度 新 刊 点 数 は1112点 で あ
る。 これ は フ ィ リ ピ ン国 立 図書 館 か らの報 告 に も とつ い て い る。国 立 図書 館 は
法 定 納 本 に よっ て把 握 した 数 を報 告 して い るわ け で,1112点
XO6国
際 経 営 論 集C).91995
は我 々 の最 終 推 定
点 数 の 約2分
の1で
あ る。 半 分 は脱 落 し て い る こ と に な る 。権 威 あ る ユ ネ ス コ
発 表 の 数 字 で さ え こ の よ う に 現 実 か ら遠 い こ と を 痛 感 す る。
10)箕
輪 成 男 「歴 史 と し て の 出 版 」 弓 立 社,1983,59頁,"先
進 諸 国 の 出版 近 代
化"
11)こ
の 表 で は 唯 一 の 途 上 国 と し て マ レ ー シ ア が 取 り上 げ ら れ て お り,す
こ の 時 に0.202と
で に
決 し て 桁 違 い に 低 くな い こ と が 確 認 さ れ て い る 。 今 回 マ レ ー
シ ア に つ い て は 最 終 的 結 論 を 控 え て い る が,同
国 の 書 籍 支 出 率 が0 .35と い う 先
進 国 の 標 準 値 を 越 え る 高 率 を 達 成 し て い る こ と は これ ま で の 調 査 か ら 確 か と
考 え ら れ る。
12)箕
輪成男
「消 費 と し て の 出 版 」 弓 立 社,1953,53頁
13)箕
輪 成 男,前
ユ4)箕
輪 成 男 「国 際 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と し て の 出 版 」 日 本 エ デ ィ タ ー ス ク ー ル
掲
出 版 部,1993,"第
15)こ
「歴 史 と し て の 出 版 」,150頁"出
版 開 発 の 経 済 学"
一 章 輸 出"
こ で マ レ ー シ ア の 構 成 比 率 は,同 国 の 出 版 人 が 提 示 し た モ デ ル で あ り,日
本 の そ れ は 昭 和45年
種 類 と,と
籍 の
く に 印 刷 部 数 に よ っ て 大 き く変 化 す る か ら 注 意 を 要 す る 。 マ レ ー シ
ア の 例 は 部 数3000部
あ る が,両
通 産 省 調 査 の 結 果 で あ る 。 定 価 構 成 は 出 版 の 場 合,書
の 実 務 書 を 想 定 し た も の で あ り,日 本 の デ ー タ は 平 均 値 で
者 の比 較 か ら一 定 の 結 論 を 引 出 す こ と は 全 く可 能 で あ る。 ま た 定 価
に つ い て は マ レ ー シ ア は,モ
本 の そ れ は1990年
デ ル 考 案 者 の 用 い た 実 務 書 の 標 準 定 価 で あ り,日
の 総 点 平 均 で あ る 。全 刊 行 部 数 を べ 一 ス に し た 平 均 定 価 は こ
れ よ り は る か に 低 い(安
い)の
で,実
際 の ア ク セ ス 率 の 差 は,本
4.2倍 よ り も も っ と 大 き い は ず で あ る 。 と い う わ け で,本
論 文 で の比 率
稿 で 示 す 分 析 比 較 は,
思 考 の 途 筋 を 示 す こ と に 主 た る 目的 が あ る。数 字 と い う もの に は 収 集 し た デ ー
タ の 正 確 性,妥
当 性 と 同 時 に,得
は 大 き な 幅 が あ り う る こ と,い
ら れ た 結 果 の 判 断 に お い て も,そ
の妥 当性 に
い か え れ ば我 々 は分 析 全 体 を相 対 化 し て 考 え る
必 要 が あ る こ と を 強 調 し て お き た い 。数 字 読 み の 数 字 知 ら ず に 陥 ら な い こ と が
肝 要 で あ る。
16)箕
輪 成 男,前
掲
「歴 史 と し て の 出 版 」160頁
17)PacificoN.Aprieto,Bonk」PublishingandP17ガ
妙 μ η8&勿
如z曲 ψ,Daily
StarPublishingLo,Manila.198,pp.7--11
東 南 ア ジア 出 版 市 場 の量 的 測 定107
付
録
-⊥
フ ィ リピ ン関係 の 基 礎 デー タ
9々
マ レー シア 関 係 の 基 礎 デー タ
り0
マ レ0シ
ア出 版 市 場 の 量 的 測 定1990.(仮
案)
フ ィ リピ ンの場 合 ほ ど確
度 高 くな いの で 再 調 査 を必 要 とす る
(4) フ ィ リ ピ ン出版 の歴 史 的背 景
付 録(1)フ
ィ リ ピ ン関 係 の 基 礎 デ ー タ
…
縢 鰍
国 民 総 生 産1990年423億
ドル
ー 一
灘iiil
ーlii翻
平 均1冊
灘 一
単 価31.51,x,ペ
ソ ÷4143万
書 籍 ア ク セ ス 率76ペ
付 録②
ソ ÷17228ペ
冊=76ペ
ソ
ソ=0.44%
マ レー シ ア関 係 の 基 礎 デ ー タ
総人 口
1970年
1039万
人
1980年
1370万
人
1990年
1776万
人
1990年
42373百
1970年
393US$=1206リ
1980年
1779US$=3949リ
ンギ
2368US$・=6393リ
ンギ
{
国民総生産
1人 当 り年間所得
i1990年
マ レ ー シ ア 人1人1日
当 り所 得
通貨換算率
1990年
際 経 営 論 集No.91995
17.5リ
万US$
ンギ
ンギ
1970年
1US$=360円=・3.07リ
ンギ
1980年
1US$=226円=2.22リ
ンギ
1990年
1US$=144円=2.70リ
ン ギ
i1990年
108国
∼ カ
1リ
ン ギ=53円
平 均1冊
単 価(1990年)
単 純 平 均7.1リ
ンギ
教 科 書
ンギ
・児 童 書 を 除 く 平 均15.0リ
/ 本 論 考 で コ ス ト分 析 に 用 い た1冊
マレーシア仮説例1冊
の製作原価
日本の
〃
日本 の1人
当 り年 間所 得
日本 人1人1日
単 価21.5リ
3.9リ
〃
2764円
×0.35リ
ンギ
ン ギ=206円
ン ギ=967円
23801US$=3,427,200円
当 り所 得
9389円
仮 説 例 で の書 籍 ア クセ ス率
マ レー シア
21.5リ
漏 調
温
縞lll菱]
4.2倍
日本
1970年100
消 費 者物 価 指 数(ア メ リカ)
1980年212。4
/1990年336.5
付 録(3)(未
定 稿)マ
レ ー シ ア 出 版 市 場 の 量 的 測 定1990
点数
1点 当
総冊数
平均定価
売上額
り冊数
学 校 教 科 書 ・副 読 本 ・
X409
10000
ワー ク ブ ック
X300)
(5000}
児童書
1466
(300)
小 説(ロ マ ン ス)
834
(300}
学術書
大学教科書
(2000}
250
2000
goo
61
(45}
合計
2400
750
t20)
辞書類
(3000)
150
(300)
一般書
7800
4370
(1.265)
(2000)
2000
(1000}
10000
(5000)
8M$
14.25M.
X1.5)
114.00MM$
(12.x)
11.4SM.
3M$
(0.9)
34.44MM$
(2.7)
2.01M.
7M$
(o.s)
14.07MM$
(4.2)
0.11M.
25M$
2.75MM$
0.50M.
30M$
15.00MM$
(0.6)
0.40M.
(18.0)
30M$
Eo.02)
0.61M.
(o.$)
10M$
(0.22)
29,3fiM.
(3.84}
12.00MM$
6.IOMM$
(2.2)
(国立図書
館 の数字)
198.36MM$
(39.7)
21.52M.
総計
()内
33.20M.
238.46MM$
は重 版 お よ び 国 立 図書 館 統 計 に 入 らな い リプ リン ト
東 南 ア ジ ア 出版 市場 の 量 的 測 定109
付録㈲
フィ リピン出版 の歴 史的背景
歴 史 的 に確 認 され た フ ィ リ ピ ン最 古 の印 刷 書qは,!593年
フ ァン ・デ ・ベ ラが 木版 に よっ て 印刷 した"ド
中 国人 キ リス ト教 徒
チ リナ キ リシ タ ン"で
あ る と言 わ
れ る。1602年 に は,ア ジ ア に お け る最 も古 い西 洋 式活 字 印刷 機 の ひ とつ が ドミニ
コ会 士 に よっ て マ ニ ラ に設 置 され,書 籍 印 刷 が は じめ られ た。 それ は長崎 の加 津
佐 に イエ ズ ス会 が 印刷 所 を設 置 し,キ
り,北 米 最 初 の 印 刷 機 が,マ
リシ タ ン版 を作 り出 した の と同 時 代 で あ
サ チ ュー セ ッツ ケ ン ブ リッジで 稼 動 しは じめ た1640
年 よ り半 世 紀 近 く も早 い 出 来事 で あ った 。
こ う して は じま った 出版 の 営 み に よ っ て,1593年
か ら1800年 まで の 約200年 間
に,フ ィ リ ピ ンは541点 の書 籍 を生 み 出 して い るの で あ る。しか し こ う した書 籍 印
刷 の 古 い伝 統 が この 国 の近 代 化 の 推 進 に結 び つ く こ と は残 念 な が らな か った と
思 わ れ る。 この 間 に出版 され た書 籍 の 多 くは,キ
リス ト教 の教 理 書 や タガ ロ グ語
の辞 書 ・文 法 書 で あ り,ス ペ イ ン征 服 者 た ち に よ る被 征 服 者 理 解 と,被 征服 者 た
17)
ち に よ る征 服 者 理 解 を 目的 とした もの に止 った か らで あ る。統 一 国 家 を形 成 す る
以 前 に植 民 地 化 され た フ ィ リピ ン は,社 会 の 開発 的 ニ ー ズ に も とつ くマ ス メ デ ィ
ア と して の書 籍 出版 の歴 史 を,そ れ 以 前 に持 っ て い な か った し,植 民 地 化 され た
後 は,言 論 出版 の 自 由 を奪 わ れ る こ とに よっ て,出 版 の健 全 な発 展 を阻 害 された
の で あ った。 フ ィ リ ピ ン人 自 らの著 作 を 自 らの手 で刊 行 す るた め の 努 力 は,19世
紀 末 の独 立 の気 運 と共 に高 まるが,独 立 の 失敗,支
の 中 で,フ
ィ リピ ンの 国 家 的 統 合 は お くれ,出
配 者 の交 替 とい う動 乱 の継 続
版 は低 迷 を続 けた。 そ して新 しい
植 民 地 勢 力 は,自 国 ア メ リカの 児 童 の た め に作 られ た 教 科 書 を使 っ て,フ
ィ リピ
ンの子 供 た ちの 教育 を は じめ た の で あ った。
フ ィ リ ピ ンの独 立 が 達 成 され,フ
ィ リピ ン人 出版 者 に よ る教 科 書 出版 の 系 統 的
努 力 が は じ まるの は,第 二 次 大 戦 後 の こ とで あ る。 こ う して近 代 化 を推 進 し,1
個 独 立 の読 書 空 間 を形 成 す る過 程 を,ス ペ イ ン ・ア メ リカ ・日本 と継 続 的 に外部
勢 力 に よっ て概 乱 され て きた フ ィ リピ ン は,独 立 を達 成 した段 階 で,国 語 の未 成
立,自
国語 文 献 に よ る各 種 情 報 の 生産 ・蓄 積 の 欠 如,と
い う致 命 的 な問 題 を抱 く
こ とに な っ た の で あ る。フ ィ リ ピンが近 代 国 家形 成 の いわ ば最 も基 幹 的 条 件 で あ
る,統 一 国語 の確 立 ・普 及 に今 口で さ え成 功 して い な い こ とは,な
発 を考 え る上 で,最
110国
大 か つ 深 刻 な問題 で あ る といわ ね ば な らな い。
か で も出版 開
際 経 営 論 集No.91995